Nov. 26 〜 Dec. 2 2007




”ホリデイ・セール、ショッピング・ポリシー ”



今週のニューヨークでは 水曜にロックフェラー・センターのクリスマス・ツリーが点灯され、いよいよホリデイ・シーズンが 本番を迎えたという雰囲気になったけれど、今年のツリーにつけられた3万個の電球は電力消費が50%カットできるという省エネ バルブ。 これまでのレッド、イエロー(ホワイト)&グリーンの3色の電球とは異なり、今年はフューシャのようなピンクや紫のような色が混じって、 全体的に 伝統的なツリーよりも遥かに青紫っぽいツリーになっている。
本音を言ってしまえば、私は 例年のツリーの方が上品かつ、クラシックな印象で好きだけれど、ロックフェラー・センターのセッティングの中に そびえ立つ巨大なツリーの迫力は他では決してお目に掛かれないもの。 なので個人的な好き嫌いは別として、ロックフェラー・センターのツリーが世界一のクリスマス・ツリーであることは 紛れも無い事実なのである。

加えて今週は 19日間続いたブロードウェイのストライキも暫定的ながら労使交渉が成立したのを受けて終結しているけれど、 昨今のミッドタウンを歩くと とにかく聞こえてくるのが、ブリティッシュ・アクセントの英語、フランス語、 スペイン語、中国語を始めとするありとあらゆる外国語。
アメリカの国内消費が今ひとつな状況が伝えられる中、アメリカに張り切ってショッピングをしに来ているのが ユーロ・リッチ、ポンド・リッチの旅行者たち。 英国ポンドは、2003年には1ドル=1.6ポンドであったのが、今年11月現在では2.1ポンド、ユーロにしても2003年1月には1ドル=1.02ユーロ であったのが 今年11月には1ドル=1.47ユーロにまで上昇。 加えて、アメリカは諸外国よりも早くブランド物がホリデイ・セールに突入することもあり、 ヨーロッパからの旅行者達にとって 現在のアメリカはバーゲン・パラダイスになっているのである。
逆に米ドルを握り締めてヨーロッパを旅行した場合、VATで現地の税金が掛からなかったとしても、 グッチ、プラダ、シャネルなどのブランド物はアメリカで買う方が安い、もしくはアメリカと同じ程度の価格になるとのことで、 トラベル関連のメディアは ホリデイの旅行先として、ドル安感を緩和出来るアジア諸国をアメリカ人に薦めているのが現状である。
今や ブラジリアン・スーパーモデルのジゼルでさえ 「ギャラ交渉はユーロで!」 とリクエストし、 ラッパーのジェイ Z も プロモーション・ビデオの中で切っている札びらがユーロになっているというけれど、 それほどユーロが強く、ドル安が進んでいる現在は、 アメリカの不動産を投資を兼ねて購入する外国人が非常に増えているという。 中でも高額の不動産を買う傾向が強いのがイギリス人、中国人とのことで、彼らが購入する平均的な住宅価格は 約34万ドル(約3700万円)。これはアメリカ人が購入する平均的な住宅価格22万ドルよりも遥かに高額なものとなっている。

こんなに短期間にユーロやポンドが強くなってしまうと、「銀行にお金を預けておくよりも、ユーロやポンドを買っておけば良かった」と 後悔する人が多いけれど、私が個人的に最も後悔しているのはゴールドを買っておけばよかったということ。
ゴールドの価格はそのままCUBE New York で扱っているCJの商品原価に響くので オンス当たりの価格は頻繁にチェックしてきたけれど、もう上がらないだろうと思った1オンス=600ドルから、あれよあれよという間に800ドル代に なってしまったのがゴールドで、今後は1000ドルをつけるとさえ言われるほど。
ニューヨークのダイヤモンド・ディストリクトでは ゴールドの価格があまりに急激にアップしたのを受けて、 腕の良いジュエリー職人でもゴールドが仕入れられないために 仕事を辞めてスターバックのフランチャイズなどを始めてしまうケースが今年に入ってから非常に増えているのである。 実際ゴールドの値上がりは、ジュエリービジネスにとっては非常に深刻で、CUBE New Yorkでも1年半前には250ドルで仕入れられた CJのテニス・ブレスレットが、今や400ドル+工賃の時代に入ってしまったような状況。 幸いここまで値段が上がる前にマウント(金属部分)を纏めて買っておいたので、CJではそれほど商品価格を値上げしないで済んでいるけれど、 この400ドルというテニス・ブレスレットの金属部分のお値段も来週には450ドルになっていても不思議ではないというくらい、 ゴールドの価格はどんどん、クレージーなほどに上がっているのである。

