Dec. 24 〜 Dec. 30, 2012

” What's Sexy Now?! ”

今週は火曜日がクリスマスだったので、先週末から多くのアメリカ人がクリスマス休暇に入っていたけれど、 2013年1月1日にアメリカが直面する ”フィスカル・クリフ” こと、財政の崖っぷち問題を放置したまま、 やはり休暇に入ってしまったのがオバマ大統領と下院議会の議員達。
残された時間が僅かにも関わらず、一向に ”フィスカル・クリフ”回避の目処が立たたないことに、 アメリカ国民は不満と不安をつのらせており、もし今週末に再開した審議で 年末までに 合意に達しなかった場合、大幅増税と大幅予算カットのダブル・パンチで、アメリカが2013年半ばには 再び陥ると見込まれているのが、深刻なリセッション。
しかもその場合、乳製品の価格をサポートしていた法律も年末で 期限切れになる関係で、2013年からはミルクの価格が2倍になり、チーズ、ヨーグルト等、その他の国産乳製品の価格も 大幅にアップすることになっているのだった。

そんな先が見えない状況を受けて、幸先の良いスタートを切ったはずの 2012年のアメリカのホリデイ商戦は、 当初、昨年に比べて3〜4%の伸びが見込まれていたけれど、終わってみれば予想を遥かに下回る0.7%の伸び。
ホリデイ商戦が伸び悩んだ理由には、ハリケーン・サンディやサンディ・フック・エレメンタリー・スクールの 銃乱射事件など、アメリカ国民がショッピングを控えたくなる出来事が度重なったこともあるけれど、 アメリカ人の4人に1人を雇用する小売業が、リセッションの最中、2009年のホリデイ・シーズン以来、最悪の売り上げを記録していることは、 今後の雇用問題にも不安を投げかけているのだった。



そんな中、今週ニューヨーク・タイムズ紙が報じたのが、今や クレジット・スコアがデート相手選びの重要な要素になってきているというニュース。
クレジット・スコアは、”信用偏差値” とも訳されているけれど、 クレジット・カードを含む様々なローンや、公共料金の支払い状況とその履歴、 借り入れ総額やローンの種類などから割り出す、 個人の経済信用力の格付け。

クレジット・スコアは最低が300ポイント、最高が850ポイントで、このポイントに応じて、住宅や自動車のローンの利率が 決まるだけでなく、クレジット・スコアは賃貸契約や就職活動にまで影響する大切な数字。
750以上であれば、「エクセレント」で、800以上ならば最高クラス。アヴェレージと言えるのが620〜680。 620未満になるとサブプライムと扱われる信用度の低いクラス。 特に550以下になると、プアー・クレジット、すなわち殆ど信用性が無い扱いを受けてしまうのだった。
アメリカには大手3つのクレジット・ビューローがあって、それぞれが個人のクレジット・スコアを 算出しているけれど、それぞれの数字は大きく異なることは無いものの、若干の上下が見られるのが常。

では、クレジット・スコアがどうしてデート相手選びの要素になるかといえば、 この数字が 経済的信用度の指針になるだけでなく、 もし相手と 結婚、同居といった シリアスなレベルに達する場合、 相手のクレジット・スコアが少なからず、自分の経済状態に影響を及ぼすため。
なので、交際がスタートする前のファースト・デートの時点で、相手のクレジット・スコアを知って、 それが低い場合、深入りする前に手を引こうというのが、昨今のデート・トレンドになっている というのが、 ニューヨーク・タイムズ紙の報道なのだった。



上のパイ・グラフはクレジット・スコアを算出する要素であるけれど、 これが示すように、スコアの要素で最も大きな部分を占めるのが、 支払いのヒストリー(履歴)。
これは、例えばクレジット・カード・ローンの ミニマム・ペイメント、すなわち金利分のみを払っている場合でも得点になるけれど、 逆にお金に困っている訳でなくても、公共料金やカードの支払い期日に遅れる人は、 ポイントが低くなる仕組み。今では、アメリカでも ありとあらゆる支払いが、自動引き落としになったけれど、 つい数年前までは 小切手を郵送して公共料金やクレジット・カードの支払いをしていたので、 小切手を投函し忘れて、クレジット・スコアを落としているケースも少なくなかったのが実情。
クレジット・ヒストリーについては、最低6ヶ月が必要とされていて、ここでは長く使っているクレジット・カード等が、 有利になるポイントなのだった。

では、こうしたクレジット・スコアが住宅ローンを組む際に、どの程度の影響を及ぼすかといえば、 2012年4月の段階で、16万ドル(約1,375万円)の物件を購入して30年ローンで支払う場合を例に取ると、 クレジット・スコア別の利率と利息総額は以下の通り。


これからも分かる通り、クレジット・スコアが極めて低い人は、同じ物件を同じ期間のローンで支払う場合でも、  スコアが最も高いグループの3倍近い利息を支払うことになるけれど、 こうした利率の差は、自動車ローンから、クレジット・カードの支払いなど、 ありとあらゆるローンに 付いて回るもの。 したがって、クレジット・スコアの3桁の数字が、人生に掛るお金に大きな違いをもたらすのは明らか。
加えて雇用主の13%が、 人材採用に際してクレジット・スコアをチェックしているとも伝えられているのだった。

