Dec. 7 〜 Dec. 13 2009




” タイガー・ウッズ、転落の原因 ”


今週のアメリカでも、引き続きタイガー・ウッズの不倫騒動がメディア報道の大半を占めていたけれど、 これだけ毎日のように大騒ぎになる原因の1つは、毎日のように新しいネタが次から次へと出てくるため。
例えば、月曜にはエリン夫人が このスキャンダルが明るみになる以前に、既に自分の名義でスウェーデンに家を購入し、 タイガーとの結婚生活からのエスケープを計画していたことが報じられ、 火曜には、エリン夫人の母親が突然フロリダの家で倒れ、救急病院に運び込まれたことが大きく報じられたのだった。 そして水曜にはタイガーがエスコート・サービス(早い話が売春婦)に大金を支払って、セックスを楽しんでいたことが報じられ、 エスコート嬢はタイガーが支払った日本円にして数十万円のフィーで太もものリポサクション(脂肪吸引)をしていたことが明らかになったかと思えば、 木曜にはタイガーとの3年にも渡る関係を告白したジェイミー・グラブス (写真上、ニューヨーク・ポスト紙左側の表紙に赤いドレスでフィーチャーされている女性)が タイガーとの間で取り交わした携帯メールの内容を公開。 世界一のゴルファーとて、浮気の携帯メールの内容は その辺の男性と大差ないことを露呈していたのだった。
そして金曜には3大ネットワークの1つ、NBCの高視聴率モーニング・ショー「トゥデイ」で、ラスヴェガスのランジェリー・モデル、 ジェイミー・ジャンガー(写真上、ニューヨーク・ポスト紙の中央の表紙にフィーチャーされているブロンドの女性)が、タイガーの愛人として初めてTVの生放送インタビューに応え、 彼との1年半の関係について語っていたのだった。 その中で彼女は家賃が払えないほどお金が無くなってタイガーに数百ドルのサポートを求めたものの、彼はそれを拒み、 彼女はタイガーからプレゼントはおろか、バースデー・カードさえ受け取ったことが無いことを明らかにしているのだった。

こうした報道と共に、インターネット上やエンターテイメント番組がフォーカスを当てたのが、まずタイガーが不眠症で アンビアンという処方箋睡眠薬をヘビーに常用していたという事実。 さらにタイガー・ウッズがセックス・アディクト(中毒)ではないか?という憶測も飛び交っていたけれど、 彼が愛人に電話番号を教える際に、「電話を失くした場合に備えて、自分の名前は入れないように」と指示するなど、 計画性のある不倫をしていたことから、「見境 無くセックスを求める”中毒” とは言い難い」という判断が下されていたのだった。
でも今週の報道で最もインパクトがあったのは、金曜に発表された タイガー・ウッズが 暫しPGAツアーから遠ざかるというステートメント。
この声明によればタイガーは、「より良き夫、父親、人間になることにフォーカスするために プロ・ゴルフから無期限の休息を決心をした」とのことだったけれど、 翌日、土曜日に放映されたNBCの人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」では、 「そうは言っても、彼の問題はゴルフではない」と コメントされ、会場の爆笑を誘っていたのだった。

実際、先週から今週にかけて、タイガー報道と共に アメリカで盛んに聞かれているのがタイガー・ウッズ・ジョーク。
例えば、ニューヨーク・ポスト紙の報道では、次々と出てくる愛人のリストを 1番ホール、2番ホール、3番ホールなどと記載しているし、 大真面目なニュース報道でも、タイガーの愛人が次から次へと出てくることに対して、「愛人の数はゴルフのスコアと同じで ”レス・イズ・モア (less is more / 少ないほど良い)”」などとコメント。
また写真左は、先週日曜に行なわれたNFL ジャクソンヴィル・ジャガーズ対ヒューストン・テキサンズの試合のハーフタイムの模様であるけれど、 真っ赤なゴルフシャツとブラックのゴルフ・キャップを被った着ぐるみのタイガーをエリン夫人をイメージさせるブロンド女性が9番アイアンを手に持って 追いかけている様子は、スタジアム中の大爆笑を買っていたのだった。
この他、トークショーでもタイガー・ジョークは手を替え品を替え 登場しており、 毎日のように新しい報道がされるだけに、そのネタは尽きることが無いといった印象だけれど、 タイガー・ウッズがこんな風にジョークのネタを提供し続ける存在になることは、3週間前だったら 考えられないことなのだった。

