Nov. 10 〜 Nov. 16 2003




グリーンカードがあっても仕事は見つからない!


「グリーン・カードなんてあっても、仕事なんて見つからない。」という言葉は、 最近、数人の 日本人を含む移民から聞いたものである。
これはもっぱらここ2〜3年でグリーンカードを取得した人達が語ることで、 「グリーンカードがあれば仕事は何とかなる」という思いが強かった人ほど、 「グリーンカードがあるのに…」という失望は大きいようである。
これが、グリーンカードを取って15年近くが経過するような友人になると、 「グリーンカードがあったって、私達は所詮は外国人なんだから、 言葉が喋れて、普通に雇えるアメリカ人の方を経営者が雇いたがるのなんて当たり前じゃない」と あっさりと語り、「ビザ無しの違法就労だろうが、ビザ有りの合法だろうが、 外人を雇おうとするオーナーなんて、人件費を節約したいっていう頭があるに決まっている」と 悲観的なことも言ってくれる。
彼女がこれだけ悲観的になるのはそれなりの理由があって、現在フリーランスでデザイナーをしている彼女は、 年齢と共に健康保険のある、規則性のある職場を求めるようになり、 正社員として就職しようと、仕事を探してかれこれ3年くらいになるのである。 その間、不採用となった会社は50社近いそうで、中にはインタビュー(面接)を受けている間に 「ダメそうだ」と分かる会社もあれば、3回も作品を持参して、その都度1時間近いインタビューを受けて、 断られたものまであったというけれど、最も頭に来たのは 「トライアルだから」といって 実際に仕事をさせておいて 断るというような人の道に外れた企業だったという。
でも最もショックだったのは、口で採用を言い渡された翌週、彼女が勤める筈だった部署の 閉鎖が決まって、採用取消になったというもので、彼女はこの時、採用されたものと思って フリーランスの高額な仕事のオファーを断ってしまったことも重なって、立ち直れないほど落ち込んでしまったと言っていた。

さて、私が今週日曜版のニューヨーク・タイムズの求人欄、「ジョブ・マーケット」のセクションを たまたま読んでいたところ、まるで彼女と全く同じケースと言えるストーリーが掲載されていた。
このストーリーの登場人物は37歳の男性グラフィック・デザイナーで、アメリカ人。 彼は昨年それまで務めていた会社をレイオフされて以来、フリーランスの仕事をしながら、 ジョブ・インタビューを受け続けていて、やはり「トライアル」と称して、採用前に仕事をさせられた 苦い経験を持っている。彼は、多くの面接で非常にポジティブなリアクションをもらい、 「今までの候補者の中ではトップだから…」、「採用確実」と言われながら、 「君よりもっと経験のある人を雇うことにした」などと体裁良く断られて来ており、 「採用ほぼ確定」と言われる度に、フリーランスの仕事を断って来たので、 今年だけで稼ぎ損ねたフリーランスの仕事の総額は5万ドル(550万円)にも達しており、 「このまま就職活動を続けていたら破産してしまう」などとボヤいている。
また彼の場合、心理テスト、国語、数学、エッセイの筆記試験を受け、 その他に家族や政治思想などに関する400問の質問に答えなければならないという、 4時間に渡る採用プロセスを経て、落とされたという気の毒なエピソードもあり、 「自分の探すポジションに就職できることなど もう無いだろうと思い始めている」ことも書かれていた。
この記事によれば、アメリカの経済は過去の四半期で8%成長し、失業者率も6%と言われる中、 ここニューヨークでの失業率は8.6%で、人数にして30万人が仕事を探しており、これは 2年前の20万人から大きくアップしているという。 したがって、就職は買い手市場な訳で、企業の人事課はその状況を利用して より能力のある人間を、より安い賃金で採用しようと、時間とプロセスを掛けて人を雇う傾向にあるという。 実際、この記事に登場する男性によれば、面接を受けてから結果が分かるまでに 2ヶ月以上掛かる場合が殆どだということで、企業側は納得が行くまで候補者が出揃うのを待って、 ゆっくり人選を行なっても、候補者を他の企業に取られてしまう心配も無く、 相手の出方を見ながら、有利な条件で採用を進めていくことが可能なのである。
専門家はこうした傾向を「企業側が、誤った人事採用によるダメージを防ごうとしているだけ」と分析し、 採用した人間が適性を満たしていない場合、仕事の生産性に悪影響を及ぼすというだけでなく、 その人間を解雇した場合、企業はその失業手当を負担し、その後の失業保険料が値上げされてしまうという 2重苦を味わうことを指摘する。

