Dec. 12 〜 Dec. 18 2005




Gift for Myself



今週のニューヨークと言えば、地下鉄・バスの交通を取り仕切るMTA(メトロポリタン・トランジット・オーソリティ) がストに突入するか、否かを見守りながら、 人々がナーバスになっていたけれど、事実、ストを見込んで社員送迎のバンをオーダーする企業や、雪が見込まれたスト初日、金曜日に、 何十ブロックも歩いて会社に行くためのスノー・ブーツを買い求める人々なども少なくなかったし、その一方で、街の機能が麻痺するストの前に、 仕事を片付けようと、木曜に大車輪で働いた人々も多かった。でも結局、ストが延期された結果、ストの行方を見守って遅くまでTVを見ていた人、 ストを見込んで日頃よりも2時間早起きした人、ストで会社が休みになると思って夜更かしした人、木曜に働きすぎて疲れた人が多く、 ホッとする反面、何となくダラダラしていたのが金曜のニューヨークだった。

多くのニューヨーカーのストに対する意見は、「何もホリデイ・シーズンにやらなくても・・・」という、最悪のタイミングを批判するものが多かったけれど、 ホリデイ・シーズンといえばギフト・シーズン。今年はクリスマスが週末であるから、今週末が事実上、クリスマス前最後の週末ということで、 デパートを始めとする多くのリテーラーが大混雑を見せていた。
私がこのシーズン、毎年考えを巡らせることの1つが、自分に対するギフトを何にするかで、これは「今年も1年良く頑張った!」という自分へのご褒美であり、 自分が本当に欲しいものを誰にも気兼ねせずに、自分自身にリクエストできるというものである。 自分にギフトやご褒美をあげるというのは、私だけではないようで、CUBE New Yorkのショッピングのお客様からのコメントやEメールを読んでいたりすると、 「自分へのプレゼント」という言葉がこの時期に良く見られるのである。
私の周囲は、私が「自分へのプレゼントを買う」というと 「靴でしょ?」と勘ぐる傾向があるけれど、 これはハズレで、私はこの習慣をスタートして以来、自分へのプレゼントにシューズを選んだことは無いのである。 理由は、欲しいと思うシューズを見つけたら、季節を選ばず買わなければ気が済まないからで、 そもそもシューズはバッグと違って自分のサイズが売り切れた時点で「アウト!」な訳で、 「一年の終わりに自分へのプレゼント」などと 時期を選んで買うようなものではないのである。 しかもホリデイ・シーズンはシューズが40%オフのセールになっているから、この季節は実用シューズ、もしくは非実用的な上に 高くて手が出なかった シューズをせっせとあさる時期で、そこには「自分へのプレゼント」というようなおっとりした優雅さはなく、 根気と決断と体力が問われる過酷なバーゲン・ハンティングが繰り広げられる訳である。

私が自分へのギフトとして選ぶものは、その時々で凝っているもの、夢中になっているもの、前からずっと欲しくて諦め切れなかったもの、 そうでない場合は、突然降って湧いたように目の前に現れた物で、「これが今年の自分へのギフト!」と即座にピンと来るものだったりする。
その意味で私が今年選んだのは、最近凝っているワイン関連のもの。 私はそもそもワインは好きで、寝る前にワインを1杯飲むという習慣は既に2年以上続いているものである。 それ以前はマティーニやシャンペン・カクテルに凝ったことがあり、シェイカーを使って、マティーニ・グラスのリム(淵)ギリギリの量の分ピッタリに マティーニを作れるのを自慢にしていた時期もあるけれど、思えば当時は「セックス・アンド・ザ・シティ」全盛期。 バーで コスモポリタンをオーダーするのが IN だった時期。でも、2005年には「最後に”ティーニ”という言葉が付くカクテルは完全にアウト!」 と言われるようになり、アップル・マティーニ、チョコレート・マティーニを始めとする、かつて流行のマティーニ・アレンジのカクテルは完全に その栄光を失ってしまったのは事実である。
私が寝る前にワインを飲み始めたのは、ナイトキャップというよりは、自分の時間を持つためで、 1日の終わりに20分でも、30分でも、ワインを飲みながら、キャンドルを点したり、TVを見たり、 朝、時間が無くて読めなかったニューヨーク・タイムズの記事に目を通したり、ただボーッとしながら ワインだけ飲んでいる時間というのが、 私にとっては1日の終わりの楽しみであり、その日のクロージャー、すなわち「今日も1日が終わった・・・」、「今日も1日良く頑張った!」 と、その日が良い日であっても、そうでない日であっても、自分の中で1日に終止符を打つのがこの時間で、 特に今年は目が回るほど 忙しい年だったため、それが私の中では非常に大切なものになっていたのである。 本来、シャャンペン好きだった私としては、以前はワインの代わりにシャンペンを飲む日もあったけれど、「寝る前の炭酸は身体に良くない」 という医学ジャーナルの発表を聞いてからは、あっさりワイン一辺倒になってしまったのだった。

