Dec. 9 〜 Dec. 15, 2013

” 2013 Was The Year of The Selfie?”


今週のアメリカで週明けから最も報道時間が割かれていたは、 先週死去した南アフリカの元首相、ネルソン・マンデラの葬儀のニュース。
世界中から首脳やセレブリティが集まり、弔問外交が盛んに行われていた ヨハネスブルグであるけれど、中でも注目を集めることになったのが 写真上右側 デンマークの女性首相、ヘレ・トーニング・シュミットを挟んで、 イギリスのデヴィッド・キャメロン首相、そしてオバマ大統領が3人でセルフィーをしていた様子。 加えて この楽しそうな光景を 冷めた様子で無視したり、睨みつけたりしていたミッシェル・オバマ夫人の様子は、 アメリカはもちろんのこと、世界中のメディアで報じられることになったのだった。

この様子は、一国の首相や大統領でもセルフィーをして楽しんでいることを 世の中に示していたけれど、それと同時に「13歳の子供じゃあるまいし、葬儀の席で 場をわきまえずにセルフィーをするなんて・・・」と 顰蹙を買う結果にもなっていたのだった。


そのセルフィーは 2週間前のこのコーナーでも書いた通り、 オックスフォード・ディクショナリーによって、2013年の ”ワード・オブ・ジ・イヤー”に選ばれた言葉。 でもコラムにも書いた通り、2013年の初頭には この言葉を知らないアメリカ人に 私が意味を説明してあげていたような状態で、 この言葉が急激に普及したのは2013年の春以降。 事実、セルフィーという言葉の使用頻度は、2012年と2013年を比較すると、1万7000%もアップしているとのことなのだった。

そのセルフィーの英語のでの定義は、“a photograph that one has taken of oneself, typically one taken with a smartphone or webcam and uploaded to a social media website (自分を撮影した写真、通常はスマートフォンやウェブカムで撮影されて、ソーシャル・メディアのウェブサイトにアップロードされるもの)”。
今では、ジャスティン・ビーバー、リアナ、マイリー・サイルス、キム・カダーシアンといった セレブリティに混じって、ビル・ゲイツ&ビル・クリントン元大統領(写真上、上段右から2番め)や ローマ法王フランシスコ(写真上、上段左から2番め)までもが セルフィーを行うご時世なので、オバマ大統領が、キャメロン首相やシュミット首相とセルフィーをしても不思議ではないけれど、 年末を迎えてメディアが指摘しているのが、2013年が ”The Year of The Selfie”、すなわち セルフィーの年だったということ。

スマートフォン等で自分を撮影するという行為自体は、セルフィーという言葉が定着する何年も前から ごく普通に行われていたもの。 でも その行為に ”セルフィー”という名称が付いたために、ポップ・カルチャーとしての様相を呈してきたのが 2013年のセルフィーなのだった。
セレブリティのツイートやインスタグラムは、もはやセルフィー無しでは考えられない状況になっているけれど、 その一方で、過激なセルフィーを撮影して停職処分になったNY市消防局のスタッフも居れば、 ティーンエイジャーの間では 運転中にセルフィーを撮影してソーシャル・メディアにアップするのがトレンドになり、 それが社会的に問題視されるなど、セルフィー絡みで物議を醸す報道も多数行われているのだった。



さて携帯電話のカメラが普及してからというもの、ハリウッド映画のプレミアで頻繁に見られる光景が、 セレブリティがファンと一緒にセルフィーを行う姿。 こうした写真をファンがソーシャル・メディア上にアップするのは当然のこと。 セレブリティ側にしても、そんなグラスルーツ的なパブリシティ&ファン・サービスのためにセルフィーに応じているのだった。
そして、そんな写真で イメージダウンを招かないためにも、 セレブリティが 密かに行っているのが セルフィーの写りを良くするレッスン。

セルフィーの場合、少し向きを変えるだけでライティングのコンディションが激変するのに加えて、 顔のアングルによって写りが大きく変わってくるだけに、 自分の写りが良いアングルと、光のコンディションについて学んでおくだけでも、 驚くほど 写りに差が出てくるのだった。
写真上左のアンジェリーナ・ジョリーは、ファンとセルフィーを撮影する際、必ず携帯カメラを 自分の顔より斜め上にかざすようにしているのは有名な話。 これが セルフィーの女王であるキム・カダーシアンになると、カメラは目線の位置に構えることが多くても、 顔の角度で 上目遣いにしたり、流し目気味に斜めからの視線で撮影するケースが非常に多いのだった。

写り方のテクニックはセレブリティによって異なるものの、共通しているのは、セレブリティ自身がファンのスマートフォンを手に取って、 自分でシャッターを押しているということ。 これによってセレブリティは、携帯カメラが自分のベスト・アングルを捉えたところでシャッターを押すことが出来るのだった。
でも、通常のカメラのシャッターよりも 遥かにスローなのがスマートフォンのカメラのシャッター。 このため、セレブリティは シャッターを押してから 実際にどの程度の時間、カメラ目線の顔を保つべきかも セルフィー・レッスンの際に学んでいるのだった。

セルフィーを上手く撮影できるようになるためには、セルフィーを写しまくることが一番であるけれど、 どんなに上手くなっても、やはり人に撮影してもらった方が良い写真が簡単に撮れるのが実際のところ。
私は全くと言って良いほどセルフィーを撮影しないけれど、2013年中の唯一セルフィーが、 ニューヨーク・マラソン前日にセントラル・パークのゴール地点で撮影したもの。 ここではマラソンを走らない人が ゴール地点のゲートをバックに記念撮影するのは毎年のこと。
なので、私も朝のランニング中にここを通りかかった際にセルフィーの撮影を試みたけれど、 上手くゲートがバックグラウンドに入らなくて、四苦八苦していたところ、その場に居た男性が 撮影してくれて、たった1回のショットで セルフィーよりも遥かに良い写真が撮影できたのだった。

セルフィーはソーシャル・メディアで人と繋がる手段の一環である一方で、 ナルシズムの象徴とも見られがちなもの。
したがって、あまりに沢山のセルフィーがソーシャル・メディア上にアップされていると、 ナルシストだと思われるのはもちろん、写真の表情や、撮影オケージョンから ひけらかしタイプ、自惚れが激しいタイプ、羞恥心が無いタイプ 等と、ジャッジされてしまうもの。
そう考えると、セルフィーは単に自分で自分を撮影する手段だけでなく、 人間性を判断する指針の役割も果たしていると言えるのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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