Dec. 22 〜 Dec. 28 2008




” Year 2008 Was ・・・ ”


今週は木曜がクリスマスであったけれど、この日のアメリカはナショナル・ホリデイ。 好況の時は、旅行者やクリスマス・ヴァケーションに出掛けなかったニューヨーカーをターゲットに オープンしているレストランやストアが多かったけれど、今年のクリスマスは休業するところが 殆どで、本当に静かなクリスマスとなっていたのだった。
クリスマス・イヴにしても、私が住むアパートのビルでは ドレスアップして出掛ける人を全く見かけなかった代わりに、 ワインのボトルや、手料理が入っていると思しきフード・コンテナ、もしくはグルメ・デリからのテイクアウトを 持ってやって来る人、出て行く人が圧倒的に多く、かく言う私もこの日は友人達を自宅に招待して ポットラック(持ち寄り)・ パーティーをホストしていたのだった。

クリスマスの街の静けさは、クリスマス翌日の金曜にピークに達していたようで、 この日はCUBE New York のスタッフを連れてクリスマス・ディナーに出掛けたけれど、 以前 来た時には ギッシリ混み合っていたレストランのバー・エリアに殆ど人が居なくて、しかも夜の11時過ぎには レストランがガラガラになってしまう ”引けの速さ” にも驚いてしまったのだった。
私たちが出掛けたのはミッドタウンのレストランで、アップタウンやミッドタウンは そもそも ダウンタウンのレストランよりはクローズするのが早いもの。 でも、私がスタッフのクリスマス・ディナーのために最初に選んだダウンタウンの最新のレストランは、金曜であるにも関わらず クリスマスの翌日であることを理由に 「レストランを休業する」 と言って 2週間ほど前に 予約をキャンセルしてきたのだった。
好況時であったら、クリスマスの翌日でも 年末の金曜にレストランが休業するなんてあり得ないこと。 また好況時であったら、ホリデイ・シーズンのディナー予約は1ヶ月前には埋まってしまうもので、 特に人気レストランの場合、5時半とか10時半といった時間でも 2週間前に予約を取るのは 不可能なケースが多かったのだった。 でも、さすがにリセッションとあって 今回出掛けたレストランの予約は あっさり取ることが出来たけれど、 26日の金曜は タクシーの運転手も、「こんなにスローな金曜日は何年ぶりか・・・」と言っていたほど 人が街に出ていなかったのだった。

私自身の経験からも、ニューヨークのクリスマスがこんなに静かだったのは本当に久しぶりのこと。 大体、ホリデー・シーズンに簡単にタクシーが捕まるということなど、過去数年はあり得なかったのである。
でも、街中に人が居ないからといってニューヨーカーがこぞってクリスマス・バケーションに出掛けたか?と言えば そうでもなくて、空港利用者及び、飛行機の乗客数は今年4月からずっと下がり続けていることがレポートされており、 ことに今年9月にリーマン・ブラザースが破綻してからというもの、ビジネス・トリップを含む 全ての旅行が激減しているのだった。
加えて、既に惨憺たる売り上げが見込まれていた小売店のクリスマス商戦も、予想を更に下回るもの。 ことに打撃を受けているのが 女性もののアパレルで、売り上げは19%のダウン。 また家電関係も26%のダウン。そして最も売り上げが落ち込んでいるのが、一流ブランド物、宝飾品を含むラグジュアリー・グッズで、 34%の売り上げダウンが報じられているのだった。
ホリデー商戦で 事前の予測と異なる展開になっている点としては、 ギフト・アイテムのNo.1に挙げられていた ギフト・カード(商品券)を 購入する人が減って、品物でプレゼントする人が増えていること。 これはギフト・カードの発行元が倒産すれば、そのギフトカードが無駄になるという危惧もさることながら、 今年は75%オフなど、大幅なディスカウントがクリスマスを待たずして行われていたために、 同じ50ドルを使うのなら ギフト・カードを贈って 「なんだ、50ドルか・・・」と思われるより、値引き前は180ドル、200ドルだった 品物をセールで購入して贈った方が 喜ばれるし、幾らを使ったかを悟られない、というのがその理由のようである。


