Nov. 22 〜 Nov. 28 2010




” Opposite Attraction ”


今週は 木曜がアメリカ最大のホリデイ、サンクス・ギヴィング・デイだったこともあり、 取り立てて大きなニュースがないまま過ぎていたアメリカ。
でも週末になって報じられたのは、まず オレゴン州で行なわれたクリスマス・ツリーのライティング・セレモニーで、 爆弾テロをもくろんでいたソマリ出身のティーンエイジャー、モハメッド・オスマン・モハムッドが逮捕された事件。 そして日曜の夜には、"WikiLeaks / ウィキリークス" というウェブサイトで、アメリカの外交機密書類が何十万ページにも渡って 公開され、ブッシュ政権下のライス国務長官、及びクリントン現国務長官が 他国の外交官のDNAなどを含む個人情報収拾を 指示していたこと、アメリカの高官が諸外国の政治家を裏ではこき下ろしていたという事実、 サウジアラビアの国王がアメリカのイラク侵攻を後押ししていた様子など、 国家機密が大量に流出。クリントン国務長官は、これを受けて週末を返上してのダメージ・コントロールをしていることが伝えられているのだった。
それと同時に、国際情勢のキナ臭いニュースとしては、北朝鮮による韓国砲撃事件が大きく報じられていたけれど、 アメリカのメディアは、これが第三次世界大戦になることは どの国にとっても不利益であると同時に、どの国も望んでいないとして これが戦争に発展する可能性は薄いと見ているのだった。

その一方で、ニューヨークのスポーツ・ファンの間で 今週話題となっていたのが 今やフリー・エージェントとなった デレク・ジーターとヤンキーズの契約問題のこじれ。
来年8月で37歳を迎えるデレク・ジーターは、今シーズン、彼のキャリアで最低となる2割7分の打率を記録しており、 プレーヤーとしてのピークを超えた印象が否めない状況。 これを危惧している とコメントするヤンキーズ側は、彼に対して向こう3年、年間$15ミリオン(約12億6000万円)、合計$45ミリオン(約37億8000万円)で 契約をオファーしたけれど、ジーター側が提示したのは、4年で$92ミリオン(約77億2600万円)、5年で$115ミリオン(約96億5700万円)という 脂が乗ったトップ・プレーヤーの報酬。
デレク・ジーターと言えば、今シーズンまでヤンキーズのキャプテンを務め、ルーキー・イヤーである1996年以来、ヤンキーズを象徴するプレーヤーであっただけに、 ジーター側は 単なるプレーヤーとしての能力だけでなく、彼がチームやファンにもたらす影響力を前面に押し出して、 出来るだけ長い契約を高額で取り付けようという意図であるのは言うまでも無いこと。 でもヤンキーズのジェネラル・マネージャー、ブライアン・キャッシュマンは、今のところジーター側に提示した$45ミリオンのオファーを 譲る気配は無く、「これ以上の金額を出すところがあるか、他のチームを当たってみるべきだ」と突き放すコメントをしているのだった。

これに対してジーター側としては、彼の人気やこれまでの功績から、当然ヤンキー・ファンが彼の味方となって、 契約を有利な方向にプッシュしてくれると見込んでいたようであるけれど、 ファンの多くは ヤンキーズの$45ミリオンのオファーは 「フェアな金額以上」というリアクションで、「ジーターは貪欲すぎる」との批判を浴びる結果になっている。
実際、ニューヨーク・ポスト紙が行なった調査によれば、契約問題のこじれが「ヤンキーズのせい」と答えた人々は27.82%であったのに対して、 「ジーターのせい」と答えた人々は72.18%にも上っていたという。
メディアやファンは、これまでヤンキーズをしょって立って来たデレク・ジーターが他のチームでプレーするとは考えられないとして、 いずれはお互いが歩み寄るだろうと見ているけれど、実際 彼が他のチームに移籍した場合、 これまでニューヨークで最も敬愛されてきたプレーヤーが、一夜にして嫌悪の標的になるのはアメリカのスポーツ・ファンなら誰でも理解するところ。
加えて、ジーターはこれまでキャプテンとして、契約で揉めているプレーヤーに対して 「ヤンキーズの一員としてプレーする プライドとその意義」を説いて、プレーヤーを引き止めてきた存在。それだけに 自分の番になったらそんな事には考えが及ばないというのは あまりに無責任に感じられるのだった。
なので、ヤンキー・ファンの私としても 早く契約が成立することを望むばかりであるけれど、結果がどうあれ、この契約のこじれで ジーターという選手に対する好感度が若干薄れたのは紛れも無い事実なのだった。


