` CUBE New York Catch of the Week




Feb. 10 〜 Feb. 16 2003




日米ヴァレンタイン・ギフトの比較

今週の金曜日はヴァレンタイン・デイであったけれど、 ニューヨークに住み始めてからというものヴァレンタイン・デイはかなり気楽で安上がりなものになった。
日本に居た頃は義理チョコの購入リストを作って、できるだけお金を使わないように 混雑した売り場でチョコレートを探して、さらにそれを渡すのではなく「配る」という作業が 学生時代から続いていた訳で、OLをしていた時代は会社の先輩が「纏めてチョコレートを買って配る」ということで 一方的にお金を収集されて、オフィスの男性達から自分が買っても、配ってもいないチョコレートに対して、口先だけのお礼を言われたのを覚えている。
そんな事をして一体何になるんだろう?と、日本に居る時でさえ日本のヴァレンタイン・デイというのは滑稽な行事であったけれど、 その気持ちはアメリカに来てからというもの、益々強くなってしまった。
諸外国ではヴァレンタイン・デイというのは「恋人達の日」であり、日本のように 「1年に1度だけ女性が愛を告白するのを許される日」という不可思議なコンセプトの日ではない。 したがってこの日にプレゼントを贈るのはもっぱら男性の方で、女性は男性からのプレゼントが見込まれる場合、 そのお返し的にプレゼントを用意する場合もあるけれど、受け取ることに徹しても決して罪がある訳では無い。
この日のプレゼントとして、もっとも一般的なものは真っ赤なバラの花束で、 ヴァレンタインはバラの消費が通常の10倍近くに跳ね上がる時期である。 この時期は当然ながらバラの価格が値上がるけれど、にも関わらず売り切れ店が続出するので、ヴァレンタイン・デイの夕方にバラの花を買おうというのは 極めて難しい事であったりする。
アメリカでもヴァレンタイン・デイにはチョコレートを贈る場合があるけれど、 チョコレートというのは花束と一緒で日常茶飯事で女性へのプレゼントとして用いられるものである。 これら以外にヴァレンタインのプレゼントとして用いられるのはランジェリー、ジュエリー、フレグランス等で、 身に着けるものを贈る方が より親密でロマンティックなプレゼントと見なされているのは言うまでもないこと。
またヴァレンタイン・デイは恋人にプロポーズする男性が最も多い日であるから、 ヴァレンタインのプレゼントがエンゲージメント・リングというケースは少なくない。
日本では結婚が決まってから2人で婚約指輪を選ぶという場合が多いけれど、 アメリカの場合、男性はプロポーズをする時点でリングを用意しておくのがごく一般的。 だからエンゲージメント・リングは男性の好みによって選ばれることになるけれど、 最悪の場合、「セックス・アンド・ザ・シティ」のシーズンNo.4で、 サラー・ジェシカ・パーカー扮するキャリーが恋人、エイデンの選んだリングを見て 思わず吐いてしまうシーンがあったけれど、そういうことにもなりかねなかったりする。
アメリカの25歳以上を対象にしたアンケートによれば、 60%以上の男性にとっての理想的なヴァレンタイン・デイの過ごし方は、自分の愛する女性と プライベートなひと時を過ごすことだそうだけれど、これに対して女性はもっとマテリアリスティックで、 58%が「プレゼントを用意してくれないようなボーイフレンドとは別れる」と語っているという。 さらに男性がヴァレンタイン・デイのプレゼントに割く平均的な予算は126ドルで、 これに対して女性側は38ドルとかなりチープである結果も出ている。