でもアメリカが、大幅値引きをしても売り上げが 振るわないクリスマス商戦を繰り広げる中、 12月14日にイラクで行われたプレス・カンファレンス中に ジャーナリストがブッシュ大統領に靴を投げつけた事件が、 思わぬ大ヒット商品を生み出しているのだった。
そのヒット商品とは、言うまでも無く ブッシュ大統領に投げつけられたシューズ。 これを生産しているのはトルコのバイデン・シュー・カンパニーで、 事件以来、同社には合計30万足のシューズのオーダーが世界各国から殺到しており、 イラクからの12万足のオーダーを筆頭に、イラン、エジプト、シリア、イギリス、アメリカなどから注文が寄せられているという。
このため バイデン・シュー・カンパニーでは、このシューズの名前を 「ザ・ブッシュ・シュー」 に変更し、 「グッバイ・ブッシュ、ウェルカム・デモクラシー(民主主義)!」という宣伝コピーで、このシューズを再プロモートしているとのこと。 ちなみに「ザ・ブッシュ・シュー」の2007年度の売り上げ数は1万9000足。 それを突如 30万足も生産することになった バイデン・シュー・カンパニーは、 新たに100人もの生産スタッフを雇い入れ、猛然とその生産を急いでいることが報じられているのだった。

この1件は、ブッシュ大統領にとって 最初で 最後の 有効な景気刺激策となった訳だけれど、 来週には大統領が承認した $13.4ビリオン(約1兆1700億円)のベイルアウト・マネーがGMとクライスラーに対して 投入されることになっており、専門家によれば デトロイトのビッグ3を救済するために 今後アメリカ国民が捻出しなければならない税金は$100ビリオン (約90兆円)と見積もられているという。
さて、2008年と言えば2月のベア・スターンズに始まって、フレディ・マック&ファ二ー・マエ、A.I.G.、シティ・バンクなど、 金融機関に対するベイルアウト(救済) が相次いだ年。 実際、アメリカ人に対するアンケートで2008年を象徴する言葉の第2位に選ばれていたのが この”ベイルアウト” だったのである。
では、第1位は何であったかと言えば、オバマ次期大統領がスローガンに掲げていた 「チェンジ」。 そしてオバマ時期大統領選出は、2008年のアメリカにおける最大のニュースであると同時に、 最も報道時間が割かれたニュースとなっていたのだった。

アメリカで2番目に報道時間が割かれたのが、相次ぐベイルアウトや年末に入ってからのメイドフのポンジー・スキームなどを含む ファイナンシャル・クライシス関連のニュース。 そして第3位が北京オリンピックとそこで8つの金メダルを獲得した マイケル・フェルプスのニュース。 このマイケル・フェルプスと、オバマ時期大統領は、2008年のアメリカで 数少ないポジティブなニュース・ソースとして捉えられていたのだった。
その一方で、2008年も山火事、竜巻、洪水といった災害に見舞われたのがアメリカ。 こうした災害が、各州政府の既に苦しい財政を 益々苦しくしていたのは言うまでもないこと。 ことにカリフォルニアは、サブプライム打撃が最も大きく、失業率もアメリカ全体の平均を上回っており、 年内持ち堪えられるか?と言われる破産寸前状態であったけれど、その経済危機は 回避されたとは程遠い状態。
またサブプライム問題と並んで、アメリカをリセッションに追い込んだ要因となったのが 原油価格の高騰であったけれど、 その価格は7月11日に史上最高値である1バーレル当たり 147.27ドル を付けたのをピークに その後は どんどん値下がりを続け、 12月3週目の時点では過去4年間の最安値である37.79ドルにまで下落しているのだった。
でもガソリン価格が低下しても、アメリカ人の多くが車生活に戻らないのは 今までガソリン代に使っていたお金を 食費に回さなければならないため。 それほどにレイオフや給与カットが深刻な問題となっていたのが2008年のアメリカで、 今年職を失った120万人に加えて、2009年も更に100万人のレイオフが見込まれているのだった。
ことに2008年に多くの職が失われたのは 言うまでも無く金融業界。でも2009年には、小売り、サービス業での レイオフが増えることがレポートされているのだった。

