Nov. 29 〜 Dec. 5 2010




” クーガー&プーマ ”


今週末のアメリカでは 11月の雇用統計が発表になったけれど、先週のブラック・フライデー、週明けのサイバー・マンデーで ホリデイ商戦が好調な滑り出しを見せたのとは裏腹に、失業率はそれまで数ヶ月続いた9.6%から9.8%にアップ。
例年11月はホリデイ商戦に向けて百貨店や小売店が臨時の販売員などのスタッフを雇い入れる時期であるだけに、 雇用が増えることが見込まれている月。ところが今年は、ホリデイ商戦が前倒しになった結果、雇用も同様だったようで、 10月には17万2000の仕事が生み出されたものの、11月は僅か3万9000万の仕事しか新たに増えておらず、それが 失業率のアップに繋がったという。
アメリカ全体では 1500万人が失業していると言われているけれど、問題視されるのはそのうちの700万人近くが 6ヶ月以上失業状態で、失業保険の支給限度を超えているということ。 そうなると、人々が身を寄せるのがホームレス・シェルターであるけれど、ニューヨーク市で 過去2年ほどで急激に増えているのが ホームレス・シェルターで暮らす人々の数。ニューヨークの失業率は、全米の失業率より低い9.3%。 でも アメリカで貧困層と見なされる 家族3人の世帯年収 1万7600ドル(約145万円)以下 の人々は 市の人口の18.7%。
ホームレスの数は毎週増え続けており、こうした人々をサポートするシェルター側では、市民からの寄付が増えない限り 運営が難しいことを 訴えているのだった。
ちなみに国勢調査のデータによれば、ニューヨーク市の貧困層は55万4185人。ニューヨーク市の5ボロー、すなわちマンハッタン、ブルックリン、 ブロンクス、クイーンズ、スタッテン・アイランドの中で最も貧困層が多いのはブルックリンであるという。


さて 話は全く変わって、 つい最近、日本に帰国していた友人から聞いたのが、ついに日本でも クーガー現象がTVドラマ、それもNHKのドラマになっているという話。
そのドラマは「セカンド・ヴァージン」で、私は日本のTVは観ないので同ドラマのことは全く知らなかったけれど、 ストーリーは45歳のキャリア・ウーマンと17歳年下の既婚男性のロマンスを描いていて、「若い男性に密かに思いを寄せている ”中年女性”の間で人気を博している」というのが友人のコメントなのだった。
アメリカ、イギリスでは、20代、30代前半の若い男性を掴まえる40代、50代の女性のことを”Couger / クーガー” と呼んで久しいけれど、 そのクーガー・ブームの走りであり、象徴的な存在となっているセレブ・カップルと言えば、 デミー・ムーア(1962年生まれ、今年48歳)とアシュトン・クッチャー (1978年生まれ、今年32歳)。 2人が交際を始めた際は、16歳の年の差が大きな話題になっていたのだった。

ちなみに、日本では時にクーガーのことを ”クーガー女”と表記する傾向があるせいか、日本から旅行でやって来た日本人の英語に ”クーガー・ウーマン” という言葉が登場したのを聞いたことがあるけれど、欧米では 動物以外の意味で使うクーガーと言えば 女性と決まっているもの。なので、”クーガー・ウーマン” という表現はちょっと変に聞こえるのだった。



現在のクーガー・ブーム以前にも、例えば90年代初頭に年上の女性が若い男性とロマンスに落ちる傾向がニューヨーク・マガジンの 記事になったこともあり、若い女性と年配男性のカップルほど一般的ではなくても、 何時の時代にも クーガー&若い男性というカップルはそれとなく存在はしていたもの。
でもここへ来て、クーガーが大きく取り沙汰されてきた要因の1つは、40代、50代の女性がかつての 同年代の女性よりルックスもライフスタイルも若く、しかも社会が女性のインディペンデンスやセクシュアリティについてオープンになってきているため。
90年代初頭に若い男性と交際、結婚する女性と言えば、富豪のハズバンドを亡くした未亡人であったり、 若い頃サクセスフルだったシンガーなどで、若い女性が年配の男性と交際、結婚する理由と同様、 若い男性にとって 相手の年上女性について 最も魅力があると思われるのは その財産やコネクション、そして名声。

