` CUBE New York Catch of the Week




Feb. 3 〜 Feb. 9 2003




2人のマイケル

今週のアメリカは先週から引き続いてのスペース・シャトルの事故の話題、 パウエル国務長官が国連で行なった「イラクの大量破壊兵器を隠し持っている」というスピーチの話題が ニュースの中心ではあったけれど、週末になってみればそんな話題は何処へやらで アメリカのメイン・トピックは木曜に放映された独占インタビューで さらに奇妙なライフスタイルを披露することになったマイケル・ジャクソンと 日曜のNBAオールスターが事実上の引退イベントとなるマイケル・ジョーダンという 2人のマイケルの話題が中心になっていた。
2人はかつてマイケル・ジャクソンのプロモーション・ビデオで 共演したこともあったけれど、同じ黒人で、同じ頭文字、同じように若い頃からサクセスを収めていた「マイケル」でも、 この2人は現在のアメリカでは全く正反対と言える存在である。
木曜に2時間に渡ってABCテレビで放映されたマイケル・ジャクソンの独占インタビューは、 同じ時間帯に、「フレンズ」や「CSI」といった高視聴率番組が放映されていたにも関わらず、 2700万人を超える視聴者がチャンネルを合わせたもので、 この中で彼は、子供の頃に父親から受けた虐待や、整形手術などについて語っている。 しかしその受け答えからは、彼が精神的に病んでいることが明らかに感じられるもので、 番組放映後は芸能番組はもちろんのこと、通常のニュース番組でもこのインタビューのことが報じられ、 その異常さが大変な話題になっていた。
マイケル自身はこのインタビューがレポーターに「はめられた」ものとして、訴訟を起こすとしているが そのレポーター自身は、「マイケルがあれだけの奇行を繰り返しても、 周囲は誰も止めうようとしないばかりか、彼の人生そのものをドラマにしようとして、 彼をどんどん異様な存在に仕立て上げて、話題を煽ろうとしている」と彼に対して 哀れみさえも感じていることを語っている。
キャリア・ピークであったアルバム「スリラー」の時代は、マイケルが国民的な英雄で、レーガン大統領夫妻も彼のファンであることを公言していたことを覚えているアメリカ人は今も多いが、 その後の度重なる整形手術と幼児虐待のスキャンダル、エルビス・プレスリーの娘、リサ・マリーとの突然の結婚と離婚、 そして子供が欲しいという理由だけでの再婚等、どんどん奇妙になる彼の行動と容姿で、 近年のアメリカでは彼に「ジャッコ(ジャクソンとワッコ(気狂い)をくっ付けたもの)」というニックネームが付けられるようにさえなっていた。
今回のインタビューにしても、これだけの視聴率を獲得したのはマイケル・ジャクソンのスター・パワーによるものというよりは、 彼の異常さに対して人々が興味を抱いていたからに他ならないと言える。 でもマイケル・ジャクソンが私生活でこのような異常さを見せていなければ、現在、44歳の彼が アメリカの音楽シーンで最も敬愛されるミュージシャンの1人であったであろうことは 誰もが認めるところである。

