Nov. 14 〜 Nov. 20 2017

”Victim Shaming by Women”
何故女性はセクハラや性的虐待の被害者女性を責めるのか?


今週のアメリカでも、引き続き各界のセレブリティのセクハラや性的虐待が新たに浮上したけれど、 その中に名前が挙がっていたのが、シルヴェスター・スタローンや、アメリカン・アイドルのホストで知られるライアン・シークレスト、NFLクォーターバックのジェイミー・ウィンストン、 アマゾン・ドット・コムがプロデュースするドラマ「トランスペアレント」の主演、ジェフリー・タンバーといった顔ぶれ。 ジェフリー・タンバーについては容疑を否定しながらも、2人目の告発者が現れたのを受けて、今日、11月19日、日曜にシリーズ降板を発表しているのだった。
また今週はセクハラや性的虐待の告発が 政界をも揺るがせた週でもあったけれど、 米国議会は多数の女性スタッフやインターンが働いているにも関わらず、セクハラの告発がほぼ不可能と言われる悪名高い職場。 セクハラの被害を訴えようとしても、容疑者ではなく、告発者に対してカウンセリングが行われ、クーリング期間が儲けられるなど、複雑でストレスフルな何工程ものプロセスを経てからでないと セクハラや性的虐待が告発出来ないようになっているアメリカ唯一の職場。
そのことからも想像がつくように、 これまでセクハラ&性的虐待行為が横行&野放し状態であったと言われるのが米国議会で 今週は女性議員の1人が、現職の民主、共和の2人の議員によって性的虐待行為を受けたことを証言。告発システムの改善を求めていた一方で、 週の半ばには 民主党の上院議員のアル・フランケンに対して、ラジオ・パーソナリティ兼モデルが、 彼が議員になる前のコメディアン時代に身体を触られ、リハーサルと称して無理矢理キスされたという被害を告発。 その様子を撮影した写真が公開されたこともあり、アル・フランケンは謝罪し、女性側もその謝罪を受け入れるコメントをしているのだった。




それと同時に、今週物議を醸したのが チーム・ドクターから受けた性的虐待と、それを揉み消そうとした米国女子体操連盟からのプレッシャーや嫌がらせについて メディアで証言したオリンピックのゴールド・メダリスト、アリー・ライズマンに対してソーシャル・メディアを通じて寄せられた ”Victim Shaming / ヴィクティム・シェイミング”。 ヴィクティム・シェイミング、もしくは”Victim Blaming / ヴィクティム・ブレイミング”とは、 レイプを含む性的虐待行為を告発した犠牲者に対して、本人にもその責任があると責めること。
アリー・ライズマンの場合、ESPNのボディ・イッシューでヌード写真を公開したり、レッド・カーペット上で シースルーのドレスを着用した事などを指摘しながら、ヴィクティム・シェイミングのコメントやツイートをする人々が居たことから、 それに嫌気が差したアリー・ライズマンが「セクシーな写真を撮影したり、セクシーな服を着たからといって、 それが性的虐待を本人のせいだと責める根拠や、その告発を信用しない根拠にはなり得ない。 ましてや女性がセクシーな服装をしていることが 性的虐待を許可するものでもない。」という声明をツイッターを通じて発表したのだった。

それに対して、「そうは言っても、肌の露出を控えめにした きちんとした服装をするのは女性の責任。挑発的でセクシーな服装をすれば、 勘違いを招くもの」という、典型的なヴィクティム・シェイミングのツイートを行ったのが、 事もあろうにアリー・ライズマンのロンドン&リオ・オリンピックのチームメートであった ガビー・ダグラス(写真上、右から2番目)。
彼女のツイートに対しては、アリー・ライズマンを含む多くの女性達が猛反発しただけでなく、 同じくリオ・オリンピックのチームメイトであったシモーヌ・バイルスも 「これを見てチームメイトとして涙が出てくる思い」とガビー・ダグラスを批判。 アリー・ライズマンと、セクハラを告発した他の犠牲者に対するサポートを表明していたのだった。

このガビー・ダグラスのコメントは、奇しくもハーヴィー・ワインスティンのセクハラ問題が浮上した数日後にデザイナーのドナ・キャラン(写真上、一番左)が語った ヴィクティム・シェイミングと殆ど同じ内容。 そのドナ・キャランは、「ハーヴィー・ワインスティンのセクハラ犠牲者達が セクハラを招くような服装をしていることが悪い」とコメントし、彼を擁護したことで猛バッシングを受けており、 既に公に5回も謝罪と言い訳をしているけれど、謝罪をする度にバッシングが酷くなるという悪循環ぶりを見せているのだった。
その一方でパリス・ヒルトン(写真上左から2番目)は、2016年の選挙戦の最中にドナルド・トランプに対してセクハラや性的虐待の被害を告発した女性達につい て 「単にメディアの関心が引きたかっただけでしょ」と語っていたことが明らかになり、慌てて「そう語ったのは選挙戦中にトランプ候補を支持していた時で、 こんな酷い大統領だと思っていなかった時の話」と釈明しているのだった。

