Nov. 12 〜 Nov. 18 2007




”アヴェレージ・アメリカン・ライフ ”



今年はサンクス・ギヴィング・デイが来週木曜の22日と、例年より若干早めなこともあって ニューヨークでは 多くのデパートやブティックが 週末前にはクリスマスのウィンドウやオーナント&イルミネーションの飾り付けを済ませていたのだった。
でもそうかと思えば、今週のセントラル・パークは紅葉のピーク。週半ばに 私が通っている地上34階のジムの窓から眺めたら、セントラル・パーク一帯と、 反対側のクィーンズの木々が美しく紅葉していたので、お天気が良かった土曜日にブランチを済ませてからパークに行ってみたところ、 例年とは若干異なるものの とてもきれいな紅葉を目にすることが出来たのだった。 何が例年と違うかと言えば、まず地面の芝生が未だ青々としていること。そして今年の異常な気温のせいか、 紅葉しきれずピンク色になっている木々、秋なのに 新緑のような緑の木々があり、通常イエロー、オレンジ、ブラウン、ダーク・グリーンという紅葉のセントラル・パークのカラー・パレットが、 今年は、もっとカラー・ヴァリエーションに富んだ色鮮やかなものになっていたのだった。
この光景はいかにも秋らしい、オーソドックスな紅葉ではないけれど、真っ青な空をバックグラウンドに眺めていると とても美しいもので、 「こんな紅葉も悪くないなぁ・・・」などと思ってしまったのだった。

さて もう数年前のことだけれど、私の友人のご主人が当時エグゼクティブをしていたアパレル会社が、 元祖ファーギーこと ダッチス・オブ・ヨーク、 サラー・ファーガソンを広告モデルに起用しようとして、彼女を主賓にディナー・パーティーをしたという。
その時の乾杯のスピーチに、サラー・ファーガソンが用いたフレーズというのが、「Wealth, Health and Time to Enjoy Them / 富、健康、それらを楽しむ時間」 というもの。 これは特に彼女がクリエイトしたフレーズではなく、完璧な幸福を表す表現の1つとして、英語では時々用いられるものである。
世の中一般では、このうちの2つを叶えるのは、ポーカーの1ペア程度にさほど難しくないとされている。 というのも、若い頃ならば多くの人々が健康で、時間もたっぷりあるけれど、自由になるお金はそれほど無いものだし、 年を取ってからだったら、それまで散々働いてお金を儲けて リタイヤすれば、それを使う時間はたっぷりあるけれど、 その年齢に達する頃には健康上、何らかの不安や持病等を持つようになるのが一般的である。 働き盛りの年齢であれば、バリバリ働いた分お金は入ってくるし、エクササイズをしたり食事に気をつければ 健康は保てるけれど、 「忙しすぎて 何をするにも時間が無い」というのがこの世代の問題点である。
したがって、人間の幸せを象徴する富、健康、時間という3つの要素を全て揃えることは、ポーカーのスリー・カードより難しく、 高望みをすれば ロイヤル・ストレート・フラッシュ並みに 稀でラッキーな事と言わなければならないのである。

さて、そんなアメリカ人が時間とお金をどのように使っているかをレポートしたのが最新のタイム・マガジンの調査。 そもそもアメリカという国は多数の人種から構成されている上に、一括りにするにはあまりに大き過ぎて、地域によって価値観や 食事の好みも全く異なる国。 そんなアメリカを1日の行動や仕事への満足感、アルコールの消費量など、 様々な角度から 分析したのが、今回の同誌の調査である。
これによれば、平均的なアメリカ人は朝7時に起き、男性なら24分、女性だったらそれ以上を掛けて身だしなみを整え、 18〜36分を掛けて朝食を取るという。でもこの時間には朝食を用意する時間や新聞を読む時間も含まれるという。 子供が居れば子供が学校に行く準備を手伝うのにさらに平均で12分を余分に費やすのだそうで、仕事に向けて家を出るのは大体8時半。
通勤には25分を費やすという。

アメリカ人が時間を割いているものをアクティヴィティ別に分析すると、 1日の行動で最も時間が割かれているのは仕事と睡眠。 これに次いで第3位となるのがTVを見る時間で、1日平均2時間35分。 これはTVがメジャーなエンターテイメントであった40年前とほぼ同じ時間であるという。
アメリカの1世帯当たりの人数が2.6人なのに対して、1世帯当たりが所有するTVの数は2.73台というデータが 得られているから、”チャンネル争い” は過去の遺物となりつつあるけれど、 今ではティーヴォのようなデジタル録画システムが広まって、同じ時間帯に複数の番組を見たい場合も、 どれかを選ばずして、全て見られる時代になっていたりする。 それだけに1日2時間35分というのは、意外に短くてビックリしたけれど、私自身の生活を考えると、TVだけを集中して見ている時間だったら 恐らく1日30分以下。でも何かをしながら音だけ聞いているとか、時々画面を見ている状態であれば、 朝晩を合わせると、1日4〜5時間はTVがついている状況なのである。

