Dec. 6 〜 Dec. 12 2010




” 2010年クリスマス・ギフト事情 ”


今週末のアメリカでは、中西部が積雪50cm以上の大雪に見舞われており、ミネソタ州 ミネアポリスでは フットボール・スタジアム、 メトロドームのテフロン製の天井が雪の重さで崩れ落ちるトラブル(写真右)に見舞われたほど。
またニューヨーク・エリアでは大雨のため、郊外を中心に洪水のトラブルが起こっており、JFK、ラガーディア、ニューアークという3つの空港では、 いずれもフライトが1時間〜2時間遅れ。シカゴのオヘア空港では、寒さのため約1000のフライトがキャンセルされたことが伝えられ、 各地で天候のトラブルに見舞われていたのだった。

そんな中、今週アメリカで最大のニュースとなったのは オバマ大統領がブッシュ政権下で可決された富裕層に対する減税案を2年延長することで 共和党指導部と合意したという報道。富裕層に対する減税廃止は オバマ大統領が 2年前の大統領選挙で掲げた公約の1つであるけれど、 11月に行なわれた中間選挙での敗北を受けて、富裕層を優遇する共和党に妥協をせざるを得なかったのがこのポイント。
オバマ大統領は 合意に達した翌日、7日に緊急記者会見を開き、「ミドルクラスに対する減税や、失業保険の支払い延長が ”人質に取られた状態”」と 妥協の理由を説明。すなわちミドルクラスと失業者を救おうという民主党政策を推し進めるための”身代金”として、共和党の富裕層減税案の延長を 受け入れたという釈明をしていたのだった。
でも、この大統領の妥協が 税収の激減を意味し、既に歴史的な負債を抱えるアメリカに 数十兆円の新たな負債をもたらすのは言うまでも無いこと。 このため、この妥協は大統領の身内、民主党内から大きな反発を買っていたけれど、大統領の経済アドバイザーや 元クリントン大統領は 「景気の回復なくして、負債を減らすことは出来ない。そのためには減税は必至」と大統領の判断をサポートしていたのだった。


その一方で、ニューヨークでは週末になって2つの死亡事件がダウンタウンで起こっているけれど、 その1つは メンバー制のエクスクルーシヴなクラブ兼ホテルとして知られる ミートパッキング・ディストリクトのソーホー・ハウス(写真左、下段)で起こった殺人事件。
ソーホー・ハウスと言えばTV版の「セックス・アンド・ザ・シティ 」のエピソードにも登場し、今年夏にはサッカー・プレーヤーのロナウドが ロシア人モデルのガールフレンドとプールサイドでデートを楽しむ姿がスナップされたスポット。
そのソーホー・ハウス内のホテルのバスタブで、木曜の夜中に死亡が発見されたのが、ヴィクトリアズ・シークレットなどのスイムウェアのデザインを手掛け、 自らのブランドを展開していたデザイナー、シルヴィー・キャシェイ (32歳、写真左、右側)。 一方、事件の容疑者として起訴されたのは グラミー賞を受賞した作曲家の息子、ニック・ブルックス (24歳、写真左、左側)。 彼は、ドラッグとアルコールを常用するスラッカー(仕事をしたがらない人々の総称)で、彼と以前交際していたシルヴィー・キャシェイは 彼に「きちんとした仕事を見つけない限り、もう交際しない」と言い続けていたとのこと。
ニックの父親、ジョゼフ・ブルックスは著名な作曲家でありながら、昨年、複数の若い女性に対するレイプ、性的虐待の罪で有罪になっているのだった。


もう1つの事件は、2008年に米国史上最高被害額のねずみ講 詐欺事件で逮捕され、後に150年の禁固刑の判決を受けた バーニー・メイドフ(写真右、一番左)の息子、マーク・メイドフ(写真右、一番右)がソーホーの自宅で、犬のリーシュ(散歩用の引き紐)で首を吊って自殺していたというもの。
事件が起こった12月11日、土曜日は、父バーニー・メイドフ逮捕から2周年の日。
マーク・メイドフは警察の捜査が及びながらも、未だに起訴には至っていない状態。でも、金曜のウォール・ストリート・ジャーナル紙は、 父親のビジネスで働いていた彼と弟の刑事訴追の可能性を報じていたのだった。さらに最近になって 詐欺被害者達が、バーニー・メイドフ夫人のルース(写真右、中央)と、 マーク・メイドフを含む3人の子供達を相手取って起こしたのが、200億円を超える賠償金請求の民事訴訟。
加えてマーク・メイドフは、起訴はされていなくても、 もはや金融の世界で働くことは出来ず、仕事が見つからないことも指摘されていたのだった。 とは言え、マーク・メイドフは、バーニー・メイドフの息子として、これまでに 父が経営していた会社から約66億円の給与を受け取り、 ニューヨーク、コネチカットを始めとする高級住宅街に家を3軒所有。贅沢なライフスタイルを楽しんでおり、父親の詐欺に加担していたか否かは別として、 その恩恵を受けた優雅な暮らしをしていたことは確かなのだった。