一方のマイケル・ジョーダンは、そのNBAのスーパースターとしての功績については今更説明する必要は無いと思うけれど、 2月17日で40歳を迎える彼も、マイケル・ジャクソン同様、キャリアのピークを過ぎ、 今シーズンで3度目にして最後の引退をすることになっている。
今週日曜日のゲームは彼にとって最後のオールスターとなったため、 「マイケル・ジョーダン引退イベント」が「色濃く」というよりも「はっきり」と打ち出されていた。
プレーヤー達は、一部のアディダス、リーボック等の契約プレーヤーを除いては全員がそれぞれエア・ジョーダンを履いて コートに立ち、本来ならばスタメン出場が出来ないジョーダンのために、アレン・アイヴァソン、 トレーシー・マグレーディーといった看板プレーヤーが自分のポジションを明け渡してまでジョーダンをスタメン出場させようと試みた。 ジョーダンはこれらを断ったことが伝えられていたが、結局土壇場で、ヴィンス・カーターが 自らのポジションを明渡すことを主張し、ジョーダンはファンの期待通り、今年のオールスターの スターティング・メンバーとして出場した。
ハーフタイムにはマイケル・ジョーダンのユニフォームをドレスに仕立てた衣装で登場したマライア・キャリーが ビデオ・スクリーンに映し出されたジョーダンの輝かしいキャリアの歴史をバックに「ヒーロー」を歌い、 その後、彼女の紹介で登場したジョーダンがNBAの後輩達にバトンを渡すスピーチをスタンディング・オーべーションの中で行ったが、 こうした特別待遇がホーム・ゲームではなく、オールスターという舞台でまかり通ってしまうのは、 彼がプレーヤーとしてだけでなく、英語で「ロール・モデル」と呼ばれる人々のお手本的存在として 長く尊敬を集めてきたからに他ならないと言える。
ではマイケル・ジャクソンとマイケル・ジョーダンを比較して どちらのイメージ・コントロールが大変そうか?と言えば、 私に言わせれば明らかにジョーダンである。 マイケル・ジャクソンは確かに何度も整形手術をしたり、カメラで撮られるアングルを気にする等、 それなりにイメージ・コントロールをしているかも知れないけれど、その反面、 何をしても「マイケル・ジャクソンなんだから おかしいのが当たり前」的に捉えられ、実際に かなりやりたい事をやっているというイメージがある。 だが、マイケル・ジョーダンは人々が「まともで人格的にも尊敬できる」と信じているだけに、 そのイメージを守る努力を様々な側面で強いられ続けてきた訳である。
私が今でも忘れられないのは、彼が未だブルスに在籍していた時代の 対ニュージャージー・ネッツ戦の際、 かつてのオリンピック陸上スター、カール・ルイスがゲーム前の国歌斉唱で登場したことがあった。 この時、カール・ルイスは緊張していたのか、高いキーで歌い始めてしまい、途中で声が出なくなり、 とんでもない金切り声で国歌を歌い続けることになってしまった。 このため会場はどよめき、ネッツのプレーヤーは床に這いつくばって大爆笑をしていたが、 こんな時にTVカメラだけでなく、会場中の全てのカメラが捉えようとしていたのが、 マイケル・ジョーダンが耐えられずに噴き出す顔であるのは言うまでも無かった。 でもアップで捕えられたマイケルは、真面目な顔(苦しそうな顔とも言えた)で国歌を聞き終え、 トップ・プレーヤーである彼がこうした毅然とした態度を取り続けたため、 ブルスの選手も下を向いてクスクス笑う程度で我慢をしていた。
ネッツの選手が必要以上にマナーの悪い大笑いをしたのは彼らがカール・ルイスを嫌っていたこともあったけれど、 それでも彼の歌った国歌は、公の場で歌われた中では歴史上のワーストと呼べるほどに酷いもので、 TVで見ていた私も思わず笑ってしまったのを覚えている。 でもあのひどい歌を生で最初から最後まで聴かされて、会場中が爆笑していても、マイケル・ジョーダンたるものは 国歌斉唱の最中に、カール・ルイスの歌が下手だという理由くらいで笑ってはいけない訳で、 その翌日NBAファンの友人と「マイケル・ジョーダンって大変だね」、「苦しかっただろうね」と 彼に心から同情したのを覚えている。

同じ歴史に残るキャリアを持つ2人のマイケルではあるけれど、 マイケル・ジョーダンとマイケル・ジャクソンでは、そのイメージに雲泥の差があるのは誰もが認めるところである。
この2人が1つ共通している点があるとすれば、アメリカ人は違った意味で彼らを「カラーレス/colorless」、 すなわち人種を感じさせない存在と捉えている点である。
マイケル・ジョーダンは、白人、黒人、ヒスパニック等、人種を問わず、 誰もが認める歴史的なスポーツ・ヒーロー、ある意味ではスポーツというカテゴリーを越えたヒーローであり、 誰も彼を黒人のヒーローという目では見てはいないのである。
マイケル・ジョーダンという存在を語る時に彼がNBAに残した功績や、 彼がナイキとのティームアップで生み出した「エア・ジョーダン」のマーケティング神話、 広告業界の歴史に残るスーパーボウルのコマーシャル等、 様々なものが挙げられるけれど、彼が黒人というマイノリティであることは忘れ去られているに等しい事実である。
一方のマイケル・ジャクソンは、かつては黒人であったことは誰もが意識していたけれど、 度重なる整形手術(本人は皮膚病と言っているが)で白人よりも肌が白くなってしまい、 黒人か白人か分からないだけでなく、「人間かどうかも分からない」とさえ言われるようになってしまった存在。 黒人社会は彼が皮膚を白くしたことで黒人であることを放棄したと思っているし、 色が白くなったからといって白人社会が彼を白人と見なすことも無く、 彼は今やどの人種にも属さないと見なされているとも言うことが出きるだろう。