エンターテイメントの世界における2008年は、まず映画で 興行成績No.1 となったのが 文句無しに バットマン・シリーズの「ザ・ダークナイト」。
2009年1月末にソーホーの自宅アパートで謎の死を遂げたヒース・レジャーの遺作となった同作品であるけれど、 その興行売り上げはダントツの$530ミリオン(約477億円)。 第2位は「アイアンマン」で、売り上げは$318ミリオン(約286億円)。3位が僅少差で「インディアナ・ジョーンズ/キングダム・オブ・クリスタル・スカル」となっており、 $317ミリオン(約285億円) の売り上げを記録。 2008年に最も話題とパブリシティを獲得していた映画、「セックス・アンド・ザ・シティ : ザ・ムービー」 は、 $153ミリオン(約135億円)を売り上げて、11位にランキングされているのだった。
音楽の世界では、ダウンロードを含めたアルバム・セールスの第1位となったのがジョナス・ブラザース。 昨年はハイスクール・ミュージカルが圧倒的な強さを見せていたけれど、ジョナス・ブラザースも ハイスクール・ミュージカル同様の ディズ二ー・チャンネルから生まれたスター。
そのディズニー・チャンネルが生んだもう1人のスター、ハナ・モンタナこと マイリー・サイルスは、 引き続きの人気となっていたけれど、 ヴァニティ・フェア誌に掲載されたセクシー過ぎるグラビアは 一大スキャンダルとなっていたのだった。
でも スキャンダルと言えば、過去2年間ゴシップ・メディアにスキャンダルを提供し続けてきたブリット二ー・スピアーズが、 体重を落とし、9月にMTVビデオ・ミュージック・アワードに登場したのをきっかけに、 カムバックの道を歩み出したのは、エンターテイメント界のポジティブなニュースと言われるもの。
また12月にほぼ離婚が成立したマドンナとヤンキーズのアレックス・ロドリゲスのロマンスも、 A.ロッドを 離婚に追いやったほどの 大きなスキャンダルになっていたのだった。 そのマドンナは、2008年にコンサートのチケット売上が高かったミュージシャンの第3位、 第2位はブルース・スプリングスティーン、そして第1位がボン・ジョビとなっている。

スポーツの世界では、引き続き ステロイド疑惑が2008年にも大きく取り沙汰され、春には元ヤンキーズのピッチャー、 ロジャー・クレメンズが疑惑を否定するために、 下院の公聴会で証言を行っていたけれど、同問題は2009年に持ち越しになった状態。
ステロイド疑惑に止まらず、ベースボールは ヤンキーズが旧スタジアムでの最後のシーズンにも関わらず、 成績不振に終わった一方で、ワールド・シリーズは史上最低の視聴率を記録。 現在ヤンキーズ、メッツを含む多くのフランチャイズが新スタジアムを建設中であるけれど、中にはリセッションのために 来シーズンまでに建設が間に合わないかもしれない スタジアムもあるという。
でも2008年のスポーツ界は、ニューヨーク・ジャイアンツのスーパー・ボウルでの勝利に始まって、 タイガー・ウッズがU.S.オープンで見せたプレーオフの末の優勝、またNBAファイナルでは、 ボストン・セルティックスがロサンジェルス・レイカーズを破って 1986年以来のチャンピオンシップに輝くなど、 歴史に残る 好ゲーム が次々と繰り広げられた年。
中でもファンとスポーツ記者の投票で 2008年 のベスト・マッチに選ばれたのが、 ウィンブルドン男子シングルス決勝で、ラファエル・ナダルが同大会決勝史上最長である 4時間48分の試合の末、同大会の過去5年間のチャンピオン、ロジャー・フェデラーを破ったゲーム。 この試合は 当時のこのコラムにも書いた通り、見ているだけでグッタリ疲れてしまうほどの 壮絶なマッチであったけれど、例え同じ顔合わせでも ここまで凄いゲームは 恐らくもう観られないだろうと思われるもの。
でも視聴率の見地からは、2008年に最高を記録したスポーツ・イベントは 北京オリンピックの開会式であったという。

その2008年は、選挙戦と経済問題が 報道の中心であるだけでなく、人々の話題の中心でもあった年。
それだけにCNBCなどのファイナンス・チャンネルのキャスターや、ファイナンス番組にしか登場しないような 経済の専門家が トークショーにゲスト登場して、 サブプライム・ローンやその破綻の仕組み、ベイルアウトについて 語る様子が当たり前になっていたけれど、実際、CNBCはファイナンシャル・クライシスに突入してからというもの 高視聴率を続けており、リセッションの恩恵を受けている数少ない存在の1つ。
そんな選挙と経済問題の合間を縫って、最も大きく報じられたスキャンダルと言えば、 ニューヨーク州知事、エリオット・スピッツァーを辞任に追いやった 買春スキャンダルである。 エリオット・スピッツァーと言えば、ウォールストリートに厳しく、売春組織の摘発強化を行ってきた人物。 その彼がエスコート・クラブから派遣された娼婦と関係していたことは、 政治の世界はもちろん、ウォールストリートの関係者にも大きな衝撃を与えていたのだった。
この高級エスコートでのエリオット・スピッツァーのコード・ネーム 「クライアント・ナイン」は、 一躍 ジョークとして使われるようになったけれど、 同スキャンダルですっかり有名になったお相手の娼婦、アシュレー・デュプリー嬢は その後 メディアのインタビューにも登場し、英語で言う「15 minutes of fame / フィフティーン・ミニッツ・オブ・フェイム(15分間の名声)」、 すなわち 「にわかセレブリティ」 のステイタスをエンジョイしていたのだった。

