Dec. 14 〜 Dec. 20 2009




” Tiger's Economic & Social Impact ”


今週のアメリカでは、 政治の分野では、いよいよ大詰めを迎えた健康保険改正案の 上院での可決をめぐる民主、共和両党の駆け引きに加えて、デンマークンのコペンハーゲンで行なわれている COP15(国連気候変動枠組み条約締約国会議)の動向が メディアの注目を集めていたのだった。
オバマ大統領がCOP15のために現地入りをしたのは18日の金曜のことであるけれど、 11週間前に、同じコペンハーゲンで 2016年のオリンピックをシカゴに誘致することが出来なかった大統領が、 今回こそは 各国とのネゴシエーションを成功させて、クライメイト・チェンジの条約のために 足並みを揃えさせることが出来るのか?が見守られている状態。
そして、このニュースが12月19日土曜のニューヨーク・ポスト紙 第一面を飾ったことにより(写真右)、同紙で11月29日から 20日間続いたタイガー・ウッズ報道の第一面フィーチャー記録が遂に破れることになったのだった。

そのタイガー・ウッズは、今週も引き続き ネタを提供し続けており、 高校時代のガールフレンドの証言で、タイガーの父親、アール・ウッズも不倫をして タイガーがそれを知って苦悩していたことが明らかになった他、 14番目の愛人として48歳の女性が登場したり、エリン夫人が引越屋のトラックを呼んで荷物を運び出す一方で、 ブリットニー・スピアーズやニコル・キッドマンの離婚を担当した敏腕弁護士を雇ったこと、 今や外に出られない身となったタイガーが自宅でシリアルを食べながら、TVのアニメばかり見ているといった 情報が報じられていたのだった。
そんな中、彼はアソシエーテッド・プレスが選ぶ ” アスリート・オブ・ザ・デケード ”、すなわち2000年〜2009年までの間に 最も活躍したアスリート に選ばれているけれど、 その彼の輝かしい実績に影を落とすかもしれない と見なされつつあるのが、現在FBIとカナダの警察が捜査を進めている事件で、 プロのアスリートを中心に、使用が禁止されているヒューマン・グロース・ホルモン(HGH / ヒト成長ホルモン)を 処方していたアンソニー・ガレア医師との関わり合い。

ガレア医師 (写真左) は、HGHが合法化されているカナダから 牛の血を凝縮させたHGHをアメリカに持ち込もうとして10月に逮捕されており、 彼は幅広いスポーツのジャンルに渡って、多くのプロフェッショナル・アスリートに対して、 怪我による手術の回復を早めるため、もしくは手術を回避するためのトリートメントを 行なってきたドクター。 その患者の1人として名前が挙がっているのが 2008年の全米オープンで膝を故障したタイガー・ウッズなのである。
タイガーは、この怪我のブレイクから復活して以来、 以前より隆々とした筋肉が目立つようになっており、 「タイガーがステロイドを使っているのでは?」という疑惑を感じながらも 、 「タイガー・ウッズだから公に指摘できなかった」という ゴルフ関係者は決して少なくなかったという。
でも数多くのアスリートの中で、どうしてタイガー・ウッズがこの事件との関わりの中で最も大きく取り沙汰されるかと言えば、 彼がスーパースターで、現在スキャンダルを巻き起こしているだけでなく、 ガレア医師がフロリダのタイガー邸を訪れてトリートメントを行なった証拠が固まりつつあるため。 実はガレア医師はアメリカでは医療行為を行なうライセンスを持っておらず、FBIとしては彼がタイガーのトリートメントを ライセンスを持たないフロリダで行なった事実を立証すれば、その後の捜査を有利に進めることが出来るのだった。

ちなみにガレア医師は今年50歳であるけれど、40歳から自分自身に週5日の割合で HGHを注射し始めたそうで、 彼が実際の年齢より若く見えるのは誰もが認める事実。
ガレア医師が自分に HGHを注入する理由は、若々しい容姿と精神を保つためで、 そうすることにより 彼より22歳若い妻との良好な結婚生活が続けられるとコメント。
彼はプロのアスリートに対しては一切HGHは使用していないとして、その疑惑を否定しているけれど、 彼のアシスタントは HGH投与を認める証言をしているのだった。

タイガー・ウッズは、今週末には時計のタグ・ホイヤーから 広告出演契約の打ち切りを言い渡されており、 同社は今後、タイガーのチャリティ・ゴルフ・トーナメントのスポンサーのみを 続けて行く と発表しているのだった。
これによって、ジレット、ゲータレードが共に彼のスポークスマンとしての役割を縮小させ、アクセンチュアとタグ・ホイヤーがそれぞれ彼を解雇 したことになるけれど、アクセンチュアについては 大手コンサルタント会社でありながら、その存在が殆ど知られていなかった企業。 皮肉なことに、同社はタイガー・ウッズをフィーチャーした雑誌広告より、タイガー・ウッズを最初に解雇した企業として 多大なパブリシティを得たと同時に、その知名度を大きく高めることになった訳である。
アクセンチュアの「 Be Like Tiger (タイガーのようになれ!)」 という広告コピーは、今となっては 真面目なコンサルティング会社には 不適切以外の何者でもないけれど、同社はタイガーに支払っていた年間15億円の広告出演料を もはや支払う必要が無く、 それでいて社名を全米に広めたのであるから、 考えようによってはタイガー・スキャンダルで得をした側。
同社以外で、タイガー・ウッズ・スキャンダルの経済効果の恩恵を受けているのは男性用グルーミング・プロダクトの老舗ブランド、その名も”ラッキー・タイガー”(写真右)。 今や ラッキー・タイガーのインターネット上の売り上げは タイガー・ウッズのスキャンダル以来、30%増となっており、 昨今では 同プロダクトのセールスにおけるタイガー効果を メディアが報じたために、さらに売り上げが伸びているという。
他に タイガー効果で今後恩恵を受けると見なされているのが、作家のイアン・ヘルパリン。 彼はつい最近 「 Brangelina: The Untold Story of Brad Pitt and Angelina Jolie / ブランジェリーナ:ジ・アントールド・ストーリー・オブ・ブラッド・ピット・アンド・アンジェリーナ・ジョリー」 を出版し、周囲の証言から 策略家で短気なアンジェリーナと、マリファナとアルコールで2人の関係のフラストレーションを紛らすブラッドの姿を 描いて、ハリウッド・メディアのタブーを破ったばかり。
その彼は現在3冊のタイガー・ウッズの本を企画している最中で、大手出版社は 全てその著書に興味を示していることが伝えられているのだった。

