Dec. 19 〜 Dec. 25 2011

” Gifted Gift Giver ”


今週末は、言わずと知れたクリスマス。
23日の金曜日は、メーシーズ、トイザラスといったストアが徹夜でオープンし、ラスト・ミニッツ・ショッパーの 獲得に務めていたことが報じられていたけれど、クリスマス・シーズンに頻繁に会話に登場するのが、 「もうクリスマス・ショッピングは済ませた?」という質問。
クリスマス・ショッピングとは、要するにギフト・ショッピングのことで、私の知人の1人は 家族、親族、友人、日頃からお世話になっている人々のために、毎年50以上のギフトを購入すると語っていたのだった。
アメリカでは、クリスマスの朝に家族や親族が集まって、ツリーの下のプレゼントを開けて、 ギフトの交換をするのはクリスチャンのファミリーでは恒例のイベント。 でもこの時期ハヌカを祝うユダヤ教徒は、特に何もしないというファミリーも少なくないのだった。
それでも 宗教とは関係なく、 日頃からお世話になっている人にギフトやチップを手渡すことになっているのがこのシーズン。 過去2年ほどは、リセッションの影響で、ギフトやチップを経済的な理由からカットする人が非常に多かったと言われるけれど、 今年に関しては、景気の先行きが以前よりは明るいということで 再びギフトやチップにバジェットを割くようになってきたことが指摘されているのだった。

どんな人々がギフトやチップの対象になるかといえば、オフィスや自分が暮らすビルのドアマンやハンディ・マン、ヘアスタイリスト、 フェイシャリスト、新聞配達人、ヨガのインストラクターやパーソナル・トレーナー、ドッグ・ウォーカー、 ベイビー・シッター、家庭教師や運転手など、ありとあらゆるサービス業。
クリスマス・チップの目安と言わるのは、ヘア・スタイリストやトレナーなどは、1回のサービス分の金額。すなわち、ヘア・カットが100ドルであれば、 100ドルがクリスマス・チップというのがスタンダードとのこと。 新聞配達人は25ドルが相場、ビルのドアマンは30ドル〜50ドルと言われるけれど、通常、ドアマンというのは必ず8人程度存在するもの。 高級コンドミニアムなどになると、ドアマン1人当たりに100ドル以上のチップは当たり前と言われているのだった。
ちなみに、マルチミリオネアが数多く暮らすビルのドアマンは、クリスマスのギフトとしてポルシェを買い与えられたり、 イタリア旅行をプレゼントされたりしているとのことで、 こういう話をすると、大学を出て MBAを取得し、その学費ローンを支払っている友達は、 「高卒のままドアマンになれば良かった!」などと真顔で言ったりするのだった。

もちろん中には 全ての人にチップを支払う経済的余裕が無い人もいる訳だけれど、 マナーの専門家がそうした人々に奨励しているのが、ホームメイドのクリスマス・クッキーやチョコレートなどを贈るということ。
また経済力に関係なく、郊外や地方のコミュニティでは、ホームメイドのクリスマス・クッキーの交換会が 恒例の行事になっているけれど、 昨今ではカップ・ケーキのトレンドも手伝って、クッキーの替わりにクリスマス・デコレーションを施した カップケーキを贈るケースも増えているのだった。
見方を変えれば、そうまでして 人に何かを贈らなければならないのが アメリカのホリデイ・シーズン。 なので、安いギフトを購入するために、人々が行列したり、人ごみを掻き分けてまでショッピングする様子は 理解出来なくもないのだった。



今年のギフト商戦の大人気商品になっているのは、アマゾンのキンドル・ファイヤーや アイパッドなどのタブレット。キンドル・ファイヤーに関しては、199ドルというお値段も手伝って、 発売以来1週間に100万ユニットのペースで売れていることが伝えられているのだった。
でもタブレットを使ってEブックをダウンロードする人々が増えたお陰で、今年のクリスマスに予想外に売り上げを伸ばしているのが ハードカバーの書籍。一時は書籍のビジネスがこのまま消滅してしまうのでは?と 危惧する人々も居たけれど、Eブックが普及したお陰で 人々の間に戻ってきたのが読書という習慣。 加えて、昨今は 目下ベストセラー・チャートのNo.1を独走中のスティーブ・ジョブスの自叙伝など、話題の書籍が多いとあって、 タブレットやエレクトリック・リーダーを使わない人達が買い始めたと同時に、 そうした人々へのギフトとして売れているのがハードカバーの書籍なのだった。


