Nov. 17 〜 Nov. 23 2008




” バーゲン、ギフト & ボーナス ”


とにかく寒かったのが今週のニューヨーク。
夜は零下になる日もあったので、私も早速 毛皮を引っ張り出して 着ることになってしまったけれど、 こうまで寒い上に、経済の悪いニュースが続いているせいでニューヨーカーは お財布の中も寒いようで、 金曜にダウンタウンに友人達とドリンクに出掛けたところ、 通り掛かるバーというバーで、何時に無く客足が少なめだったのには少々ビックリしてしまったのだった。
その逆に、昨今 多くの人々が殺到しているのがサンプル・セール会場や、早くもビッグ・セールを始めたデパート。 今年はサンクス・ギヴィングを待たずして40%〜50%のセールが行われており、 2年ほど前までの、サンクス・ギヴィングが過ぎてから25〜30%引きをスタートさせるようなチマチマしたセールとは大違い。
今シーズンは 日頃 サンプル・セールをオープンに行わないような、ブルガリやグッチの時計部門などが、 こぞって大々的なサンプル・セールを行っており、特にグッチの時計のセールは何百メートルもの行列が出来ていたとのことだった。 なので こういうご時世だと、人々は食べたり 飲んだりして無くなるものよりも、形として残るものにお金を使いたがるようである。

バーゲン・ハンターの私としては、商品がたっぷり残っている今からセールがスタートするのは、本来なら ”血沸き肉踊る” 状況であるけれど、 ふと考えると、夏のサンダルをしまう場所もないほどに満タン状態なのが私のクローゼット。 しかも今朝 調べてみたら、私のクローゼットには未だ1度も履いていない靴が16足、一度しか履いていない靴が13足もあって、 中には持っているのを忘れていたシューズもあるほど。なのでセールに行くより、要らないシューズを売りに行く方が先決と 思ってしまったのだった。
幸い、リセール・ショップのビジネスはファイナンシャル・クライシスに突入してからというもの、 非常に好調とのことで、再販価格はそれを受けて以前より高くなっているほど。 でも新品を売るデパートやブティックが、今年は物凄い勢いでディスカウントをするのが見込まれるから、 この状況も長く続かないだろうというのが私の見方で、未だ再販価格が高いうちに 履かないシューズを売りに出してしまおうと思ったのだった。

さて、話は戻って金曜に友人3人とドリンクをしていた際、そのうちの1人の20代嬢のブラックベリーにメールが届いて、 「友達が今日レイオフされちゃったみたい」 と言うので、私を含む残り3人は 一斉に同情を顔に表してしてしまったのだった。
でも 「何処に勤めていたの?」 と尋ねたところ、20代嬢が意味有り気な視線と共に 「シティバンク・・・」 と答えたので、 今度は皆が一斉に 「だったら仕方ない・・・」 とでも言いたげな 「Ahhhhh....」 というリアクションに 変わってしまったのだった。
ウォールストリートでも、今週はシティ・バンクをタイタニックに例えたジョークなどが飛び交っていたようだけれど、 それほどまでに今週、株価が大暴落して ”存亡の危機” 状態に陥っていたのがシティグループである。 先週このコーナーで、シティグループが3万5千人のレイオフを計画しているニュースをお伝えしたけれど、 その数字は週明けには5万2000人に訂正されていたような状態。
ではどうしてシティグループの経営がこんなに悪化したかと言えば、ニューヨーク・タイムズ紙を始め、一部のメディアは 同社が10月に サブプライムの影響を受けて急激に経営が悪化した 金融機関、ワコヴィアの買収を試みて、これが失敗に終わったのが転落のターニング・ポイントだったと指摘している。
実際リーマン・ブラザースが破綻し、メリル・リンチが買収された9月半ばの時点では、J.P.モーガン・チェイス、バンク・オブ・アメリカと並んで、 シティバンクは比較的健全な経営をしていると見なされていたのである。
でもシティ・グループのCEO、ヴィクラム・パンディットとを始めとする経営陣が、 あまりに状況の深刻さを把握しない姿勢を取り続けている間に 合併しようにも相手が居ない、クレジット・カード部門や スミス・バー二ーなどの傘下部門を売りに出そうとしても買い手が居ない状況になってしまい、 投資家の信頼をすっかり失ってしまったシティグループの株価は、今週だけで60%もダウン。 金曜の時点で$3.71(約356円)にまで落ち込んでしまったのだった。

