Dec. 6 〜 Dec. 12 2004




Botox Backlash



11月後半に、アメリカで大きく報道されたのが、フロリダのクリニックでボトックス注射を受けたカップルを含む4人が、 ボツリヌス症を発病して入院したというニュース。
ボトックス注射がボツリヌス菌で筋肉を麻痺させることによって、額、目尻、眉間のシワを消し去るのと同様、 ボツリヌス症とは、身体の筋肉が麻痺する症状を引き起こすもので、呼吸に使われる筋肉までが麻痺してしまうと、呼吸困難にも陥るという危険なものである。
このニュースが報じられてからというもの、ボトックスの製造元であるアラガン社の株価は下がり、 アンチ・ボトックス派のスキンケア・スペシャリストや、皮膚科医が 「ボトックスの危険性」について語る様子が報道番組に登場していたけれど、 その1週間後には、このスキンケア・クリニックで使われていたのが、実はボトックスではなく、フェイク・ボトックスであったことが 判明し、事態は全く新しい展開を見せることになったのである。

ボトックスは、現在アメリカで最も数多く行われているノン・サージカル・トリートメント (手術を伴わないトリートメント) で、 2002年に アメリカの厚生省に当たるFDAがコスメティック用途の認可を与えて以来 (ボトックスは以前から頭痛治療用途の認可は受けていた)、 その注入は1年で157%もアップし、2003年にアメリカ国内だけで行われたボトックス注射は289万回以上。 同年、アラガン社は$584ミリオン (約600億円)相当のボトックスを販売しており、これは 末端価格 (クリニックにおけるトリートメント料) にして 約$4000ミリオン (約4100億円) に相当するメガ市場となっていた訳である。

アラガン社側はこのドル箱プロダクトに傷がついては大変!ということで、事件報道から即座に調査を開始し、 フロリダのクリニックが過去12ヶ月の間に仕入れたボトックスが僅か2バイアル、 トリートメント回数にして5〜6回分であったとのことを発表。また同クリニックは、州への登記記載によれば、 本来ならボトックス注射を行うべきではない マッサージ・サロンであったとのことで、 加えて同クリニックでは、1バイアル488ドルの本物のボトックスを使用していたら、利益が上がらないような安価で ボトックス注射をオファーしていたことも明らかになっている。
実際のところ、クリニックで見つかったボツリヌス菌プロダクトは、 フェイクどころか パッケージには、「Not For Human Use」、すなわち「人間用ではない」とまで 小さく記載されていたとのことで、 これを受けて、メディアの報道は「ボトックス叩き」から、あっという間に「フェイク・ボトックス叩き」に移行することになったのである。

そもそもボトックスというのは、カリフォルニアのアラガン社の商標で、アラガン社の製品でなければ、 ボトックスを名乗ることが出来ない訳である。 したがって、よくインターネット上で発売されているボトックス同様の効果を謳った 「ボトックス・ジェル」なるものは、効果が得られない気休めプロダクトであるだけでなく、 商標悪用をしているくらいであるから、違法なブラック・マーケット・プロダクトと言えるものである。
こうしたフェイク・ボトックスが生産されているのはもっぱら中国で、BTA-A、ボツトックス(Botutox)といったブランド名で 出回っているもの。 昨年FDAは、これらのブラック・マーケット・ボトックスが密輸され、市場に出回っていることを捜査し、 クリニックを中心に警告を発したことも明らかになっている。
フェイク・ボトックスには、注入薬、ジェルなどの塗るタイプのものがあり、 「ボトックスより効果が高く、安全で安価である」利点を謳いながらも、 製造元に関する明確な記載が無く、そのマーケティングもダイレクト・メールや、ネット上のみでの販売であったりして、 いかにもブラック・マーケット商品にありがちな「草の根的」なものとなっているのである。

今回のフェイク・ボトックス騒動を受けて、その後のメディアでは「ボトックス注射を受ける際は、ライセンスを持っているだけでなく、ボトックスの トレーニングを受けた医師であることを確認すること。安価なトリートメントを提示しているサロンやクリニックは信頼しないこと」といった アドバイスが盛んに報じられ、「ボトックス叩き」が空振りに終わったことによる、 アラガン社に対するお詫び報道とも取れるセグメントが各報道番組に設けられる結果に終わっている。
しかし、たとえ本物のボトックスを使用していても、以前このコーナーで書いたように、水で薄めている場合もあれば、 認可されている用途とは異なる形でボトックスを使用するドクターも存在する訳で、 ボトックスが本物であっても、医師にモラルが欠けていた場合は、その効果や安全が保障されないのは言うまでも無いことである。

