Dec. 18 〜 Dec. 24




” Miss(take) USA ”



先週からアメリカを賑わせていた報道といえば、ミスUSAの資格剥奪を巡るスキャンダル。
これは 2006年のミスUSA、タラ・コナー嬢が あまりに夜遊びが過ぎるために ミスUSA ページェントのオーナーであるドナルド・トランプが 彼女の資格を 剥奪するかもしれない という騒ぎ。 報道によれば、タラ・コナーはミスUSAに選ばれて ニューヨークのトランプ・プレース内のアパートに移り住んでからというもの、 連夜のパーティー三昧で、時に2日酔いのため ミスUSAの職務であるイベントへのアピアランスにしばしば遅れたり、 最悪の場合キャンセルするケースも出ていたという。
その一方で、ニューヨークのナイト・クラブ、ステレオの常連であった彼女は、ステレオのオーナー2人と交際していた他、 ステレオの常連のセレブリティやリッチな金融ブローカーなどとも簡単に一夜を過ごしてしまうことは有名で、 クラブ内では飲酒はもちろん、ドラッグにも手を出していて、一部には彼女がドラッグ欲しさに、コカインを買い与えてくれる リッチな男性と関係していたとの噂も聞かれていたりする。
実際、彼女は先週末に行われたドラッグ・テストで陽性が認められているけれど、さらに問題となっていたのは ニューヨークの州法では飲酒が21歳からであるのに対し、彼女は今週明けに誕生日を迎えるまでは20歳。 すなわち違法に飲酒をしていたことで、こうした ミスUSAとしては 前代未聞の素行の悪さから、 大方の人々が今週火曜に行われた記者会見で、ドナルド・トランプがタラ・コナーのミスUSAの資格を剥奪すると 信じて疑わなかったのである。

ところが蓋を開けてみれば、ドナルド・トランプは 「彼女は非常に良い人間である」、「誰にでも2度目のチャンスを与えるべき」、 「彼女は、もう1度でも 例え小さなミスを犯しただけで、ミスUSAの資格が剥奪されることを理解している」などと、 タラ・コナーに対して同情的な姿勢を見せ、リハビリ入りすることを条件に 彼女の資格を剥奪しないことを発表したのだった。
同じ記者会見の場で涙ながらにコメントしたタラ・コナー嬢は、自分に再びチャンスを与えてくれたドナルド・トランプに感謝すると同時に、 ケンタッキーの家族に迷惑を掛けたことを詫びていたけれど、 これに対するメディアや人々のリアクションは真二つに分かれており、 彼女に同情し、更正のチャンスを支持する人々も居れば、 彼女の涙を「白々しい演技」として、「不法飲酒、ドラッグ、男癖の悪さ」をもってしても、タラ・コナーからミスUSAのタイトルを 剥奪しなかったドナルド・トランプに対して「甘すぎる」、「社会に誤ったメッセージを送ることになる」と非難する声も 聞かれていたのだった。

このタラ・コナー嬢の素行の悪さについて、当初一部のメディアは、ミス・ケンタッキーという彼女のバック・グラウンドから推測して、 田舎町から いきなりニューヨークの華やかな世界に出てきた若い女性が経験する 「世間知らずでギャップに対応できず、どんどん夜の世界の深みにはまって行く」 症状と分析する声もあったけれど、 それも束の間。 メディアが、深く調べるまでもなく、彼女の地元であるケンタッキーの田舎町では、 彼女のパーティー・アニマルぶりはかなりの評判だったようで、 彼女は高校時代に そのあまりに派手な遊びが災いして、まずチアリーダーのチームから追い出され、 次に高校からも退学させられ、通信教育で高校卒業資格を取ったという 言わば ”札付きの不良娘” であったことが明らかになっている。
彼女は、その後ビキニ・モデルをしており、モデル時代の彼女の写真は普通のショットから かなりキワドイものまでが 先週からインターネット上に出回っていたけれど、 こうした彼女のバックグラウンドは、サンクス・ギヴィングのパレードで笑顔で手を振ったり、 様々なチャリティ・イベントや若い女性を支援するキャンペーンに花を添える ミスUSAの役割を考えると、 かなり不似合いなものであるのは紛れも無い事実である。

