Dec. 8 〜 Dec. 14 2008




” True Happy Holiday ”


今週のアメリカで最も大きく報道されていたのは、先ず1つ目が 引き続き 自動車業界ビッグ3に対して$25ビリオン(約2兆2500億円)を投入するベイルアウト法案について。
国民の53%が反対していると言われるこの救済案は、10日に下院で可決されたものの、 12日には上院で 共和党の反対多数によって否決。 これにより同法案は棚上げ状態となってしまい、これを受けて週末は株価にもその影響が見られていたのだった。
既に国民側は 相次ぐベイルアウトに加えて、あまりに古い体質のビッグ3、及びUAW (ユナイテッド・オート・ワーカーズ、ビッグ3の労働組合のこと) の譲らない姿勢に ウンザリしているのが実情だけれど、 そんな中 今週人々を大笑いさせたインターネット上のパロディが写真右のもの。
これはバッファロービースト・ドットコムに掲載された 自動車広告を装ったベイルアウトを皮肉るジョーク。
GM、クライスラー、フォードの3社のロゴをフィーチャーした このパロディ広告のキャッチ・フレーズは、 「You wouldn't buy our shitty cars. So we'll be taking your money anyway / 貴方達(消費者)が我々のクソ車を買わないので 、我々はいずれにしても貴方達からお金を巻き上げることにしました。」 というもの。その下には 「The Bailout. Coming this January」 と、まるで1月に登場する新車の広告文句のように、 「ベイルアウトが1月にやってくる!」と謳われていたりする。
更に笑えるのが、その下に書かれているコピーで、その内容は「貴方達はクォリティに優れ、燃費も良く、再販価格も高い外国車を 買う方が 賢いと考えているかも知れません。 そして何年にも渡るシェアの低下で 我々が 考えを改めて もっとマシな車を作るようになるだろうと思っているかも知れませんが、 貴方達はたった1つ、重要なことを忘れています。 それは我々が多額の資金をロビーストに支払っているということ。 だから、貴方達は自分の買ったスバルの代金の他に、$25ビリオンを支払う羽目なったのです。 (これを考えれば))次回車を買う時、貴方はアメリカ車を選ぶかもしれない。 どちらにしても 我々(のビジネス) は安泰です。」 というもの。
このパロディ広告は、ロビーイング(ワシントンの政治家への働きかけ)で生き延びてきた自動車業界ビッグ3と、その横柄な態度を 如実に表すジョークとして、多くのメディアに取り上げられ、今週かなりの話題になっていたのだった。

もう1つ今週の大ニュースになっていたのが、イリノイ州知事、ブラゴヤヴィッチ逮捕の報道。
先週のこのセクションで、ヒラリー・クリントンNY州上院議員が次期国務長官に任命されたので、空席となった 上院議員ポストの任命権が、パターソンNY州知事にあることに触れたけれど、 それはバラック・オバマ氏が次期大統領になったために、上院議員のポストが1つ空席になるイリノイ州も同様のこと。
このブラゴヤヴィッチ州知事は、自らの任命権を利用して 上院議員のポストを事実上売りに出した容疑で逮捕されたもので、 彼はこの事実をつきとめて報道しようとしたシカゴ・トリビューンの記者をクビにするように同紙に働きかけ、 その見返りに、同紙による リグレー球場売却の手助けをすると 示唆していたことも FBIの盗聴によって明らかにされている。 とは言っても、ブラゴヤヴィッチ州知事の汚職は今に始まったことではなく、FBIは既にその捜査に過去3年を費やしてきたと 言われており、今週のメディアでは 彼と、 その汚職のパートナー的存在であったパトリシア夫人の、 1センテンスに放送禁止用語が2回も3回も登場する 盗聴内容が 大々的に報じられていたのだった。
私はブラゴヤヴィッチが逮捕された9日 火曜日の朝、CNBCを観ていたら そこに フィッツジェラルド連邦検事による事件の記者会見の模様が緊急報道として飛び込んできたので、 その様子を見ていたけれど、ブラゴヤヴィッチの盗聴テープの引用を読み上げるフィッツジェラルド検事が、 放送禁止用語をそのまま言う訳には行かないため、代わりに 用いられる 「Bleeping / ブリーピング」という言葉を 何度も何度も 真顔で読み上げていたので、 深刻な報道にも関わらず 途中からは まるで「サタデー・ナイト・ライヴ」のパロディでも観ているような気分になって、 笑いがこみ上げて来てしまったのだった。
ちなみにこの放送禁止用語とは、主にFワードのこと。Bleep/ブリープで置き換える場合は 「ファック」、Bleeping/ブリーピング で置き換える場合は「ファッキング」を意味するけれど、Bleep/ブリープとはそもそも 「ピー」という音のこと。 放送禁止用語を含んだコンテンツを放映する際に その言葉をピー音で消すこと、及び ライブ中継などで 不意に発言された放送禁止用語を ピー音で消すことは ブリープ・センサーと呼ばれており、アカデミー賞授賞式を始めとする ライブ中継番組の多くが5秒〜7秒遅れて放映されるのは、このブリープ・センサーを確実に行うため。
でも今回のような記者会見の場や、裁判、ニュースといった公の場で 放送禁止用語を含んだ コンテンツを読み上げる場合は、「ブリープ」、「ブリーピング」という言葉でそれを置き換えるのが一般的なのである。