例えば、現在 韓国の女性の間では、アジア人にありがちな太いふくらはぎを コケージャン・モデルのような 細くてまっすぐなものにするため、ふくらはぎの筋肉にボトックス注射をするのが密かに流行しているという。
これはボトックスが筋肉を麻痺させるだけでなく、衰えさせる効果があるためだけれど、 これによってふくらはぎの筋肉が衰えて脚が細くなったとしても、 年齢と共に脚の筋肉がどんどん弱ってくることを考慮すれば、この注入が原因で、早くから杖を突かないと歩けない事態も 予想される訳で、まともにモラルや常識のある医師ならば、このようなトリートメントはしたがらないものである。

実際のところ、私自身、10月に4ヶ月ぶり、2度目のボトックス注射を額にしたけれど、その結果、自覚しているのが、 額の皮膚が若干薄くなったということである。 従って、韓国女性のふくらはぎが、ボトックス注射によって筋肉が落ち、肉薄になって、細く見えるというセオリーには、 個人的には非常に納得するところがあるのは事実である。
私が自分で額の皮膚が薄くなったのを自覚したのは、光の加減によって時々額の中心に見える血管の影が濃くなったと感じたためで、 この血管の影というのはジュリア・ロバーツも額の真ん中に太い線が走っていたりするけれど、 皮膚が薄くなれば、その分目立つものである。 このため、私は2度目のボトックス注射の1ヶ月後から皮膚をふっくらとさせ、 張りを持たせる特別のローションを使い始めることになってしまった訳で、実は私自身の中でも、 むくむくと盛り上がってきているのが、「ボトックス・バックラッシュ」とは言わないまでも、「本当にボトックスがべストなのか?」という複雑な思いなのである。

今年に入ってからは、美容整形の世界でも、それまでボトックスの独占状態だった 注入型トリートメントに、新たな トリートメントがどんどん加わり、それを試す人々が増えているけれど、 現在ボトックスに次いで使用が多いのがレスティレーン、ヒラフォームといった ヒアルロン酸ベースのフィラーである。
フィラーとは注入よって萎んだ肌に張りを持たせてシワを取るもので、 ボトックスの使用が適さない口の横の笑いジワに使用できることから人気を集めているものである。 また、ボトックスとは異なり「表情が無くなることがない」といった理由からこれを愛用するハリウッド・セレブリティも多いといわれているけれど、 現状では、顔の上半分にボトックス、下半分にレスティレーンというように、両者を併用するのがメイン・ストリームである。

でも、ヒアルロン酸ベースのフィラーに関しては、諸外国を大きく引き離して、使用量のトップとなっているのが他ならぬ日本で、 諸外国とは異なり、日本はボトックスよりも先に ヒアルロン酸の使用が広まった 特殊なマーケットでもある。
それだけに、日本では諸外国の医師が首をかしげる用途にまでヒアルロン酸の使用が及んでおり、 その好例と言えるのが、男性の性器にヒアルロン酸を注入して、サイズを大きく見せるというもの。
ヒアルロン酸は、人間の身体の至るところに生まれながらに存在する生体高分子で、 本来は皮膚、関節などの水分を保つ役割を担うものである。従って体内に注入した場合のリスクは 極めて低いとは 言われているものの、長期に渡る注入のデータが存在しないだけに、医師達は、長期使用に関するリスクについては ボトックス同様、明言を避けているのが実情である。

アメリカの美容整形で、一般的に使われているヒアルロン酸プロダクトは、先述のレスティレーン、ヒラフォームで、 前者はラボにおけるバクテリアの増殖によってクリエイトされたヒアルロン酸、後者はニワトリのトサカから抽出したヒアルロン酸を 原料としたプロダクトである。ヒアルロン酸は、この他にも豚の皮から抽出されたものが製品化されているけれど、 クォリティが高いとランク付けされているのは、バクテリアからクリエイトされたものである。
レスティレーン、ヒラフォームは、それぞれ分子のリンクをタイトにすることによって、ボトックスよりも長い 5〜6ヶ月の持続効果があると言われており、1シリンジを注入した場合の相場価格は750ドル。 ボトックスのような「毒」ではなく、年齢と共に失われていく、身体に本来存在していた物質を注入するという点も、 レスティレーンやヒラフォームが受け入れられ易いセールス・ポイントとなっている。

これと同じコンセプトで、顔中にヒアルロン酸やヴィタミン、ミネラル、アルファ・リポイック・アシッド等、 約20〜30種類の有効成分を注入することによって、皮膚にハリを持たせ、フェイス・リフト(シワ取りの整形手術)要らずに してくれるといわれるのが、メソセラピーによるメソリフトである。
現在、私はこのセッションをスタートしたばかりなので、これについては、また改めて結果をご報告することになるけれど、 このトリートメントはボトックスやレスティレーンを注入している肌にも行うことが出来る上に、 両者では改善出来ない肌の潤い、肌の成分のバランスを老化前に戻すといった効果が 望めるところがユニークなセールス・ポイントとなっている。