さて、好調が伝えられるアメリカのホリデイ商戦であるけれど、果たして、一体何が売れているのかと言えば、 家電では引き続きフラット・スクリーンの大型TV。でも言うまでもなく、2010年のベストセラー・ギフトになっているのがアイパッド。
アメリカでは アップル・ストアだけでなく ディスカウント・ストアから大型家電店、ネット上などにも販売網が拡大して 益々売り上げが伸びており、アップル社によれば年内のアイパッドの販売数は1290万台に上るとのこと。 そして来年、2011年にはその数が3650万台に達することが見込まれているのだった。
現在噂されているのが、来年春には現在の半分のサイズのアイパッドが発売されるというもので、 これはアイフォンの約2倍のサイズであるという。

アイパッドというとティーンエイジャーへの贅沢なプレゼント、大学生、社会人が自分へのクリスマス・プレゼントにするアイテムと考えられがちであるけれど、 都市部の裕福な家庭を中心に、「最もお金がかからないベイビー・シッター」 と言われているのがアイパッド。 幼児が大人顔負けにアイパッドを使いこなし、3歳児ともなれば 母親のアカウントを使ってアプリも自分でダウンロードするとのことで、 子供達がアイパッドで 何時間も大人しく遊んでいる様子は 既にメディアによって大きく取り上げられているのだった。


富裕層の間では、リセッション中には控えめだった ジュエリーのギフトが 復活しているようで、 このクリスマスは久々に高額なジュエリーの人気が伝えられているのだった。
ダイヤモンドは80%のセールスが 最も一般的なブリリアント・カットであるというけれど、 高額ジュエリーで人気なのは クッション・カット(写真右)、プリンセス・カット、ラディアント・カットというスクエアなカット。
ダイヤ以外では、プリンス・ウィリアムの婚約の影響もあってサファイアが一番人気。次いでエメラルド、3位が意外にもタンザナイト、 そして4位がルビーであるという。


一方、2010年のクリスマスにアメリカ人の63%がギフトに選ぶと答えているものの、アメリカ人の僅か13%がギフトとして受け取りたいと思っているのが ギフト・カード、すなわち商品券。
日本では「余計な品物を貰うよりも、商品券を貰うと嬉しい」 というイメージがあるけれど、アメリカではギフト・カードというのは セカンド・ティアー・フレンド、すなわちあまり大切ではない友達へのギフトとして知られるもの。 要するに「相手の欲しい物が何だか分からないほど関心を払っていない人へのギフト」と見なされるわけで、 ”買うのも 送るのも 簡単” という点も、「手抜きギフト」と見なされる要因。
しかも受け取った側は、貰った金額を使い切るために、殆どの場合自腹を切ることになる上に、 郊外、地方に住む人々はギフト・カードを使うために1時間以上、ドライブしてストアに行かなければならない場合もしばしば。 また、ストアの中には 「ギフト・カードによる購入不可商品」を設けるところがあったり、ギフト・カードで購入したものを返品する場合に 厳しいルールを設定するところもあって、ものによっては使わずにギブアップした方が 労力と時間を無駄にせずに済む、といったものも 少なくないのだった。

でもギフト・カードを発行するストアにとっては、ギフト・カードほど売れて有難いアイテムは無いという。 この理由は消費者がギフト・カードを不便と思う理由の全く反対。
すなわち「ギフト・カードを使い切るために、余分な買い物をしてもらえる」、「消費者が使わずにギブアップしてしまうケースが少なくない」 というのがメジャーな理由で、もちろん消費者が貰ったギフト・カードを使わなければ、送った側が支払った金額は 全て店側の利益になる訳である。
実際、昨年2009年だけでも 消費者が使わなかったギフト・カードの総額は、なんと50億ドル(約4195億円)。 「Easy Come、Easy Go」ということわざがあるとおり、自分で苦労して稼いだお金だったら、たとえ20ドルでも使い道にこだわるような人でも、 人から貰った100ドルのギフト・カードというのは、意外にもあっさりギブアップしたり、貰ったことさえ忘れてしまったりするものなのである。

