Nov. 24 〜 Nov. 30 2003




バーゲン・ハンターの告白


ホーム・ページのカバー・セクションでもお知らせしていた通り、 今週木曜日、27日はサンクス・ギビング・デイで、アメリカで最もビッグなホリデイであったけれど、 その翌日金曜日は「ブラック・フライデー」と呼ばれるホリデイ・セールの皮切り日である。
今年は 昨年から5.7%アップの2174億ドル(約23兆9140億円)の売り上げが見込まれている アメリカのホリデイ商戦であるけれど、このブラック・フライデーはそのシーズンの売り上げ動向を占う指標として 最も重視されている日。したがって各小売店は、この日にセールの目玉をぶつけてきて ホリデイ・セールスに弾みをつけようとするし、他の店に行く前に自分のストアでお金を使って貰おうと、 アーリーバード(早起き鳥)・スペシャルという早朝の時間帯のみのセールを敢行したりもする。
このアーリーバード・セールは、通常最も混み合う昼間の時間帯の客数を分散させることにも役立っているというけれど、 昨年などはアーリーバード・セールが終わった途端に、店の中に活気が無くなったストアが多かったとレポートされており、 結果的に昨年のホリデイ・シーズンは、ブラック・フライデーの売り上げは好調であったものの、 その後はセールスが伸びず、ストア側は後に、より大幅なディスカウントを迫られることになった。
実際、ホリデイ・シーズンに小売店と客側が展開するのは、 クリスマスというタイム・リミットに向けて「何処まで下がったら買うか?」という、ある種の神経戦である。 小売店同士の間でも「XXXの店はもう40%引いている」、「XXの店は30%オフをさらに25%オフにした」など、戦況を窺いながらの対策が迫られることになる。 これは、オークション・ハウスのクリスティーズや、オークション・サイト、Eベイとは全く逆のセオリーで、 買い手が居るうちは値段が上がるオークションとは異なり、 「何処まで値段を下げれば買ってもらえるか」というのは、売る側にとっては辛い駆け引きである。
今年のブラック・フライデーも、メーシーズに朝の6時から大勢の買い物客が訪れた話や、 郊外のショッピング・センターでは、未だ夜明け前からアメリカ最大の小売業、ウォルマートの駐車場に、 数千台の車が並び、道が渋滞するほどだったニュース等が報道されたが、 昨年同様、アーリーバード・スペシャルが終わると、店は平常の週末と同じ程度の混み具合であったことも伝えられている。

さて、自他共に認めるバーゲン・ハンターである私はと言えば、 毎年このブラック・フライデーだけはショッピングに行かないと決めていたりする。 理由は、混み合うデパートが嫌いなためで、私のバーゲン・ハンターとしての活動の場は、 もっぱらデザイナーが行うサンプル・セールなのである。
でも昨今、その可能性に目覚めたのはデザイナー・ブティックやデパートのプレ・セールで、 これは、セールに突入する前に商品を取り置いてもらって、セールになったと同時にカードにチャージしてもらい、 後で受け取りに行くというもの。通常は担当者からのインヴィテーションを持つ顧客が対象となる。 今年の場合、グッチ、サン・ローランを始めとする 殆どのブランドがセールに突入するのが12月4日の木曜(シャネルについてはその1週間後)なので、 その前に顧客達はショッピングを済ませてしまう訳だが、 運良くプレ・セールの時に来店して、「もう直ぐセールでしょ?」とでも店員に囁けば (時に囁かなくても)、 セール価格の取り置きをしてもらうことは可能である。
さて、例年ブラック・フライデーと無縁な私が、サンクス・ギビングの翌日、 疲れた身体に鞭打って出掛けたのがミート・パッキング・ディストリクトのジェフリーズである。 デザイナー物ばかりを扱うジェフリーズは、当然未だセールに入っていないが、 私が出掛けたのはプレ・セールのためで、 私の住むアッパー・イーストから最も不便と言えるロケーションのジェフリーズにわざわざ出掛けた理由は、 この店が唯一、私が8月から欲しいと思っていたロシャスのシューズを扱っていたからだった。
このシューズは、ファッション誌にも数多く掲載された今秋の「It Shoes/イット・シューズ」(旬の、目玉の…といった意味)で、 シューズ本体はビニール、ヒールはルサイトの透明パンプスで、 9月に同店でこの靴を履いてみた時は、喉から手が出るほど欲しいと思うものだった。 でもその時点で、私は既にサンローランのラインストーンを散りばめた透明サンダルを購入していたこともあり、 正規の価格で460ドルのこの靴を、「セールになったら買おう!」と、過去4ヵ月念じ続けてきたのである。

