Dec. 15 〜 Dec. 21 2003




ホリデイ・シーズン、ギフト・シーズン


アメリカにはお中元、お歳暮というギフト・システムは存在していないけれど、 「アメリカ人と日本人ではどちらがギフトに対して熱心な国民か?」と言えば、 私個人の意見としては、答えはアメリカ人である。
日本人は様々なオケージョンや、オケージョンが無くても人にギフトを贈る民族であるけれど、 これはアメリカ人とて する人はするものだし、日本人とて しない人はしないものである。 でもクリスマスに家族と親類のほぼ全員、友人、職場の人々、新聞や郵便の配達人、 ドアマンにまで ギフトを贈る日本人というのは、私は個人的には会ったことが無いけれど、 アメリカではこれは ほぼ当たり前の事であったりする。
家族に贈るギフトについては、大きいプレゼントと小さいプレゼントを 1人につき 最低1つずつは用意するのが風習で、大きなギフトはツリーの下に置き、 小さなギフトは暖炉などに飾る 家族の名前が付いた靴下の中に入れることになる。 こうした小さなギフトはストッキング・スタッファー(靴下の詰めもの)と呼ばれており、 例えばキーホールダーや、ペン、リップスティック、子供用だったらキャンディや 小さな人形等、ちょっとしたプレゼントになるけれど、 時に夫が妻に贈る高価なジュエリーが入っている場合もある。
これらのギフトはクリスマスの朝に家族揃って開けるまでは、ホリデイ・デコレーションとして 毎日眺めて暮らすもので、そんなところからもアメリカ人のギフトへの思い入れがしのばれるというものである。

このように家族のギフトを買うだけでも かなりの数になるのに加えて、アメリカでは 先述のように親類、友人を始めとする様々な人々にギフトを贈るから、 長いショッピング・リストを片手に 苦しそうに買い物をするアメリカ人の姿は、 この季節のデパートやショッピング・センターでは見慣れた光景である。
こうしたショッピング・スポット同様にホリデイ・シーズンのアメリカで 大混雑しているのは郵便局で、これは買ったギフトをアメリカ各地の家族や親類、友人達に 発送するために他ならない。 アメリカはカタログやインターネット通販でギフト・ショッピングをしない限りは、 直接受取人に商品を発送してもらうことが出来ないのが通常で、 このただでさえ忙しい季節に、混雑した店に出掛けて大量のギフトを購入し、 時にそれを自分でラッピングして、メッセージを書いたカードを添えてから梱包し、 それらを混雑した郵便局から送付するという、 涙ぐましいほどの時間と労力を掛けてギフトを贈っているのがアメリカ人である。
ここ数年インターネット通販のクリスマス・シーズンの売り上げが、毎年2桁の伸びを見せているけれど、 これは店の混雑と郵便局の混雑が避けられる上に、荷物の持ち運びも必要無い といった利点を考慮すれば、当然のことなのである。

これだけ努力してギフトを贈っているせいか、アメリカ人は受け取るギフトについても こだわりを見せる人々である。
日本人だったら、親しい人から貰ったギフトであれば、気に入らなくても 1度は使ったり、身につけたりしているところを見せるようと 心掛けるものであるし、 それをしなくても暫らくは取っておくのが通常であるけれど、 アメリカ人はそうした気質を持ち合わせていなかったりする。 だから受け取ったギフトが気に入らなければ、例え誰に貰ったものでも返品、交換に出かけるのは当たり前で、 クリスマスの翌日からデパートを始めとする小売店が大混雑するのも、クリスマス・ギフトの返品、 交換のラッシュが始まるからである。
すなわちギフトを贈るのにさんざん苦労をしたかと思ったら、今度は貰ったギフトを抱えて、 混み合うストアに出向き、アフター・クリスマス・セール中に他の商品と取り替えようと 奮闘することになるのである。
以前は殆どのストアが、レシートが無くても 、商品に店のタグが付いているだけで、 商品を交換してくれたものだけれど、昨今では多くの小売店が「ギフト・レシート」という 値段が書いていないレシートを発行しており、このレシート無しでは、交換も返品も受け付けない、 もしくは交換は受け付けても 返品はさせないというストアが非常に増えている。

私のアメリカ人の友人は、今年、彼の母親にスカーフを贈ろうとしていたけれど、 これは、彼の母親が「どうせ取り替えに行くに決まっているから 持って行く時に軽い方が良いと思って…」と、取り替えをを前提にしたギフト選びをしていた。 昨年はバッグをプレゼントしたところ「箱が大き過ぎて、返品に苦労していた」 というフィードバックが父親からあったそうで、 ふと思い起こしてみると、彼が贈ったものを母親が使ったり、身につけているのは 1度も見たことが無いという。
もちろんアメリカにもギフト・サーティフィケート(商品券)というものが存在する訳で、 こんな話を聞くと「だったら最初から商品券を贈れば良いのに」と思う人は多いかと思うけれど、 アメリカ人、それも家族間でのクリスマス・プレゼントというのは、 いかに有効なものを贈るかではなく、クリスマスの日に家族で集ってお互いのプレゼントを開ける というイベントに意義があるものだったりする。 だからリボンをほどいてプレゼントを開けて、 内心どう思っていても「まぁ、素敵!ありがとう!」と言いながら、キス&ハグをするような ジェスチャーを見せて、家族愛を確認するのが大切な訳で、 箱の中から商品券のように実用的であるけれど、パーソナリティや暖かみに欠けるものが 出てくるのは非常に体裁が悪いのである。

