Nov. 19 〜 Nov. 25, 2012

” Not So Happy Thanks Giving ”

今週は木曜が、アメリカで最大のホリデーであるサンクスギヴィングであったため、前日の水曜から週末まで ホリデー・モードになっていたアメリカ。
サンクスギヴィングは宗教に関係なく、家族や友人が集まってターキー・ディナーを楽しむホリデーであるけれど、 サンクスギヴィングにアメリカで販売されるターキーの平均的なサイズは 16パウンド(7キロ 257グラム、写真上のサイズ)。 これがアメリカでは8〜10人分と考えられているサイズで、アメリカ全体で サンクスギヴィング・デー1日に消費される ターキーは7億3600パウンド(33万38000トン)と言われているのだった。
もちろん、一般的なアメリカ家庭がこの日に食べるのは ターキーだけでなく、 コーンブレッドやソーセージを使ったスタッフィング、キャセロールなど定番的なサンクスギヴィング・ディッシュに、 パンプキン・パイ、ピーカン・パイ、アップル・パイといったデザートが加わるので、 この日にアメリカ人が摂取するカロリーのナショナル・アヴェレージは、何と4500カロリー。 サンクスギヴィング・ディナーだけの平均カロリーは3000カロリーで、その脂肪分は229グラムと言われているのだった。
ちなみに4500カロリーを燃やすには、ランニングだったら6〜8時間、サイクリングであれば9〜11時間、さもなくば 腕立て伏せを 3000回以上しなければならないのだった。

でも今年に関しては、サンクスギヴィング当日から 大手のストアがオープンして、 通常ならサンクスギヴィング・デーの翌日、金曜からスタートするホリデイ商戦を繰り上げたことから、 サンクスギヴィングのディナーを食べた後のエクササイズ代わりに、 ショッピングに出かけた人々が非常に多かったことが伝えられているのだった。
例年、サンクスギヴィング・デー翌日の金曜は、”ブラック・フライデー” と呼ばれて、一年中で小売店の売り上げが最も高いといわれる日。 英語のブラックは、日本語で言う ”黒字” と同じで 利益を意味するので、この日がブラック・フライデーと呼ばれるのは理にかなったネーミング。
これまでは、大衆ディスカウント・ストアや、メーシーズのような大衆デパートを中心に、金曜の午前零時、もしくは 朝の5時〜7時という早朝からストアがオープンするのがブラック・フライデーであったけれど、 今年は、ウォルマートやシアーズ、ターゲットといったストアが、サンクスギヴィング・デーの午後8時、9時からホリデー・セールを開始。 それぞれのストアが、開店直後の目玉セール品を打ち出して 買い物客獲得に務めており、 その結果、今年生まれた新語が ”グレー・サースデー”。 これは、”ブラック・ブライデー”に突入する前の木曜から 徐々にセールがスタートする という意味でつけられたネーミングなのだった。



写真上は、ブラック・フライデーの午前零時にオープンしたマンハッタンのメーシーズの様子であるけれど、 同店の 真夜中からスタートするセールに訪れた買い物客は1万1000人。 報道によれば、夜からスタートしたセールに足を運んだのは 若い世代が多く、 その親の世代は、例年通りブラック・ブライデーの早朝からセールに繰り出していたとのこと。
NRF(全米小売業協会)の発表によれば、 オンラインと小売店を合わせて、サンクスギヴィングから週末までの4日間にストア、もしくはオンラインでショッピングを行なったアメリカ人の総数は2億4700万人。 サンクスギヴィングのホリデー当日にショッピングに出かけた人々の数は 3500万人。 翌日のブラック・フライデーにショッピングに出かけた人々の数は8900万人で、この数字は昨年より300万人アップしているのだった。
でもブラック・ブライデー1日の小売店の売り上げは昨年より2%ダウンして112億ドル(約896億円)。 小売店における売り上げが 今ひとつ伸び悩んだ理由の1つは、買い物客がスマート・フォンを使って価格をリサーチし、 ストアのセール価格より安いものをオンラインで見つけると、購入を控えたり、 ストア側に更なるディスカウントを要求していたためで、多くのストアは売り上げを確保するために、利益を削ってその要求に応じていたのが実情。 また一部のストアでは、開店と同時に売り出される目玉商品のために、開店前から人々が行列を作っていたものの、 それが売り切れてしまったために、何も買わずにストアを後にする様子も見られていたとのこと。
したがって、セールの雰囲気に踊らされて 購入に及ぶような状況ではなかったことが窺い知れるけれど、 買い物客1人当たりの平均ショッピング額は 423ドル。これは昨年の399ドルから6%ほどアップ。
そして、サンクスギヴィングから週末の4日間にストアとオンラインが売り上げた総額は、何と591億ドル(約4兆7280億円)になっているのだった。


毎年、ブラック・フライデーのショッピングには 事件やトラブルが付き物であるけれど、今年のブラック・フライデーでも、 列の割り込みや押し合いが原因で、ショッパーの間で口論や 殴り合いの喧嘩が各地で勃発。 警察が出動して 逮捕者が出ていたけれど、 中には 人に押されるのにウンザリした男性がナイフを取り出して、「近寄ったら刺し殺す」と脅す一幕があったかと思えば、 ウエスト・コースとのウォルマートでは、パーキングで口論になったカップル2人を銃で撃って、犯人が逃走するなど、 とてもショッピングとは思えないような状況が展開。
またアリゾナやオハイオでは、家電チェーン、ベスト・バイの目玉セール品を購入するために、人々が1週間前からテントや寝袋でキャンプをしながら行列するなど、 ただならぬバーゲン・ハングリーぶりもレポートされているのだった。