さて少し前のことであるが、アメリカ人の男性と話していた時に、 日本は唯一「女性が男性にせっせとプレゼントで貢ぐ国」だと言われたことがある。 彼は日本に3回ほど仕事で出かけたことがあって、 出かける度に日本人女性と何度かデートしていたそうだけれど、 デートの際には必ず女性達がプレゼントを持って登場していたという。 また彼はNYに旅行に来ていた日本人女性とも知り合ったというけれど、 彼女も日本に戻ってから彼の誕生日やヴァレンタイン・デイ、その他特に理由が無くても 年に何度かプレゼントを送って来たと言っていた。
プレゼントされたものは、日本的な小物からデザイナー物のセーター、 最も高いものでは腕時計というのがあったそうで、 「プレゼントを送るのは常に男性」というのが常識的なアメリカ人の彼にとっては、 日本人女性のプレゼント攻勢は有り難い上に便利なものであったという。 彼がどうやってお返しをしていたかといえば、カードに詩を書いて、真っ赤なバラの花を1輪プレゼントというので、 女性達は大満足だったとのこと。
私は、彼の言う「日本人女性一般が男性にプレゼントで貢いでいる」という説は 事実から外れているとは思うけれど、それでも日本人女性は諸外国の女性に比べば、 かなり頻繁に好きな男性にプレゼントをする方だと思って見ている。 でも昨今の日本の報道や、人から聞いた話を総合すると、好きな男性にプレゼントで貢いでいる女性というのは、 好きでもない男性には貢がせているようでもある。
これについては私は実例を沢山知る訳ではないから、実際にはどの程度こうした事が起こっているのかは定かではないけれど、 でも好きな相手にプレゼントを贈るというのは万国共通でその相手の関心を引くためだったり、 相手に自分を好きになってもらうため、もしくは相手に自分が思っていることを伝えるためのものである。
だからこれをタイミング良く、適切な形で行なえば相手の愛情を勝ち得ることができるけれど、 逆にプレゼントをあげ続けていれば、受け取る側にはその有り難味が薄れて、 「プレゼントをもらって当たり前」と思われるようになるし、「自分のためなら相手は何でもしてくれる」、 「相手は自分に夢中だから何をねだっても大丈夫」的な気持ちを抱かせて、愛情が高まるどころか 逆に馬鹿にされたり、利用されたりするようになってしまうのが現実である。
そもそも、好きな相手にプレゼントを贈り続けるのは「相手の喜ぶ顔が見たい」という部分もあるかも知れないけれど、 「そのままの自分では相手に好きになってもらえる自信が無い」という場合も多い訳で、 その場合、プレゼントを贈る側は相手の気持ちを物で買おうとしているということにもなる。
以前パーティーで会ったアメリカ人のすごく綺麗な女性が「ハンサムな男性は 何もプレゼントしてくれないし、尽くしてもくれないから付き合わないことにしている」と言っていたけれど、 確かにルックスが良かったり、異性にモテる等、自分に自信がある人ほど、必要以上に相手に尽くしたり、プレゼントをしたりする必要は感じていないと思う。 それでも、全くプレゼントを贈らなければ、よほどのケチか、愛情が無いか、 もしくは自信過剰と思われても仕方が無い訳で、どんな物をどんな形でプレゼントするかにはその人の性格や気持ちが表われると言うことが出来る。
さて日本人がプレゼントを贈るのが好きな国民というのは、来日したセレブリティが 抱く日本の印象でもあったりするけれど、私は個人的には アメリカ人の方が 日本人よりも ひとひねりしたプレゼントを贈るのが上手いという印象を持っている。
日本人は相手が好きそうなもの、似合いそうな物を大切な人へのギフトとして選ぶけれど、 アメリカ人はいかにパーソナルで、受け取った人にとって意味のあるギフトを贈ることが出来るかで知恵を絞るから、 結果的に他人が見たら「何でそんな物が嬉しいの?」というものをプレゼントすることになったりするけれど、 受け取った本人は送り主が自分の話を聞いて覚えていてくれたことや、自分と相手だけが知る思い出にまつわるプレゼントに 非常に感激することになる。
その意味で、アメリカ人をギフトで感激させるにはそれだけ相手について知らなければならないし、 お金よりも知恵を使わなければならないと言えると思う。






