Nov. 15 〜 Nov. 21 2010




” Full Body Scan Or Pat Dawn Serch? ”


今週のアメリカで、そして世界の多くの国々で最も大きく報じられていたのが、英国のプリンス・ウィリアムスと 長年のガールフレンド、ケイト(キャサリーン)・ミドルトンとの婚約のニュース。
既に婚約が正式発表される以前から、本国イギリス、及びアメリカでは2人の婚約が遅くとも年内に発表される 噂が流れており、特にサプライズの要素は無かったものの、 久々の盛大なロイヤル・ウェディングとあって アメリカ国内のメディアはこぞって 2人のロマンスのプロセスや、ケイト・ミドルトンのファッションなどについて報じる特集を組んでいたのだった。

共に28歳、交際をスタートして9年が経過するカップルであるけれど、 ケイト・ミドルトンは貴族の生まれであった故プリンセス・ダイアナとは異なり、全くの中流育ち。 両親はフライト・アテンダントからパーティー・グッズのビジネスを始めたというセルフメイド・ミリオネアで、 たとえセント・アンドリュースでプリンスと同じ学生生活を送っていても、 彼女は英国ではコモナー、すなわち貴族ではない平民というクラスのレッテルで表現される存在。
それだけに英国王室は、この結婚が 世間離れし過ぎているという批判を浴びて久しいロイヤル・ファミリーと イギリス国民とのギャップを埋める役割を果たしてくれることを期待しているとも言われているのだった。

総じてアメリカのメディアは、ケイト・ミドルトンについては ”モダンな英国女性像”、 ”冒険をしない安全なファッション・センス” という見解で一致しており、 19歳で婚約、結婚した故プリンセス・ダイアナよりも、波風を立てることなく 英国王室に溶け込めるだろうと予測しているのだった。
でも 私の周囲の友人などが指摘するのは ケイト・ミドルトンが 故プリンセス・ダイアナのような 誰もが見とれるような圧倒的な美貌の持ち主ではなく、 いわゆる庶民的なビューティーであるということ。 実際のところ、彼女に似たタイプのルックスは アメリカでは リアリティTVの「バチェラー」などによく登場するもの。 とは言っても 一たび 口を開けば、ケイト・ミドルトンは コテコテのブリティッシュ・アクセントで、リアリティTVのキャラクターとは 品性が異なるのは言うまでも無い事実なのだった。

ケイト・ミドルトンのルックスが故プリンセス・ダイアナより劣る分、プリンス・ウィリアムスのルックスは チャールズ皇太子のルックスを遥かに上回るのは誰もが認めるところ。 それだけに、今回のロイヤル・ウェディングでは 新郎新婦のルックスのバランスが取れていて、 チャールズ&ダイアナのウェディングのように、メディアと人々の興味と関心が全て故プリンセス・ダイアナに注がれるという アンバランスを招かない分、結婚生活も安定するのでは?と予測されるのだった。

ちなみにニューヨークでは、過去2年に渡って ヘンリー王子がポロ・マッチのためにニューヨークを訪れていることもあってか、 ウィリアムよりもヘンリーの方がベターという声が多く、私もここ数年の2人のプリンスをメディアを通じて見ている限りでは 全く同感なのだった。
それとは別に、今週アメリカでは「ハリー・ポッター」シリーズの完結編前編、「ハリー・ポッター・アンド・ザ・デスリー・ハロウズ - パート1」が 公開されているけれど、メイン・キャスト3人が「ハリー・ポッター」シリーズで稼ぎ出したギャラはエリザベス女王の収入の3倍、 ウィリアム&ヘンリー王子の収入の合計よりも多いことが明らかになっており、 「ハリー・ポッター」の著者、J.K.ローリングスは 今やビリオネアというメガリッチ。
なので、ロイヤル・ファミリーよりもショー・ビジネスに関わる”平民”の方が稼ぎが多いことも指摘されていたのだった。


さて、今週アメリカのメディアで最も物議を醸していたのは左を始めとする 一連の空港での セキュリティ・チェックの様子を撮影した写真。
アメリカの空港では、爆発物となる薬物を下着の中に隠して 機内に持ち込み、旅客機を爆破しようとしたテロ未遂事件を受けて、 2010年中だけで アメリカの50の空港に 450台ものフルボディ・スキャナーの導入を進めてきたのだった。 でも頻繁に飛行機による移動をする人々の中には スキャナーの放射線を嫌うケースも多く、 実際のところフルボディ・スキャナーは ボランティア、すなわち義務ではなく 自主的に行なうものとされていて、 これを拒む権利が乗客には与えられているのだった。

フルボディ・スキャナーを拒んだ場合、搭乗のためには 空港のセキュリティ担当者によるパットダウン(触手によるボディ・サーチ)を受けなければならないけれど、 昨今はパットダウンに ボディ・スキャナー同様の精密さが要求されているせいか、その所要時間は なんと3分〜5分と 非常に長いもの。 その間、男性乗客には男性のセキュリティが、女性乗客には女性のセキュリティが ゴム手袋をした手で ボディをくまなく触ることになるけれど、どうしても念入りにチェックされることになるのが女性の胸や男性の股間など、 武器を隠し易いと思しき場所。
しかもそのボディ・サーチは触るというより、手で握り締められる、もしくは掴まれるといった、 痴漢にあうような感触なのだそうで、 これを不快に感じた乗客から苦情が数多く寄せられているのは、昨今 メディアでたびたび報じられているのだった。