いずれにしても、ワインが私の家の中で 「決して切らしてはいけないもの」のリストに加わってからは久しく、 以前は気に入っているワイン・ショップから、1ダース纏めてデリバリーをしてもらうのを習慣にして、1本12〜18ドル程度のいわゆるエブリデイ・ワイン ばかりを飲んでいたのだった。でも、ある日そのワインを切らしてしまって、近隣のリカーショップに夜遅くワインを買いに行った際、 「最近は良く働いているし、久々にモンダヴィ(ロバート・モンダヴィ、カリフォルニア・ワイン)でも飲もうかなぁ・・・」と、日頃の4倍のバジェットで、 モンダヴィのピノ・ノアールを購入して飲んだところ、やはりいつものワインとは全然味が違うのである。 でも、70〜80ドルのワインを毎日飲めるほどワイン・バジェットが無い私としては、その後はモンダヴィの安価なシリーズのワイン等を ブドウの種類やヴィンテージを変えて試すようになり、それと同時に、それまで続いていた 「ワイン・ショップに好みを伝えてデリバリーをしてもらう」という習慣からは すっかり足を洗うことにしてしまった。
以来、ワイン・ショップで30分くらい掛けながら、ラベルをチェックして、ヴィンテージやブドウの種類、リージョン(地域)、値段を考慮して、 2〜3本ずつワインを買うようにしたら、ワインというものが突然 面白くなってきて、以前のワインを飲むリラックスの時間が、 新しいワインを試すテイスティングの時間に変わっていってしまったし、ワインを飲みながら、ワインのレビューやワインの記事を 読んで過ごすことも多くなってきたのである。 また、ワインの購入も近隣のリカー・ショップだけでなく、インターネットでもオーダーするようになっていったけれど、 そうなって初めて気が付いたのは、ニューヨークでは今年7月まで法律で他州からワインを購入することが出来なかったということ。 実際には、法の改正後の現在もカリフォルニアのワイン・ショップの殆どは、未だに法改正を承知しながらも、UPS等のキャリアー(運送会社)がNYにワインを 発送する準備が出来ていない事などを理由にNYには販売を行っておらず、現在NYにワインを発送してくれるのはお隣、ニュー・ジャージーの ワイン・ショップくらいである。
ニューヨーカーにとって、他州からワインを購入する抜け道になっているのが、ネット・オークションで購入し、「コレクティブル・アイテム」として 送付してもらうことで、これは私もつい最近、ネット・オークションでワインを購入してみたけれど、シカゴのセラーから 問題なくUPSで商品が送られてきたのだった。