さらに短くてビックリしたのが、飲食に費やす時間で これは1日平均 1時間14分。 付随データとして表示されていたのが、アメリカではファスト・フード・レストランの調理をする人の数が61万2020人なのに対して、 農業を営む人口は39万3730人だそうで、ファスト・フード・ネーション(国家)と呼ばれるアメリカのプロフィールは変わっていないようである。
そんなアメリカ人は62%がオーバー・ウェイト、もしくは肥満であると言われるけれど、 1日にエクササイズに費やす時間は平均17分。 でも全体の87%は一切エクササイズをしていないと答えており、 エクササイズをしている13%の人々が 全くしていない87%を カバーするほどにワークアウトをしている計算になる。
ちなみに昨年度のアメリカで エクササイズ・マシーンや、フィットネスDVDなどに費やされた金額は49億ドル(5390億円)。 アメリカ人が1年間にフィットネス・クラブやジムのメンバーシップに支払っている金額は17.9億ドル(1兆9140億円)とレポートされている。 アメリカ人のうちの13%しかエクササイズをしていないにも関わらずフィットネス・クラブがこれだけの収入を上げているのは、 メンバーになっても3日坊主で止めてしまう人が多いからに他ならないけれど、 実際にはこうしたお金だけ払ってジムに通わない人々によって、ジムの経営が成り立っているとも言われるのである。

そして、現代人には欠かせないインターネットであるけれど、同誌の調査によれば アメリカ人が仕事以外でネットサーフィンをする時間はかなり短くて、 平均で20分。 この数字を見ると誰もが「そんなはずは無い!」と思ってしまうけれど、付随データとして 別の調査法では 家と仕事を合わせて3.5時間を オンラインで時間を費やしている結果が得られたことが記載されており、こちらの方が信憑性があるという感じである。 ことに現在のアメリカでは地方に行けば行くほど、生活やコミュニケーションのためにインターネットが必需品になっているのだそうで、 オンラインに費やす時間は都市部と地方では、それほど違いがなくなりつつあることが指摘されて久しいのである。
都市部では、「フレッシュ・ダイレクト・ドットコム」などを使って、水や食料品もネット上でオーダーする時代であるし、 その他の買い物や株の取引き、税金の申告や様々な料金の支払い、ありとあらゆるリサーチや、音楽やビデオのダウンロードなど、 エンターテイメント、ショッピング、トレードの殆どがオンラインで行われていることを思えば、 アメリカ人が1日20分しかオンラインに時間を費やしていないというのは あり得ない数字なのである。

そのアメリカ人の平均年齢は?と言えば 36.6歳。 アメリカの一世帯当たりの家族数が2.6人であることは先にも触れたけれど、夫婦のうち夫だけが働き妻が主婦である家庭は全体の僅か20%。 これが都市部になれば割合が半分以下になるのは容易に察しがつくところ。
夫婦が忙しく働くようになって 失われてつつあるのが家族で過ごす時間で、30年前に比べて家族団らんの時間が22時間も少なくなっているという。
さらに夫婦が一緒に過ごす時間も1975年の調査時に比べて26%少ないそうである。
その一方で増えているのは、テクノロジーの進化によるマルチ・タスキング、すなわち複数の事を一度にこなすライフスタイルで、 インターネットはもちろん、携帯電話や携帯端末機などの普及により、現代のアメリカ人は1975年に比べて1週間40時間も余分に 働くようになっているという。 これは、週末子供のサッカー・ゲームの応援に行っている最中にも、ブラック・ベリーのような携帯端末機で仕事のメールを送ったり、 バケーション先でもインターネットを使って仕事をしているためで、週末やバケーションの間に仕事と全く関わらなくて済むアメリカ人は どんどん減ってきているのである。

そんな現代アメリカ社会で、時間を食い潰しているものと言えば、交通渋滞。
中でもロサンジェルスのロング・ビーチ、サンタ・アナは交通渋滞に費やす年間の時間数は72時間と全米最悪の数字で、 1年のうちの3日間を 車の中で渋滞に巻き込まれて過ごす計算になっている。 次いで、サンフランシスコ&オークランド、アトランタ、ワシントンD.C.が 年間60時間という渋滞時間である。 ニューヨークやボストン、シカゴはパブリック・トランスポーテーション(公共交通機関)が多いこともあり、 フェニックスやデンバー、デトロイト、ダラスなどよりも少ない46時間という年間渋滞時間となっている。
都市部に比べて渋滞が少ないのが地方であるけれど、反面、 地方は何処へ行くにも移動距離が長くなるので、 渋滞やラッシュ・アワーが無い分 移動に時間を費やさずに済むか?と言えば そうでも無いようである。

