Dec. 21 〜 Dec. 27 2009




” Year 2009 Was・・・ ”



毎年、年末になると 「1年なんてあっという間!」と つくづく思うけれど、 2009年という年は、英語で ” Decade / デケード ”という 10年間の節目の年。
すなわち21世紀に入ってからの ファースト・デケード(最初の10年間)の最後の年とあって、 年末のアメリカのメディアでは2009年を振り返るのと同様に、2000年〜2009年までの10年間を振り返る 特集がいくつも見られていたのだった。

そんな特集を見ていると、「10年なんてあっという間」とも思えてしまうけれど、 私の目から見た2009年のアメリカ、そしてニューヨークはリセッションのせいでダイナミックさ、楽観的なムードを失ってしまった状態が 恒久化のステージに入っていた年。
右のニューヨーク・ポスト紙の表紙は2009年1月1日のものだけれど、その大見出しが「2008 Thank God It's Over!」、すなわち「終わって良かった2008年!」 というもの。確かに、2008年は大手金融機関がいくつも破綻し、多くのアメリカ人が リタイアメント資金を大幅に失い、さらにローンが支払えずに家を差し押さえられる人々が続出、といった数々の暗いニュースが 毎日のようにメディアで報じられ、特に秋以降はパニック的とも言える危機感を漂わせていた年。
そんな社会的な先行き不安感や、金融危機を野放しにしたブッシュ政権に対する怒りが、2008年11月の選挙で オバマ大統領選出に繋がったとも言われているけれど、 そのオバマ大統領が国をあげたパーティー・ムード で就任式を終えたのが1月20日のこと。 宣誓を言い間違えて、翌日やり直すという小さなトラブルが起こったり、ミシェル夫人のファッションが 大きな話題となったりしたけれど、年末になってみると熱心なオバマ支持者のセレブリティでさえ、 彼の大統領としてのパフォーマンスに対してC+という厳しい評価を与えているなど、 オバマ大統領に対してアメリカ国民が抱いた希望や期待というものは、彼に対する支持率と共に徐々に下降線を辿ることになってしまったのだった。


それとは逆に2009年中、アップし続けたのがアメリカの失業率。年末に入って失業率が低下したと言われているものの、それは 職を探すのを諦めた人々が増えたのと、年末商戦用のパートタイム職員の雇い入れが増えただけと言われているので、 このまま失業率が下降線を辿るとは言い難い状況。
銀行が中小企業に対するビジネス・ローンを引き続き 控えているので、そんな状況では雇用が増えるとは考え難いけれど、その一方で、 2009年に記録的な利益を計上したのがゴールドマン・サックスを筆頭とする金融機関。
金融危機を招いた企業が、国民の税金で救済されて、真っ先に立ち直って再び多額のボーナスを受け取るという あまりに筋が通らないシナリオは、アメリカ国民だけでなく、オバマ大統領をも激怒させたけれど、 だからと言って打つ手がある訳ではないのが、オバマ政権の悲しい実情なのである。
その一方で、国民は税金と クレジット・カードの利息や手数料、ペナルティで どんどんお金を巻き上げられていったのが2009年で、何とアメリカ人の50%以上が 友人や家族に借金をしていることが明らかになっているのだった。
それだけに今年のホリデイ商戦も、滑り出しは予想を上回ったものの クリスマス前には既に息切れ状態で、 アフター・クリスマスのセールの売り上げ次第では、近年で最悪といわれた2008年のクリスマス商戦を 若干下回る数字が見込まれているような状態。 なので、小売のアナリストは アメリカ人が何でもかんでも 買いまくった時代の 完全な終焉 を宣言しているのだった。




