Dec. 25 〜 Dec. 31




”Year 2006 Was... ”



毎年、年の瀬に誰もが思うのは1年があっという間に過ぎてしまったということ。
子供の頃は1年が本当に長くて、今から考えると1学期が6ヶ月くらいあるような感覚で生きていたけれど、 年齢を重ねる毎に1年がどんどん短くなっていって、3月末の段階で「もう1年の4分の1が終わってしまった・・・」と 驚き、6月末には「もう一年の半分が終わってしまった」とため息を吐き、11月を迎える頃には「あと1年も60日しか残っていない・・・」 と月日の流れの速さに唖然とするのは毎年のこと。
そして、ことにアメリカに住んでいると、サンクス・ギヴィングからクリスマスまでの1ヶ月は、2週間くらいにしか感じられないくらい とんでもないスピードで過ぎていくので、大晦日を迎える頃には新しい年を迎える準備が出来ているどころか、 今年中に終わらせたいことに追われている状況なのである。

さて、アメリカのメディアが振り返る2006年を見てみると、 エンターテイメントの世界で最もエアタイム(放映時間)が割かれたセレブリティはトム・クルーズ。
2005年に出演したトークショーで カウチ上でのジャンプを見せて以来、イメージ・ダウンが続いていた彼は、 年の前半は 引き続きの奇行とクレージーな言動にフォーカスが当てられ、夏には婚約者、ケイティ・ホルムズが2人の子供を出産。 8月にそれまで10年以上に渡ってパートナー契約を結んでいたパラマウント・スタジオからクビにされ、 9月には極秘にしていたベイビー、スリの写真をヴァニティ・フェアに掲載。 11月にはセレブリティ・ゲストを多数招待したケイティとの挙式をイタリアで行っているけれど、 その結婚の2週間前には、トムとビジネス・パートナーのポーラ・ワグナーがユナイテッド・アーティスト・フィルムの 事実上の経営者になったことを発表。1年中に渡ってネガティブ&ポジティブの話題を提供し続けたのが彼である。
次いで2006年に最も報道されたセレブリティはブランジェリーナ(ブラッド・ピット&アンジェリーナ・ジョリー)で、 特に出産時のメディア・フィーバーは一般の人々から「馬鹿げている」とも指摘されたもの。 ピープル・マガジンは2人のベイビー、シャイロの写真のエクスクルーシブ出版権を$4.1ミリオン(当時約4億5000万円)という、 セレブリティのベイビー・ピクチャーとしては史上最高額で落札したけれど、その全額はアフリカの子供達を救済するチャリティに寄付されている。
今年3番目にメディア・フォーカスが多かったセレブリティは、出産と離婚をしたブリットニー・スピアーズと言われるけれど、 彼女の場合、年末になって下着を着けずに夜遊びに出掛けたスナップが修正入りとは言え 大々的にフィーチャーされたことから、 猛然と追い込みが掛かって トップ3入り したことが伝えられている。

スポーツの世界では、2006年で最もメモラブル(思い出に残る)なシーンとしてアメリカの記者の多くが選んだのは、 ワールド・カップ決勝におけるフランス・チーム キャプテン、ジダンのヘッドバット(頭突き)。
トリノ・オリンピックにおける最もメモラブルなシーンとしては、アイス・ダンスのイタリア・ペアのバーバラ・フューザー・ポリが リフトに失敗して、自分を落としたパートナー、モリツィオ・マルガリオを 演技終了後に睨み付けたシーンが選ばれている。 この視線は、当時ニューヨーク・タイムズ紙が 「皿を投げつけるか、さもなくば扉をバタンと閉めて 部屋を飛び出して行く直前の女性の目」 と評したもので、これはアメリカ人にとっては荒川静香選手のゴールドメダル・パフォーマンスよりインパクトが強かったもの。
その一方で今年最悪のボン・プレーと指摘されたのは、そのトリノ・オリンピックでゴールド・メダルを逃したスノーボーダー、 リンジー・ジェイコべリスと、全米オープン・ゴルフでの初優勝を逃したフィル・ミケルソン。 リンジー・ジェイコべリスは後続を30メートル以上離す独走状態にありながら、 最後のジャンプの際にボードを掴みながら 身体をツイストするという 不必要なトリックを加えたために着地に失敗。 本人を含む誰もが 彼女のゴールド・メダルを確信した時に起こった転倒で、 起き上がって走行を続け、シルバー・メダルを獲得したものの、「シルバー・メダル・ウィナー」というよりは、 「ゴールド・メダル・ルーザー」という扱いを受けることになった。 後で 「あの時、何を考えていたのか?」 とメディアに訊ねられた彼女は、 「ゴールドメダルを獲得するまでの自分の道のりが頭をよぎった」と語り、メダルを手にする前に勝利の喜びに浸った 過ちを露呈していたのだった。
フィル・ミケルソンについては、それまで全米オープン無冠に泣いて来た彼が 遂に初の栄光を手にするかに見えた最終18番ホール、 まるで素人ゴルファーのような悪夢のダブル・ボギーを見せて、2位に甘んじることになり、 試合後、彼はショックのあまり 「I'm Stupid」 とコメントしていたことが伝えられている。