私は、時に自分がバーゲン・ハンターとして卓越した能力があるのでは?と惚れ惚れしてしまうことがあるけれど、 それは、シーズン中に欲しいと思ったものを大体セール価格で手に入れることが出来るからで、 バーゲンとはいっても「決して衝動買い」とか「安いから買う」のではなく、 「欲しかったから買う」ことになるのである。 こうした「欲しかった物」はそのシーズンのストアのセールで手に入らなくても、次のシーズンのサンプル・セールで 見つけて購入に及ぶ場合も多く、その際は70〜80%オフになっていることも珍しくなかったりする。
欲しかった物をセールで見つける度に私が思うのは、「あれがどうしても欲しい!と 念じ続けること大切」ということで、私のバーゲンの戦利品はその執念で引き寄せたものだと思って、 自負していたりもするのである。

さてロシャスの靴に話題を戻すと、今回も私の執念が通じたのか?、それとも誰もビニールの靴に 460ドルも払いたくなかったのか?、私が探していたパンプスはプレ・セールの対象として ストアに残っており、当然のことながら私は嬉々としてそれを再び履いてみたが、 この日はネールサロンに行く前でペディキュアをしていなかったこともあり、 シューズが驚くほどアグリーに見えてしまった。しかもヒールをチェックすると、 ルサイトのヒールの内側に打ってある釘が透けて見えて、さらにそれが曲がって入っていた。 ヒールの先も中途半端に丸いデザインで、正直言って「アレ?」という拍子抜けをしてしまったし、 「こんな靴のことを4ヵ月も思い続けていたなんて…」と情けなくなってしまった。
実は私にはあと4足狙っているシューズがあって、12月4日前のプレ・セールで、予算の関係からそのうちの2〜3足の取り置きを頼むことにしているけれど、 「ロシャスのようなことになりませんように!」と願って止まない思いである。


一言でバーゲンといっても、私にとってのバーゲン・ハントとは、先述のようにもっぱらブランドものやデザイナー物のセールのことで、 これらを半額前後で購入して、1シーズン、2シーズン着たり、履いたりして、 リセール・ショップに売りに出すのが私のクローゼットのサイクルである。 これを上手く回していると、周囲が思うほどには服代は掛からないことになるが、 頭で考えるほど簡単な話ではなく、執念とエネルギーに加えて、綿密なプランが必要になってくるのである。
よく「ブランド物しか着ないなんて、自分に自信が無い証拠」などと人が言うのを耳にするけれど、 やはりデザイナー物というのは、正規の値段を払って買うほどの物は少ないけれど、 セール価格であれば、納得が行くだけのデザインや素材の発色であったりするし、 着終わった後、リセール・ショップに売ることを考えると、 ノン・ブランドではどんなに良い素材でも 再販価格が高くはなり得ないのである。 だから「洋服代を抑えようと思ったら、ブランド物を安く買う」は私の長年のショッピング・ポリシーになっていたりする。
もちろんバッグや、そのシーズンの目玉アイテムになると、 正規の価格を支払って 手を打たなければならない場合は多いけれど、 そんな時は、「高いお金を払ってもったいない」等とは考えずに、とことん着て元を取るのが 「お金を有効に使う」事だと思っている。