という訳で、前置きが長くなったけれど、私が今年のクリスマスに 自分に何をプレゼントしたかというと、 まず24本収納のワイン・リフリジレーター。(写真左) これで、ワインを保管する温度と湿度が保てる訳で、エブリデイ・ワインではなく、 もっと、思い入れのあるワインの収納用に購入したものである。
そして、その私の小さなワイン・セラーに入れる「スター」として 自分にプレゼントしたのは、2000年のムートン・ロスチャイルド (日本ではムートン・ロートシルト)。 2000年のボルドーと言えば、ワイン史上稀に見る当たり年で、ワイン評論家として世界に名がとどろくロバート・パーカー氏も、 「これからのワイン市場は2000年ヴィンテージの奪い合いになるだろう」とさえ語っているけれど、 その彼が100点万点中の97ポイントをつけたのがこの年のムートンである。 同じ2000年のボルドーではシャトー・マルゴー、ラフィット・ロスチャイルドに、パーカー氏が100満点を与えていたけれど、それを承知であえて ムートンを選んだのはボトルにコレクター性があることや、アメリカ市場価格よりも200ドルほど安く、日本の価格の約半分で手に入れる機会に恵まれたためで、これを「縁」だと思ってしまったのである。
でも、私が特に2000年にこだわったのは、この年は、パートナーと別れて、CUBE New Yorkを自分だけの会社として 再スタートさせた年であり、 私の人生の中で、2度とリピートしたくないほど 最も苦しい年だったからである。 この年は、夜の11時まで会社で働き、帰宅してからも2時まで仕事をして、朝6時に起床、8時半にはもうオフィス入りしているという毎日で、 週末も休んだ事などなかったし、夏の週末などは、オフィス・ビル全体の空調がストップし、冷房も入らないので、 外に空気を吸いに出掛けなければならないような状態で、会社を始める 「産みの苦しみ」を嫌というほど味わった年だったのである。
でもこの年を乗り越えることなく、今の会社はありえなかった訳で、自分の会社が生まれた年のワインを、20年後、30年後に ニッコリ笑って飲める日のために、頑張って働こうという気持ちになれると思ったからである。

つい最近、日本からやって来た私の友人も、「ワインが趣味になってから、年を取る楽しみが出来た」と言っていたけれど、 グラス約4杯分のワインに、数百ドルを支払うというのは、もちろんコレクターとして 投資目的で購入する人もいるかもしれないけれど、 実際にワインが好きで購入した人にとっては、そのワインを飲むまでの長い長い月日の期待感や、「このコルクを抜いた時、一体どんな味がするんだろう」という 思いを巡らせる楽しみを一緒に購入している訳で、それは、「500ドルでワインを買ったら、1杯分125ドル」というような 単純計算では価値判断が出来ないバリューなのである。
でもラッキーなことには、アメリカにおけるワインの価格は、上手く買えば日本やヨーロッパよりも割安であることで、 つい最近も、日本のネット上のワインショップと比較して、「日本の半額!」と思いながらアメリカのネット・ショップからオーダーをしていたけれど、 安いのはワインだけでなく、美味しくワインを味わうのに不可欠のリーデルのグラスにしても日本より2割は安いし、先述のワイン・リフリジレーターなどは、 もっとずっと安価なのである。
それもあって、ワイン関連プレゼントに加えてしまったのが、リーデルのヴィノム・エクストリーム・グラスの買い足しで、 既にキャバネー(カルベネ)/マルロー用のグラスを持っていたので、新たに ピノ・ノアール/バーガンディ・グラス、 シャルドネ・グラスを購入し、今はそのデリバリーを首を長くして待っているところである。
この新しいリーデルが届いたら、これまで私のグラスウェアの棚にあった、マティーニ・グラスやシェーカーは滅多に開けないセクションに追いやられることになるけれど、 これも時代の流れというもの。
一方のリフリジレーターは来週到着の予定で、それまでは既に手元に届いている2000年のムートンを、ベッドルームの室温をワインの保存に適した 華氏55度(摂氏約11度程度)に保って置いているけれど、この室温華氏55度を実践して以来、ふと思ったのは、 寝る前にリップバームをつけ忘れても、唇がカサカサしないということ。 なので、ひょっとしたら、「ワイン保存に適した室温というのは、人の肌にも優しい室温なのかもしれない」と思ったけれど、 これは、冬の季節にはかなり涼しい温度なので、冷え性の方にはあえて お薦めしません。



Catch of the Week No.2 Dec. : 12月 第2週


Catch of the Week No.1 Dec. : 12月 第1週


Catch of the Week No.3 Nov. : 11月 第4週


Catch of the Week No.3 Nov. : 11月 第3週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。