Dec. 18 〜 Dec. 24 2017

”Year 2017 Was...”
近年で最も混乱とトラブル、 ジャッジメントに満ちた年、2017を振り返って…


クリスマス&ニューイヤー休暇前の最後の週となった今週のアメリカで 最大の報道となっていたのは、 1兆5000億ドルの大型減税法案が大急ぎで議会で可決されたニュース。
この大減税によって 企業の税率が半永久的に これまでの35%から21%に下がることから、AT&Tやウェル・ファーゴといった大企業が、 軒並みボーナスに1000ドルを上乗せする措置を取っていたけれど、 アップル社を例にとれば、この減税措置によって節約できる税金の総額は年間約5兆3000万円。 もちろん大富豪も これまで税金として支払ってきた年間数十億円がそのまま着服出来る訳で、 その一方で庶民が受ける恩恵は 企業からのボーナス上乗せ分を除けば僅か1000〜2000ドル程度。
したがって貧富の格差がさらに開くことが確実視されているけれど、この減税措置の一部として、これまでオバマ・ケアで義務付けられていた 国民全員の健康保険加入が排除されることから 見込まれるのが 保険料の大幅な値上がり、その結果多くの人々が健康保険を失うというシナリオ。 トランプ大統領は、この減税法案可決をアメリカ国民への最大のクリスマス・ギフトと胸を張っていたものの、 多くの庶民にとっては目先の1000ドル、2000ドルで喜んではいられない状況となっているのだった。

この大減税は2017年1月20日に大統領に就任したトランプ氏にとって、選挙公約した法案が上院&下院で可決された初めてのケースであったけれど、 2017年という1年を振り返ると、移民政策、健康保険法案といった政策面だけでなく、 2016年の大統領選挙におけるロシア政府の関与疑惑、ツイッターによる個人攻撃や北朝鮮に対する挑発、パリ協定離脱宣言や エルサレムをイスラエルの首都と認めるスピーチ等、アメリカ国民が トランプ大統領に振り回された1年。
就任式の段階で、オバマ前大統領の就任式より詰めかけた人々の数が少ないというメディアの報道を「フェイク・ニュース」と呼んで、 メディアに宣戦布告したトランプ大統領は、1年中に渡ってCNN、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト等、 リベラル派のメディアをことごとく敵視し続けたのは周知の事実。 その結果、南部や中西部に多いトランプ支持派は、トランプ氏をサポートするフォックス・ニュースしか見なくなった一方で、 リベラル派&アンチ・トランプ派の人々は「ニュースでトランプ大統領を見て気分を悪くしたくない」と、 ニュース番組離れをしており、メインストリーム・メディアのパワーが衰えた1年でもあったのだった。




その一方でリベラル派が多いハリウッドでは、ありとあらゆるイベントにアンチ・トランプ色が現れていたけれど、 そのハリウッドで上半期最大のニュース&失態となったのが、アカデミー賞授賞式で作品賞の受賞映画が間違って読み上げられるという 前代未聞のアクシデント。 この原因は集計を担当する会計会社のエグゼクティブが、プレゼンターとしてステージに上がったフェイ・ダナウェイとウォーレン・ビーティーに 誤って主演女優賞受賞者の封筒を渡したためで、 「ララランド」の関係者がステージ上でぬか喜びをした直後に、「ムーンライト」の受賞に訂正された混乱の様子は、2017年の最も印象的な出来事と言われるもの。
そのハリウッドで、今年最大のバズを生み出した映画は「ワンダー・ウーマン」。でもソーシャル・メディア上で最もセンセーションを巻き起こしたのはホラー映画の「It/イット」で、 今年のハロウィーンにはワンダー・ウーマンのコスチュームと共に、「イット」に登場するクラウン(ピエロ)のコスチュームとメークがトレンディングになっていたのだった。

でも映画がTVドラマに押され気味の傾向は2017年も顕著で、 「ストレンジャー・シングス」、「ゲーム・オブ・スローン」、「ハンドメイド・テール」など TVドラマの質と人気がどんどん向上。社会性を反映したドラマとしては、セリーナ・ゴメスが プロデューサーを務めた「サーティーン・リーズンズ・ホワイ」が、 最も物議とミレニアル世代の関心を集めていたのだった。

ミュージック・シーンでは、2017年はケンドリック・ラマー、カーディB等、ヒップホップ・アーティストがサクセスを収め、またそれが正当に評価されたと言える年。 セレブリティの出産で最もバズをクリエイトしたのは双子を出産したビヨンセ。 2017年に最もホットなカップルであったのは、11月末に英国王室のヘンリー王子とミーガン・マークルが婚約を発表する以前までは J.Rodこと、ジェニファー・ローぺス&アレックス・ロドリゲス。2人の交際は子供達を交えた家族ぐるみのもので、 ワークアウトからハリケーンのチャリティまで2人揃って行っていた姿は 今年のエンターテイメント・メディアを大いに賑わせていたのだった。