この記事を読んで、私は思わず友人に電話をしてしまったけれど、 彼女も求人案内を見るついでに、毎週このセクションを読んでいるのだそうで、 「アメリカ人、しかも経験のある白人男性のデザイナーでさえこんな状況なんだから、 日本人の私に仕事が無いのも当たり前よね」とサバサバと語っていた。
彼女の言う通り、通常企業が最も採用したがる「経験のある白人アメリカ人男性」でさえ 仕事が見つからない現在、「グリーン・カードを持っているくらいで採用してくれるところがあれば御の字」と 言うのが、今のニューヨークの厳しいジョブ・マーケットの現状なのかもしれない。



Playing Game

10月31日のハロウィーン・パーティーに出掛けた時のこと。 ハイヒールで数時間もの間、立ち通しだった私はすっかり足が痛くなってしまい、 ソファーがあるエリアで靴を脱いで休んでいた。
すると隣に、私と同じくらい高いヒールを履いていたドラッグ・クィーンがやってきて、 やはり靴を脱いで足をマッサージし始めたので、「ドラッグ・クィーンも大変だなぁ」と思って眺めていたところ、 見るからに若くて、小柄な男の子(とは言ってもクラブに入れる年齢に達しているのは言うまでも無い)が通りかかった。 するとそのドラッグ・クィーンは、直ぐに彼に手を伸ばして話し掛け、 明らかに彼がその男の子に興味を示しているのは見て取れたし、男の子の方も身をくねらせるように可愛い子ぶって、 彼に応えていたけれど、2人が何を話しているのかは 音楽がうるさくて、隣に座っていても断片しか聞こえてこない。 でもその後、直ぐに2人のボディ・ランゲージが変わり、結局、男の子はドラッグ・クィーンから離れて、何処かへ行ってしまった。
私は男性が男性を口説いているのをこれほど間近から目撃したのが初めてだった上に、 「2人がどういう状態になったのかが知りたい!」という好奇心が抑えられず、 思わずドラッグ・クィーンに「今のって、あの子を口説いていたの?」と声を掛けてしまった。 すると彼は「うん、でも上手く行かなかった」とあっさり結果を教えてくれて、 「何が悪かったの?」と訊ねると、「あの子は、自分みたいな服装が嫌いなんだって」とのこと。
その後、私とドラッグ・クィーンは、暫らく話し込むことになってしまったけれど、 彼によれば、ドラッグ・クィーンの世界では服装の趣味が合わないという理由で相手に断られることは 決して珍しいことではないし、それに対してショックを受けたり、「気に入らない」と思うこともないのだそうで、 「ファッションの趣味が合わない人間とは一緒にいられない」とはっきり語る。
さらに私が興味を持ったのは、ドラッグ・クィーンは大柄で、当然の事ながら女装をしているのに対して、男の子の方は 小柄で普通の服装をしていたことで、2人が見た目に明らかにアンバランスであった点だった。 そこで、「いつもあの子みたいなタイプに声を掛けるの?」と訊ねると、 彼が通常興味を示すのは、もっとガッシリした男性で、コケージャン(白人)よりも 黒人が好みのタイプなのだそうで、私達から2メートル程離れたところに立っていた 筋肉質の黒人男性を指差して「He is Hot!」等と言っている。
でも、いつものタイプとは違う男の子が部屋に入って来た途端に声を掛けたのだから、 その子に何らかのアトラクションがあったに違いない訳で、 それについて訊いてみると、「あのボーイッシュな雰囲気がフレッシュだったから」と語っていた。
「アプローチしたらストレートだったなんて事はないの?」という質問には、きっぱりと「No!」。 「バイセクシャルだったことはあるけれど…、それは別に気にしないから。」というのが彼の答えだった。
結局、私たちは15分近くその場で喋っていたけれど、 事の一部始終を傍で見ていた私にとって、2人のやり取りで最も興味深かったのは そのスピードだった。 というのもドラッグ・クィーンが男の子を見て 話し掛けて、交渉(?)が決裂するまでには僅か1分も掛かっていなかったのである。
これについては彼に言わせれば、「ゲイにとっては、どんな関係だってインスタント・アトラクションから始まる」のだそうで、 それに対して相手が興味を示さなければ、無駄な努力はせずに次を探すものなのだという。 だから彼が声を掛けて、最初は彼も相手を知ろうとするし、相手は彼が自分に興味を示したことに ちょっぴり気分を良くして、お互い良いムードで喋っているけれど、直ぐに相手は彼の事を自分のタイプではないと ジャッジして、それを告げるからその時点で2人のボディ・ランゲージが変わり、 お互い 何の後くされもなく、離れていくことになる。
彼は1晩のパーティーの間に5〜6人に声を掛けることは珍しくないそうで、 その結果、上手く行けば電話番号を交換したり、その後一緒に何処かに出掛けることになるけれど、 それっきりということも多いという。
何だか生産性が高いのか?、低いのか?、全く判断しかねるような話だったけれど、 簡単そうでいて、結構疲れそうだというのが私の感想だった。