ところで、先週のこのコラムに 「たかだかクーポンとはいえ、 その利用法には 人間性や損得勘定の的確さが現れると言える」と書いたけれど、 ギフト選びというものも、その人の人間性と損得勘定が的確に現れるもの。
ケチな人はケチなギフトを贈ってくるし、相手に取り入りたいという下心があれば、 経済力を超えたギフトを贈る場合が少なくないもの。 また、ある程度親しい間柄でのギフトのやり取りの場合、相手が自分をどの程度理解しているかもギフトに現れると言えるのだった。
つい最近、友達とギフトについて話していた際、”今まで受け取った最悪のギフト”が話題になったけれど、 私は自分がお金を払っていないものについては文句は言わない主義で、 ギフトだけでなく、人にご馳走してもらったレストランのディナーや、 無料で受けたサービスなど、自分の出費が無く、相手からの好意で受け取ったものに対しては、 お礼は言っても、不平や文句は言わないと決めているのだった。 それほど私の頭の中では  無料の好意に文句を言うというのは、恥ずかしいだけでなく、人間性を疑う行為に値すると考えていること。

でもギフトが単に受け取るだけでなく、物々交換の意味を持っている場合は、ちょっと話が違うのだった。
私が生涯の最悪のギフトと見なしているのは、バースデーに受け取った2つのギフトで、 そのうちの1つは、私が相手のバースデーに100ドル以上のギフトを贈ったのに対して、相手が私へのギフトとして 贈ってきたチャイナタウンで10ドルもしないような品物。たとえ10ドル以下でも、私が好きなケーキやチョコレートだったら文句が無いどころか、 物凄く嬉しいけれど、その品物は見るからにアグリーで、もらった瞬間 ぎょっとしたのを覚えているほど。 しかも それを仕方なく部屋に置いて以来、本当に悪い事ばかり起こるので、 その相手との友達関係を止めたのをきっかけに サルベーション・アーミーに寄付してしまったのだった。
別にギフトが原因で その相手との交友関係を絶った訳ではなかったけれど、このギフトに私のことをどう思っているかが如実に現れていて、 それを象徴するような嫌な思いをしたので 絶縁することにしたけれど、 この人物は私にとって本当に鬼門のような存在だったので、絶縁してからは 本当にビックリするほど開運してしまったのだった。
以来、私は嫌いな人間からもらった物は、家の中に入れない主義で、 仕方なく、家の中に入れる場合は玄関に置いてある塩で清めるようにしているのだった。

もう1つの最悪のギフトは、90年代半ばに付き合っていたボーイフレンドがバースデーにくれた時代遅れのブレッド・メーカー(パン焼き機)。
巨大な上に壊れていて、粉と水を入れても動かないので、返品するために とんでもない手間を掛けて洗わなければならず、 このブレッド・メーカーのせいで彼と口論することになったのを覚えているのだった。 私が不満に思ったのは 当時家電ストアに行けばもっと最新のコンパクトで、優秀なモデルが沢山あるのに、 どうして彼がよりによって、私のキッチンが小さいのを知りつつ、時代遅れで巨大なブレッド・メーカーを買ってきたのか?ということ。 加えて、その優秀な最新モデルでさえ、私が彼のバースデーにプレゼントして、当時彼がしょっちゅう着用していた ジャケットよりも遥かに安いお値段で買えることも私の不満の要因で、 そのボーイフレンド自身も史上最悪から2番目の酷い相手なのだった。