そのハリケーンは 2017年に超大型のハーヴィー、アルマがそれぞれヒューストン、プエルトリコ&フロリダ半島西岸を襲い、 大被害をもたらしているけれど、2017年度に最もグーグル検索されたのが ”ハリケーン・アルマ”。 それだけでなく、2017年はカリフォルニア史上2番目と言われる大規模な山火事、内陸部における季節外れの竜巻など、自然災害が引き続き大きな被害をもたらしてたけれど、 自然がもたらしたスペクタクルと言えたのは、8月21日月曜に アメリカが国を挙げて見守った「グレート・アメリカン・ソーラー・エクリプス」。
西海岸のオレゴン州で現地時間の午前10時19分からスタートした皆既日食は、その後東海岸に向かうルートでアメリカ大陸を横断。 日食のウォッチ・ポイントが数分ごとに別のスポットに移動する度に、TV局は現地の日食の神秘的な天体画像と、それを見守る人々の感動や興奮を放映し続ける特番を放映。 如何にこの日食が歴史的な大イベントであったかを立証していたのだった。 ちなみにグーグルのHow To部門で 2017年に最も検索されたのは、日食を眺める眼鏡の作り方。 それというのも当時、全米各地で日食眼鏡が完売していたためで、 僅か1ドルの眼鏡に100ドル、200ドルといったプレミアムが付くフィーバーぶりになっていたのだった。

そうかと思えば、同じ8月には トランプ政権誕生と共に勢いをつけたネオナチ、白人至上主義のグループが南北戦争の英雄、リー将軍の銅像の撤去に反対して、 ヴァージニア州シャーロットヴィルに集結し、それに反発するリベラル派と大衝突。 アメリカの人種問題の深刻さを感じさせていたけれど、そんなネオナチ&白人至上主義グループが 「スターウォーズ:ラスト・ジェダイ」の内容を不服として、ロボットを使って同映画のレビュー得点を落とす操作をしていた事が報じられたのが今週のこと。 白人至上主義の右翼団体が「ラスト・ジェダイ」を嫌った理由は、 有色人種のキャラクターが多すぎるのに加えて、女性が権力のあるポジションについていて、ルーク・スカイウォーカーがまるでゲイのように描かれているからとのこと。
こんな馬鹿げたレベルにまで、白人至上主義の思想が入り込むことにも 人種問題の根深さが現れていると言えるのだった。




人種問題と共に2017年のアメリカの深刻な社会問題となっていたのは、処方箋薬中毒やオーバードース。 今や処方箋薬のオーバードースによる死亡者数は、ヘロインとコカインのオーバードースの合計を上回ると言われ、 その危機的な状況を受けて、ドクターが処方箋痛み止め薬の 処方を控えるようになってきたけれど、その結果、ヘロインに手を出す人々が増えており、こうした人々は ストリート・ギャングなどではなく、交通事故による怪我や歯科治療等で痛み止めを処方され、そこから中毒になっていった一般の人々。 すなわち仕事もあれば、子供も居る人々であるけれど、現在アメリカで急増しているのが 両親が痛み止め薬の中毒になったために 里子に出される子供達の数。トランプ政権では、アメリカにおけるドラッグ問題の原因がメキシコから密輸されるコカインと決めつけているものの、 実際には、街中の薬局で購入する処方箋薬が多くのアメリカ人を中毒に陥れているのだった。

また止まるところを知らない銃乱射事件もアメリカ社会の根深い問題で、 2017年で最もショッキングな事件となっていたのが、10月1日、ラスヴェガスのミュージック・フェスティバルの最中に起こった アメリカ史上最悪の無差別銃撃事件。容疑者は2万2000人収容の会場で行われていた ソールドアウト・パフォーマンス目掛けて、通りを隔てたマンダレイ・ベイ・ホテルの32階から 改造した自動小銃で発砲。死亡者数は自殺した犯人を含めて59人、負傷者が527人という大惨事になっているのだった。

さてビジネスの世界で2017年に最も話題になったニュースの1つは、アマゾン・ドット・コムによるホールフーズの買収。 その結果、食材の質は従来通りを維持しながらも、それまでのホールフーズのボッタクリ・プライスが是正されており、 これはアマゾンだからこそ出来る赤字覚悟のビジネス展開。 そのアマゾンは今後、処方箋薬の販売にも乗り出す見込みで、保険業界、製薬業界などが 少なからず影響を受けることが見込まれているのだった。
またアマゾンは、ヴォイス・アクティベートのスマート・スピーカー、アマゾン・エコーでも市場をリードするポジションにあるけれど、 アマゾン・エコーやグーグル・ホームの定着で、AIが益々一般消費者に身近になったのが2017年。

その一方で2017年は空前のユニコーン・ブームで、メークから食べ物まで 何でもユニコーンをイメージさせるパステル系レインボー・カラーやグリッターで 商品やコンセプトが開発されていた年。 スターバックスも期間限定でユニコーン・ラテ(写真上右)を発売して話題になったけれど、このラテに関してはその不味さがソーシャル・メディア上でバズをクリエイトしており、 人々が「どれだけ不味いか」に興味を示して行列していたという珍しい現象をクリエイトしていたのだった。
ユニコーン・ラテに限らず、インスタグラム上では、”インスタウォーシー”、”インスタグラマブル”と表現される 見た目にインパクトがあるフード・トレンドが今年ももてはやされ、 レストラン側もフード・コンサルタントよりもメディア・コンサルタントを雇う傾向が顕著だったのが2017年なのだった。




