Dec. 5 〜 Dec. 11 2011

” Seasons of Joy & Weight Gain ”

今週のアメリカでは特に大きなニュースが無かっただけに、報道時間が割かれていたのが、 俳優のアレック・ボールドウィンが離陸寸前のアメリカン航空の機内で、フライト・アテンダントの警告を無視して ビデオ・ゲームを続けたために、飛行機から追い出されたというニュース。
短気で知られるアレック・ボールドウィンであるだけに、機外に連れ出されるまでには かなりのいざこざがあったようで、 しかも、彼はフライトから追い出された怒り心頭の状態で、ツイートしたことから、その内容も物議をかもしていたのだった。

この状況を受けて、アレック・ボールドウィンはツイッターのアカウントをクローズし、その後はメディアのウェブサイトを通じて 彼側の言い分を発信していたけれど、それと同時に今週、報道時間が割かれていたのがTSA(米国運輸保安局)がジョン・F・ケネディ空港の セキュリティ・チェックで、3人の年配の女性に対してストリップ・サーチをしていたというニュース。
3人の年配女性は、共に健康上の理由からボディ・スキャンではなく、パットダウンと呼ばれる係員の手によるサーチを受けることにしたというけれど、 別室に連れて行かれて、下着までもを脱がされたとのこと。そのうちの1人は車椅子の利用者で、 調べの最中、自分の足で立つことを強いられて、怪我をしたこともレポートされているのだった。
でも、こうした訴えに対してTSA側が、特に調査もせずに 「TSAにはストリップ・サーチのポリシーは無い」とコメントしたため、 ニューヨーク州のチャック・シューマー上院議員が 正式にTSAに調査を依頼し、TSA職員の行き過ぎた行為に対する監視が不十分であることを公に訴えていたのだった。

TSAのセキュリティ・チェックは、今年春には 幼い子供をテロリストの要注意人物のように調べたことで顰蹙を買い、このホリデイ・シーズンから 幼い子供については靴を脱がなくても良いことになったけれど、TSAは「テロ防止のため」を謳って、時に職員が職権乱用と言えるような 横柄で高圧的な態度で乗客を扱うことが問題になって久しい状況。
特にTSAの職員の問題が頻発しているのが、ジェット・ブルー(比較的低料金のアメリカ国内線)のターミナルで、それに次いでアメリカン航空のターミナルとなっているのだった。

国際問題としては、12日4日にロシアで行われた下院選の不正疑惑に対し、 土曜日に約2万5000人もの人々が参加するデモが行なわれた様子が大きく報じられていたけれど、 同様のデモはニューヨークのロシア大使館前でも行なわれていたもの。
その抗議デモの主張は、選挙のやり直しを求め、今でも大統領以上の権力を持つと言われ、 ロシア政界を牛耳っているプーチン首相の退陣を求めるものであるけれど、 これほどまでの大規模な政治的デモがロシアで起こったのはソビエト連邦崩壊後 初めてとあって、 その動向は世界中が大きく注目しているのだった。




さて、今年のアメリカのホリデイ商戦は、予測を遥かに上回る好調ぶりを見せているけれど、アメリカ人の平均的な クリスマス・ショッピングの金額は751ドル。これは昨年より22%もアップしているとのこと。
中でも好調なのがオンライン・ショッピングとアウトレットで、オンライン・リテーラーは現時点で、240億ドル(約1兆8614億円)を売り上げ、昨年より15%のアップ。 またアウトレットも昨年より18%の売り上げの伸びを見せているとのこと。 人々のホリデイ消費が増えている要因として挙げられるのは、以前よりは景気の見通しが明るくなったため、 これまで使用を控えてきたクレジット・カードでホリデイ・ショッピングをしていること。
もちろん その背景にはリセッションで、 暫くの間ショッピングを控えてきた反動があるとも言われるけれど、 多くのショッパーはバーゲン品にしか手を出しておらず、「お金を節約するためのショッピングをしている」というのが 今年のホリデイ商戦における消費者心理と言えるのだった。
いずれにしても アメリカというのは、そもそも景気が良くても、悪くても国民の消費を煽るカルチャー。 大統領を始めとするあらゆるレベルの政治家、金融エゼクティブの口からさえ 国民に貯蓄を奨励するようなコメントが聞かれたことが無いのが アメリカで、ヨーロッパやアジアとは明らかに金銭感覚が違うと指摘されるのだった。