2006年のスポーツの視聴率はと言えば、今回のワールド・カップは前回2002年大会の2倍という好調ぶりを見せたことが 伝えられているけれど、オリンピック、ワールド・シリーズはいずれも不調で、特に「World Series Nobody Care」と言われた今年は、 どのチームがワールド・チャンピオンになったかを殆どのアメリカ人が知らないという超低視聴率が伝えられていた。
同様に視聴率低下の傾向が続いているのが世界の12億人がチャンネルを合わせるといわれるアカデミー賞授賞式。 2006年もオスカーにチャンネルを合わせた視聴者数は、全米で3880万人で 昨年より視聴率にして8%のダウンとなっていた。 そうした人々のオスカー離れを反映してか、メディアが街行く人々に今年のオスカーの最優秀作品賞を訊ねて 「クラッシュ」という正解が答えられた人は20人中ゼロだったというエピソードも聞かれるほど。 その反面、アメリカの最高視聴率リアリティTV 「アメリカン・アイドル」で、今年誰が勝ち残ったかについては、 9人が「テイラー・ヒックス」という名前か その存在を認識していたというから、視聴率とは人々の関心を如実に表すものである。

さて、2006年2月22日には、アップルのiTunes Store/アイテューンズ・ストア からのダウンロードが10億曲を超えたと報じられたけれど、 今年は音楽だけでなくTV番組や映画のダウンロードが一般に広く行われるようになった年。 これを受けて、何が起こっているかといえばDVDの売り上げのスローダウン。 これまでは毎年売り上げを伸ばし続けてきたDVDであるけれど、業界の予測では2007年は史上初めてDVDの売り上げが 前年を下回ることが見込まれているのである。
そのDVDとビッグ・スクリーンTVのせいで観客動員数が年々減り続けているハリウッドの映画界であるけれど、 今年最大のヒットはジョニー・デップ主演の「パイレーツ・オブ・カリビアン:デッドマンズ・チェスト」で、興行成績はダントツの $423.27ミリオン(約 516億円)、2位はアニメ映画「カーズ」($244.05ミリオン)、3位が「Xメン:ラスト・スタンド」($234.36ミリオン)」。
「パイレーツ・オブ・カリビアン」は、クリスマス・シーズンにDVDが発売され、1日に500万枚を売り上げる記録を打ち立てており、 今年最高売り上げのDVDであると同時に、2007年前半までにはDVDの史上最高売り上げ記録も更新することが見込まれているという。

ファッション&ビューティーの世界では、目玉トレンド不在と言われた2006年だけれど、あえて挙げるならば、 スキニー・ジーンズ&ブラック・ネールが最も顕著と言えたトレンド。
そしてファッション関係者が”2006年で最も記憶に残るドレス” として挙げたのはリース・ウィザースプーンが1月のゴールデン・グローブ授賞式 で着用した シャネル・オート・クチュールの「ヴィンテージ」。 同ドレスについては、当時このコラムでも触れたけれど、リースが「ヴィンテージ・シャネル」と 思っていたこのドレスは、 実は3年前のゴールデン・グローブのアフター・パーティーで キアスティン・ダンストが着用していたというオチが付いていたもの。
通常アンジェリーナ・ジョリーや、リース・ウィザースプーンのようなA級セレブリティの スタイリストは1日のフィーが200万円は下らないという稼ぎぶりで、 こうしたミスは許されないものだけれど、一部のファッション関係者からは貸し出したドレスの記録を残しておかなかった シャネルのプレスの対応の悪さも厳しく指摘されていたのだった。