これによって10月半ばにはTARP / タープ(Troubled Assets Relief Program / トラブルド・アセッツ・リリーフ・プログラム)の $700ビリオンのベイルアウト・マネーの中から$25ビリオン(約2兆4000億円)を受け取ったはずのシティバンクの総資産は今や 約$20ビリオン。 2006年には世界最大の銀行として$250ビリオン(約24兆円)の資産を誇ったシティバンクであるけれど、 既にシティグループの株価がゼロになることさえ予測される事態になってしまったのである。
この状況を受けて、シティ・バンクは今日11月23日、日曜日付けの一部の新聞に、投資家やシティバンクに口座を持つ人々に対して  その経営の安定とセキュリティをアピールするための全面広告を掲載しているけれど、 そのシティバンクが昨今使っている広告のキャッチ・フレーズが 「City Never Sleeps」というもの。 これは、本来は ”眠らない街” ニューヨークのニックネームであるけれど、昨今シティバンクは、これをカンパニー・ロゴに 並べてフィーチャーしているのだった。でもこんな状況でこのキャッチ・フレーズを見ると、 「眠らない」 のではなくて 「先行きが心配で 眠れない」 のでは?と取れてしまうのが実情であったりする。

そうは言っても 世界100カ国で、総額$2トリリオン(約1920兆円)のビジネスを回している シティグループは、ワシントンでは 「破綻させてしまうにはあまりに大きすぎる」 と見なされる存在。
このためこの週末には、シティグループのための新たな救済案が纏められ、株式と引き換えに$20ビリオンが 新たに救済資金として同社に投入されることが既に報じられているのだった。
このシティグループとの交渉で、早くもリーダーシップを発揮したと言われているのが、 週明けにもオバマ政権の財務長官に正式に任命されると報じられたティモシー・F・ガイズナー NY連銀総裁。
先週このコーナーで触れたラリー・サマーズと最後の最後まで財務長官のポストの選考で競ったティム・ガイズナーであるけれど、 最終的な決め手となったのは彼とバラック・オバマ次期大統領との個人的な関係であったと言われ、オバマ氏は 経験に長けたラリー・サマーズより、今年47歳で、自分と年齢が近いガイズナーを選んだ というのがインサイダーの証言である。
新しいリーダーシップを模索していたウォールストリートはこの人選を歓迎して、金曜には株価を400ドル以上アップさせているけれど、 ティム・ガイズナーと言えばベア・スターンズの吸収合併など、現在のファイナンシャル・クライシスを迎えてからの 救済案をヘンリー・ポルソンと共に進めてきた人物。それだけに、「ドラスティックな変化は望めない」と言う冷めた声が 聞かれるのもまた事実なのだった。

その一方で、シティ・グループの経営陣と同じくらい 深刻な状況を全く理解していないような振る舞いで顰蹙を買っていたのが、 $25ビリオン(約2兆4000億円)の救済金をTARPの中から支払うか、否かで世論が分れている自動車会社ビッグ3のCEO達。
今週水曜に下院の公聴会で、証言を求められていた GMのリチャード・ワゴナー、クライスラーのロバート・ナーデリ、フォードのアラン・ムラリーは、 これが事実上、救済資金を獲得するための ”物乞い証言” であるにも関わらず、 それぞれにチャーターしたプライベート・ジェットでワシントン入りし、質問に立った下院議員からの大非難を浴びていたのだった。
もちろん下院議員達は、GMやフォードの車に乗って遥々デトロイトからやって来いと言っている訳ではなく ファーストクラスか、せめて ”ジェット・プーリング” (プライベートの相乗り)で来ようという気持ちにはならなかったのか?と 問い詰めていたけれど、3人のCEO達は 倒産が時間の問題という経営状態でも プライベート・ジェットをギブアップしようという気持ちも無ければ、 各社が保有するプライベート・ジェットを売りに出そうという気持ちも無いことを明らかにしていたのだった。

それだけでなく、3人のCEOからは救済金を受け取ってからの具体的なビジネス・プランも聞かれず、 下院議員からは、「貴方達が過去何年にも渡って行ってきた馬鹿な決断のために自動車業界が台無しになった」 という厳しい非難も飛び出していたのだった。
ビッグ3のCEOには再びビジネス・プランの提示をするチャンスが与えられることになっているけれど、この水曜の証言のせいで それまでベイルアウトに賛成 していた人までが反対に回るほどの顰蹙を買っており、 それと同時に、GEの健康保険はアメリカ企業で最も ヴァイアグラ、レヴィトラ、シアリス といった ED(Erectile Dysfunction / 勃起障害)用の処方箋薬にお金を使っている といった 従業員の贅沢かつ不必要な保険やベネフィットの実態が次々と報道されてきたのが今週。
したがって、今のところはビッグ3がTARPの中から$25ビリオンの救済金を受け取れる可能性はかなり減ってきており、 これを受けて、GEからはチャプター・イレブン(会社更生法)を申請する用意があるというコメントが金曜には聞かれていたのだった。