要するに 私の経験では、最悪のギフトをくれる人間というのは、私にとって最悪の人間であるとも言える訳だけれど、 友達の意見では最悪のギフトというのは、”手作り”、”嵩張る”、”返品できない”ギフトだそうで、 その典型例として彼女が挙げていたのが クリスマス・セーター。 これはアメリカの地方やイギリスでよく見られる、クリスマス・モチーフのセーターやカーディガンで、 これを1年掛けて家族分をハンドメイドでこしらえるのをライフワークにする親族が居たりすると、 クローゼットにそれが毎年毎年溜まっていくので、酷く迷惑であるという。



加えて、私の友達は昨年のホリデイ・シーズンにヴェガンの友達から野菜のギフト・バスケットを受け取ったというけれど、 ホリデイ・シーズンは外食が多い上に、バスケットの中には 日頃あまり料理をしない彼女が どうやって食べたら良いか分からないようなビーツ、 ルバーブといった野菜が入っていたという。 結局、野菜は使い切らずに傷んでしまい、捨てる時に良心が咎めたのに加えて、 後から贈り主に その野菜をどうやって食べたかを訊かれて困ってしまったという。

私のケースと友人のケースに共通して言えるのは、贈る側が受け取る側のことをあまり考えていないという点。
もちろん、中には受け取る人間の好みやライフスタイルが分からないまま ギフトを贈らなければならない状況もある訳で、 そんな時に用いられるのがギフト・カード、すなわち商品券。 ギフト・カードは一見、人畜無害なギフトのように思えるけれど、 ニューヨーク郊外のウエスト・チェスターに住んで育児に追われる私の知人に言わせると、 「ギフト・カードを使うために遠くのショッピング・モールまでドライブしていくのは面倒」なのだそうで、 別の友人は「ギフト・カードでショッピングをすると、結局自分のお金を足さなければならないから、 出費が増えてしまう」、「日頃買い物しない場所のギフト・カードは全然使えない」などと言っており、 必ずしも誰もが歓迎するとは言えないのがギフト・カードなのだった。 

さて、例年12月26日からスタートするのが、クリスマスに受け取った不要ギフトの返品、交換のラッシュ。
アメリカにはギフト・レシートなるものがあって、値段が記載されていないレシートをギフトに添えることによって、 万一受け取った人がギフトを気に入らない場合、そのギフト・レシートを使って返品や交換が出来るようになっているのだった。
でも、そんなアメリカでも 受け取ったギフトのレシートを要求するのは マナー違反とされること。 また、伴侶や恋人がくれたギフトは、期待外れの物であっても喜んで受け取るのが、良い愛情関係を持続させるためには 必須と指摘されているのだった。

ところで、私と友人は何をギフトに貰ったら嬉しいか?についても話していたけれど、 私が好むギフトは、食べたり、飲んだり、鑑賞した後、なくなるギフト。 すなわち、グルメ・フードやワイン&シャンパン、シアター・チケット、フラワーなど。 今年のホリデイ・シーズンは、マディソン・アベニューにこの秋オープンしたばかりのラデュレに毎日のように 長蛇の行列が出来ていたけれど、ラデュレのマカロンなどは 私にとって貰って嬉しいギフトの1つ。
一方、私の友人が貰って嬉しいギフトというのはジュエリーやシューズだそうで、 「ダイヤのピアスやクリスチャン・ルブタンのパンプスをくれる人が居たらどんなに幸せか!」と言っていたのだった。

そんな彼女にとって、これまでの生涯で ベストのギフトをくれたのはかつてのボーイフレンドで、 何を貰って嬉しかったのかと思ったら、ジュエリーでもシューズでもなく、クリスタルのスワンとのこと。 幼い頃、バレエを習ってた彼女は いつの日か「スワン・レイク」のプリマとして踊る日を夢見て、 当時誰かにプレゼントされたクリスタルのスワンを大切にしていたところ、ある日落として壊してしまい、何日も泣いていたという。
彼女によれば、「スワン・レイク」のプリマになる夢もクリスタル・スワンと一緒に砕けてしまったのだそうで、 それをかつてのボーイフレンドに話したところ、彼がバレンタイン・デイに プレゼントしてくれたのがクリスタル・スワン。彼女にとって、それが生まれて初めて ギフトを受け取って涙ぐんだ瞬間だったとのこと。
私もこの話を「素敵なエピソードだなぁ・・・」と思って聞いていたけれど、やはりギフトに大切なのは思いやり。 日頃から相手の話を良く聞いて、何が一番相手を喜ばせるかを察知してギフトを選ぶことが出来る人が、 贈り物上手と言えると思うのだった。

