Nov. 3 〜 Nov. 9  2014

” Catcall = Street Harassment? ”
キャットコールとストリート・ハラスメント


アメリカは今週火曜日に中間選挙が行われたけれど、予想通り オバマ大統領の不人気を反映して 民主党が惨敗。既に共和党が過半数を獲得している下院に続いて、上院でも 与党、民主党が過半数を失って、オバマ大統領は 今後、共和党と歩調を合わせる姿勢を強いられることになったのだった。
株価が史上最高値をつけて、失業率もリセッション前より低い5%台になったにも関わらず、オバマ大統領が不人気なのは、 リセッションからのリカバリーを見せているのが、金融業界と都市部だけであるため。 また失業率低下にしても、多くの人々が職探しを諦めたり、生活のために以前より待遇も給与も悪い仕事に甘んじているのが実態であるため、 「オバマ大統領の経済政策は貧富の差を生み出しているだけ」という印象を国民に与えているのだった。

一方、今週ニューヨークで話題になっていたのは、ワールド・トレード・センター跡地に建ったワン・ワールド・トレード・センターに 初のテナントが入居したというニュース。テナント第一号となったのは、ヴォーグ誌、グラマー誌などを発行することで知られる コンディナスト社。9・11のテロから13年ぶりに入ったビジネス・テナントであるけれど、社員の中には やはり新たなテロを恐れる声が多いようで、 ワン・ワールド・トレード・センターのテナントは、現時点で60%という埋まり具合なのだった。




ところで、2週間前にアメリカで大センセーションを巻き起こし、YouTubeで3,400万人が閲覧したのが 写真上、ニューヨークのストリートでのキャットコールを捉えたビデオ。
キャットコールとはスラングで、男性が女性に対して自分の女性に対する関心を示すために声を掛けたり、 相手に聞こえるようにコメントすること。 このビデオが撮影されたのは今年8月のニューヨークで、ビデオに登場しているのは 22歳の女優の卵、 ショシャーナ・ロバーツ(写真上左)。
ボランティアとしてこのビデオ・プロジェクトに応じた彼女がブラック・ジーンズ+ブラック・Tシャツというカジュアルな出で立ちで、 ニューヨークの街を10時間歩いた様子は、彼女の前を歩いているカメラマンが担いでいるバックパックに隠した カメラで密かに撮影されいたけれど、その結果、彼女は108回、すなわち1時間約11回ペースでキャットコールを受けたとのこと。

同ビデオを撮影したのは、Hollaback! / ホラバック!という慈善団体で、ビデオ製作の目的は ストリート・ハラスメント、すなわち街行く女性に対する男性からの性的なコメントや、 アプローチを止めさせようというもの。
ところがこのビデオが公開された途端、人々から様々な反感、反発を買うことになったのが、ビデオの製作側である ホラバック!の方。 その反感と反発の内容は主に2種類に分かれているのだった。

その1つは、10時間に渡ってストリートを歩いたショシャーナ・ロバーツの様子を2分に纏めたビデオで、 キャットコールをしていた男性は、ほぼ全員が黒人&ヒスパニックで占められていたこと。 ビデオ監督によれば、白人男性からのキャットコールも黒人&ヒスパニック男性と同等にあったというけれど、 白人男性は 通りすがりに声を掛けるだけなので、上手く ビデオや音声で捉えられなかったためにカットしたとのこと。 でも このコメントのせいで、「製作側が 意図的に黒人&ヒスパニック男性だけを ストリートで嫌がらせの声を掛ける存在に でっち上げた」という反発を人々から買って、 「人種差別ビデオ」という批判を受ける結果になったのだった。