何となく彼との会話が頭の中でモヤモヤ残っていた今週、私がインタビューしたのが ニューヨークのクラブ・シーンで「伝説のドアマン」と言われているケニー・ケニー。(写真左)
既にニューヨークの30以上のクラブのドアを担当してきた彼とのインタビューは、 来月の「ナイト・ライフ」のセクションに掲載することになっているけれど、 自らホモセクシャルで、ドラッグ・クィーンやゲイ・ピープルの世界を知り尽くしているケニーに、 この私とドラッグ・クィーンとのハロウィーン・パーティーでの会話について話したところ、 「彼らがやっているのはゲームだから…」と解説してくれた。
「片っ端から声を掛ける人間も居れば、相手を観察してからじっくりアプローチする人間も居るけれど、 結局のところはゲームだったり、パフォーマンスだったりする訳だから、もちろん相手を探す目的もあるけれど、 最終的には自分が楽しむため、そうでなければ楽しんでいる自分を演じるためにやっていること」 という彼の説明を聞いて 私は妙に納得してしまったし、クラブのパーティーという場が 彼らにとってのステージ兼社交場であることも再認識してしまった。
ふと考えてみると、ストレートの男性でも クラブに出掛けて女の子、特にモデルタイプを引っ掛けるのをゲームと考えて、 電話番号を聞き出したり、もっとラッキーにアパートに連れて帰ることを戦利品と考えている人は多いけれど、 私が感じるのはストレート男性の場合、「ゲーム」を エンターテイメント、パフォーマンスとして楽しむゲイ・ピープルとは異なり、 勝ち負けがはっきりした勝負とかスコアとして捕えているということだった。
だから、野球やフットボールのゲームの勝ち負けに熱くなるのが もっぱらストレート男性である理由が、 こんなところからも説明できるような気がしてしまった。





Catch of the Week No.2 Nov. : 11月 第2週


Catch of the Week No.1 Nov. : 11月 第1週


Catch of the Week No.4 Oct. : 10月 第4週


Catch of the Week No.3 Oct. : 10月 第3週