さて、サンクス・ギヴィングが過ぎると アメリカはすっかりホリデイ・シーズン。
サンクス・ギヴィングの翌日であり、ホリデー商戦の皮切り日となるブラック・フライデーには大勢のショッパーがストアに押し寄せ、 昨年の同時期よりも売り上げが約6%アップしたことが伝えられているのだった。
それと同時にアメリカは徐々にパーティー・シーズンに突入するけれど、クリスマスやニュー・イヤーに 帰郷しないシングル族、それも交際相手が居ない ”シングル・シングル”とカテゴライズされる人々の間では、 パーティー・シーズンを面倒に思う傾向が強いと言われているのだった。
もちろん既婚男性の多くも パーティー・シーズンを嫌っていると言われるけれど、シングル・シングルが パーティーを嫌う主な理由は、無理やり同伴者を連れてパーティーに出席しなければならなかったり、 カップルだらけのパーティーにソロで登場しなければならないため。
過去数年はコーポレート・パーティーも リセッションを受けてダウンサイズ気味で、同伴者を連れて出席するような 派手なパーティーが少なかったけれど、今年は金融業界を中心に景気のカムバックをアピールする コーポレート・パーティーや 個人レベルのパーティーが見込まれており、 ホリデイ・シーズンまでに パーティーに同伴できるデート相手を探そうとしているシングル・シングルが 私の周囲に3人ほど居たのだった。

そのうちの1人の男性に最後に会ったのは 10月末の友人宅でのディナーでのこと。
この時の彼は、インターネットを通じて出逢った女性とファースト・デートをしたばかりで、 彼女と 共通点が沢山あって、バックグラウンドが似ていて、「あんなに話が弾んだデートは初めて!」と興奮気味に語っていたのだった。 そして 過去数年、友人宅のサンクス・ギヴィング・ディナーにソロで登場していた彼は、 今年こそは、サンクス・ギヴィングを一緒に過ごすほどまでには仲が発展しなくても、 少なくとも デート相手が居る状態の ソロのサンクス・ギヴィングになるはず と意気込んでいたのだった。
でも この時、私が後でこっそり 友人に予測していたのは、彼とデート相手の仲が長く続かないであろうということ。 案の定、サンクス・ギヴィングの翌日に友人が話してくれたのが、彼と彼女の関係が その後3回のデートですっかり冷めてしまい、 彼は今年のホリデイ・シーズンもシングル・シングルの状態で過ごすことになるだろうと話していたというのだった。

私が彼とデート相手の仲が続かないと思ったのは、彼が「共通点が沢山あって、バックグラウンドが似ている」ので話が合うと 語っていたため。
私の知人男性と彼のデート相手は お互いアイヴィー・リーグの大学の出身で、5人兄弟の3番目。 2人ともブルックリンに住んでいて、職場は共にミッドタウン。 エクササイズはスピニングに凝っていて、お互いヨガを始めようとしているところ。 メキシカン・フードとイタリアン・フードが好きで、自炊する場合はもっぱらサラダとパスタ。 親の代から野球はヤンキーズ・ファンで、フットボールはジェッツ・ファン、 というような比較的 他愛の無い共通点で盛り上がっていた様子を10月末のディナーの際に話していたけれど、 こうした情報交換は、ひとたび終わってしまうと そこから先へ進む要素の無い会話。
どちらかが話し上手でない限りは、お互いを良く知った時点で 話すことが無くなってしまうもので、 私が知る限り 男性側は会話力に長けているとは言い難い存在。
一方の女性側も、さほど話題が豊富ではなかったようで、デートは回を重ねるごとに話題が無くなっていったとのこと。 そして最後となった4度目のデートでは、沈黙が長くなって 天気の話をするような状態だったという。