さて、先述のようにそれほどホリデイ商戦の活況が望めないと言われるアメリカであるけれど、 今年のファッションの消費動向を昨年と比較して最も異なる点と言われるのが、昨年ほど高額ジーンズと高額ハンドバッグが売れなくなったということ。 昨年までは200〜300ドル代の高額ジーンズ、1500〜2000ドルの高額バッグがかなりの勢いで売れていたのだそうで、 ジーンズ、ハンドバッグという女性が毎日愛用するものに お金を掛けなくなった傾向が、ファッションの消費の減速につながるのでは?と 関係者の間で危惧されていたのである。
そうかと思えば、クリスチャン・ルブタンのオープン・トウ・プラットフォームやブーツは店頭に並ぶ前に完売してしまう訳で、 ルブタン・クラウドに代表されるハイエンド・マーケット、すなわちデザイナー・クローズと3000〜5000ドル クラスのバッグを買う人々の消費は 極めて活発なのもまた事実なのである。

ホリデイ商戦と言えば ホリデイ・セールを意味するけれど、 私がどんなに仕事で忙しくても きちんとチェックするのが デザイナー・サンプル・セールの日程と、ストアで行われているセール品のチェックである。
というのも、以前もこのコラムで書いた事があるように 私は小売価格で服を買うことは 全くと言って良いほど無くて、 デザイナー物を最低30%オフ、通常50〜60%オフで購入して、着なくなったらリセール・ストアに売りに行く というやり方で、 ファッションのバジェットを大幅に抑えているのである。 なので、私にとってセール・シーズンはお金を節約するために大切な時期で、 私がこの時期ポンポン服を買うのも 「お金を使っている」という罪悪感よりも「節約している」という 気持ちが強いからである。
もちろん買う時点から売る時の事を頭に入れて服を選ぶので、落ち目のブランドは買わないし、 トレンド性が強すぎる服も避けることになるけれど、中には売る事など考えられないほどに5年も6年も愛用し続けている服もあったりする。 人には驚かれるけれど、私にとって意外に長く着られるのが ロベルト・カヴァーリとドルチェ&ガッバーナで、 逆にトム・フォードがデザインしていた時代のグッチは、自分でも飽きてしまうし、特徴が強すぎて売りに出しても高くは売れなかったもの。 プラダもシーズンが分かるような特徴があるものは長く着れない上に、高く売れないので買わないと決めていたりする。
でもシューズに関しては、セールまで待っていたら欲しいスタイルが全て売れてしまうので、 どうしても欲しくて眠れなくなるようなものは通常の小売価格でいち早く手を打つことにしている。 とは言っても 私の場合、”人と趣味が違う” というバーゲンハンターとしては決定的な利点があるため、 欲しいシューズでも 「セールまで売れ残るだろう」 と思われるものには手を出さないことにしており、 じっと願を掛けて待っていると 案の定、30〜40%オフになるということが非常に多いのである。