その一方でファッション業界を騒がせていたのが、ティーンエイジャーの拒食症ブームを受けて、 激痩せモデルをランウェイから締め出すという法案。 スペインでは既にこの法案が可決されて久しいけれど、12月に入ってからはイタリアでも来シーズンからは、 モデルがミラノ・コレクションに出演するには、ファッション協会、ファッション・サービス・アソシエーションらが発行する モデルが健康であることを証明するライセンスを得なければならない規定が設けられ、 医師や栄養師、精神分析医らによって健康と見なされたモデルのみがこのライセンスを発行してもらえることになっているという。
同規定は11月にブラジリアン・モデル、アナ・キャロライナ・レストンが拒食症で死亡したニュースによって かねてからのムーブメントに拍車が掛かって設けられたもので、 死亡当時のアナは 180センチ近い身長に対して体重80パウンド(36キロ)しかないという劇痩せ&栄養失調ぶりであったことが伝えられている。

政治の世界では、イラク戦争終結を望むアメリカ国民の意思が「アンチ・ブッシュ」票となって、11月の中間選挙に反映され、 民主党が上下両院で過半数を取り戻したこと、それと同時に初の女性上院議会議長(Speaker Of The House)が誕生したのも、 画期的かつ、新しい時代の到来を感じさせる出来事として捉えられおり、アートの世界では、ピカソ、クリムト等が 次々と記録を塗り替える高値で取引されたのは記憶に新しいところ。
そうかと思えば、8月には10年前にコロラドで起こったジョン・べネ殺人事件の犯人として、まるで立候補したような ジョン・マーク・カーの逮捕と釈放が国をあげた茶番劇になっていたし、11月には1994年にに起こった 前妻とその友人の殺人事件で 無罪となったO.J.シンプソンの 仮説と称した告白本 「If I Did It」 が出版されることで大変な話題になったものの、 全米規模の猛反発からこれが中止となり、既に書店に並ぶ直前だった同書は全て回収&処分されることとなっている。
また同じく10年程度前の事件のリバイバルとしては 1997年のダイアナ妃の事故死に関する最終レポートが 12月になってからイギリスで正式に提出され、C.I.Aがダイアナ妃の電話を盗聴していたこと等が 指摘されながらも その陰謀説が否定されているけれど、 当時のエリザベス女王とトニー・ブレア新首相の葛藤を描いた映画「ザ・クイーン」は、オスカー・ノミネーションが確実視される今年の話題作。 ジョン・べネ事件、O.J.シンプソン裁判、ダイアナ妃の存在が、アメリカ人の脳裏には未だに鮮明に残っていることが 改めて立証されたのが2006年である。

この他、年末に入ってからは、クリスマスの日に「ゴッド・ファーザー・オブ・ソウル」と言われたジェームス・ブラウンがこの世を去り、 その翌日26日にはジェラルド・フォード元大統領死去のニュースが伝えられ、追悼報道のラッシュとなったけれど、 12月30日には死刑が確定してから、ほんの僅か数日でサダム・フセイン イラク元大統領が絞首刑に処せられ、 人々から惜しまれない最期を迎えることとなっている。
この模様はアメリカではTVニュースが逐一フォローしていた他、今年最後の朝刊に当たる12月31日付けの新聞各紙が 首にロープを巻かれた姿から、死後に死体用のバッグに収められた状態の顔のアップまでを写真入りでフィーチャーし、 フセイン元大統領の最期の瞬間を分刻みでレポートする報道が行われていたのだった。
しかし、イラク戦争が終わりの見えない泥沼状態になっているのは昨年末とは全く変わらない状況。
またテロへの警戒も高まる一方で、8月にはイギリスで アメリカ行き飛行機の爆破を計画していた テロリスト24人が逮捕されたのを受けて、 以来一切の水分も飛行機内への持込が禁止されることになったけれど、 当初は女性のリップ・グロスやモイスチャーライザーの持ち込みも禁じられたので、 荷物検査の際に100ドル以上の化粧品を没収される女性達は少なくなかったことが伝えられている。
この他、乳幼児用のミルクは、検査官の前で母親が飲んで見せなければならないという厳しさであったけれど、 現在はこうした持込禁止規定が かなり緩和されたのが実情である。