往々にしてアメリカのブラインド・デート(いわゆる”お見合い”)や、ネット上で知り合った相手とのファースト・デートでは、 お互いのバックグラウンドについて話すものだけれど、その共通点の多さで 最初から意気投合したカップルというのは、 大体3〜4回のデートで話すことが無くなって、その関係が自然消滅するというのは 私がこれまで何度と無く見たり、聞いたりしてきたこと。
逆に長続きするカップルというのは、全く異なるバック・グラウンドや趣味の持ち主にも関わらず、 話が尽きないような関係で、そういうカップルは一緒に暮らし始めたり、結婚した場合でも、 生活の全てを共有することは無く、無理なく 楽しくシェアできる部分だけをシェアして、あとはお互いインディペンデントに 好きなことを楽しんでいるケースが少なくなかったりする。
専門家によれば、人々が正反対のキャラクターに惹かれ、正反対な者同士の方がカップルとして上手く行くケースが多いのは、 異なるDNAを取り入れて自分の種族を強くしようとする本能が人間に 備わっているから とのこと。
私の個人的な考えでは、異なる考えや見解、趣味 を持っている人というのは それが理解の範囲を超えていなければ、 学ぶべきところが沢山ある存在。自分が思いもつかない分析をしたり、アイデアを与えてくれる場合も多い訳で、 そうした新鮮味はカップルの関係を保つ強力な要素になりうると思うのだった。
でも理解の範囲を超えた違いを相手に押し付けてくるような関係の場合は、それが完璧な”ディール・ブレーカー”、 すなわち関係をぶち壊す要素になるのは言うまでも無いこと。

もちろん正反対の者同士が惹かれ合う場合でも、ある程度の共通点が必要だと思うのが私の意見で、 その最も重要なポイントと私が考えるのは ”モラル”と ”食のテイスト”。
相手と善悪のモラルが異なっているというのは、カップル以前に友達として付き合っていくことさえ論外だと思えるのだった。
そして食については、カップルにとって 衣・食・住の中で最もセンシティブな要素となるのは 断然 ”食”。 美味しいと思う基準、不味いと思う基準がズレている場合、相手の味覚だけでなく、頭脳のレベルまで疑いたくなってしまう人は多いもの。
中には片付けや掃除のレベルを問題視する人も居るけれど、私が知る限り これは相手に対して腹を立てる要素にはなっても、 ディール・ブレーカーになるケースは極めて稀なように見受けられるのだった。
逆に正反対のカップルに限らず、ありとあらゆるカップルが上手くやっていく上で、決して共通点であってはならないのは まず競争心。 競争心が強い者同士というのは、様々なレベルでお互いに常に競い合うので、 間違って結婚したとしても、喧嘩ばかりしていたり、離婚したりするもの。
往々にして、世の中では男性の方が競争心が強く、女性が譲るように関係がデザインされているものだけれど、 私が知る非常に勝気な女性は、やはり交際が長続きしないという問題を抱えているのだった。
それに加えて共通点となるべきでないのは、面倒を見られるのが好きな者同士であるということ。 面倒を見るのが好きな者同士というのは 比較的やって行けるものだけれど、 面倒を見られるのが好きな者同士というのは、互いの依頼心が満たされないまま フラストレーションだけが溜まっていく訳で、 誰か他に面倒を見てくれる相手が現れた場合、あっさり そちらになびいてしまうケースが非常に多いように思えるのだった。

”食” について話を戻せば、カップル同士は決してグルメである必要はなく、 私の知るアメリカ人カップルは 夫婦揃ってテイスト・ブラインド、すなわち ”味覚音痴” で、 夫は毎晩のように妻が作るアンチ・グルメ・フードに舌鼓を打って、楽しく暮らしているのだった。
2人のテイスト・ブラインドぶりは有名らしく、このカップルがホストするディナーには遅れてくるゲストが少なくないのが通例。 ある時、ワイフがポット・ローストを丸焦げにしてしまった際は、ゲストがこぞってデリバリー・フードが食べられるのを 喜んだと言われているけれど、届いたデリバリー・フードまでもが不味くて、 このカップルが紛れも無いテイスト・ブラインドだということを ゲストが悟ったというエピソードもあるほど。
でもこのカップルのディナー・ゲスト同士が、あまりに不味かった食事の話で盛り上がって、 交際を始めたという話もあって、 カップルが共に テイスト・ブラインドな場合、お互いが上手くやっていけるだけでなく、 世の中のためになるケースもあることが立証されているのだった。


Catch of the Week No. 3 Nov. : 11月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Nov. : 11月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Nov. : 11月 第 1 週


Catch of the Week No. 5 Oct. : 10月 第 5 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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