店側にとっては、 ギフト・カードを販売するという行為は、 品物を売ること無しに 先にお金だけを受け取るという事であるから、 結果的に 利息無しでお金を借りているのと同じこと。 なので ギフト・カードのビジネスは、店側にとっては利点が非常に多いことが指摘されているのだった。
ちなみに、ギフト・カードでも相手の好みを繁栄したもの、例えば写真左上のアイチューンのギフト・カード、 スターバックスのギフト・カードなどは、比較的嫌われないと言われるもの。
昨今では ギフト・カード・ブームを反映して、ギフト・カードを人々から買い取って再販するビジネスが繁盛しているようだけれど、 そうしたサイトで人気が高いギフト・カードは、ターゲットやギャップ、家電大手チェーンのベスト・バイ等のギフト・カードであるという。


今週友達と会って話していたのも、100〜200ドルの予算の場合、ギフトとして何が欲しいか?何を贈るべきか?という話題。 というのも、家族や親しい友人へのギフトはこの予算圏内が非常に多いとのことなのだった。
アメリカ人の女友達は、この値段圏内だとアパレルを選ぶケースが非常に多いけれど、 私が個人的に選ぶのは、値段相応のものよりも 自分のためだったら絶対この値段は出さないというようなもの。 例えば、私が以前、ギフトとして馬鹿の1つ覚えのように贈っていたのが、ティファニーのボールペン。 自分はペンをしょっちゅう失くしてしまうので、自分のためには決して買わないけれど、人に贈ると、 相手も「自分のためにはこんな高いペンは買わないから、貰うと嬉しい」と言って、非常に喜んでくれたのだった。
自分自身の場合を振り返ってみても、今まで もらったギフトで忘れられないものの1つがキャビア。 「自分ではこの値段は出さない」というようなキャビアだったので、本当に嬉しかったのを覚えているのだった。


アメリカ国内における 昨年から過去5年間のクリスマス・ギフトのベストセラーを遡ってみると、昨年、2009年はデジタル・ブック・リーダーのヌック(Nook)、 2008年は子供用玩具のエルモ・ライブ、 2007年がアップルのアイタッチ、2006年がソニーのプレーステーション3、そして2005年が マイクロソフト社のXボックス 360。
こうして見てみると、ハイテク・ガジェット系が非常に多いことが分かるけれど、それほどまでに 現代人の生活に深く関わっていると同時に、現代人が1日の長時間を費やしているのがハイテク・ガジェット。
今日、12月12日付けのニューヨーク・タイムズ紙の第一面には、現在爆発的な大人気を誇っているゲーム、「アングリー・バード」(写真右)が記事になっていたけれど、 同ゲームは「フェイス・ブック以来の時間の無駄!」、「2010年のポップ・カルチャーを象徴するゲーム」と言われるほどのメガヒットになっているのだった。
携帯電話ヴァージョンのダウンロード数は2009年1年間だけでも5000万回を超えていたというけれど、「アングリー・バード」がアピールするのは、 Xボックスやプレーステーションのような シリアスなゲームを楽しむ人々ではなく、スーパーのレジの待ち時間や通勤中の時間を 楽しく潰したい というような人々。
同ゲームの有料ヴァージョンは、アップルのアプリ・ストアだけで1000万回ダウンロードされ、800万ドル(約67億1200万円)の売り上げを記録。 もちろんアップル社にとっての2010年度のベストセラー・アプリになっているだけでなく、 世界中の人々が、合計で1日に2億分を費やしているという中毒ゲーム。 制作費は僅か10万ドル(約830万円)であるというから、まさにドル箱ビジネスなのだった。
目下、シリコン・ヴァレーでは、 同ゲームに続くような メガヒット・アプリを生み出してマルチ・ミリオネアになろうという 次世代のマーク・ザッカーバーグ(フェイスブックの創設者)や、 それに投資しようという金融ビジネスが活発な展開をしていることが伝えられているのだった。

もちろん、この背景にあるのはスマート・フォンやアイパッドの猛烈な普及。
そしてそれがギフト商戦にも繁栄されてきている訳で、一流デザイナー・ブランドがこぞってアイフォン・ケースやアイパッド・ケースを 手掛ける理由も、こうした社会状況を考えれば大いに理解できるのである。


Catch of the Week No. 1 Dec. : 12月 第 1 週


Catch of the Week No. 4 Nov. : 11月 第 4 週


Catch of the Week No. 3 Nov. : 11月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Nov. : 11月 第 2 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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