さて、そのアメリカで年々増えているのが、食物アレルギーを持つ人とヴェジタリアン&ヴェガン人口。
先週のフェヴァリットのコーナーで、今やディナー・パーティーがどんどん減って、 カクテル・パーティーが増えていると書いたけれど、ディナー・パーティーが減っている要因の1つと言われるのが、 こうしたアレルギーやヴェガン対策が面倒だからというもの。
かつては、フォーマルなパーティーのインヴィテーションといえば、料理のメイン・ディッシュを 肉、魚、ヴェジタリアンという3つのチョイスの中から、 希望のものに印をつけて RSVPするのが一般的であったけれど、今では、それにヴェガンのチョイスが加わっているケースが少なくないという。
ヴェガンの場合、卵、チーズやバターを含む乳製品や、肉、魚から取ったストック(ソースやだし汁)も摂取しないので、日本食ならまだしも、 一般的な洋食でヴェガン用の食事を用意するのはかなり大変なこと。

さらに昨今加わったホスト泣かせのトレンドがグルテン・フリー。
2010年に行われたチェルシー・クリントンのウェディングでも、そのケーキがグルテン・フリーだったことが伝えられていたけれど、 グルテン・フリーの食事療法は、グルテン・アレルギーを持つ人以外にとっては特別なメリットをもたらさないと言われて久しいもの。
それでも、グルテン・フリーのパンやパスタを食べて、何らかの健康的メリットがあると思って続けている人は、若い世代を中心に少なくないのが実情。 たとえマンハッタンにグルテン・フリーのベーカリーが何軒か存在しているとは言え、そこら中にある訳ではないので そのリクエストを パーティー・メニューに取り入れるのはかなり厄介と言えるのだった。
加えてグルテン・フリーのデザートはグルテン・フリー・ダイエットをする必要が無い人には かなり嫌われるのだそうで、やはり「美味しいデザート」と 「グルテン・フリーにしては美味しいデザート」の距離は それほど埋まっていないのが実情なのだった。

下の図は、ネット上のメディアが作成した、史上最悪のディナー・ゲストを如実に現したものだけれど、 ヴェガン、グルテン・フリーに様々なアレルギーが加わったら、サンクスギヴィングやクリスマスの名物メニューは殆どお手上げ状態。
サンクスギヴィング直前のニューヨーク・タイムズ紙のソーシャルQ&Aのセクションには、「突如ガールフレンドの影響で、ヴェジタリアンになった息子が そのガールフレンドをサンクスギヴィングのディナーに連れてやって来ることになっているけれど、 ”キノア”など、聞いたことも無い食材の料理をリクエストしてきて困っている。」といった問い合わせが寄せられていたのだった。




ところで、そうしたグルテン・フリーやヴェガンといった食生活によって体重が減るかといえば、そうでもないようで 食べられるもののチョイスが減ると、安心して食べられるものを 過食する傾向があることが指摘されているのだった。
この傾向は特別な食生活をしている人に限ったことではないもので、ヘルシーなイメージがある食べ物というのは往々にして 少しくらい多目に食べて大丈夫だと思うのが人々の心理。 とあるTV番組で、2つのグループに映画鑑賞をさせ、それぞれのグループのメンバーに同じクッキーが入った袋を手渡したけれど、 そのクッキーが ”ファット・フリー”と言われたグループの方が、何も言われなかったグループより沢山クッキーを食べていたという実験結果が 得られているのだった。