さて2008年は、ヒース・レジャー以外にも、俳優のバー二ー・マックやトップ政治ジャーナリストであるティム・ラッサートが 突然の死で 人々にショックを与えた他、作家のマイケル・クライトン、デザイナーのイヴ・サン・ローラン、 アメリカにチェス・ブームを巻き起こしたチェスのチャンピオン、ボビー・フィッシャーといった著名人が死去しているけれど、 アメリカに最もインパクトを与えたセレブリティの死去で ダントツのNo.1に選ばれていたのはポール・ニューマン。 若い世代にはドレッシングやパスタ・ソースのクリエイターとして知られていた彼であるけれど、 そのキャリアはブロードウェイからスタートしており、 彼の死去直後はブロードウェイがその追悼のために1分間イルミネーションを消して彼に敬意を表していたのだった。


既に名前が出た オバマ次期大統領、マイケル・フェルプス以外に 2008年のアメリカで 時の人と言えたのは、、 共和党副大統領候補として、一躍メディアの関心の的となったサラー・ペイラン、彼女の物真似で 全米を大笑いさせた ティナ・フェイ、一連のベイルアウトでメディアの常連となった ヘンリー・ポルソン財務長官、初の女性大統領候補としてオバマ候補と民主党史上、最も激しい予備選挙を展開し、 次期政権の国務長官となったヒラリー・クリントン、 カーラ・ブルーニとのスピード結婚で話題を集めたフランスの二コラ・サルコジ大統領、 リーマン・ブラザースの破綻で 悪人の代名詞になったリチャード・フルド元同社CEO、 そして年末になって その写真と名前がメディアに登場しない日が無くなった バー二ー・メイドフ等、 今年は圧倒的にハリウッドよりも、政治、経済の世界から”時の人” が生まれていたのだった。

最後に 2008年に生まれた主だった新語をご紹介しておくと・・・


金融関係者にとって2008年という年は「終わってくれてホッとした」というほどの苦難の年であったというけれど、 事実、2008年は お金を通じて人々の価値観やライフスタイルが大きく変わった年。
クレジット社会だったアメリカでも 今では人々が徐々にキャッシュで買い物をするようになってきているけれど、 その理由は 人々が今以上にクレジット・ローンを増やさないようにしているのに加えて、 カード会社が使用限度額を減らしているため、それ以上カードが使えなくなっている人々が増えているためであるという。
でも2008年のファイナンシャル・クライシスは、本来多くの関係者が2009年、ないし2010年に見込んでいたもの。 騙し騙し続けてきた いい加減な投資や、金融のからくりのツケを払わせられるような、 大崩壊が1〜2年先に起こるだろうけれど、その前にパラシュートで脱出しておこうというのは 多くの金融関係者が思い描いていたことであったという。
金融の専門家は現在のリセッションがあと2〜3年は続くと見込んでおり、 2009年は2008年よりずっと厳しい年になることを予測しているのだった。 こんな予測を聞かされたら、クリスマスを静かに過ごしたくなる人々の気持ちも理解できるけれど、 私が土曜日に出掛けたカラオケ屋は大繁盛であったから、 リセッションにはリセッションなりの楽しみがあるというもの。
9/11後のニューヨークも 景気はかなり落ち込んだけれど、当時はワールド・トレード・センターで 亡くなった人々に対する追悼の気持ちが強かったこともあり、暫くの間、楽しい事をするのが不謹慎のように 感じられていたもの。 でも、今は 逆に 「楽しいことでもなければ やっていられない」 という感じであるから、 この時代に何かヒット商品が生まれるとしたら それは ”お金が掛からないレジャー” 、 もしくは ”お金を節約してくれるグッズ” というのが 2009年の トレンド予測である。

Have A very Happy 2009 !





Catch of the Week No. 3 Dec. : 12 月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Dec. : 12 月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Dec. : 12 月 第 1 週


Catch of the Week No. 5 Nov. : 11 月 第 5 週


Catch of the Week No. 4 Nov. : 11 月 第 4 週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。