これに対して現代のクーガーと呼ばれる女性たちは、必ずしも財産がふんだんにある訳ではないものの、 ボトックスとワークアウト、時にライポサクション(脂肪吸引)やヘア・エクステンションのお陰で、 見た目に若く、若い男性にとっては年上であることは認識していても、恋愛やセックスの対象となりうる存在。
若い女性に比べて 知識や話題が豊富で、割り勘のデートでも文句を言わず、数回のデートやセックスで結婚を持ち出してくることもなく、 男性の話を聞いて相談相手になってくれる、さりげない心遣いで息苦しくない愛情表現をしてくれる、 男性のデート・マナー、セックス・マナーの失態にいちいち目くじらを立てたり、男性としての価値を下らない事でジャッジしないといった面で、 男性が気負う事無く付き合えるのがクーガーの魅力とされているのだった。
往々にして こうしたクーガーの側面を好むのはマチュアな男性、すなわち年齢に関係なく大人びた男性。 こうした男性は子供の頃から、いわゆる大人ウケが良かったような落ち着いた子供であった場合が多く、 自分の世代のキャピキャピした女の子と居ると疲れる、もしくは会話の内容が薄くて飽きてしまうというタイプ。 外観で同世代の女性に惹かれることは多くても、精神面でのズレから その付き合いが長く続かないという男性が クーガーと交際する傾向にあると言えるのだった。

こんなことを言うと反感を持つ男性も居るかも知れないけれど、私の考えでは男性というのは6歳の頃からあまり精神面では成長しない生き物。 6歳の時に大人びた少年であったら、落ち着いた大人びた男性に成長するけれど、6歳の時に「まだ6歳なんだから仕方が無い」と親が妥協せざるを得ないほど 子供っぽい少年である場合、36歳になってもその子供っぽさは決して変わることは無いというのが私の見解なのだった。
これに対して女性というのは、環境や交際相手等に合わせて変わることが要求されている上に、変わっていくべき生き物であるから、 6歳の時の姿で将来を憶測するのはほぼ無理と言えるもの。 女性は自分が変われると分かっているから、「男性を変えられる」と考えがちであるけれど、 既に何回か過去のこのコラムで書いてきた通り、男性というのは変わらない生き物。
男性を変えられるとすれば、それは決して女性ではなくて、時間とエイジング。すなわち男性が変わって行くのは、歳を重ねて自分の限界を悟らざるを得なくなった時。 それでも男性の変化というのは化石のプロセスのようにスローで、長年が経過して振り返ってみないと分からない程度であったりするのだった。

もう1つクーガーと交際する傾向にある男性の特徴と言えるのは、忙しい職種であること。
インベストメント・バンカーや、IT分野で起業している男性など、長時間労働に縛られる男性というのは、 自分をプリンセスのように扱って欲しいと考える若い女性との交際はまず不可能。 ファンシーなデートを計画する時間もなければ、トレンディなレストランが何処かも分からないほど忙しい男性が、 無理をしてやっと会える時間を工面したようなデートで求めるのは心の安らぎや、ストレスのはけ口。
若い女性なら2回でもデートをドタキャンすれば、感情的になったり、もしくは2度と会ってくれなくなるものだけれど、 クーガーとなれば、「自分の方が年上なのだから、そのくらい我慢してあげないと」、 もしくは 過去の失敗経験から 「こういう時は放っておくのが一番」 という意識が働くせいか、 苛立ちを見せることもなく、次に男性と会えたときに優しさを見せてあげられるという。 そして、こうした対応が仕事ばかりで疲れた男性にとって、オアシス的存在になっていくのは当然と言えば当然のことなのである。

クーガーの存在が社会的にクローズアップされるようになって、クーガーが相手にする若い男性達が 本来 交際すべき 若い世代の自立した女性達は 一体何をしているのか?という疑問が生まれてくるけれど、実際のところ20代半ば〜30代前半の社会的&経済的に自立した女性が 年齢を聞いただけで 相手にもしないのが クーガーのターゲットとなる20代男性。
20代〜30代前半の女性と言えば、男性が最もチヤホヤしてくれる 引く手数多の年齢層。 その若さで社会的&経済的に自立している場合、彼女らが狙っているのは35歳のマルチ・ミリオネアや42歳のビリオネア。 どんなに将来が嘱望されていても、26歳の企業勤めはなどは相手せず、年齢を聞いただけで子供扱いというケースが非常に多いのである。
すなわち、社会的に 引く手数多と見なされる 年齢ゾーンの自立した女性というのは、 往々にして 自分より遥かにサクセスフルで、リッチな存在を求めており、自分をプリンセスとして扱ってくれる男性、 自分のソーシャル・ステイタスを跳ね上げてくれる男性を探しているもの。 なので こうした女性達というのは、それほどクーガーとは競合しない関係にあるのだった。