そもそもアメリカでは商品券というのは 相手の好みが分からない時や、 知り合って間もない人に贈るためのギフトと考えられる場合が少なくないのである。 私の知人は、以前アラブ系の大金持ちと数回デートしたことがあるけれど、たまたま最初のデートの翌日が 彼女のバースデーだったそうで、それを知った大金持ちが翌日に花束に添えて 贈って来たのが、 グッチの3000ドルのギフト・サーティフィケートで、「君のことを未だ良く知らないから、 こんなインパーソナル(他人行儀)なギフトを贈ることをお許しください。」という カードが添えられていたという。
彼女はその後、数回のデートで彼とは会わなくなってしまったから、果たして彼が彼女のことを よく知ったら、どんなギフトが届いたかは知る由もないけれど、 商品券やキャッシュというのは親しい間柄ほど、似つかわしくないギフトであるのは事実である。

その一方で、「キャッシュに限る!」というのは、自分が暮らすビルのドアマン、ハンディマン、 コンシアージュ、クリーニング・レディ、新聞配達、ドッグ・ウォーカー(犬の散歩人)等、 自分に関わる場所や物に対して働いている人々へのギフトである。
とは言っても、彼らは既に仕事に対しての給料をもらっている訳であるから、 どうして年末に、給与とは別にギフトを渡すのかに疑問を持つ人々も居るけれど、 これは言わば彼らにとってのボーナスのようなものであるから、私はあげるのは必要なことだと思っていたりする。
中にはこうした人々へのギフトとして、ハンドメイドのクリスマス・クッキーや ホリデイ名物のフルーツケーキをプレゼントする人々も居るけれど、 私は1度、自分のアパートのロビーで、ドアマンが自家製フルーツケーキを住人にプレゼントされ、 凄く嬉しそうに受け取っておきながら、その住人が去った途端にウンザリしたような顔をしたのを 目撃してしまったので、フルーツケーキなど焼こうという気は最初からさらさら無いけれど、 彼らへのギフトは「キャッシュが1番」であることを痛感してしまった。
私の住むアパートはドアマンやコンシアージュに対して、1人20ドル以上を包むのが相場であるけれど、 その人数も軽く10人以上になるから、このただでさえ出費の多い時期に、痛手となるのは言うまでも無い。 もっと高級なアパートになると、その額は最低50〜100ドルに跳ね上がり、 超最高級のアパートになると ドアマンに自家用車をプレゼントする住人も居たりするから、 クリスマスという時期は、どんな収入レベルの人々にとっても かなりの出費を強いられる時期には変わりないようである。
でもアメリカ人というのは、本当に貰い上手であるから、 チップでもギフトでも渡せば物凄く嬉しそうにしてくれて、 「あげて良かった!」という気持ちにさせてくれるのは事実である。
反面、これを渡さないのは関係をこじらせる原因になったりするもので、 もう6年ほど前のことであるけれど、新聞配達へのチェック(小切手)をクリスマスまで投函し忘れていたら、 26日の新聞が扉の前でバラバラになっていたことがある。 これは「チップを渡さないケチな客」への新聞配達からのあてつけであった訳だけれど、 私はチップを払う気でいただけに、そんな風にされたことに 非常に気分を害してしまい、結局その年はチップを送るのを止めてしまったのを覚えている。

私を始め、自分でビジネスをしている人の多くは、「ギフトは 貰う物ではなくて 贈る物」と 思っている人が多く、贈る物のことは常に考えていても、 貰う物のことなどには考えが及ばなかったりする。 だから時々、「自分は一体、クリスマスにどんな物が欲しいんだろう?」 と考えてしまうことがある。
3週間程前のニューヨーク・ポスト紙は、ニューヨークの女性140人に「クリスマスに 貰いたいギフト」というテーマでアンケートをしていたけれど、 それを見ると「ゆったり リラックスできる時間」、「コサベラのトング」等と答えた お金の掛からない答から、「ダウンタウンのロフト・アパート」とか「メルセデス」等、 桁外れのギフトを望んでいる人まで様々であった。
このアンケートの総合で最も多かったのは「ジュエリー」という回答だったけれど、 私の身近な友人に同じ質問をしたところ、 「有休が沢山あって、給料が良くて、終身雇用の仕事」という超現実的な答えから、 「糞をしない仔犬」、「自分のクローン」、「いくら食べても太らない身体」という不可能な答えばかりが 返って来て、まともなギフトが頭に浮かばないのは私だけではないことを実感してしまった。
今年はニーマン・マーカスのクリスマス・カタログを見ても、全くこれといって欲しいものは 掲載されていなかったけれど、過去のカタログで「これだったら欲しいかも!」と思ったのは 4年ほど前に1度だけあった「マノーロ・オブ・ザ・マンス」という企画。 これは1月から12月まで毎月1足、その季節にちなんだマノーロ・ブラーニックのシューズが 自分のサイズで送付されて来るというギフト・サーティフィケートで、 このうちの2〜3足はスペシャル・エディション。もし送られて来たシューズが気に入らなかったら、 別のスタイルと交換も可能というものだった。
でもこれをギフトとして受け取ったマノーロ・マニアは、毎月送られて来るシューズをチェックしてからでないと マノーロを買わなくなり、その結果、毎月2足マノーロを買っていた女性が1足しか買わなくなるような 現象が起こったために 中止になってしまったという。 ニーマン・マーカスとしては、1度に12足のマノーロを買ってもらえる、 当時にして約5000ドルのギフト・アイデアであったけれど、思わぬ落とし穴があったという訳である。

でも何にも勝るギフトというのは、心身ともに健康に 家族や友人と一緒にホリデイ・シーズンを迎えられることで、 これがいかに素晴らしいギフトであるかは、これがかなわなくなる時までは気が付きに難いものかもしれない。



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