その愛人の数は、今や本人が認めていないものも含めると既に14人に達しており、もう直ぐでワンラウンドというところまで来ているけれど、 それと同時に次々と明らかになるタイガー・ウッズの性癖が 彼のイメージを大きく傷つけているのは言うまでもないこと。
例えば、エスコート・クラブのマダムのコメントによれば、タイガーウッズは複数のエスコート嬢と一度に関係するために約600万円を支払ったとのこと。 さらに、愛人のうちの何人かは彼がコンドームを使用しないセックスを好んだと証言。 加えて愛人達は 彼が好むラフなプレーについても詳しくコメントしており、 このコメントを受けて今週、 愛人No.1ホールと言われるレイチェル・ユカテルは、性病テストを受けたことも報じられているのだった。
こうした報道を受けて、今週月曜に発表された CNN、USAトゥデイ紙、ギャラップ・ポールが共同で行なった世論調査によれば、 タイガー・ウッズに対して好意的な意見を持つ人々の割合はスキャンダル前の84%から60%にダウン。 彼に対して好意を抱かないと応えた人々の割合は、スキャンダル前の9%から25%にアップ。 また、マーケティング・リサーチとブランド・クリエーションで知られる ミルワード・ブラウン社の調査によれば、 スキャンダル前はタイガー・ウッズに対して 「ネガティブなイメージを持っている」と答えた人々が僅か2%であったのに対して、 現在はその数字が 何と80%にまでアップしているのだった。

こうしたネガティブな世論の影響を最も気にかけるのはスポンサー達。
タイガー・ウッズが出演するCMは、今回のスキャンダル以降すっかりオンエアされなくなっているけれど、 今週明けには、まずスポーツ・ドリンクのゲータレードが「スキャンダル以前からの決断」としながら、 タイガー・ウッズをフィーチャーしたドリンク、フォーカスの発売中止と、現在の契約の更新をしないことを決定。 さらにタイガーがプロゴルフからの休息宣言をした翌日には、彼を2007年からCMにフィーチャーしてきたジレット社が、 タイガー・ウッズのスポークスマンとしての役割を軽減させることをコメント。 ちなみに同社はタイガーと4年の契約を結んでおり、年間約5億円程度が支払われているのだった。
この他 2003年以来、タイガー・ウッズのイメージをマーケティングに起用し、年間約15億円を支払ってきたコンサルタント会社、アクセンチュアも、 タイガーの写真をホームページから削除し、「彼はもはや企業イメージにそぐわない」として契約の終焉を宣言。 タイガーのゴルフ・バッグや傘に そのロゴをフィーチャーしている 全米最大手の電話会社、AT&Tも金曜には 「現在タイガー・ウッズとの広告契約について、 検討している最中」であるとコメントしているのだった。
この他にもタイガー・ウッズのメジャーなスポンサーと言えば、5年間で120億円の契約を結んでいる ナイキ、タグ・ホイヤー、ビデオ・ゲームを製作するEAスポーツなどがあり、これらからタイガーが得ている年収は約100億円。
ニューヨーク・ポスト紙によれば、それ以外にもタイガーはトーナメントの賞金として約20億円、彼がデザインしている3つのゴルフ・コースの フィーとして約30億円、さらにマイナーなイベントに登場してプレーをするアピアランス・フィーで年間約17億円を稼ぎ出しているという。
でもこれらの収入はタイガー・ウッズがクリーンなイメージでゴルフをプレーしているからこそ得られる収入。 彼がプロ・ゴルフからの無期休息宣言をした後は、ここからかなりの収入が目減りすることが見込まれているのだった、