今回のスキャンダルが明るみに出てから、彼女がミスUSAのコンテストの参加者の間で極めて評判が悪かったこと なども伝えられていたけれど、私個人の印象としては、タラ・コナー嬢は 好感を持つか 持たないかは別として 確かに見た目にはキレイだし、写真写りも良いけれど、一度口を開くとあまり知性や品性が感じられないタイプで、 この手のブロンドというのはマイアミやロサンジェルスに沢山居るように思えるのである。
でも、ニューヨーカーの彼女に対するリアクションはもっと辛口で、男性も女性も多くが タラ・コナー嬢 を 「Slutty」(Slutとは 上品に言えば身持ちの悪い女性のこと、Sluttyはその形容詞) と評しており、 彼女は女性からも、男性からも、 いかもにクラブで夜遊びをしている間に引っ掛けて、ワンナイト・スタンド(一夜の関係) を楽しむタイプの女性に見えるようである。
でも、かつてのミスUSA コンテストと言えば、参加者の多くは、医者や弁護士を目指して勉強している女性が 奨学金を得る手段として応募しており、以前は「インテリジェンス」や、 社会問題を熟知し、それについて自分の意見をしっかり持っていることが 審査の重要なポジションを占めていたのである。

そもそもミスUSAとは、今年で85年になる歴史あるビューティー・ページェントで、かつては高視聴率を誇っていた ドル箱イベントだったのである。
しかしながら、90年代半ば頃からその視聴率が徐々に下がり始め、その頃から 「ミス USAに応募するタイプの女性が 時代遅れのビューティーになりつつある」ことが指摘されるようになっていったのだった。 実際、90年代半ばと言えばスーパーモデル全盛期。 70年代や80年代は ミスUSAやミス・ユニヴァースに出場したのがきっかけで、 モデルのキャリアへの道が開かれるケースも多々あったけれど、 その頃にはモデル業界は、当時流行りの「ヘロイン・シック」の 影響で、不健康かつエッジーで個性的なビューティーを ミス・コンテストの参加者よりずっと若い16〜18歳 程度でスウトする傾向が高まっていたのだった。
そうしたスーパーモデル達がもてはやされる一方で、ミス・コンテスト参加者の優等生ビューティーは、 すっかり退屈で、オールド・ファッションなものと見なされ、またビューティー・コンテストそのものの 存在意義を疑問視する動きが出てきたのは2000年以降に入ってからのこと。
その結果。近年のミスUSAコンテストの視聴率低下は著しいもので、今年に入ってからはそれまでの放映局で、 3大ネットワークの1つであるABCが 番組放映から手を引いてしまい、 一時は、人々の関心を集めるためにミスUSAを 「サバイバー」のような 勝ち残り式リアリティTVにするという企画も出ていたほど。
そして今年4月に、殆ど人知れず状態で選ばれたのが、2006年度のミスUSA タラ・コナー嬢で、 今回のスキャンダルが大きく報道されるまで、アメリカ社会は彼女のことを全く知らない状態だったのである。

さて、今回のタラ・コナー嬢のスキャンダルでスポットが当たったのが ミスUSAの妹格に当たる ミス・ティーンUSAのケイティ・ブレア (写真右)で、ニューヨークのトランプ・プレースでルーム・メートである2人が、 ナイトクラブで、ダンスをしながら熱烈なレズビアン・キス・シーンを展開したことが、スキャンダルの一端として大きく報じられたのである。
そうかと思えば 今週に入ってからは、 来年3月に行われる予定の2007年度のミスUSA コンテストに出場予定だったミス・ネヴァダの 凄まじいまでの夜遊びの現場のフォトと、メディアが放映を差し控えるほどに露出の激しい写真が インターネット上に出回り、その2日後にミス・ネヴァダが出場権を剥奪され、準ミス・ネヴァダが替わってコンテストに参加 することが報道されていたりする。
ミス・ティーン USAのケイティ・ブレアとタラ・コナーも見た目にかなり似ているけれど、失格となったミス・ネヴァダというのも、 ブロンドのロングヘア、ノーズジョブ (鼻の整形)をしたと思しき完璧な鼻、ふっくらした唇から真っ白い歯を覗かせるスマイル、 焼けた肌とブルー・アイで やはり2人にそっくりで、彼女もミス・ネヴァダに選ばれる前はビキニ・モデルをしていたという。

こうしたミスUSAやその候補者を見ていると、まるで現在のアメリカにおけるビューティーが、 「ブロンドのビキニ・モデルのパーティー・アニマル」になってしまったようにも思えるけれど、 これは当たらずとも遠からずで、アメリカの表面的な 軽薄なカルチャーでは こうした女性が少なくともメディアからはもてはやされる傾向にあるのは、過去数年のパリス・ヒルトンを見ていても理解できること。
こうした女性達がミスUSA、ミス・ティーンUSAコンテストで 「美しい」とされると、 今度は美の定義を問う声が出てきてしまうのが アメリカ社会であるけれど、 その定義が何であれ、「合法」というのは必要最低条件。
「違法飲酒やコカインの常用をしていても美しい」というのでは、あまりに程度が低すぎると思えてしまうのである。



Catch of the Week No.3 Dec. : 12月 第3週


Catch of the Week No.2 Dec. : 12月 第2週


Catch of the Week No.1 Dec. : 12月 第1週


Catch of the Week No.4 Nov. : 11月 第4週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。