オレンジ警戒ストレス

ホームランド・セキュリティのテロ警戒のカラー・コードが これまでのイエローからオレンジになったことで、当然のことながらニューヨークでは 街のあちらこちらで警官の姿を以前より多く見かけるようになった。
警戒コードがオレンジになったのは昨年の9月11日のテロ1周年以来とのことで、 これはテロの危険が非常に高いということを意味するものである。
ことに現在、可能性があると言われるテロは生物・化学兵器の使用で、 特に日本の地下鉄サリン事件の前例もあって、ニューヨークの地下鉄でこうした生物・化学兵器が 使用されるのではないかという警戒が高まっていたのに加えて、 ダーティー・ボムと呼ばれる放射能汚染を撒き散らす爆発物をテロリストが使用することも 同時に危険視されていた。
このため、カラー・コード、オレンジの警戒と共に人々に呼びかけられたのが、 ダクトテープを購入して万一、生物・化学兵器のテロが起こった場合は窓の隙間を塞ぐようにということ、 加えて3日分の食料と飲み水を買い貯めしておくようにとのことだった。
そしてこの警戒警報に対するリアクションでニューヨーカーは大きく2種類に分かれたと言える。 1つ目は、これを真に受けて夜は心配で眠れない、怖くて地下鉄には乗れない、本当にダクト・テープを幾つも購入して、 非常食を買い貯めして、テロへの恐怖とそのストレスを感じながら過ごしている人々。もう1つはテロへの警戒警告を全く気にせず、普通に暮らす人々であった。
このうち私がどちらに属したかと言えば、もちろん後者、すなわち全くテロのことなど心配しない方である。 実際に私の周囲にもテロを心配して眠れない人などは全く居なかったので、 TVのニュースでガスマスクが完売したことが報道されているのを見て、それが同じニューヨークのこととは とても信じられない思いで見ていた。もっともガスマスクを販売している店はマンハッタン内で 僅か数軒であり、そこでガスマスクが3ヶ月待ちといったところで、殆どのニューヨーカーはガスマスクなど購入していない訳である。
でも、一部の人々はこのオレンジ警戒コードを必要以上にシリアスに捕えており、 ウォール・ストリートにあるテロ対策グッズの専門店「セイフ・アメリカ」は毎日賑わっているという。 ここでは生物化学兵器が使用された場合のシェルターとなる特殊ビニールのキューブ状のテントが4000ドル以上という 価格にも関わらず完売したり、ダーティー・ボム対策の放射能汚染を防ぐ特殊素材のつなぎのような衣服が 2700ドルという価格で販売され、これも完売直前であるという。
でもよく説明を聞いてみると、シェルターとなるテントは、生物・化学兵器で空気が汚染される前に 膨らませて、食料や水を既にそこに入れておかなければならないとのことで、それがかなり大きなテントであるだけに ニューヨーカーがこのシェルター・テントにアパートの大部分を占領されて テロが起こるまでじっと我慢するとは思えなかったりする。だからと言ってテロが起こってからではテントを広げても意味が無い訳で、 まともな思考回路の人ならこんな意味をなさないものに4000ドルを支払ったりはしないものである。
また放射線汚染を防ぐ衣類にしても、テロが起こってから着用するのでは遅い訳で、 毎日着て出掛ける以外はその効果は発揮しない訳であるが、見た目も着心地も 毎日の着用に耐えるものではないのは言うまでもない。
アメリカ人がこうした頭を冷せば無駄だと分かる物に大金を投じるのは、テロを警戒するというような 特殊な状況下に限ったことではなく、肥満に悩む人々が「楽をして痩せられる」という甘い言葉に乗せられて、 決して効果が得られないことが明らかなダイエット・プロダクトに懲りずにお金を使い続けるのと同様であると言える。
オレンジ警戒コードになってから、TVのニュース番組では ニューヨーカーが実際にどの程度テロを心配し、それに備えているかをよく街頭インタビューしているけれど、 テロを心配する人も居れば、「ブッシュ政権が国民のテロへの恐怖心を煽って、 戦争を始め易くしているだけだろう」と読む人も多く、聞いていてなかなか面白かったりする。
私が個人的に少なくとも暫くはニューヨークでテロが起こらないと思うのは、 何もテロリストがこれだけ警戒が厳重になっている時期をわざわざ選んで、苦労とリスクを負いながらテロを引き起こす必要は無いと思うからである。 同時多発テロがあれだけ周到に行なわれたのは、もちろんその緻密なプランもあったかもしれないけれど、 アメリカ側がテロに対して全く無防備であった部分が大きい訳で、 今のアメリカ、ことにニューヨークとワシントンでテロを起こすのは以前よりずっと難しくなっているのは言うまでも無いことである。 テロリストにとって最も失策となるのはテロを引き起こそうとして失敗することで、 そうなればアメリカにダメージを与えることなくして、戦争を始める理由を与えることになってしまう。
そんなことよりも「テロを仕掛けるかもしれない」というふりを続けていれば、 アメリカは警備にお金を使い続けて、その結果、ただでさえ苦しい地方財政は益々苦しくなり、 じわじわとアメリカに経済的打撃を与えることが出来る訳で、これは小規模なテロを起こすよりずっと効果的であると言える。
私にとっても今回のオレンジ警戒コードについてはブッシュ政権が戦争に反対する人々を テロへの恐怖を煽って黙らせようとしているように感じられたけれど、 もしそうだとすれば、オレンジ・コード下でありながらも今週土曜日に全米150都市で、マンハッタンでは30万人以上の 参加者を集めて反戦デモが行なわれたことを見れば分かるように、その効果は全く無かったと言わなければならない。
でもダクト・テープの完売店が相次いだり、ガスマスクの生産が追いつかないといった状況を見る限り、 これが景気刺激対策として行なわれたのであれば、それなりの成功を収めたと言うことが出来ると思う。






Catch of the Week No.2 Feb.: 2月 第2週


Catch of the Week No.1 Feb.: 2月 第1週


Catch of the Week No.4 Jan.: 1月 第4週


Catch of the Week No.3 Jan.: 1月 第3週