さて、今年のクリスマスはストアやショッピング・モールに登場するサンタクローズを演じる人々までが、仕事やフィーをカットされているというけれど、 そんなホリデイ・シーズンにアメリカ人がギフトに当てようとしている平均的バジェットは昨年の866ドル(約8万3140円)から28.9%ダウンの 616ドル(約5万9140円)。この数字は過去10年間で最低であるという。
今年もアメリカではギフト・カード(商品券)がギフト・チョイスのナンバー・ワンになっているけれど、 デパートやストア、スパ、ホテル、レストラン等が発行するギフト・カードの今年 見込まれる売り上げは$59.9ビリオン(約5兆7504億円)。 これは2007年の$70ビリオン(約6兆7200億円)からのダウンで、2001年以降 、ギフト・カードの売り上げが下がったのはこれが初めてのこと。
そのギフト・カードを家族や友人に贈ろうという人が 注意しなければならないのが 「経営が安定しているところの ギフト・カードを選ぶ」 ということ。 というのも、ギフト・カードの 発行元であるストアやレストラン、スパ等が倒産してしまった場合、 ギフト・カードの使用が出来なくなってしまうため。
2008年2月には、モダンなエレクトロニック・ガジェットを販売していたシャーパー・イメージが倒産に追い込まれているけれど、 2007年のクリスマスに同社のギフト・カードを贈られた人々が無駄にした総額は何と$60ミリオン(約57億6000万円)。
中には先ごろ会社更生法を申請したばかりの 家電のサーキット・シティのように、事実上の倒産後でも ギフト・カードが使用出来るケースもあるけれど、同社も経営が立ち直らなければチャプター・セブン、 すなわち清算型倒産となるので グズグズしていたらギフト・カードを使い損ねてしまうかも知れないのである。

ところでクリスマスといえば家族や友人だけでなく、自分のためにギフトを買うケースが多いものだけれど、 その資金の出所となるのが 通常はボーナス。
今週月曜には、ゴールドマン・サックスの7人のトップ・エグゼクティブが今年のボーナスの受け取りを 辞退することが報じられたけれど、ゴールドマンのCEOであるロイド・ブランクフェンが2007年に受け取ったボーナスは ウォールストリートの記録を樹立した$68.5ミリオン(約65億7600万円)。 彼以外にも2人のプレジデントが$67.5ミリオン(約64億8000万円)という巨額のボーナスを受け取ったことが 伝えられているのだった。
また過去2年間のゴールドマンでは、パートナー・クラスにも 約$40ミリオン(約38億4000万円)のボーナスが支払われていたけれど、 そのパートナーやトレーダーには 金額が減ったとしても 今年もボーナスが支給されるとのこと。
でも以前からこのコーナーで説明している通り、ボーナスはキャッシュと株式で支払われるのが通常で、 そのゴールドマン・サックスの株価は 昨年の234ドル(約2万2464円)から、今週金曜には$53.39ドル(約5125円)にまで下落。 このため、ゴールドマンのトレーダーやブローカーらは、今年のボーナスが減ることもさることながら、 昨年、一昨年に株式で受け取った分のボーナスの金額が既に4分の1になっているという事実にもナーバスになっているとのことだった。

最後に、毎年行われているハリス・ポールの世論調査によれば、「貧富の差が開き続けている」と答えた成人アメリカ人は71%、 「政府は一般国民のことなど考えていない」と答えたのは62%。 「権力のある人間は一般国民を利用している」と答えたのが59%。「一般国民の意思など政治に反映されることはない」と 答えた人々が57%に達しているという。
オバマ選出で、その直後は楽観的なムードが漂ったアメリカであるけれど、こうした政府に対する国民のネガティブな感情は 政府が変わったくらいでは覆されないもの。また国民の半分が反対している 自動車業界に対するベイルアウトは、 オバマ次期大統領、及び民主党がサポートすると同時に、プッシュしてきたものである。
更にオバマ氏は選挙の遊説中から、 「日本車に対するデトロイトのビッグ3の競争力を強化する」ことを政策の一部に掲げ、 事実上、日本車に対する敵対意識を見せている訳であるから、 果たしてオバマ政権がアメリカ国民や日本人が歓迎するようなものになるのか?は 蓋を開けてみないと分からない という印象なのである。





Catch of the Week No. 3 Nov. : 11 月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Nov. : 11 月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Nov. : 11 月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 Oct. : 10 月 第 4 週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。