でも、その様子をありありと人々に見せつける結果となったのが、今週メディアやインターネット上で 大きく取り上げられた左上を始めとする写真。 飛行機に乗る前というより、刑務所に入る前のような ボディ・サーチの様子を見て 「安全のためには、多少の念入りなパットダウンはやむを得ない」と考えていた人々も その考えを改めたとさえ言われているのだった。
中には こうした厳しいボディ・サーチが訴訟に発展したケースも出ており、テキサスのコーパス・クリスティ国際空港では、 パットダウンをしているセキュリティによって女性のブラウスが引きずり落ろされて、 公衆の面前で女性の胸が露出する結果となり、当然のことながら女性側はその屈辱的な体験を不服として 裁判を起こしているのだった。


「そんな思いをするのなら、フルボディ・スキャナーを受ければ良い」というのが普通の考えであるけれど、 フルボディ・スキャナーを拒む人々にはそれなりの理由があるのも また事実なのである。
その理由の1つ目は健康上のリスク。 フルボディ・スキャナーのミリメーター・ウェイブの放射線は 一般的に X線、紫外線とは異なり、 発がん性は無いとされているものの、低い周波数のマイクロウェーブを浴びることは ガンの危険を高めると同時に 腫瘍の進行を早めることが レポートされているという。
もちろんアメリカの航空管理局では、スキャナーの導入に際して安全のガイドラインを設けて それに従っているけれど、 そのガイドラインを設定したアメリカン・ナショナル・スタンダード・インスティテュートは スキャナのメーカーとスキャナー導入を進めてきた政府のエージェンシーによって構成されている機関。 したがって、ガイドラインを信用して 「スキャナーが安全」とは言い難い状況になっているのだった。
加えて医学の専門家からもスキャナーの放射線による発がん性の危険が警告されており、 子供、青少年に関してはスキャナーによる放射線を浴びた場合のリサーチがきちんとなされていないことも指摘されているのだった。


さらに乗客がフルボディ・スキャナーを嫌うもう1つの理由はプライバシーの侵害を恐れてのこと。
フルボディ・スキャナーによって捉えられたイメージは、別室に居る職員によってチェックされ 本人とスキャンされた裸体のイメージが結びつかないようになっていること、 スキャナーにはイメージを保存する機能が無いことを謳って、プライバシーが侵害されることはないと強調しているのが航空管理局側。
しかしながら、フルボディ・スキャナーを ストリップ・サーチだとして、 プライバシー侵害の訴訟が既に起こされている一方で、 連邦保安局がフロリダ州オーランドの裁判所に設置されたフルボディ・スキャナーから得られた ヌード・イメージを 3万5000人分も保存していたことが CNETニュースによって報じられているのだった。 なので 当然オンライン管理されることになる こうしたイメージの流出を危惧する声は少なくないという。

また、スキャナー導入時の報道では フルボディ・スキャンによって捉えられる画像は、身体のラインが脂肪の付き方から、 性器の形までくっきり分かる レントゲン写真のようなシャドウ・イメージと言われてきたけれど、 実際に捉えられるのは以下のようなイメージ。


左側が実際の画面に映るものであるけれど、このイメージは簡単にインバートされて右のような露骨なヌード写真に早変わりするもの。
したがって、空港職員のバックグラウンド・チェックが甘いアメリカでは、職員が女性や幼児に対する性的虐待者であった場合や、 将来的に空港のセキュリティが性的虐待者の憧れの職業となることを懸念する声までもが聞かれているのだった。

メディアの中にも、スキャナーの導入に反対するだけでなく、その排除を訴える意見は多く、 今日、11月20日付けのニューヨーク・ポスト紙は、フルボディ・スキャナーの導入を進めてきた元ホームランド・セキュリティ長官、 マイケル・シェルトフ氏が 今はスキャナーのコントラクター、ラピスキャン社のロビーストとして大金を支払われて活動していることを報じ、 1台のスキャナーを空港に設置するたびに 同社が$173ミリオン (約144億円)の支払いを受けていることを明らかにしているのだった。

正直なところ、私も以前はレントゲンのようなシャドウ・イメージがスキャナーで捉えられると思っていたので、 他人に身体を触られるよりは 別室でモニターしている 2度と会うことが無い人物に 裸体イメージを見られた方がマシだと思ってきたけれど、 それがここまで鮮明な写真で、将来的にネット上に流出するかも知れない上に、発ガンの危険が高まると言われたら、 「多少不愉快でも パットダウンを選ぶかもしれない」 と考え始めてしまったのだった。
その一方で、ドル安を受けてアメリカ旅行を計画しようとしていたヨーロッパやアジアの人々が こうした空港での不必要に厳しいセキュリティや 入国、出国手続きの大行列を嫌って、アメリカ旅行を控える傾向が出てきていることが伝えられているのも事実。
なのでテロへの過剰反応は、ロビーストやスキャナーのメーカーを大儲けさせることはあっても、 決してアメリカの国益には繋がらないように見受けられるのだった。


Catch of the Week No. 2 Nov. : 11月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Nov. : 11月 第 1 週


Catch of the Week No. 5 Oct. : 10月 第 5 週


Catch of the Week No. 4 Oct. : 10月 第 4 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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