ショッピングをせず、外食も控えるようになったアメリカ人が2009年にしていた事と言えば、TVを見ること。
今や平均的なアメリカ人が一週間にTVを見る時間は30時間を越えており、 中でも2009年に話題を集め続けていたのが一般の人々が登場するリアリティTV。
何度かこのコラムで書いた「ジョン&ケイト・プラス・エイト」を始めとする、リアリティTVは 2009年中、その茶番とも言えるエピソードの数々で、高い視聴率を獲得していたのだった。
そしてそんなリアリティTV人気とリアリティTVセレブリティの出現が生み出したのが、 自分もリアリティTVに登場してリッチになろうという、”セレブリティ・ワナビー(なりたがりや)”。
写真上、左はリアリティTV出演のために8つ子を産んだと言われる 通称”オクト・マム”ことナディア・ソールマン、 写真上中央の バルーンを使った狂言事件で、リアリティTVシリーズの契約を取り付けようとしたヒーニー・ファミリー。 そしてホワイト・ハウスのパーティーにゲストを装って潜入し、オバマ大統領夫妻と握手まで交わしていた ミカエラ&タレック・サラヒ夫妻は、「お金と名声欲しさに そんな事までする人間が居るなんて・・・」 という2009年の”愚行の象徴” として捉えられていた存在。
もちろん、その代償は決して安いものではなく メディアや警察を欺いて、バルーンの中に入った息子救出劇を 演出したリチャード・ヒーニーには12月23日に90日の禁固刑、妻のマユミには20日間の禁固刑が言い渡されており、 また一家は向こう4年間、この事件のエピソードをメディアに売るなどして一切の利益を上げることが禁じられているという。



こんな茶番を演じた訳ではない 一般人も2009年には にわかセレブリティになっているけれど、 その好例と言えるのが1月15日にエンジン・トラブルのためハドソン・リバーに不時着したユナイテッド・エア1549便が、 1名の死者を出すこともなく、乗客、乗員が全て救出されたという事件(写真上、左側)。 ここで、機転の効いた判断と冷静な対応で、事態を惨事から ”ミラクル・オン・ハドソン” に変えてしまった ベテラン機長、 チェスリー・サレンバーガー氏が 一躍国民的なヒーローになったのはまだ記憶に新しいところ。 当時任期終了前のブッシュ前大統領、オバマ次期大統領、ニューヨークのブルームバーグ市長が それぞれサレンバーガー機長に対して、電話で彼の功績を称えた他、彼はその5日後の大統領就任式に招待されるという栄誉を受けたのだった。

写真上中央は、ホワイト・ハウス・ビアー・サミットといわれた一件。 7月にハーバード大学の黒人教授、ヘンリー・ルイス・ゲイツ氏が、家の扉が開かないため、扉を壊して自宅に入ろうと試みたところ、 これを目撃した近隣の女性が強盗と勘違いして 警察に通報。駆けつけた警官は、ゲイツ教授のIDをチェックし、彼の自宅であることは確認したものの、 捜査に非協力的で 警官をののしり続けたゲイツ教授を ”ディスオーダリー・コンダクト” すなわち、 警官の指示に従わなかったという容疑で逮捕。 ゲイツ教授は 駆けつけた 警官の捜査を”レイシャル・プロファイリング” と呼ばれる 人種的偏見に満ちた 見込み捜査だとメディアを通じて抗議したのだった。 そして、これについて記者会見で意見を求められたオバマ大統領は、事件の実態についてあまり知識が無かったにも関わらず、 警官の行為に対して 「Stupid / 馬鹿げている」という言葉で批判をしたことから、今度は世論から猛反発を受けることになり、 後にオバマ氏は、ゲイツ教授と彼を逮捕した警官のジェームズ・クローリーの双方に電話をして、 「ホワイト・ハウスに2人を招待するので、ビールを飲みながら全てを水に流そう」ということで、”Stupid発言” の収拾をする羽目になってしまったのだった。 そして実現したのが、大統領と事件の当事者2人による ”ビール・サミット”。 オバマ大統領はこのエピソード以前にもしばしば失言をしては、謝罪を繰り返していたけれど、この事件の段階では”Stupid発言”で警官の 正当な行為を侮辱したという批判が大統領に寄せられ、健康保険案の審議の支障になることが見込まれたために、 大統領が ここまでしなければならなかった というのが実情なのだった。
でもゲイツ教授と警官のクローリーは、これを機会にすっかり友人同士になったようで、後に2人が仲良くフットボールの試合の観戦をしていたという 後日談が伝えられているのだった。