でも、収入の目減りが見込まれるのはタイガーだけではなく、タイガーをトップ・スターとしてフィーチャーするPGAや、ゴルフ業界全体とて同じこと。 今回のスキャンダルで、ナイキのタイガー・ウッズ・ブランドの売り上げが35%ダウンすることが見込まれているというけれど、そのダメージは何と約455億円。
またタイガー・ウッズが出場しないトーナメントのPGAのチケット売り上げは25%ダウンするとのことは、タイガーが昨年 怪我で ツアーを離れていた時点に立証されているけれど、タイガーが向こう1年ツアーに参加しない場合、PGAは約40億円のチケット売り上げを失うという。 さらに、タイガーが出ないトーナメントはTVの視聴率も下がることが伝えられているだけに、PGAトーナメントの放映局もそれにしたがって 広告収入を 失うことが見込まれているのだった。
ニューヨーク・ポスト紙はこうしたゴルフ業界全体の年間損失総額を約590億円と見積もっており、 ゴルフの世界がいかにタイガー中心で回っていたかを 今更のように実感させているのだった。

加えて、メディア及び広告関係者が驚いているのは、タイガー・ウッズが13年にも渡るプロ生活で、緻密に築き上げたクリーン・イメージのビジネス・エンパイアが、 今回の愛人問題が原因で 僅か2週間で存亡の危機に瀕しているという事実。
それだけに、業界関係者の間では 「こんな状態になる以前に、もっと有効な手は打てなかったのか?」という疑問も浮上しているのだった。
これに対して、タイガー・ウッズを取材し続けてきたメディア関係者は、 これまでメディアのターゲットになることを上手くかわし続けてきたと同時に、 初のビリオネア・アスリートとなってメガ・サクセスを収めたタイガーが、自分のメディアとファンに対するパワーを過信していたことを指摘。
実際、PGAツアーのプレーヤー 及び関係者の間では、タイガーに愛人が何人も居ることは既に誰もが知る周知の事実で、 PGA関係者は、今になって 彼の愛人問題が 「そんなにニュース・バリューがあるネタだったのか!」 と驚いていることが伝えられているのだった。
また今週 「トゥデイ」のインタビューに応じたジェイミー・ジャンガーにしても、タイガーとは堂々とラスヴェガスでデートをしており、 決して密会していた訳ではないこと、時に旅行者がタイガーと自分の写真さえ撮影していたことを語っているのだった。

でも浮気、不倫というのは、PGAツアーでは決して珍しいものではないもの。
プロゴルファーというと、お腹が出た既婚者というイメージで、プロ・スポーツ選手の中で最も”セクシー” とはかけ離れた存在であるけれど、 やはりそんな世界にもグルーピーが存在しており、グルーピーとの浮気が原因で離婚に追いやられるプレーヤーも居ることが伝えられているのだった。
もちろん、そうした既婚男性の間では 愛人問題というのはお互いに理解を示し合うもの。 なので、これまでPGAツアーの実態が語られずに済んで来たのも、そうした男性間のギルドのお陰と言っても過言ではないのだった。
タイガー・ウッズにしても、彼が愛人のレイチェル・ウチテルをオーストラリアのトーナメントに同行させた際、彼の幼い頃からの友人が 彼女の飛行機のチケットを購入して 彼女に渡しており、 男友達のヘルプが彼の不倫をサポートしていたことが明らかになっているのだった。

さて、目下のアメリカでのメディアの関心は、タイガーの無期PGA欠場が何時まで続くのか?であるけれど、 彼が今トーナメントに出場したがらないのは、メディアのさらし者になりたくないため。 メディア関係者は、少しブレークを取って トーナメントでカムバック優勝を果たすのが 彼の地に落ちたイメージを 回復する唯一の手段であるという声もあれば、オプラ・ウィンフリーのトークショーに出演して ”涙の謝罪インタビュー” に応じるべき という声も聞かれている状態。
でも私がエリン夫人だったら、複数の愛人と不倫をして自分を辱めた夫と ”無期限”で一緒に過ごすよりは、 夫がゴルフに出掛けて居なくなってくれて、稼ぎだけは入ってくる状況の方が 遥かに好ましい上に、 結婚生活を続け易いと思えるのだった。






Catch of the Week No. 1 Dec. : 12月 第 1 週


Catch of the Week No. 5 Nov. : 11月 第 5 週


Catch of the Week No. 4 Nov. : 11月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Nov. : 11月 第 3 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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