Nov. 29 〜 Dec. 5 2004




What It Takes To Make You Happy




アメリカでは、ホリデイ・シーズンは、最も自殺者が多い時期と言われており、 プロザックなどのうつ病治療薬も この時期に最も処方されると言われている。
すなわちホリデイ・シーズンとは、美しいイルミネーション、 パーティーやギフトのシーズンという華やかで楽しそうな雰囲気とは裏腹に、 人々を落ち込ませる季節とも言える訳である。
人々がホリデイ・シーズンに落ち込みを感じる理由としては、 周囲の賑やかさについていけない、取り残されたような敗北感、 一緒にホリデイを楽しむ家族や友人が居ない孤独感、 予定や行事があり過ぎて、それを体力的、精神的にこなしきれない疲労感、倦怠感などが挙げられるけれど、 これらを感じながら、自分の将来や、自分が生きる世の中を考えて、 悲観的になったり、絶望感を覚えるのが「ホリデイ・ディプレッション (ホリデイの落ち込み)」と呼ばれるものである。

ではホリデイ・シーズンに限らず、人間をハッピーにしてくれるものは何かと言えば、 『ニュー・サイエンティスト』誌が昨年発表したのが、以下の「人々を幸せにする要因、トップ10」である。

  1. 遺伝子

  2. 結婚

  3. 家族&友人

  4. 欲望を抑え/満たすこと

  5. 人を助けること

  6. 宗教

  7. 美しさ

  8. お金/財産

  9. 若さを保つ/美しく年を重ねること

  10. 知性


ここで1位にランクされている「遺伝子」という結果を得るために、このリサーチでは4000人の成人の双子に対して調査を行っており、 その結果、同じ双子でも、ストレスを貯めないハッピー遺伝子を持つ方が、持たない方に比べて 最高で55%も余分に幸福感を 味わって生活しているという結果が得られたという。
遺伝子に次いで挙げられているのが、結婚、家族&友人といった身近な人間関係。 第4位の「欲望を抑え/満たすこと」というのは、かつてある哲学者が「人間が最も手っ取り早く幸福感を味わいたいと思ったら、 尿意を抑えることである」と語ったと言うけれど、確かに我慢の末、トイレにたどり着いた安堵感=幸福感は誰にでも経験があるもので、 同様に、喉がカラカラに渇いた時に飲んだ水、靴擦れで 痛い思いをした後に 靴を脱いだ瞬間などが、一時的とは言え、幸福感をもたらしてくれるのは事実である。
また、6位に「宗教」がランクされているけれど、信心深い人々の方が、宗教とは無縁の人々よりも長生きで、 より精神的に満たされた生活をしているというのは、同リサーチが発表されるまでもなく、 キリスト教右派の人々の間では認識されていること。 そして、7位から9位までには、美しさ、お金、若さ(を保つ)といった、人々が表面的な幸福の尺度とするものが登場していたりする。

このリサーチは、幸福感こそが人々を病気になりにくくし、引いては長生きに導くというセオリーに立って 行われたものだけれど、上記のランキングはそのまま、人間を不幸にする要因にすり替わったりもするという。
つまり、人間を幸せにする鍵を握るのが遺伝子であるのと同様、 人間が落ち込んだり、悲観的になったりするのも遺伝子の影響が大きく、 結婚、家族&友人との関係がストレスや悩みの原因となるのも、ごく一般的なことである。
「欲望を抑え/満たすこと」にしても、尿意や喉の渇き、痛みから開放された時は幸福感を味わうものの、 それまでは不快感や、ストレスを感じ続ける訳である。
人助けにしても、それが裏目に出て、感謝されない結果を招く場合もあれば、人を助けたことによる自分への負担が幸福感を 遥かに上回ることも、少なからず起こることである。 美しい人、ルックスの良い人は、「美しい自分を保たなければ」というオブセッション(強迫観念)から、 ヘアカットの失敗や肌荒れといった状況が、通常の人よりも深刻な精神的落ち込みをもたらすことになるのである。

さて、上記のランキングに対する一般の人々のリアクションは、「お金/財産」が第8位というのはランクが低すぎるということ。
それだけ、一般大衆にとって経済的な豊かさというが、幸福の象徴になっている訳であるけれど、 実際、占いをする私の母も、依頼人の結婚相手として複数の男性を占った場合、相性や運勢そのものに大差が無い場合は、 必ず金運の良い男性を薦めているそうで、これは、やはりお金があった方が、 不運に遭遇した際に それを乗り越え易く、結果的に結婚生活の長続きにも繋がるからだという。