そして、写真上右側は8月に11歳にして誘拐され、その後18年間に渡って監禁、レイプをされ続けたジェイシー・リー・デュガードが、女性警官の機転から 無事に救出されたというニュースで、彼女は自分の誘拐犯との間に2人の子供をもうけていたという。 犯人からの洗脳が心配されていたものの、ジェイシー・リー・デュガードは救出から僅か2ヶ月ほどで、ピープル・マガジンの表紙に 元気な姿で登場。11歳の頃の写真しかメディアに紹介されていなかった彼女であるけれど、成長した彼女はジョディ・フォスターに似た美人になっており、 家族との再会を喜んでいることがインタビューで語られていたのだった。

この他、2009年に一般人からセレブリティになった最もビッグな例としては、シンガーのスーザン・ボイルが挙げられるけれど、 彼女が 「ブリテンズ・ガット・タレント」で ”I Dreamed a Dream” を歌ったビデオは、今年You Tubeで 1億2000万人がダウンロードした 最多視聴ビデオとなっているのだった。



一般人がにわかセレブリティになるのがトレンドだった2009年であるけれど、セレブリティがメディアで取り沙汰されたのは、 もっぱらスキャンダルや死去のニュース。
まずスポーツの世界では 2月に北京オリンピックで 8つのゴールド・メダルを獲得したマイケル・フェルプス(写真上左側)がカレッジのパーティーでマリファナを吸っていたビデオが 公開されて、本人は謝罪。水泳連盟からは出場停止処分を受ける羽目になったかと思えば、 ヤンキーズのアレックス・ロドリゲス(写真上中央)がパフォーマンス・エンハンシング・ドラッグの使用について、 以前のインタビューでウソをついていたことが明らかになり、彼が涙ながらに記者会見を行なったのはやはり2月のこと。
その後、5月から女優のケイト・ハドソンとの交際がスタートしたA・ロッドは、すっかり別人のようになって謙虚な態度で大活躍をし始めたけれど、 そのケイトとは、12月に入って別離のニュースが流れているのだった。
スポーツ界のスキャンダルで犠牲者と言えるのは、ESPNの美人レポーター、エリン・アンドリュース(写真上、右)。 彼女は滞在中のホテルの部屋で、そのヌード姿をビデオ盗撮され、それがインターネット上で公開されるという被害にあっており、 犯人のマイケル・バーレット(48歳)は、2度に渡ってエリンの宿泊ホテルの隣の部屋に滞在して盗撮を行い、 そのビデオを売却しようとしていたことが明らかになっているのだった。
バーレットは罪状認否で罪を認めており、彼に対しては最高で5年の禁固刑と、約2500万円の罰金の支払いが 科せられる見込みである。



2009年のセレブリティ・スキャンダルで最もショッキングだったものの1つと言われるのは、 グラミー賞授賞式前夜にシンガーのリアナが当時ボーイフレンドだったシンガー、クリス・ブラウンによる暴力で重症を追った事件。(写真上左側)
クリス・ブラウンは後に謝罪をしているものの、世論は未だ彼を許していないのが実情で、一方のリアナは 「自分をロール・モデル(お手本)として慕ってくれる若い女性ファンのためにも、ドメスティック・ヴァイオレンスは許さない 姿勢を貫く」と後のインタビューで語っているのだった。

写真上、中央は アメリカの夜のトークショー・ホスト、デヴィッド・レターマンであるけれど、10月に彼が番組の中でいきなり そのスタッフとの関係を告白した様子は、今年のアメリカのTV業界で最もショッキングと言われたシーン。
彼に限らず、2009年はESPNのキャスター、スティーブ・フィリップが不倫のため職を追われたり、サウスキャロライナ州の マーク・サンフォード州知事の不倫が発覚して、大スキャンダルになるなど、タイガー・ウッズの不倫スキャンダル以前にも 同様の報道が多数見られていたのだった。 もちろん、最も報道とダメージが大きく、愛人の数も群を抜いていたのがタイガー・ウッズ・スキャンダルであるけれど、 浮気、不倫というのはアメリカでは厳しく罰せられるものなのである。