ふと考えて、自分がどうしてこんなにセールが好きなのか?というと、 買い物というのはそもそも楽しいものだけれど、 欲しいものが安く買えるというのは、それに更なる付加価値が加わることになるし、 お金を使っておきながら、節約した気分になれるのは爽快であったりもする。
私にとって、お金が無くなることと同じくらい怖いことは、物欲が無くなることで、 実用品だけを安価で購入して、お金をケチケチ貯めるようになったら、 生気が感じられない野暮ったい人間になって、逆に貧乏になってしまうと思っているし、早死にしてしまうとさえ感じている。
もちろん、見栄を張って借金をしてまでブランド物を買うのは馬鹿げているけれど、 持っているお金を有効につかって、最大価値で回して行くというのは、個人の家計から 一国の経済に至るまでに 共通した課題である。
これがバーゲン・ハントを正当化する理由であるというのは虫が良いように聞こえるかもしれないけれど、 ショッピングで最も大切なのは、罪悪感を感じることなく、ポジティブな気持ちで 自分を幸せにする購買活動をすることで、 自分に似合うものや、本当に欲しかった物を手に入れて、それを着たり、持ったりすることによって 自分のオーラを高める方が、胡散臭い開運厄除けのお守りや、一過性ブームの健康食品に大金を投じるより、 遥かに自分を幸せにするというのが私の考えである。
私はひがみでもなく、嫌味でもなく、よく心から思うのは、「大金持ちになったら、さぞショッピングがつまらないだろうなぁ…」ということ。 限られたバジェットでやりくりして、欲しいものを手に入れるからこそ、買った時に幸せを感じるし、 コーディネートやオケージョン、クローゼット・スペースを考慮しながらショッピングをするから 買ったものにも思い入れ出てくるけれど、 もしその制約が取り外されて、「何でも買えるし、買って良い」状態になったら、 きっと買っても、買っても満足できない不完全燃焼ショッパーか、 無駄なものばかり買い続けるクローゼットの肥やしショッパーになってしまうと思うのである。

バーゲンハンターは、ショップアホリック(ショッピング中毒)ではないから、 セールに行っても気に入ったものが無ければ何も買わないし、同じような物を既に持っていたら どんなに安くても買わない主義であるけれど、 私がバーゲン・ハンターとして敗北感を感じるのは、自分が正規の価格で購入したものが セールで販売されているのを見た瞬間である。そういう時はサイズを確認して、 自分のサイズで無い場合は少しホッとするし、自分のサイズが残っていた場合は、 かなりムッとすることになる。 今シーズン、私をムッとさせたのは、先に少し触れたサンローランのサンダルで、 私が購入したサイズは完売していたものの、 私よりハーフサイズ上の人は、220ドルも安く同じサンダルを手に入れる訳で、 これはギャンブルで負けたとか、買った株が下がったような気分である。
私の知人は、「自分が正価で買ったマノーロ・ブラーニックが、 セール・ラックに並んでいたら、必ず踏みつけるようにしている」と冗談で(そうあって欲しいと思っている) 言っていたけれど、 確かにセール品には、時に汚れや型崩れという問題があって、シーズン中ずっと片側だけ売り場に出ていたシューズなどは、 人が履いて広がっているため左右のフィットも違えば、時に色まで変わっている場合もある。

時々「どうしてそんなに真剣にバーゲンに行くの?」と不思議がられる事もあるけれど、 自分の稼いだ大切なお金の使い道なのだから、真剣になるのは当然と言えば、当然なのである。
でもさすがにここ数年、すっかり出来なくなったのは、セールのための早起き。 5年程前までは バーニーズのウェアハウス・セールや、ドナ・キャランのサンプル・セールがあると、 朝の8時には会場に居たのに、昨今ではセールより睡眠時間の方が大切になりつつあって、 バーゲン・ハンターぶりも年齢と共にトーン・ダウンしなければならないというのが現実なのである。




Catch of the Week No.4 Nov. : 11月 第4週


Catch of the Week No.3 Nov. : 11月 第3週


Catch of the Week No.2 Nov. : 11月 第2週


Catch of the Week No.1 Nov. : 11月 第1週