2006年の美談を挙げるならば、6月にマイクロソフト社のビル・ゲイツ会長に次ぐ、世界第2位の富豪、ウォーレン・バフェット氏が、 その個人資産、440億ドル(約5兆160億円)の85%、約370億ドル(約4兆2180億円)をチャリティに寄付したというニュース。 これによって、チャリティ寄付の史上最高額の記録を打ち立てたバフェット氏は、 バークシャイア・ハサウェイのCEOを務める インベスターであり、叩き上げの敏腕ビジネスマン。2006年8月30日で76歳を迎えた同氏は ビル・ゲイツ会長とはブリッジのパートナーであり、親しい友人だそうで、バフェット氏の寄付の中から、 150億ドル(1兆7000億円)がビル&メリンダ・ゲイツ・ファンデーションに寄付されることになっているという。
またバフェット氏ほどの高額ではないものの、トリノ・オリンピックに出場したアメリカのスピード・スケーター、 ジョーイ・チークも 彼が獲得したゴールド・メダルとシルバー・メダルに対するUSOC(アメリカ・オリンピック委員会)からのボーナス、 それぞれ2万5000ドルと1万5000ドル(合計約470万円)を、USOCが推進する 恵まれない子供達を救済する チャリティに寄付したことが伝えられている。 この彼の善意が共鳴を呼んで、他のアメリカのメダリストもボーナスの寄付を申し出た他、企業スポンサーもこれに賛同し、 同チャリティには日本円にして5000万円近い寄付が集まったとのことで、選手の不仲や身勝手な行動など アグリーなエピソードに満ちていたトリノ・オリンピックのアメリカ選手団にとって、数少ない美談エピソードとなっている。

さて、自分個人の1年を振り替えると、私は自営業の宿命と、ニューヨークという何が起こっても 不思議ではない街に住んでいることが重なって、毎年、とにかくトラブルと事件には事欠かない日々を送っていて、 今年に関しては「恵まれていたのは旅行運だけ」などと思っていたりする。
そうしたトラブルや事件の数々は、このコラムのネタとして書けるものから 書けないものまで様々であるけれど、 「Everything Happens for a Reason」 (全ての出来事は何らかの意味合いがあって起こっている)という言葉を 理解するようになってからは、トラブルや事件も 「自分を成長させてくれるきっかけ」、 「自分に何かを学ばさせてくれる試練」と思い、転んでもタダでは起きないように心掛けるようになったのは事実である。
私にとって2006年最悪のトラブルは、人を仲介してオーダーした商品が酷いコンディションで入荷し、 生産業者は代金はしっかりキープしたまま、再生産を拒否して消えてしまったというもの。 90ユニットもの商品が、1工程を抜かして生産された結果、穴開き状態で入荷して来た時には、身体の力が抜ける思いをしてしまったし、 商品を送り返したものの、まず業者が再生産を拒み、その後連絡が取れなくなったと仲介者に言われた時には、 本当に落胆してしまって、金銭的にも会社にとって大ダメージを与えてしまうことになったのだった。
でも、諦めずに仲介業者とコンタクトをし続けて勝ち取ったのは、今週からサイトで取り扱いをスタートしたBK Bag のコネクション。 ネット上で流通するようなコピーや、同じ工場で作っていると謳っているコピー(この触れ込みはほぼ100%偽りとのことです)などとは 比較にならない高品質のバッグを作る業者を仲介人が大損害のお詫びに紹介してくれたのである。 この業者は、普通のバイヤーが出て行っても相手にしてもらえないところで、サイトでもご説明している通り、 ハンド・ステッチ、ハンド・アセンブルなので生産枠も限られているというもの。 私も既にこのバッグを先ず自分自身で使ってみて既に1ヶ月以上が経過するけれど、 バーグドルフ・グッドマン、エルメスに堂々と下げて行っては、 「どの位待って手に入れたの?」と訊かれるリアリティである。

この他にも今年はトラブルや事件が本当に沢山あったけれど、それでも何をやっていたか思い出せないような退屈な生活よりは 遥かにマシな訳だし、何より自分が 無事で健康に新年を迎えることが出来るのは 最高の幸せ。
なので、2006年は私にとって なかなか大変な年だったけれど、終わってみれば 決して強がりでなく 「ハッピーな年だった」と 振り返ることが出来るのである。

Have a Happy New Year!!



Catch of the Week No.4 Dec. : 12月 第4週


Catch of the Week No.3 Dec. : 12月 第3週


Catch of the Week No.2 Dec. : 12月 第2週


Catch of the Week No.1 Dec. : 12月 第1週






執筆者プロフィール

秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、1989年渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.設立。以来、同社代表を務める。