写真上、右側のニューヨーク・ポスト紙の表紙は12月20日に32歳の若さで死去した女優のブリットニー・マーフィーであるけれど、 2009年は、ハリウッドでは がんで死去したファラー・フォーセット&パトリック・スウェイジー、スキー事故で死亡したナターシャ・リチャードソン、 政治の世界ではケネディ兄弟最後の生き残りだったエドワード・ケネディ上院議員、ジャーナリズムの世界ではウォルター・クランカイト らの 大物が死去している年。
でも、2009年のニュースの中で最も大きく報じられたのはマイケル・ジャクソン突然の死去のニュースで、 メディアが今年最も紙面を割き、報道時間を費やしたのが マイケル・ジャクソンのニュース。 今週にはFBIの秘密捜査ファイルが公開され、彼の幼児虐待の疑惑がさらに深まったところで、 マイケル・ジャクソン報道は今後も続きそうな気配なのだった。


逆にスキャンダルではなく、良い意味で2009年に大きくブレークしたスターと言えるのは、音楽の世界ではレディ・ガガとテイラー・スウィフト。 ハリウッドでは引き続きティーンの間でメガ・センセーションを巻き起こしている 「トワイライト・シリーズ」のロバート・パティンソン、クリスティン・スチュワート、 テイラー・ラトナーといったキャストの面々、そして先述のスーザン・ボイルといった顔ぶれ。
ハリウッドで、2009年に最も効率良く稼いだと言われる映画、すなわち制作費が安い割りに高い興行成績を上げたのが 爆笑コメディの「ハングオーバー」。また2009年に海賊ビデオのダウンロードが最も多かった映画は「スター・トレック」と言われているのだった。

全体的に、2009年のアメリカはファッションもレギンスやモーターサイクル・ファッションといった低バジェット・トレンドが主流。 エンターテイメントも低バジェット化で、レストランにしても一部の人気高額レストランは今も盛況であるものの、 グルメ・バーガー・ジョイントが人気を集めるなどダイニングの世界もあまりパッとしなかった年。
旅行をする人々も減り続けていて、スワイン・フルー(H1N1インフルエンザ)が、予想以上の猛威を振るったことも指摘されているのだった。 経済の世界では ドルが下がり、ゴールドが上がり、インフレのせいでキャッシュ・バリューは1999年に比べて25%もダウンしていることも指摘されるご時勢。
人によっては、これからはエコノミーが良くなるという明るい展望を抱いているようだけれど、 確かにエコノミーは一部の人々にとって良くなると思うし、数字的に明るい展望が提示される日は近いように思えるのだった。 でも かつての好況時のように、ありとあらゆる人々が景気のパワーを実感し、ローンの支払いや失業の心配をせずに お金を使える日はまだまだ遠い というのが私の個人的な意見である。


ところで過去10年を振り返った場合、アメリカにとってもニューヨークにとっても、最も大きな出来事と言えたのがやはり2001年のテロ。
この日のことは、今も鮮明に覚えているニューヨーカーはとても多いと同時に、この日を境に人々の テロに対する概念と、平和に対する意識が 大きく変わってしまったのは今更指摘をする必要さえないこと。
ところで、そのテロの写真と並べて左側に掲載したのはタイガー・ウッズの愛人No.1、レイチェル・ユカテル。 彼女は、9・11のテロで婚約者を亡くし、当時涙ながらにメディアの取材に応じていた姿は、タイガー・スキャンダルの浮上と共に 改めて紹介されていたのだった。
でもそんな婚約者を失った彼女も、ニューヨークの人気クラブ、ピンク・エレファントの マネージャー兼、ドア・ウーマンとして、 ニューヨークのナイトライフで最もパワフルな女性となっただけでなく、今やタイガー・ウッズの愛人であり、彼の秘密を多々握る存在として 億円単位の口止め料を支払われる身。
その生き方に共鳴するしないは別として、ニューヨーカーが テロの後も いかに逞しく 生きているかは、 彼女の転身ぶりからも伺えるものなのである。


Have a Happy New Year !






Catch of the Week No. 3 Dec. : 12月 第 3 週


Catch of the Week No. 2 Dec. : 12月 第 2 週


Catch of the Week No. 1 Dec. : 12月 第 1 週


Catch of the Week No. 5 Nov. : 11月 第 5 週





執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。





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