Nov. 20 〜 Nov. 26 2017

”True Thanksgiving Spirit”
サンクスギビングのハート・ウォーミング・ストーリー


今週のアメリカは、木曜のサンクスギヴィングデイからロング・ホリデイ・ウィークエンドとなっていたけれど、 この休暇を利用して旅行したアメリカ人の数は5000万人と言われ、これは景気の回復を窺わせる数字。 それと同時に好景気を感じさせたのがサンクスギヴィングデイ翌日の、ホリデイ商戦の初日、ブラック・フライデーの小売りの売り上げ。 中でも昨年から17%アップという好調ぶりを見せたのがオンライン・セールスで、この日1日の売り上げは50億ドル(約5600億円)以上。 このうち半分以上がスマート・フォンやタブレットといったモービル・ディバイスによる売り上げ。 それと同時にオンライン・セールスのほぼ半分がアマゾン・ドットコムによる売り上げと言われているのだった。
月曜にはオンラインの売り上げが年間のピークを記録するサイバー・マンデーを控えているけれど、この日には66億ドル(約7390億円)を売り上げて、 オンライン・セールスの1日売り上げの史上最高記録を更新することが見込まれているのだった。

こんなショッピング・フィーバーのせいで、サンクスギヴィング・デイの本来の意味合いが失われつつある状況が指摘されるアメリカであるけれど、 そもそもこの日は感謝祭と呼ばれるだけあって、伝統的に自分が恵まれたことに感謝する日。 なので、遠方に離れた友人と私の間ではお互いの友情に感謝するメッセージを送り合うのが毎年の習慣になっているけれど、 メディアにおいてもサンクスギヴィング前後は、特に美談やフィールグッド・ニュースにフォーカスする傾向が顕著なのだった。




そんな中、インターネット&ソーシャル・メディア上でヴァイラルになっていたのが、ハイウェイでガス欠で立ち往生していたところを ホームレスの男性に助けられた若い女性が、彼に恩返しのサプライズ・プレゼントをしたというニュース。
ニュージャージー在住の27歳のケイト・マクルアーは フィラデルフィアのハイウェイで車がストップしてしまい、ボーイフレンドに電話をして迎えに来てもらうことにしたものの、 かなりの距離。そんな彼女を救ったのはホームレスのジョニー・ボビット(34歳)で、まず彼はケイトの身の安全を心配して、 「車の扉にロックをして中に居るように」と彼女に伝えて居なくなり、やがてガソリンの容器を持って戻ってきてケイトの車に給油してくれたとのこと。 当時、ケイトは全くキャッシュの持ち合わせがなく、彼に何もしてあげられなかったものの、ジョニー・ボビットは単なる親切心でそうしただけと恩を着せるような態度も取らなかったという。
後にケイトがボーイフレンドと一緒に 彼にお礼に訪れた際に知ったのが、ケイトのガソリン代に使った20ドルが 彼の手持ちの現金の全てであったという事実。 この時、ケイトとボーイフレンドは 彼のために衣類やキャッシュ、生活用品、食料を差し入れたというけれど、 その彼の感謝のリアクションというのが、それらを仲間のホームレスに分けてあげられるので、「皆も喜ぶ」というもの。 聞けばジョニー・ボビットは元海軍で、パラメディックの長時間勤務をこなし、2014年まではごく普通の生活をして、その近況をフェイスブックにアップしており、 家もあればガールフレンドも居たとのこと。そんな彼の最後のフェイスブックのポストは、「自分と周囲に正直になるべき、人生を転換させるのに遅すぎる時期はない」というものであったという。

ところが不運と金銭トラブルに見舞われた彼は、その後ドラッグに手を出した時期もあったとのことで、過去18カ月を 友人も家族も居ないフィラデルフィアでホームレスとして過ごしていたとのこと。しかしながら ジョニー・ボビットはそんな不遇について語りながらも 「全ては自分が招いたことだから仕方ない」と、他人や社会を責めることはなく、「たとえ自分がホームレスであっても、人を助けてあげたい」という彼の気持ちに 動かされたケイトとボーイフレンドは、その後も何度か彼のところに差し入れに出向いたという。 そして彼の仲間のホームレスの分の衣類も友人達からの寄付で集めるなどして、 徐々にジョニー・ボビットと親しくなっていったというけれど、彼のために何かをすればするほど、もっと何かしてあげたいと思うほど ジョニー・ボビットは身勝手さのかけらも無い、非常に謙虚な人物であったとのこと。

そこで2人が思いついたのが クラウド・ファンディングのウェブサイト、「GoFundMe」で ジョニー・ボビットがホームレスから脱するための資金集めをするということ。 特にその考えに熱心だったのがケイトのボーイフレンド(38歳)で、 彼は「不遇な人間にはちょっとしたきっかけが必要」という考えの持ち主。何とかジョニー・ボビットの人生の巻き返しの手伝いをしたいと思ったという。
ケイトとボーイフレンドは集めた金額を 彼のアパートのレント、彼が仕事を見つけるまでの生活費や携帯電話の料金に使えるように 遣り繰りすると公約し、1万ドル(約120万円)をゴールに「GoFundMe」で寄付を募り始めたところ、僅か12日間で集まったのが ゴールの10倍を上回る11万ドル(約1320万円)。 2人も驚くほどのサポートが多くの人々から寄せられたのだった。 その後もメディアがこのニュースを取り上げたことから、更に寄付は膨れ上がり、11月26日現在の時点でその金額は36万ドル(約4300万円)。 メディアからインタビューを受けたジョニー・ボビットは、「自分を救う以上の金額なので、他の同じように困っている人も助けたい」と 日頃からの「助けられる側より、助ける側になりたい」という姿勢をそこでも貫いていたのだった。