さて、個人的にこの調査で最もビックリしたのはアメリカ人の飲酒量。 ニューヨークに住んでいると、アメリカ人は酔っ払うまで飲まない人種というイメージが強いけれど、 それでもアメリカのアルコール消費量が世界の第40位という少なさだったのは、私としてはかなり意外なことだったのである。
そもそも、アメリカでは成人人口の3分の1が 一切アルコールを飲まないのだそうで、 ノン・アルコール率は世界の中でもかなり上位に来るとも言われている。
州別に比較して 最もアルコールの消費量が多かったのが、 何とニューハンプシャー州。ニュー・パンプシャーと言えば大統領の予備選挙が最も早く行われるため、大統領選では 大切な役割を果たす州ではあるけれど、それ以外にはあまり存在感が無い州。 でもビール、ハード・リカーの消費量は全米1位、ワインはワシントンDCに次いで2位の消費量。州民1人当たりの年間の アルコール消費量は40ガロンとなっている。
次いで第2位はラスヴェガスがあるネヴァダ州で、ここで飲む人は殆どが旅行者であるから、データの数字が正確とは言い難いけれど、 1人当たりの年間のアルコール消費量は38ガロン。第3位は寒い上にレジャーが少ないノース・ダコタで、36ガロンという結果になっている。
ニューヨークは?と言えば、ニューヨーカー1人当たりが年間に消費するアルコールの量はニューハンプシャーの約半分にあたる21ガロンで、 これは全米50州にワシントンDCを加えた51エリア中の49位。ニューヨークよりもアルコールの消費量が少なかったのは 僅少差で50位となったケンタッキー州 (1人当たりのアルコール消費量は約21ガロン)。 そして最下位の51位が、アルコールを飲まないモルモン教徒が多いことで知られるユタ州で 州民1人当たりのアルコール消費量は年間14ガロンと圧倒的に少なくなっているのである。
これらの全飲酒量を平均すると、アヴェレージなアメリカ人は1年に7本のリカー、12本のワイン、230缶のビールを 消費していることになるけれど、 この数字を自分自身と比較してみると、カクテル系はカロリーが高いので飲まないようにしており、ウィスキーも殆ど飲まないけれど、 コニャックは少し飲むので、恐らくリカーは年間1本分程度。ビールも太るので飲まないようにしているため、 缶に直した消費量は恐らく1年で12本程度。 シャンパンを含むワインは、恐らく100本程度は飲んでいるのでは?というのが憶測である。 そこで、これらをガロンに換算してみると、私の年間アルコール消費量は 20.8ガロン。ニューヨーカーのアヴェレージに 極めて近いことになる。

さて、この調査では仕事の満足度についても職業別に調査しているけれど、 最も仕事に満足していると答えたのは、口が裂けても「仕事に不満がある」とは言えない 教会の牧師。 次いで、金持ちの家に勤めるハウスキーパーやバトラー、第3位がファイヤー・ファイター(消防士)となっている。 ざっと見たところでは、アーキテクト(建築家)、メカニックス、エンジニア、映画のディレクターや俳優、パイロットなど、 自分の技術を生かせる職業で 接客&サービスとはあまり関係が無い職種が上位に来ている印象である。
逆に最も仕事に不満が多いのはガソリン・スタンドの店員。 興味深いところでは、人の悩みを聞くセラピストが仕事への満足度が18.7%で極めて下位に位置していることで、 フォトグラファー、バーテンダーもセラピスト同様にかなり満足度が低い仕事。 また仕事内容は似ていてもビル掃除やメイド・サービスになると、ハウスキーパーやバトラーよりもかなり給与も待遇も違うためか、 仕事への満足度も半分以下となっていたのだった。

そのアメリカでは ウォッカの人気ブランド、アブソルート・ウォッカが1日に売れる量は 16万96本。 レンタルDVDの大手、ネット・フリックスからアメリカ人が1日に借りるDVDの総数は165万枚。 そのレンタルDVDを見ながら食べるスナックといえばポップコーンだけれど、 アメリカのミドル〜ローワー・ミドル・クラスの御用達スナックとしての地位を確立しているオーヴィルのグルメ電子レンジ・ポップコーン が1日に消費される量は、レンタルDVDの数よりは少ないものの97万8030個。
一方、バーガー・キングでアメリカ人が1日にオーダーするラージ・フライの数は44万3650個。 1日にアメリカ国内で消費される卵の数は平均で5886万3993個。 比較的手ごろな値段が人気のサムスンのLCD TVがアメリカ国内で1日に販売される数は約7500台とのことである。
これに対して、自分自身を考えてみると アブソルート・ウォッカ、オーヴィルのポップコーンはこれまで1度たりとも購入したことはなく、 自宅ではケーブルTVのプレミアム・チャンネルが全て見られるのでネット・フリックスの利用もゼロ。 ファスト・フードは食べない主義なのでバーガーキングのフライの消費量もナシ。 家のTVはソニーとシャープなので、サムスンも無関係で、唯一 卵は人並みに消費する方である。
したがって、アルコール消費量ではアヴェレージなニューヨーカーである私でも、その他の消費に関しては 全くアメリカ的では無いということになるようである。





Catch of the Week No. 2 Nov. : 11 月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Nov. : 11 月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 Oct. : 10 月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Oct. : 10 月 第 3 週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。