同ビデオに寄せられた もう1タイプの批判、反発は、ビデオにフィーチャーされている多くのキャットコールは、 女性への挨拶や褒め言葉であって、決して悪質なものではないというもの。
実際、そのキャットコールの多くは 「Beutiful!」、「Have a nice day!」、「Good bless!」というナイスなアプローチ。 それ以外は 「Hey Baby!」等、キャットコールのカテゴリーに入るものもあれば、「Smile!」というもの、 褒め言葉を言った後に「Say Thank You!」とマナーをレクチャーするものもあったけれど、殆どは彼女を褒めるか、 さもなくばニュートラルに声を掛けるもの。
唯一、ショシャーナに話しかけながら、4分も彼女と一緒に歩いた男性がいたけれど、それ以外は 明らかに 「ストリート・ハラスメント」と呼べるのは、 10時間歩いたビデオを300分の1の長さに編集したビデオに3〜4人程度映っていただけ。 このため、このビデオを見た多くの女性や男性から、「キャットコールの何が悪い!」、 「キャットコールで気分が良くなる女性は非常に多い!」という 批判が多数寄せられていたのだった。

実は私自身も このビデオを観るまで、ストリートで男性に褒め言葉を言われることが”キャットコール”に属すると思ったことが無かったので、 同ビデオを観て最も意外だったのがその部分。 また以前、考え事をしながらミッドタウンを歩いていた時に、見知らぬ男性に「Smile!」と言われたことがあったけれど、 それもについても、不愉快そうな顔をして歩いていた自分が悪いと思って、態度を改めるきっかけになったような状態。
したがって、このビデオが ストリート・ハラスメントだけを捉えたものとは言いがたいというのが、私の正直なリアクションなのだった。


その一方で 女性、特に黒人、ヒスパニック系の女性が同ビデオを観たリアクションとして語っていたのが、 ストリートのキャットコールよりも ずっと深刻なハラスメントを彼女たちがバーやオフィスで、白人男性から受けているという指摘。
彼女らによれば、黒人&ヒスパニック系の男性は、ある程度の距離を置いてオープンに声を掛けるだけであるけれど、 白人男性は近くに寄ってきて、腕や肩、髪の毛、腰などに触れたり、耳元で囁くなど、もっと悪質な上に、 特にオフィス内では自分達の優位を感じて、女性に対して何を言っても構わないと思い込んでいるとのことなのだった。

それが果たしてどの程度のオフィスで当てはまるかは別として、興味深かったのはニュージーランドで行われた 全く同様の実験。(写真上左) ホラバック!のビデオ同様、女優を雇って 10時間ストリートを歩かせて、その様子をビデオに撮影していたけれど、 彼女に声を掛けた男性は僅か2名。そのうちの1人は道を尋ねた男性であったいう。
したがって、ニュージーランドのメディアでは 「キャットコールは、アメリカという国のカルチャー」と分析していたけれど、 ロサンジェルス、サンフランシスコ、ボストンといったアメリカのメジャー都市と比べても、遥かにストリートでのキャットコールが多いのがニューヨーク。 その理由の1つとしては、ニューヨーカーが車社会のアメリカにあって、他都市の人々に比べて 遥かに街を歩く傾向にあること。 加えて、他都市に比べてシングル・シーンが活発であること。
驚くなかれ、ロサンジェルスでさえ カップル単位で行動する街であるけれど、ニューヨークのソーシャル・シーンはシングル族、シングルを装った既婚者が 常にデート相手を探しているという状況。したがって、ストリートでも、クラブでも、レストランでも、男性が女性に頻繁に声を掛けたところで、 全く不思議ではないのだった。

でも年配の女性に言わせれば、ある程度の年齢に達すると 途端に聞かれなくなるのがキャットコール。 そのため、今は見知らぬ男性に気安く声を掛けられることを嫌がっているような プライドの高い女性でも、 ひとたび年を取ってみると その有り難味を実感することになるという。
そんな声を聞いていると、益々不思議なのが 人種差別的編集まで行って製作された このビデオのポイントは一体何だったんだろう?ということ。 それが何であれ、とりあえずこれほどまでにメディアに取り上げられ、人々の間で話題と物議を醸したビデオを製作した事自体は、 慈善団体にとってサクセスと言えるものなのだった。



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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。




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