同様のストーリーとしてNBCニュースが報じたのが、100万円以上の小切手を道で落として失くしてしまった不動産エージェント、ロベルタ・ホスキーと、 彼女を探し出して小切手を返した男性のストーリー。 盗もうと思えば簡単に小切手を換金できるにも関わらず、彼女を探して当ててまで小切手を返却してくれた男性の良心に感動したロベルタは、 彼を見つけて礼金を支払おうと考え、それを実践した様子をフェイスブック・ライブで放映したという(写真上左)。
自分がした"些細な親切"に対して、わざわざお礼に来てくれたロベルタに対して男性は満面の笑顔であったけれど、 そのフェイスブック・ライブの最中に彼の右側に立っている男性が明かしたのが、彼がホームレスであるという事実。
実はロベルタ自身もティーンエイジャーで出産し、高校を中退した頃にホームレスだった時代があり、僅か475ドルで親子の生計を立てなければならず、 大変な思いをしたという。 でもその彼女を助けてくれた人が居て、そのお陰で現在 彼女は立派に仕事をし、十分な生活が出来るようになったため、 「自分もいつかは誰かに恩返しをしたい」と思って生きてきたという。
そんな彼女が、サンクスギヴィング直前に そのホームレス男性をオフィスに招待して伝えたのが、まず彼が仕事のトレーニングを受けられることになったという朗報。 既にそれに感謝と喜びで一杯であった彼に対して 更に伝えたのが、彼のためにロベルタがハウジングを探してアレンジし、 もう彼がホームレスではなくなったというニュース。 写真上右はそれを伝えた直後の2人の様子で、ニュースを見ていた視聴者からも感謝の声が寄せられるハート・ウォーミング・ストーリーになっていたのだった。




さて昨年のこの時期にソーシャル・メディア上でヴァイラルになったのが、 孫にサンクスギヴィングのディナーの連絡をしようとして、全くの他人にテキスト・メッセージを送ってしまったアリゾナ州のワンダ・デンチと そのメッセージを受け取ったティーンエイジャー、ジャマル・ヒントンのやり取り。  ジャマルの「ボクのおばあちゃんじゃないよ。それでもご馳走してくれる?」という無邪気な問いかけに、 「もちろん、おばあちゃんは誰にでもごはんをご馳走するのよ」と返信したワンダのメッセージは 当時大統領選挙直後で、国が分断し、心が荒むようなニュースが多かったアメリカで、 「皆が愛し合って生きなければいけないことを思い出した」、「サンクスギヴィングの本当の意味合いを学んだ」といった リアクションを呼び起こし、人種もバックグラウンドも年齢も違うストレンジャーを招いたワンダのサンクスギヴィング・ディナーの様子は 全米のメディアで報じられたのだった。
そしてその2度目が実現したのが今年のサンクスギビング。今回ジャマルはガールフレンドを連れてワンダ宅を訪れ、 再び楽しそうにディナーをする2人の様子はやはりソーシャル・メディア上で話題を提供していたのだった。



そんな以前は見ず知らずの他人同士が家族のようになる例がここ数年全米で起こっているのが臓器提供をきっかけとした繋がり。
写真上は、息子を若くして失った母親の再婚のウェディングに 息子の心臓のレシピアント(臓器受け取り側)の青年がサプライズ・ゲストとして登場した様子。 自分の亡き息子の心臓の鼓動を聞いて感動する花嫁と、彼女に心から感謝する青年の姿には 参列者全員が涙ぐんでいたけれど、 かつて非公開だったドナー情報も 現在ではそれが探し当てられるようになり、 その結果、アメリカではドナーの家族とレシピアントが親戚のように交流するケースが非常に増えているのだった。
写真上の花嫁のケースも、夫が彼を探し出してウェディングに招待したとのことで、 以来、彼を新しいファミリー・メンバーとして 家族のイベントに招いていることが伝えられるのだった。

その一方で脳に損傷を受けて死亡した若い男性の臓器が、5人のレシピアントに移植され、ドナ―の家族とレシピアント全員がファミリーとして交流する様子も 伝えられるけれど、そんな風に見ず知らずの人にも思いやりを注いで サポートする人、自分が受けた恩を本人、もしくは他の誰かに返そうとする人々、 その手助けをしようという人や、それに共鳴する人々が沢山いる様子を見ると、 まだまだ世の中に希望が持てると感られる同時に、自分も誰かに希望を与えたいという気持ちが高まるもの。 そして それこそがサンクスギヴィングのスピリットと言えるのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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