でもその一方で、お金が結婚を救える訳ではないことを証明するエピソードとなったのが、サンクスギビング直前に、 メガミリオンと呼ばれる宝くじで、賞金$149ミリオン(約150億円)を勝ち取った、ジュアン・ロドリゲス夫妻である。
ミッドタウンのパーキング・ガレージで時給10ドル足らずで働いていたジュアン・ロドリゲスは、妻アイリスと その生活が苦しいために、借金をめぐる喧嘩が絶えず、アイリスはジュアンを家から追い出し、2人は しばし別居状態であったという。 ジュアンの銀行口座の残高は78セント(80円程度)と底をつき、彼は個人破産の申請を行ったが、時をほぼ同じくして アイリスはジュアンと復縁。そして、破産申請の2日後の11月19日に、ジュアンは$149ミリオンのメガ・ミリオン宝くじの 勝者となったのだった。
メディアは、個人破産から一躍マルチ・ミリオネアになったジュアン・ロドリゲスのことを、ラッキーな美談として 大きく報じ、宝くじを当てる直前にジュアンとよりを戻したアイリスを、彼の「幸運の女神」としていたけれど、 当選から僅か10日後の今週月曜日(29日)、アイリスはジュアンとの離婚を申請。 彼がメガミリオンで獲得した賞金$149ミリオンは、彼が1回払いを希望したために、税引き後の金額が約$60ミリオン(約62億円)と なっていたけれど、その半分に当たる$30ミリオンを離婚の条件として要求しているという。

すなわち、破産しているのを承知で、「やり直そう」と よりを戻したはずの夫婦なのに、大金が転がり込んだ途端に、 「離婚によって その半分を手に入れて、自由に気ままに暮らしたい」と考えたのが彼の妻で、 確かに、配偶者の金銭マネージメント力を信用していない場合、相手にお金があるうちに離婚しておこうと考えるのは、 経済的に我が身を守りたい妻側に ありがちな判断と言えるものである。
このケースで、「お金で結婚を救うことは出来ない」と判断すべきなのか、「妻が結婚よりお金を選んだ」と判断すべきなのかは 定かではないけれど、このジュアン・ロドリゲス夫妻に限らず、宝くじで大金を獲得した人々というのは、 周囲が羨ましいと単純に考えるほど、幸せになっているという訳ではないことは、 宝くじ当選者のその後の生活をトラッキングした報道番組などでも証明されていることである。 その多くが経験しているのが、離婚を始めとする家庭崩壊、投資の失敗による大損失で、 突如転がり込んだ大金で、生活やお金に対する価値観が変わってしまったことが、こうした悲劇の要因となっているのは 容易に察しがつくことである。

私がいつも思うのは、幸福という概念は、一般に語られているよりもずっとパーソナルなもので、 個人個人がそれぞれ 欲している部分が満たされた時に感じられるものだと思っていたりする。
だから、ある女性はボーイフレンドからもらった たった1輪のバラで大きな幸福感に包まれるし、 別の女性は1本60ドルもするエキゾティックな品種のバラを何十本プレゼントされても、 「このくらい してもらって当たり前」程度にしか感じられなかったり、「色が気に入らない」などと、 文句を言う原因になって終わるだけだったりするのである。 後者の女性はきっと前者の女性のことを 「あんな安いバラ1本で、喜ぶなんておめでたい」と軽蔑するかもしれないけれど、 私は前者の女性の方がシンプルに幸せを感じられる分、生涯を通じて沢山幸福感が得られると思うし、 自分さえ幸せであれば、他人の基準から見て物足りないレベルであろうと、それは一向に関係ないと思うのである。

また幸福というのは、幸福感という一時的な感覚を、どれだけ頻繁に味わうことが出来るかということで、 幸福は半永久的、もしくは継続的な状況ではないというのが私の考えである。 「幸せに暮らしている」というのは、嫌な事や大変な事も 時に起こるけれど、 それでも日々の生活の中で、幸福感を味わうことが多いことを意味しているわけで、 その幸福感は、人の優しさを感じたことから来るのかもしれないし、美味しい食べ物から来るのかもしれないし、 すばらしい芸術に触れた感動や、肌の調子が良いとか、仕事が上手く行っているといった事から 感じることかもしれないけれど、自分さえ、幸せと感じることが出来たら、他人が何と言おうと、思おうと、それがハッピーということなのである。
逆に、世の中には、人1倍苦労して、苦しさや辛さを表に出さないようにしている人のことを、 幸せなのだと勝手に勘違いする人や、他人を低く評価することによって 自分の方が幸せだと思い込もうとする人も少なくないけれど、 自分の価値観で他人の幸福を測ることは出来ないし、 測る必要もないのである。






Catch of the Week No.4 Nov. : 11月 第4週


Catch of the Week No.3 Nov. : 11月 第3週


Catch of the Week No.2 Nov. : 11月 第2週


Catch of the Week No.1 Nov. : 11月 第1週