週末にはバーナード・マドフ(英語での発音は ”メイドフ” )投資証券の マドフ氏がFBIに逮捕されたのも 大きなニュースになっているけれど、 現時点で見積もられている その被害額は$50ビリオン(約4兆5000億円)。これは、英語で Ponzi Scheme / ポンジー・スキーム と表現される ねずみ講&自転車操業詐欺、すなわちマルチ商法が からくりのケース。 市場動向に関わらず、10%以上のハイリターンを繰り返したマドフ投資証券には、ニューヨーク・メッツのオーナー、フレッド・ウィルポンを含む メガ・リッチを始め、日本の野村證券やジュネーブのヘッジファンドなども投資していたことが伝えられているのだった。


さて、ホリデイ・シーズンも半ばを迎えているけれど 今年のクリスマスは例年よりもゆったりとしたスケジュールで 過ごせる人々が多いことが報じられているのだった。
その理由は、今年はギフトやクリスマス・カードを自粛する人が増えているのが1つ。 更に、レイオフされて働く必要が無い人々が 昨年より120万人以上増えていることもあるけれど、 仕事がある人でも企業が 給与と暖房代、オフィス維持費を節約するために 会社をクローズし、 従業員に対して半強制的に 1週間〜2週間の休みを取らせる例が増えているという。
大企業の中ではヒューレット・パッカードが例年1週間のの休みを 今年は2週間に延長することを発表しているというけれど、 これは要するにビジネスがあまりに振るわないために会社を開けておくより、閉めてお金を節約した方が 会社の利益になるという判断によるものである。

そんなゆったりしたホリデイ・シーズンを 人々がどんな風に過ごしているかと言えば、Eポール・マーケット・リサーチの 調査によれば、第1位が 「ステイング・ローカル」 。 これは 友人を家に招待してのディナーやパーティー、公園の散歩など、 家や家の近所で出来るアクティビティのこと。
第2位は 「読書、新聞やマガジンを読む」。 3位が「TVを観る」。4位はフェイスブックに代表されるような 「ソーシャル・ネットワーキングのウェブサイトをブラウズする」。 そして第5位は「DVDで映画やドキュメンタリーを観る」 というもの。
逆に このホリデイ・シーズンに控えるようになったアクティビィティと言えば、 第1位が「ダイニング・アウト」、すなわち外食。 第2位が 「ショッピング」。 3位が 「バケーション」。 4位が 「ウィークエンド・トリップ」。 そして第5位が「映画館に出かける」 で、確実に家に居る時間が増えている アメリカ社会のライフスタイルを感じさせているのだった。
こんな 人々が映画館にも行かないご時世だと、その客足がブロードウェイのシアターから遠ざかるのは無理も無いこと。 これを受けてブロードウェイでは 15のショーが クローズに追い込まれることが見込まれており、 その中には「オペラ座の怪人」、「グリース」、「ヘア・スプレー」といったお馴染みのミュージカルも含まれているという。

デパートや小売り店の売り上げが過去35年間で最低と言われ、2009年には更なる失業者が見込まれているアメリカであるけれど、 その雇用状況で 興味深いデータが昨日 12月13日付けのニューヨーク・タイムズに掲載されている。
それによれば、失業が相次いだ今年の9〜11月の3ヶ月を、昨年2007年の9〜11月と比較すると、 主に仕事を失っているのは44歳以下の若い層で、55歳以上は昨年と比較するとこの時期に 就労数が増えていることが ビューロー・オブ・レイバー・スタティスティックの調査によって明らかになっているのだった。 ことに増加が顕著なのが55〜64歳で、昨年に比べて55万9000人が新たに職を得ているとのこと。 逆に最も仕事を失っているのが35〜44歳で、 失われた職の数は105万3000。次いで失業が多かったのは25〜34歳で、 43万8000の職が失われたというデータが得られているのだった。