一方、サンクスギヴィング・デーからストアをオープンすることについては、大衆ディスカウント・チェーン、ターゲットの店員が、 家族と過ごすホリデイが台無しになることを理由に、オンライン上で サンクスギヴィングのビジネスを止めるよう署名運動を起こすなど、 物議を醸していたのが実情。 というのも、ストアのスタッフは開店時間よりも早く店に出かけて、セールの準備をしなければならないためで、 午後8時にオープンするストアではスタッフが、2時間前の6時に店に入るのは珍しくない状況。 これに通勤時間を考慮すると、スタッフは午後5時には家族や友人とのサンクスギヴィング・ディナーを打ち切って仕事に出掛けなければならないのだった。



買い物客側にしても、8時にオープンするストアで目玉品を購入しようと思ったら、開店より1〜2時間 早く出かけて 行列するのは当たり前。 このため、今年は ショッピングをするために家族と親戚が集まるサンクスギヴィングのディナーの時間を早めるようにと リクエストする わがままなゲストも少なくなかったようで、そうした身勝手なゲストへの対処法や、 家族とのディナーを抜け出してショッピングに出かける方法などが、ソーシャル・メディア上で話題になっており、 それとは別に、サンクスギヴィングがショッピング・ホリデーになってしまうことを懸念する声も聞かれていたのだった。

ところで、先週のこのコーナーでお伝えしたウォルマート従業員によってブラック・フライデーに計画されていたストライキについては、 全米40州の100店舗で 雇用条件に対するデモと、 一部スタッフによるストライキが実施されたことが報じられているのだった。 でもそのウォルマートは、同社史上最高のブラック・フライデーの売り上げを記録していて、一部のメディアは一般大衆が 低賃金に苦しむウォルマート・スタッフの生活よりも、自分のバーゲンを優先していると非難。
とは言っても、ウォルマートで働いても、失業者同様にフード・スタンプ(政府が貧困層に支給するフードの購入のための金券)を受取らないと 生活していけない様子などが、ここへ来て明るみになってきたことから、「ウォルマートの経営者は従業員の低賃金のしわ寄せを納税者に押し付けている」といった 厳しい指摘も聞かれるようになり、一部の政治家の間でも「そろそろウォルマートを何とかする時期」という声が上がり始めているのも また事実なのだった。


さて、ここ数年で 毎年のようにホリデイ商戦で二桁台の伸びを見せているのが、ショッパーが行列する必要も、 口論や殴り合いに巻き込まれる心配も要らない オンライン・ショッピング。 今年は、ブラック・フライデー1日のオンライン・ショッピングの売り上げが、史上初めて10億ドルを突破したことが伝えられているのだった。
通常、オンライン・ショッピングが年間で最高の売り上げを記録するのは、サンクスギヴィングの週末明けの月曜日で、 この日は”サイバー・マンデー”と呼ばれているもの。 サンクスギヴィングの週末に買いそびれたものや、遠隔地に住む家族や友人へのギフトなど、オンラインでオーダーした方が ラッピングや送付の手間が掛らないものを インターネットで購入するのがサイバー・マンデーと言われてきたけれど、 今年はそれを待たずして、多くのオンライン・ショップがブラック・フライデーからセールを開始。
中でも、サンクスギヴィングの週末に 最もヴィジター数が多かったのは、 世界最大のオンライン・リテーラーであるアマゾン(写真上はその流通センター)。 昨年のサイバー・マンデーには、1秒に200アイテムを販売した アマゾン・ドット・コムでは、今年もその売り上げ記録を更新することが見込まれており、 ホリデイ・シーズン要員として、今年は5000人を雇ったことが報じられているのだった。
その今年のサイバー・マンデーは、1日で15億ドル(約1200億円)の売り上げが見込まれているのだった。



ところで、ハリケーン・サンディで多くの人々が家や財産を失ったニューヨーク・エリアでは、 サンクスギヴィング・デーに 被災した人々のために、2万6500人分のターキー・ディナーが 市内30箇所でサーヴされたのだった。
そのサーヴィングには、多くのニューヨーカーがボランティアとして参加し、 フードの差し入れと共に、衣類や日用品の寄付を持ち寄っていた他、 メーシーズは毎年恒例のサンクスギヴィング・パレードのフロント・ロウに、被災者5000人を送迎バス付きで招待。 ここでは本来のアメリカのホリデーらしい、 心温まる光景が見られていたのだった。

スーパーストーム・サンディがもたらした被害は、まだまだ被災者の人々の生活に大きく影を落としているけれど、 その復旧をスピードアップするために、瓦礫の撤去や清掃作業員を新たに 5000人を、時給15ドルで雇うバジェットが政府から与えられたのは、 失業者にとっては朗報と言えるもの。応募者は作業の経験が無くても、トレーニングの機会が与えられるとのこと。
この仕事は、復旧のための一時的なものではあるけれど、ウォルマートで6年働いたスタッフの時給よりも 遥かに良いものなのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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