ところで、つい最近 私の20代の男友達が頭を悩ませていたのが彼の母親へのギフト。
彼に言わせると、彼の母親はギフトの貰い方が下手なタイプで、 プレゼントをしても あまり喜ばないし、何が欲しいとも言わないどころか、 ギフトを要らないとさえ言うとのこと。 そんな母親のために彼がこれまで贈ってきたのは、 誕生日は 読書が好きな彼女のためにもっぱら書籍。 クリスマスは兄妹でお金を出し合って、妹が母親が必要としているものを買ってプレゼントしてきたという。
彼は、今年も妹に何かを見立ててもらおうとしていたけれど、 「立派に仕事がある社会人なのだから、もっとギフトらしいギフトを贈るべき」、 「お母さんが本当にギフトが苦手なのか、遠慮しているだけなのかは分からない」とアドバイスしたところ、 どうやらそれを真剣に捉えたようなのだった。
でも、いざとなると何を買っていいか分からないようだったので、 私が薦めたのがCJのスタッズ・ピアス。 私にとってスタッズ・ピアスは、これまで一度も失敗したことの無いギフトで、 どんな大金持ちでも、ピアスは失くすリスクが大きいのでフェイクを付けるのは珍しくないもの。 また石はシミュレーテッド・ダイヤモンドでも、その最高級であるし、金属部分は14Kゴールドで、 本物のダイヤをセットしているのと同じもの。 CJの業者は、以前ケイト・ウィンスレットがインディ・フィルムの中でつけたリングや、 アメリカでソープ・オペラと呼ばれる昼メロの中のジュエリーも製作していることなどを彼に説明して、 実物を見せたところ、彼もそのギフト・アイデアを非常に気に入ってくれたのだった。
その結果、今日、クリスマスの午後に彼から送られてきた携帯メールが「My Mom Loved The Earrings!」 というもの。自分が贈ったギフトではないものの、ちょっと良い気分を味わうことになったのだった。

私がこれまで出会った中で最も 贈り物上手だったのは、かつて一緒に仕事をしたことがある 女友達、彼女はヨーロッパの貴族の出で、そもそも大金持ち。 交友関係も広いので、クリスマスになると ギフトを贈る相手のリストをバジェットとテイスト、カテゴリーで分けて作成して、格闘していたのだった。
でも、つい最近 クリスティーズで行なわれたエリザベス・テーラー・コレクションのオークションの ジュエリーを見て思ったのが、リズ・テーラーの元夫で俳優のリチャード・バートンこそ史上最強のギフト・ギヴァーであるということ。 彼がリズ・テーラーに贈ったジュエリーは、最高額のネックレスが$11ミリオンで落札されているけれど、 いずれもエリザベス・テーラーだからこそ つけられるようなゴージャスで迫力のあるジュエリー。 それをリチャード・バートンは、彼女のバースデーはもちろん、彼女がピンポンで自分に勝ったからという理由などで プレゼントしてきたという。
それぞれのジュエリーに使われている石や、彼がそれをギフトに選んだ理由にも 様々なエピソードがあって、ジュエリーが豪華で美しいだけでなく、彼のリズ・テーラーに対する愛情が強く感じられるギフトの数々なのだった。

最後に、先週のこのコラムで、ブルックリンの強盗にNYPDの警官が射殺され、 彼が4人の娘を持つシングル・ファーザーであったことから、同情したNY市民から 娘達の大学の学費のための寄付が寄せられていることを書いたけれど、過去1週間に この基金に集まった金額は何と$1ミリオン(7800万円)。
アメリカは大学の学費が破格であるけれど、この金額は4人が大学に通えるだけのもので、 これだけの寄付が短期間に集まる背景には、やはりアメリカ人のギフト・ギヴィングの精神があると思うのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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