その一方で、私が現在通っているスキンケア・サロンで人気トリートメントとなっているのが、 エレクトリック・ウェイブ・フォーム・セラピーである。これは 年齢と共に失われていく顔の筋肉を鍛えなおすことによって、皮膚のたるみやシワを改善し、 下がってきた肌をリフトするというもの。
11月初旬のニューヨーク・タイムズ紙のサイセンス・セクションにも 「人間の顔の老化は、年齢を重ねるにしたがって 顔の骨と筋肉が徐々に失われるのが原因で、皮膚がたるむからではない」という 研究結果が掲載されていたけれど、このエレクトリック・ウェイブ・フォーム・セラピーは、まさにその顔の老化の原因となる 顔の筋肉の衰えを改善するものである。 ただ、このトリートメントはボトックスを注入した部分には行うことが出来ないのだそうで、そのことは ボトックスが筋肉を麻痺し、衰えさせるという 全く逆のトリートメントであることを考えれば、容易に理解出来るというものである。

こうした様々なトリートメントの他に、ボトックスと同じボツリヌス菌を用いたシワ取り特効薬、 「ディスポート」も現在、FDAの認可待ち状態となっていることがレポートされており、この認可が下りた場合、 アラガン社の独占市場が崩れ、価格競争が始まることも予想されるわけである。
でも2005年春に登場するプロダクトで、ボトックスの最大のライバルになるであろうと見込まれているのは、 そのアラガン社から登場するプリヴェージと呼ばれるアンチ・エイジング・クリームである。
これを購入するには医師の処方箋が必要となるけれど、フェイク・ボトックス・ジェルには見向きもしない 美容業界のスペシャリストが大注目しているのが このプリヴェージで、価格は未定ながらも、 スキンケア・プロダクトとして使用を続けるだけで、シワを取り除く効果に優れていると言われるプロダクトである。

このように様々なオプションが出てくると、「必ずしもボトックスがベストとは言えないのでは?」という 思いは益々強くなってくるけれど、1回のトリートメントで、最も確実に 額、眉間、目尻のシワを撃退しようとした場合、 現時点で受けられるトリートメントの中では、やはりボトックスがベストであることは、 美容業界、及び美容整形のスペシャリスト達も認めるところであるし、 自分の経験からも実感するところである。
私がボトックス注射の危険性として、あえて挙げるならば、ボトックスによって それまで気になっていたシワが消えてしまうと、 顔のたるみや、シミ等、他の問題が気になってきたり、若さや美しさの追求に欲が出てくることで、 実際ボトックスが引き金になって、次はライポサクション(脂肪吸引)、次はブレスト・アーギュメンテーション(豊胸手術)というように、 もっとシリアスな整形手術を受けたがるようになる人々は 非常に多いのだという。
その結果、本当に若く美しく見える人も居るかもしれないけれど、中には不自然な生き物になってしまう人も居るわけで、 その悲劇のきっかけとなりうるのが、ボトックス注射なのである。


さて、ボトックスに止まらず、昨今では ありとあらゆる処方箋薬のフェイクが出回っているけれど、 ネット上で最も数多く出回っているのが ヴァイアグラのフェイクである。
調査によればネット上で販売されているうちの約70%がフェイク・ヴァイアグラだそうで、 パッケージも薬の色も形もヴァイアグラそっくりであるために、ユーザーは殆ど気が付かないと言われている。 ただ、薬品としては本物のヴァイアグラよりも有効成分が少ないもの、多いものがあって、 少ないものだと効き目が現れない程度で済まされるけれど、成分が多いものになると心臓発作を引き起こす原因となるため、 販売元のファイザー社は、きちんと医師の処方箋をもらい、薬局で購入することを強く警告していたりする。

このように価格とプレステージの高いオリジナルが人気を集めれば、必ず出回るのがフェイクであるけれど、 その代表的存在と言えるのは、何と言ってもブランド物のフェイク・ハンドバッグである。 2003年は、その摘発がこれまでになく強化された年とも言われており、 ニュージャージーの港で、中国からの大量の密輸バッグが押収されたり、 チャイナタウンからフェイク・ブランド・ウォッチの販売が一掃される一方で、 路上販売、インターネット上での販売にも厳しい取締りが行われているのが現状である。
こうしたフェイク・バッグを輸入、販売するのが犯罪であることは周知の事実であるけれど、 「買うのは犯罪ではない」と思ったら、それは大間違い! 確かに自分用にバッグを1つ購入するのであれば「お咎めナシ」であるけれど、 2つ以上購入した場合、違法プロダクトを流通しようとしていると見なされて、罪に問われることになるのだそうである。






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