逆にクーガーと競合関係になる若い世代の女性というのは、 自分を養ってくれる相手を探すべきなのか、キャリアでサクセスを目指すべきなのか決めかねているような、中途半端なポジションに居る女性。 上昇志向はあっても、手近な幸せがあればそれになびくタイプで、実際私の周囲には 20代後半と30代前半の ”クーガーとの競合タイプ ”が1人ずつ居るのだった。
彼女らが思いを寄せているのは どちらも職場の20代男性で、 いずれもルックスが良く、仕事も出来るタイプ。 でもどちらのケースも 20代男性が年上の女性を好んでいるとのことで、 例えば私の27歳の友人が思いを寄せている24歳の男性は、 38歳の女性と付き合っているとのことなのだった。
その男性の攻略法のアドバイスを友人から求められた私は、「決して相手に甘えるような態度は見せないで、時にお説教でもしてみたら」と 言っておいたけれど、どうやらお説教作戦は上手く行ったようで、後から感謝の携帯メールが届いたのだった。

クーガーと対決するためには、「若い女性は肌を露出するなど 若さを前面に押し出すべき」 と考える人も多いけれど、私の考えではそれは誤り。
クーガーと呼ばれる女性達が若い男性と付き合っているのは、彼らが若いからではなく、彼らに魅力があって 一緒に時間を過ごしているうちに 惹かれたからであり、一方の男性側にしても クーガーと交際するのは相手がセレブや富豪でない限りは、相手の魅力に惹かれたり、 相手の女性と過ごす時間に価値を見出すためで、周囲が考えるほど年齢差など気にしていないケースが殆ど。
なので、肌の露出などのアプローチは逆に軽薄なイメージを与えてしまうだけに思えるのだった。

でも、クーガーと交際する側の男性は周囲が思うほど相手の年齢を気にしていなくても、クーガー側に常に付きまとうのが 年齢差の問題。”未婚のクーガー”と ”既婚、もしくは離婚経験のあるクーガー” を比較すると、 未婚のクーガーの方が年齢の問題を深刻に捉える傾向が強いけれど、これはやはり結婚や老後といった将来設計を考えてしまうため。
逆に既婚、もしくは離婚経験のあるクーガーというのは、男女関係の永続性に既に疑問や諦めを抱いている場合も少なくないためか、 比較的刹那的に男女間を割り切ろうとする分、「彼が40になった時、私は56歳」というような10年後の年齢差まで考えない、 もしくは考えようとしない傾向が強いようなのだった。

ところで、クーガーという言葉の類似語に”Puma / プーマ”という言葉が存在しているけれど、 先述のデミー・ムーアは クーガーと呼ばれるのを嫌って、「プーマの方が未だマシ」とコメントしたところ、 「プーマは30代の女性にしか使わない言葉」として却下されたことがあったりする。
すなわち、正式にはクーガーは40〜50代の女性、プーマは30代の女性が若い男性とロマンスをすることを指す言葉。 とは言っても38歳の女性が24歳の男性とデートをすればプーマと言えるけれど、32歳が29歳と付き合ってもプーマとは呼び難いのは当然のこと。 プーマという言葉がクーガーほど知名度が無く、定着していないのは、30代という年齢が ”年上”を意味するにはあまりに曖昧であるためか、 それともプーマ”という言葉がクーガーと差別化するために こじつけのように登場したからなのか は分からないけれど、 ”クーガー”と呼ばれたくない30代女性は ”プーマ”の方を好んでいるのは確かのようである。

最後に国籍別で言うならば、年齢差を気にしない男性というのはフランス人、イタリア人など主にヨーロッパ人。 したがって、クーガーとの関係が上手く行くのも ヨーロッパ出身の男性が多いように思うけれど、 逆に最も相手の女性の年齢にこだわると言われているのは、日本を含むアジア諸国、インド、及びロシアの男性。
アメリカ人男性については、先述のように精神的にマチュアな男性がクーガーと交際する傾向が強いけれど、 ルックスにこだわる男性ほど相手の年齢にもこだわる というのが私の偽らざる感想なのだった。


Catch of the Week No. 4 Nov. : 11月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Nov. : 11月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Nov. : 11月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Nov. : 11月 第 1 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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