今 私が、フランス語を週に2回ずつ学んでいるクラス・メートはよく、「一体いくら服とシューズにお金を使っているの?」と訊くけれど、 私のスタンダードでは彼女の方が遥かに贅沢なショッピングをしていることになっていたりする。
まず私の場合、絶対に衝動買いはしないし、素材とブランドにこだわって 明らかにベスト・バリュー、すなわち支払っている値段の何倍もの 価値を購入していると思われるものを選んで、しかも自分のワードローブに欠落しているアイテムを日ごろからチェックして 購入に至る訳である。でも クラスメートの場合、私が内心 「そのワンピースが350ドルもするの?」と 思うようなバリューのショッピングをしており、必要な服を、必要な時に買うというショッピングをしているのである。 すなわちショッピングには時間を割いていないし、ワードローブのプランもしていない訳で、 少々皮肉めいて聞こえるかもしれないけれど、深く考えないで物が買える、お金が使えるというのは 私にとっては”ラグジュリアス”と見受けられることなのである。
でも私に言わせれば、ショッピングというのは毎日のメークと一緒で、しょっちゅうやっていれば、上手く、早くできるようになるもの。 日ごろからメークをしていない人が、”ここぞ” という時に化粧をしようと頑張っても、時間が掛かるだけで上手くいかないのと同様、 ショッピングもしつけていない人ほど、1枚のドレスを買うのに迷いに迷った挙句、失敗のチョイスをすることになるし、 最悪の場合、そのドレスがいかに誤ったチョイスであるかを 全く自覚していなかったりするのである。

以前私の知人が「お金、もしくは時間と手間を掛けないと 女性の美しさは保てない」と言っていたことがあるけれど、 これは言いえて妙である。
例えば、髪の毛について 「洗いっぱなしで そのまま乾かすだけだから、凄く楽!」などと自慢している女性のヘアは、 やはり 洗いっぱなしを乾かしただけのヘアにしか見えない訳で、周囲は「もっとちゃんとブローをすれば良いのに・・・」 などと思って見ているもの。 「メークなんてしないで 顔だけ洗ってお終い!」などと自慢している女性にしても然りである。
しかも世の中というものは、お金や時間や手間が掛かっていない女性に対して 往々にして ルックスとは無関係の 偏見や判断をして下してくるもの。 日ごろからメークをしていなかった女性が、夫の浮気が原因で離婚をすれば、 「もうちょっと自分に手を掛けないと・・・、ご主人が浮気するのも無理はない」などと言われてしまうのである。
私の場合、自分のビジネスが私のルックスでジャッジされることがしょっちゅうで、 まともなコンディションで 以前取引をしていた人や、久しぶりの友人などに会えば、必ずと言って良いほど言われるお世辞が 「You look great! Your business must be doing great!」というもの。 こんな事を言われたら、いい加減な格好やメークで外を歩いたらビジネスまで傾いていると思われるかと 気を使ってしまうけれど、女性の経営者というのは多かれ、少なかれ 同じようなルックス・プレッシャーを味わっているようである。

ところで、よく男性が スキンケアやネール、ヘア・カット、ショッピングで忙しくしている女性に向かって、「女性は大変だねェ」などと 人ごと扱いのコメントをしているのを耳にするけれど、実際には シビアに顔やスタイルがジャッジされない男性こそ きちんとグルーミングをしたり 好感が持てる程度にファッショナブルに装っているだけで、 女性に一目置かれたり、モテたりするもの。 そもそも女性の方が 男性の生まれ持ったルックスには寛容な一方で、着る物や持ち物、グルーミングされ具合などを細かくチェックしているので、 異性にアピールしようとした場合、男性の方が努力をしただけの恩恵を受ける傾向は強いのである。
以前、私の美女の友人が、グッチのローファーを履いて、マニキュアをしていたという理由だけで、 スターバックスで声を掛けられた男性とデートすることにした と言っていたことがあるけれど、 女性の場合グッチのシューズとマニキュアくらいでは そんなラッキーな思いをすることは無いのである。

先週のこのコーナーで書いた私の食中毒について、読者の皆さんからお見舞いのメールを何通も頂きました。 お陰様で無事に回復いたしましたので、この場を借りてお礼申し上げます。どうもありがとうございました。





Catch of the Week No. 4 Nov. : 11 月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Nov. : 11 月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Nov. : 11 月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Nov. : 11 月 第 1 週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。