でも2017年を最も象徴するムーブメントと言えるのは何と言っても 女性達がセクハラ被害を訴え始めた”#MeToo”。 10月2週目にハーヴィー・ワインスティンの長年のセクハラを告発する記事がニューヨーク・タイムズ紙、及びニューヨーカーに掲載されてからというもの、 カリフォルニアの山火事よりも凄まじい勢いで ハリウッド、政界、スポーツ界、メディア業界にどんどん広がっていったのが、 セクハラの被害を受けて長年泣き寝入りを強いられてきた女性達のリベンジ告発。
2017年は#MeTooムーブメントが起こる以前から、フォックス・ニュースの創設者でトランプ大統領と親しいロジャー・エールや、同じくフォックス・ニュースの看板スターであった ビル・オライリー、Uberの創設者であるトラヴィス・カラニックらが それぞれセクハラや女性差別を告発されて、 辞任に追い込まれていたものの、過去のセクハラがことごとく告発される現象のきっかけとなったのは ハーヴィー・ワインスティンのスキャンダルで アシュレー・ジャッド、ローズ・マクガヴァン、グウィネス・パルトローといった名の知れた女優達が被害を名乗り出て、 メディアがスキャンダルを握りつぶすことなく 報じるようになってから。
以来、ケヴィン・スペーシー、ベン・アフレック、映画監督のブレット・ラトナー、コメディアンのルイCK、 CBSのモーニング・ショーのホストの、チャーリー・ローズ、NBCのマット・ラウラー、ダスティン・ホフマン、セレブ・シェフのマリオ・バターリ、 指揮者のジェームス・レヴァイン、政治家で元コメディアンのアル・フランケンなど、 数えきれないパワフルな男性に対するセクハラ告発が起こったのは周知の事実。 今週には ミス・アメリカ・ページェントのエグゼクティブによる性的侮辱発言の数々が明るみに出て、それに関わったエグゼクティブが辞任。 「16人もの被害者にセクハラ告発をされながらも 裁かれていないのは いよいよトランプ大統領だけ」と言われるようになってきたのだった。

そのトランプ氏が大統領に就任した直後には、 ワシントンDC、ニューヨーク、ロサンジェルスなど全米の主要都市で、女性による大々的なデモンストレーションが行われ、 トランプ氏の就任イベントを遥かに上回る人々がワシントンDCの集会に集まったのは当時大きく報じられた状況。 この時点で女性達が団結したのは、セクハラで告発されただけでなく、それを認める女性蔑視発言をしながらも トランプ氏が大統領に当選したことにより、 セクハラに拍車が掛かり、それによって女性の社会的地位が再び転落することを女性達が危惧したためであったけれど、 そんな女性達も2017年後半が まさかこんな展開になるとは夢にも思ってみなかったこと。

”#MeToo” ムーブメントは 男性社会の邪魔者をお払い箱にする手段としても使われているという印象は否めないものの、 これまで当たり前のように横行してきたパワフルな男性によるセクハラにやっと制裁が下されたのは女性にとっては歓迎すべきこと。 その一方で 好感が持てるキャラクター、正当派のイメージであった男性達の 醜悪な側面を垣間見せられたのも ”#MeToo” ムーブメントで、一度スキャンダルが発覚すると ソーシャル・メディア上で瞬く間に広まって、あっという間に辞任や解雇に追い込まれるのが そのムーブメントのパワーなのだった。
同ムーブメントはまだまだ続くことが見込まれ、それによって企業内や 各業界のパワー・ポジションがシフトすることも見込まれているけれど、 私が個人的に今回のムーブメントが従来と違うと感じる最大のポイントは、これまで こうした告発が起こると、必ず被害者女性を責める女性が現れ、 その女性の声が男性社会によって利用されてきたのに対して、”#MeToo” ムーブメントにおいては、ヴィクティム・シェイミング(被害者を責めること)をする女性を 女性達が寄ってたかって攻撃し始めたという点。 ハーヴィー・ワインスティンのスキャンダルにおいては、デザイナーのドナ・キャランがヴィクティム・シェイミングの発言をして、大バッシングを受け、 そのビジネスが再起不能と言われるダメージを受けていたけれど、 ”#MeToo” ムーブメントが ここまで拡大した要因は、そんなヴィクティム・シェイミングをする女性を叩いて、犠牲者を100%サポートすることにより、 女性達が勇気を持って セクハラが告発出来る状況をクリエイトしたからなのだった。
果たしてこの風潮が男女の給与格差是正等、その他の性差別問題の解決に繋がるかは定かでないものの、 多くの人々が新政権下で秩序が失われていく様子を目撃する中、2017年で唯一社会のために有益であったと指摘していたのが、 ”#MeToo”ムーブメント。 これを受けてロサンジェルス警察内にはハリウッドのセクハラ捜査専門の部署が誕生。 現在20人以上のセレブリティがその捜査対象となっており、立件に向けて動いている様子がレポートされているのだった。


執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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