その意味で、今週 「健康に良いと思って食べているうちに肥満の原因なる」と指摘されたのがシリアル。 多くのシリアルは、ファイバーやビタミンが含まれていることをパッケージに謳って、ヘルス志向をアピールしているけれど、 その多くは重量の30%以上が砂糖。中には47%が砂糖というアイスクリーム同様の砂糖を摂取してしまうものもあり、 「オレオ・クッキーを朝食にしているの大差がない」と専門家から指摘されていたのだった。




さて、ホリデイ・シーズンと言えば、言うまでもなくアメリカ人の体重が増える時期。
これだけ危機感を持って騒がれても、国民の肥満に一向に歯止めが掛らないアメリカであるけれど、 そのアメリカ人にとって ホリデイ・シーズンに増える体重は、驚くなかれ僅か1パウンド(約450グラム)。
アメリカに住んでいる人、住んだことがある人にとっては 「まさか!」と思う少ない数字であるけれど、 これは、ホリデイ・シーズンを終えて体重が安定してからの数値とのこと。

サンクスギヴィングの日に食べ過ぎて、一時的に体重が2パウンド増えたという人でも、その後数日、食べ過ぎないようにしていれば、 日頃の体重に戻っている場合が多いもの。でもこれがサンクスギヴィング1日で済む訳ではなく、 ホーム・パーティー、コーポレート・パーティー、クリスマス・ディナーなど、日頃より過剰なカロリーを摂取するオケージョンが 度重なって、直ぐに体重計に現れなくても 体の中で 脂肪が蓄積される準備がどんどん整っていくのがホリデイ・シーズン。
また日頃からエクササイズをしている人は別として、殆どの人々は エクササイズをニューイヤーズ・レゾルーション(新年の決心)に掲げて 来年まで先送りし、 ホリデイ・シーズンは自分を甘やかして、身体に悪くても、体重が増えても、食べたいものを食べよう!などと思っているもの。
しかしながら、実際には過食をした24時間以内に運動をすることによって、体重増加はかなり回避できるのだそうで、年明けまで待ってから エクササイズをするのでは、落とす体重が増えるだけでなく、体重が落ちにくくなってしまうのだった。
でも、1月になってジムに出かけたり、健康的な食生活をすることによってホリデイの間に増えた体重が 戻っていくの比較的一般的なこと。

とは言っても 多くの人々は、3パウンド増えたとしても、5パウンド増えたとしても、元の体重より大体1パウンド重たい程度に戻したところで、 ニューイヤーズ・レゾルーションに掲げた努力を止めてしまう場合が殆ど。 この1パウンドのウェイト・ゲインというのは、多くの人々にとって 「1パウンドくらいは直ぐに減ったり、増えたりする」という意識から、 ゼロに等しいと考えられがちであるという。
その結果、アメリカ人がホリデイ・シーズンに平均1パウンドを増やすことになるけれど、 問題はこれを続けているうちに、5年で5パウンド、10年で10パウンドの体重が増えていくこと。
更にその5年、10年のうちにメタボリズムが下がってくるので、ホリデイ・シーズン以外にも1年に1〜2パウンド体重が増加してしまうのが一般的。 このため ひいては5年で5キロ、10年後には15キロといった体重の増加に繋がってしまうのだった。
加えて、人生には不確定要素が付き物。若い頃にはエクササイズをしていた人でも、仕事が忙しかったり、ライフスタイルが変わって、運動をやめてしまえば 体重増加に拍車が掛るし、ストレス、睡眠不足も体重増加の原因となるもの。中には怪我や病気などが原因で 肥満になるケースもあるのだった。

こうして考えると、体重の増加というのは借金のようなもの。
1パウンドという小さな借金を容認して繰り返していると、メタボリズムの低下という利息がついていって、それがどんどん増えていくもの。 そうするうちに失業や家族の病気という予期せぬ出来事で、支払い能力を超えた借金を抱えて破産、家の差し押さえ というのは、過去数年のアメリカでありがちだったシナリオ。
この肥満=借金のフォーミュラは、そのまま 国債が11月16日で$15トリリオン($15兆ドル=約1163兆円)を超えたアメリカ経済にも当てはまること。 その意味で、アメリカの肥満は経済とも連動した国民病と言えるのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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