始まった松井ウォッチング

ヤンキーズの松井が遂にニューヨーク入りしたということで、昨今のNY在住の日本人の間では 「松井がxxxに来た」、「松井をxxxで見かけた」という 松井ウォッチングが話題になっているようである。
既に松井が目撃されているのは2軒の日本食レストランと日本のピアノ・バーで、 私はアシスタントの女の子からこの目撃情報を聞いたけれど、日本人の友人は既に 皆そのことを知っていてビックリしてしまった。
加えて、土曜日ファースト・アベニューをタクシーで通ったら、「松井が住むであろう」と報道された トランプ・ワールド・インターナショナルのビルの前で 日本人と思しき3人組が 記念撮影をしており、松井が日本でどんな生活をしていたかは全く知らないけれど、 こんな調子ではニューヨークでは、気が休まる事は無いだろうなぁと察してしまった。
でも私が知る在NYの日本人の松井フィーバーへのリアクションは 「松井ってそんなに人気のある選手だったんだ!?」というものが多く、 彼が日本球界のスター・プレーヤーであることは理解していても、 ヤンキーズへの入団が決まって国民的英雄っぽく盛り上がっている彼の人気には 驚かされているという状態である。
実際に、松井のヤンキーズ入りの在NY日本人社会へのインパクトは、 メッツに吉井や新庄が入団したり、ヤンキーズに伊良部が入団した時よりもずっと大きいもので、 ヤンキーズ側にしても、これを見込んで異例の速さで松井のユニフォームやTシャツをクラブハウス・ショップに並べるという 用意周到ぶりである。 昨年の今ごろはヤンキーズのクラブハウス・ショップは改装を理由に一時クローズしており、 それほどオフ・シーズンのクラブハウス・ショップというのは暇な訳であるが、 今年は松井のユニフォームを5枚10枚と買い占めて行く日本人のお陰で、そのビジネスは例年より潤っていると伝えられている。
では一連の松井報道で、ニューヨーカーは松井をどう見ているかと言えば、 松井が英語を話せなくても彼が真面目な好青年であるのは理解できるようである。 でもプレーヤーとしての彼については「日本のスター」であることしか知らないだけに、 未だニューヨーカーにとって松井は「未知のプレーヤー」であることには変わりはなかったりする。
一方、松井に群がる日本の報道陣についても、相変わらずニューヨークのメディアは着眼していて、 先日キューバ出身のピッチャーで、松井より高給取りとなるホゼ・コントレラスの入団発表が行なわれた際、 「ホゼの取材に群がったのは、日本のメディアだった」として 松井が入団したヤンキーズのニュースなら何でも取材してしまうその姿が報道されていた。
さて、私が今後個人的に若干気になるのは熱心な日本の松井ファンが、どの程度熱心に彼を追いかけるのだろうか?ということで、 既に日本のテレビ番組では、松井が出掛けそうな店の特集がされていたと聞いているけれど、 マナーの悪い「追っかけ行為」というのはしないで欲しいと願うばかりである。
アメリカ人というのは、いきなりマイクを向けられてプロのアナウンサーのように話せる人が多いけれど、 プロ・スポーツ選手を始めとするセレブリティを前にしても、興奮してキャーキャー言ったりせずに 普通に話し掛けて握手をしてもらったり、激励したりして、同じ人間として対等に触れ合うことが出来る人々である。 (もちろんインシンクを追いかけているようなティーンエイジャーは別。)
私は数年前にブルーミングデールズでヤンキーズのデレク・ジーターと当時のヤンキーズのDHで、 マイケル・ジョーダンのゴルフ友達でもあるチリ・デイビスが一緒に居るのを目撃したことがあるけれど、 ショッピングをしていた人達が、偶然知り合いにでも会ったかのように彼らに普通に声を掛けていて、 彼らもにこやかにそれに応えながら普通にしていたのを覚えている。 2人とも背が高くて、ガッシリしていて、ハンサムだし、何とも言えないオーラを放っており、 非常に目立っていたから周囲はもちろん彼らが誰であるか気が付くし、 特にデレク・ジーターを追いかけたいファンはニューヨークに沢山居るけれど、 それでも彼らが大騒ぎを起こすことなく、ブルーミングデールズのようなデパートから出て行ったというのは ちょっと驚かされる出来事だった。
でもよく考えてみればこれが自然なマナーな訳で、セレブリティやスポーツ選手にしても そうした接し方をされた方が、ファンを有り難いものだと感じてくれるのだと思う。






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