実際にアメリカ人の友達と話していると、時折 レイオフされた友人の話が出てくるけれど、 先日、ニューヨーク・ポストで特集されていたのがそんなレイオフされた友人との付き合い方。
ここでは、「ドリンクや食事を数回ご馳走して上げるのは構わないけれど、習慣化させないように」 とか、 「変に同情して、レイオフされた友人に恥をかかせないようにするべき」、「持ち寄りのホームパーティーなど、 お金が掛からないアクティビティを企画する」、そして「決してお金は貸さないこと」といった 専門家からのアドバイスが掲載されているのだった。

また、レイオフされた友人の関係と同じくらい難しいと見なされているのが、 苦しくなった家計の中で、親達が子供たちに対して どうやって 今年は高いプレゼントが買えないこと、 クリスマスのバケーションに出掛けられないことを説明するか?という問題。
親としては子供にお金の心配はさせたくないし、無理をしてでも子供にプレゼントを買ってあげたいけど、 住宅ローン、クレジット・ローンに追われる中で、レイオフされたような場合、 そんな余裕が無いのは当然のこと。 これに対する専門家のアドバイスは、「子供に景気が悪い時があることを教えて、 プレゼントではなく、何か特別な思い出が残るようなクリスマスをお金を掛けずに体験させてあげるべき」というもの。
こんなアドバイスを聞くと、大人も子供も 「プレゼントの無いクリスマスなんて、嬉しいはずが無い・・・」と思うようだけれど、 実際にはそんな事はないというのは 私自身の経験から言えることである。

私の場合、クリスマスではなくて誕生日の経験であるけれど、私の誕生日は夏なので クリスマスに生まれた姉とは異なり、 家族にはよく忘れられがちだったのである。 確か中学生の時の誕生日だったと思うけれど、その時は母が不在だったのか、珍しく父がキッチンに居て よく熟れた桃をナイフで むこうとしていたのだった。その父に 「今日は私の誕生日」 だと話すと、「そうか、今日は誕生日か。じゃあ桃をむいてあげよう」 と 言って、私の分の桃もむいてくれたのだけれど、その時の私のリアクションは 「桃をむいてくれるのがプレゼントだなんて・・・」 というもの。
でも今になって振り返ってみると、誕生日に買ってもらったプレゼントは この記憶力抜群で 物質至上主義の私が 殆どと言って良いほど覚えていないけれど、その時 珍しく父に桃をむいてもらった思い出は 物凄く鮮明で、 「あの時に父に桃をむいてもらって良かった!」 と 今では心から思っているのだった。
一方の桃をむいてくれた父は、このエピソードを全く覚えていなかったけれど、 子供の心にどんな思い出が刻み付けられるかは、親には全く想像が付かないもの。 だから、「子供を喜ばせるにはプレゼントが一番!」 などと 勝手に判断して 無理にそれを購入する必要は無いという意見には 私も全く同感なのだった。

これと共に言えるのは、リセッションになってからの方が アメリカの社会全体が、それまで当たり前だと思ってきたことに 有り難味や幸せを見出すようになってきたということ。
2週間ほど前、私にとって NYで出会った 初めての親友と 久々に電話をしていた際に 話していたのが、こんな経済の先が見えない時だからこそ、 リセッションをジョークにして笑い飛ばせる友達や、家族と迎えられるホリデイが、 今まで以上に価値があるものに感じられるということ。 今はマイアミに暮らしている彼女であるけれど、距離が離れていても 親友から変わらない友情や精神的なサポートが得られるのは、お金に替えられない幸せ。
そういう幸せが見出せるからこそ、たとえ 世の中はリセッションでも 心豊かにホリデイ・シーズンが過ごせてしまうのである。





Catch of the Week No. 1 Dec. : 12 月 第 1 週


Catch of the Week No. 5 Nov. : 11 月 第 5 週


Catch of the Week No. 4 Nov. : 11 月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Nov. : 11 月 第 3 週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。