ニューヨーク・タイムズの記事にも、「今やクレジット・スコアのチェックは、性病のチェックと同じくらい デート・シーンで重要」という金融アドバイス会社のエグゼクティブのコメントが掲載され、 その実例として 紹介されていたのが、 ヒューストンに暮らす26歳の女性が、クレジット・スコアが低いため、 ボーイフレンドが 彼女の抱える15万ドル(約1,288万円)を超える学費ローンを返済するまで結婚をしたがらない というエピソード。
それ以外にも、 サンフランシスコに暮らす33歳の薬剤師の男性が、ガールフレンドと連名で車のリース契約を結ぼうとしたものの、 彼のクレジット・スコアが低いため、連名にするとガールフレンドのスコアで得られる有利な利率を失うことから、 彼の名前をリース契約から外す羽目になり、男性側が自分のスコアの低さが 2人の関係に影響することを危惧している、というエピソードもフィーチャーされていたのだった。

こんな世情を受けて、オンライン・デート・ビジネスの中には、 ”Good Credit is Sexy” というキャッチ・フレーズで、 デート相手探しの基準にクレジット・スコアを加えるものが登場。 ”creditscoredating.com/クレジットスコアデーティング・ドット・コム” というウェブサイトでは、 登録者が許可した場合、デート相手がクレジット・スコアが閲覧できるというシステムになっているのだった。

今や若い世代を中心に、クレジット・スコアをアヴェレージ以上に保つことに 熱意と情熱を注いでいる人は多いけれど、そういう人々ほど デート相手のクレジット・スコアにもこだわって、 「グッド・クレジット・イズ・セクシー」と考える傾向にあるのは 紛れも無い事実。 クレジット・スコアは、必ずしも財産の豊かさを表す数字ではないけれど、 金銭管理能力や、人間としての信頼性の基準と判断できる数字。
したがって 真剣な交際を考えるならば、その数字が高い人の方が、 高学歴で身なりが良いけれど、多額の学費ローンとクレジット・カード・ローンを抱えて 首が回らない人よりセクシーに思えるのは、当然と言えば当然のことなのだった。




さて、今週は年末とあって様々なメディアが、2012年を振り返っての報道をしていたけれど、 アメリカで1年を通じて、最も報道時間が割かれていたのが大統領選挙。
でも最も視聴率を獲得したTVイベントは、ロンドン・オリンピック。 それに加えて、今年はエリザベス女王の即位60周年や、キャサリン妃ご懐妊、 ヘンリー王子とキャサリン妃のヌード写真スキャンダル、キャサリン妃入院中のラジオの悪戯電話を 繋いでしまったナースの自殺等、イギリス王室絡みのニュースが非常に多かったというのが人々の印象。

経済の世界ではフェイスブックの株式公開と、その予想に反した株価の不振が大きな話題になった一方で、 SM行為をふんだんにフィーチャーした小説、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレー」が 大ベストセラーになり、ティーン・アイドルの世界では、ジャスティン・ビーバーに替わって、 ワン・ディレクションが大ブレイク。
でも、2012年に最もグーグル・サーチが多かったセレブリティは、2月に死去したホイットニー・ヒューストン。 最も人々を驚かせたと同時に、大きく報じられたセレブリティの別離は、ロバート・パティンソン&クリステン・ステューワートでも、 ジャスティン・ビーバーとセリーナ・ゴメスでもなく、トム・クルーズ&ケイティ・ホルムズの離婚になっていたのだった。

ポップ・カルチャーのメガ・トレンドとなったのは、YouTubeの最多視聴記録を塗り替えた ガンナム・スタイルであるけれど、 リアリティTVの世界では、 美少女コンテストに挑む6歳の少女をフィーチャーした 「Here Comes Honey Boo Boo/ヒア・カムズ・ハニー・ブーブー」が一躍大人気となり、 その垢抜けない一家があらゆるメディアに登場。
その一方で、CIA長官で未来の大統領候補と言われたデヴィッド・ぺトレイアスが、不倫&セックス・スキャンダルで 辞任に追い込まれたのは、ワシントン関係者の間では今年最大のスキャンダル。 また、オバマ大統領が米国大統領として初めて同性婚を認める見解を示し、合衆国の最高裁が同性婚についての審議に取り掛かることを明らかにしたのは、 ゲイ・ピープルにとって歴史的なステップと言えるのだった。

でも、アメリカ国民が2012年を振り返って 最もインパクトが強かった出来事といえば、 やはりハリケーン・サンディと年末のサンディ・フック・エレメンタリー・スクールの銃乱射事件。 ハリケーン・サンディは、ニューヨーク・マラソンを史上初の中止に追い込む結果になったけれど、 この災害と事件は今後も 復旧や銃規制という課題を通じて、アメリカ社会が向き合って行く問題なのだった。

毎週のように様々な事件が起こり、ソーシャル・メディア上のトレンディングがめまぐるしく変わっていった2012年であるけれど、 多くの人々が時代のターニング・ポイントを強く感じたと言われるが2012年。
果たして2013年がどんな年になるかは、まだ想像もつかないけれど、もし年内に”フィスカル・クリフ”で 政府と議会の合意が得られなかった場合、2013年を迎えるタイムズ・スクエアのカウントダウンが、 全く異なる意味を帯びてくるのは明らかなのだった。





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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