逆にこんなスキャンダルにも関わらずタイガー・ウッズをスポークスマンとして雇おうとしているのは、マンハッタンで最もアップスケールなストリップ・クラブの1つ、 スコアーズ。
今回のスキャンダルで明るみに出たのが、 実はタイガー・ウッズがストリップ・クラブの常連だったという事実で、 ニューヨークのスコアーズやラスヴェガスのアップスケールなトップレス・バーに 彼が何度も訪れていたことが伝えられているのだった。 タイガーは、そうしたオケージョンで盗撮された写真がメディアに出回ることを恐れて、ストリップ・クラブに出掛ける度に、 そういう場所に初めて足を踏み入れたかのように シャイな振る舞いをしていたというけれど、スコアーズがタイガーに対してオファーしている 広告出演料は年間で約1億円。 この金額はアクセンチュアやタグ・ホイヤーに比べて遥かに安いものであるけれど、 オファーしている側も タイガーが食いついて来ないものと見越して、 パブリシティ欲しさにやっているという印象なのだった。

さて、今週末はクリスマス前の最後の週末とあって、デパートや小売店が大きな売り上げを見込んでいる時期であると同時に、 クリスマスを家族で過ごす人々が多いことを考慮して、友人レベルを招いたパーティーが数多く行なわれる週末。
でも、今週末のニューヨーク・エリアは積雪30cmのスノーストームに見舞われて、ショッピングに出掛けるにも、パーティーに出掛けるにも大変な騒ぎ。
そんな中、ミッドタウンの大衆デパート、メイシーズでは小火騒ぎがあって、買い物客に避難命令が出たというけれど、 ショッパー達は、「買わずに逃げろ!」と言われると 物が買い物がしたくなるようで、避難誘導をしようとする店員を無視してギフト・ラッピングを要求したり、 「支払いが終わったら避難するから・・・」と言って レジから離れなかったことが伝えられているのだった。
リセッションで心配されたクリスマス商戦なだけに、こんなエピソードは小売店にとっては嬉しい限りであるけれど、 今年のクリスマス商戦で、大きな役割を果たしているのが携帯端末機。 買い物客は、ストアの価格とインターネット上の価格を比較して買い物をする傾向にあり、 アイフォンには、そんな価格比較のアプリケーションが登場して人気を集めているのだった。
また期間限定、時間限定のセール情報をツイッターで流すストアやブティックも多いというけれど、 ネット上での価格比較サイトやソフトウェアについては、情報の間違いが少なく ないことも指摘されているのだった。 例えば、良く調べてみると割引に条件がついていたり、送料を含めるとストアで購入した方が割安だったり、 また商品の売り切れが表示されていなかったりすることがあり、ウェブのリサーチが時に裏目に出てしまうこともあるよう。

かく言う私は、週末はショッピングには行かなかったものの、義理で行かなければならないパーティーに出掛けて、 帰りに 雪の中、タクシーが掴まらなくて大変な思いをすることになってしまったのだった。 しかも、ホームパーティーだったので スノーブーツで 友人宅の中を歩き回るのは失礼な上に、みっともない訳で、 履き替え用の靴を持参しなければならない状態。
そのパーティーで この日初めて会った 29歳のブロンドの美女と話していたところ、彼女が指摘してきたのが 「リセッションのせいで、 ニューヨークのパーティーがことごとく PTAミーティング みたいになってしまった」ということ。 確かにパーティーは夫婦やカップルが多かったけれど、それは特にこのシーズンは当たり前。
でも、彼女に言わせるとリセッションのせいで、複数の女性と交際していた男性が、余計な出費を避けるために女性の数を絞り、 リセッションのせいでカップルが外出しなくなるので、今や彼女の既婚の友人がことごとく妊娠していることを指摘していたのだった。
加えて、タイガー・ウッズ・スキャンダルのせいで 今や結婚生活に退屈している男性達 も余計な火遊びをしなくなっているのだそうで、 彼女によれば、「リセッションのとどめはタイガー・ウッズ」なのであるという。
私にとっては 彼女の意見は 「タイガー・ウッズは女の敵」の新しいセオリーであったけれど、既婚女性にとっては タイガー・ウッズは 夫の浮気を戒めるための格好のエグザンプル。 先週、オフィス・ビルのエレベーターに乗っていたら 「テキスト・メッセージ(携帯メール)なんて送るもんじゃない。女は皆そういうのを保存しているんだから・・・」と 友達に説教をしている男性が居たけれど、タイガー・ウッズの不倫騒動は本人のキャリアだけでなく、 社会的、経済的にかなりのインパクトをもたらしているのは紛れもない事実なのである。





Catch of the Week No. 2 Dec. : 12月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Dec. : 12月 第 1 週


Catch of the Week No. 5 Nov. : 11月 第 5 週


Catch of the Week No. 4 Nov. : 11月 第 4 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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