でもアメリカにおける 女性によるヴィクティム・シェイミングにおいて最悪の例と言えるのは、何といってもハーヴィー・ワインスティンのアドバイザーを務めていた女性弁護士、 リサ・ブルーム(写真上、一番右)。彼女は長年に渡ってハーヴィー・ワインスティンがセクハラで訴えられそうになる度に、 被害者女性の男性遍歴やドラッグ使用など、告発の信ぴょう性が失われるネタを集めては、被害者に圧力を掛けたり、示談に追い込むなど、 ワインスティンのセクハラを陰で支えてきた人物。それでいて、ドナルド・トランプを告発した女性の弁護を引き受けるなど 虐待を受けた女性弁護のスペシャリストとして知られてきた存在で、 そんな女性の弱みを知り尽くした立場で、ハーヴィー・ワインスティンを擁護して来たと言われるのだった。




アメリカでは現在「#MeToo(ハッシュタグ・ミートゥー)」のムーブメントのお陰で、 過去にセクハラや性的虐待を受けた女性達が次々と名乗り出てきているのは周知の状況。 そんな時代背景のお陰で、これまでのように女性が被害を告発しても 社会から叩かれる事も無く、その言い分が認められているのが現在であるけれど、 それでも何故 ドナ・キャランやガビー・ダグラスのように、女性に対するヴィクティム・シェイミングをする女性が 後を断たないのかと言えば、その心理の背景にあるのは以下のようなもの。

アメリカ社会において、こうした女性達が セクハラから性的虐待、時にレイプ犯までもをサポートする際に用いてきたセリフに 「Boys will be boys」すなわち、「男性は何時までも子供だから」といものがあるけれど、 このセリフを言う女性ほど 男性に甘く、女性に厳しいのは容易に想像がつくところ。 さらにこのタイプの女性が恐ろしいのは、一度男性側に肩入れすると決めると 性的虐待の被害者が自分の妹であろうと、娘であろうと、徹底的に女性には味方しないということで、 虐待の隠蔽や手助けを正義感や使命感を持って行う女性も少なく無いのだった。




さて現在、全米の注目を集めているのが12月8日に控えているアラバマ州の臨時上院議員選挙の行方。
アラバマ州と言えば、キリスト教保守派が多く、伝統的に共和党候補者が勝利を収めると決まっている州であるけれど、 その共和党候補として擁立されたのが元裁判官で、現在9人の女性に性的虐待の被害で告発されているロイ・ムーア(70歳、写真上左)。 彼を告発した女性達の多くは、ティーンエイジャーの時に彼に交際を迫られたり、車の中で襲われるなどの被害を訴えおてり、 週末には引退した警察官が、「ロイ・ムーアが若い女性を好むのは地元ではよく知られた話」とまで証言しているのだった。
これを受けて、共和党議員の大半が彼に対して出馬断念を呼びかける一方で、 地元の新聞社も彼に対する不支持を表明しているけれど、 アラバマ州において根強い支持を獲得しているのがロイ・ムーア。

中でも盲目的な支持を表明しているのが、ロイ・ムーアの妻(写真上右)と共に彼を擁護する女性支持者たちで、 「フェイク・メディアが報じるウソの報道は信じない」として、性的虐待容疑が 「政治意図に基づいたでっちあげ」と決めつけるだけでなく 「ロイ・ムーアは敬虔なクリスチャンだから、そんな事はするはずがない」と、 まるでカソリック教会で何十年も前から起こってきたセックス・スキャンダルをもフェイク・ニュース扱いするような発言で彼をかばっている状況。
それだけならば理解の範囲内であるけれど、 彼の女性達支持者の多くが語っているのが ロイ・ムーアがティーンエイジャーに対して性的虐待を行っていた80年代には、 「40代の既婚男性がティーンエイジャーに言い寄ったり、デートをするのはノーマルなことだった」というとんでもない言い分。 ロイ・ムーアが敬虔なクリスチャンを装って実はティーンエイジ・ガールが大好きだというのは 個人の性癖なので仕方ないとしても、 物事の分別がつくはずの中年女性達が それを「普通のこと」で片づけようとしている様子は、同じ共和党支持者からも「理解できない」と言われる姿。
ロイ・ムーアがそこまで女性の地位やプライドを落としてまでサポートする価値がある候補者とは見なされないだけに、 支持者の女性達が盲目的を通り過ぎて、意地になってサポートしているようにさえ見受けられるのが現在のアラバマの選挙戦。

2017年は、これまで社会が野放しにしてきたセクハラやレイプを含む性的虐待に ようやくジャッジメントが下され始めた年になろうとしているけれど、 この選挙の行方によっては アメリカにおける 2017年の意味合いが大きく変わる可能性があるのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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