` CUBE New York Catch of the Week




Feb. 17 〜 Feb. 23 2003




インスタント・ミリオネア

今週の月曜日は、アメリカ中が待ちに待った「ジョー・ミリオネア」( 1月第2週目「ジョー・ミリオネアの茶番劇」参照のこと )の 最終エピソードが放映されたけれど、全米で4000万人以上がチャンネルを合わせ、放映局であるFOXの 視聴率記録を塗り替えたことが伝えられている。
結果的に「ジョー・ミリオネア」こと年収1万9000ドル(約228万円)のイヴァン・マリオットが 選んだのは写真右のうちのブルネットのゾーラで、彼は彼女を選んだことを告白した直後に、 自分は$50ミリオン(60億円)を相続した訳では無いことを告げ、 その上でこれからの2人の関係についての決断をゾラに委ねることになった。
$50ミリオンが単なる作り話だったことを知らされた瞬間のゾラの表情は、 イヴァンが彼女を選ぶと告白した時に見せた笑顔とは裏腹に、こわばった 不愉快そうなもので、 明らかに落ち込んだ表情とも言えたと同時に、このリアクションは全米の視聴者が予想した通りのものだった。
一方、最後の2人まで勝ち残り、自分は選ばれなかったが、イヴァンもミリオネアではなかったことを知らされたブロンドのサラは、 明らかに腹を立てており、最後の2人に勝ち残った際に受け取ったダイヤモンドのペンダントを 「キュービック・ジルコニアなんじゃない?」などと笑い飛ばす始末だった。
結果的にフィナーレでは、イヴニング・ドレス姿でイヴァンの前に現れたゾラが、 彼女が彼を信じようと努力をしていたにもかかわらず、彼女にウソをつき続けたことについて イヴァンを批難するものの、それでも彼の本質には惹かれるものがあるとして、 これからも交際を続けたいという意志を彼に打ち明けることになる。 見ている側は彼女のスピーチの前半を聞いて、てっきりイヴァンがここで彼女にフラレてしまうと 思っているので、その後半の展開に驚いたり、喜んだりするけれど、 そこに現れるのが、この番組を通じて1番人気が盛り上がったキャラクターであるバトラー(執事)のポール。
彼は 真実の愛情の尊さを称えて、 それを立証した2人に 番組から$1ミリオン(約1億2000万円)の小切手が送られることを告げる。 要するにミリオネアとウソをついていたイヴァンが、この結末のお陰で本当のミリオネアになったという 「ひょうたんからコマ」的なエンディングが用意されていたのである。
2人がお互いに結ばれた喜びと、ミリオネアになった喜びですっかり舞い上がっているところで番組は終わっているが、 次の月曜には、その後の2人がどうなったかがレポートされる特番が組まれており、 その放映を待たずして、今週金曜日の「ピープル誌」は早くも2人が破局を迎えたことを伝えている。
でもこの2人が放映局であるFOXが用意した小切手で本当にミリオネアになったかというと 決してそうではなく、アメリカは所得税が高いので、100万ドル($1ミリオン)を手にしても、 税引後に手元に残るのは5600万ドル程度である。 加えて2人が別れてしまったので、これを2人で分けるとそれぞれが受け取るのは2800万ドルで かなりミリオネアには程遠い数字になってしまう訳である。

その一方で、先週ニューヨークではもう1人、インスタント・ミリオネアが誕生している。
こちらは宝くじのメガ・ミリオンで、$128ミリオン(約153.6億円)の賞金を1人で当てた フィン・スイ氏(写真左)である。
セントラル・パークの庭師をしているというブルックリン在住の彼は32歳で、 5ドルを宝くじに投資しただけで、今回のメガ・ミリオンの当選者となった。 でも彼は賞金の1回払いを希望しているために、賞金は40%割り引かれ、 その上に税金が差し引かれるので、実際に支払われる金額は約47ミリオン(約56.4億円)となっている。
奇しくもこの金額は「ジョー・ミリオネア」でイヴァンが相続したと女性達を騙していた金額に非常に近く、 イヴァンとフィンもその職業は工事現場の労働者、セントラル・パークの庭師というブルー・カラー・ジョブで共通していたりする。 でもイヴァンは、全米ネットのTVで$50ミリオンを相続したふりをして、その見返りとして「28%のミリオネア」になったのに対して、 フィンは宝くじに5ドルを支払っただけで$47ミリオンを手にした訳である。
リアリティTVが大流行している現在、多くのアメリカ人が夢を求めてリアリティTVへの出演に 躍起になっているけれど、イヴァンとフィンを見ていると リアリティTVはやはり「リアリティ」でしかなく、 「夢」をかなえてくれるのは宝くじであるとさえ感じられてしまう。
ドットコム・ミリオネアも消滅し、景気がパッとしない今、 宝くじは「最後のアメリカン・ドリーム」等と言われてたりするけれど、 これはまんざら全くの冗談ではないと思う。






スノー・デイ・ノスタルジー

NYには滅多に大雪が降らないけれど、今週月曜日の雪は1996年以来という本当に物凄い雪だった。
「テロ対策で用意した3日分の食料が、今回の雪ごもりに役立った」、 「大雪のせいで暖房がきかなくなって、ダクト・テープで窓からの隙間風を塞いだ」と ホームランド・セキュリティに感謝したニューヨーカーは少なくなかったけれど、 大雪が降って大変なのは、降り続いている最中よりもむしろその後で、私も1997年以来一度も履いていなかった L.L.ビーンのブーツを出してくる羽目になった。
前回の記録的大雪といわれた96年は、CUBE New Yorkがスタートした年でもあるけれど、 私自身、この雪には特別なノスタルジーがあったりする。 この時の雪は1月に降ったものだったと記憶しているけれど、それまでワープロを使っていた私が 初めてコンピューターを購入したのがこの時期で、大雪の中を日本から来た友人が、当時日本で発売されたばかりの 日本語バージョンの「ウィンドウズ95」を持ってきてくれたのである。
そして、それからというもの コンピューター初心者の私がアメリカで購入したコンピューターに 日本語のウィンドウズをインストールする苦労とCUBE New Yorkのビジネスを立ち上げるための準備が始まった訳だけれど、 トラブル続きで、頭がパンクしそうな思いが春頃まで続いたのである。
だから私にとってこの時の雪は、今では生活の一部として当たり前に使っているコンピューター、インターネットといったものの 洗礼を受けた象徴的な意味合いがあって、今回の雪でこの頃のことを懐かしく思い出してしまった。
ニューヨークは雪が多い街ではないだけに、雪にまつわる様々な思い出を持つニューヨーカーは非常に多かったりする。
私とある女友達との間で、ニューヨークに雪が降る度に思い出す出来事は、 彼女と、彼女の夫、私ともう1人の友人の4人で食事に出かけた夜のことで、 この時は食事を済ませて外に出ると、雪が10センチほど積もっていた。 私にとって彼女のダンナ様は、個人的にあまり馴染める人ではなかったけれど、 この夜は4人で雪合戦をしながら、走り回ったり、はしゃいだりしながら、家に帰ることになり、 私はこの時初めて彼が無邪気にしている姿を見たし、初めて私の友人が彼に惹かれた理由も理解したような気がした。 そして、これが彼女にとっても私にとっても、彼の人間性の良い部分に触れた最後の夜だった。
2人はその2週間後に突然離婚することを決めてしまい、過去3年の結婚生活に終止符を打つことになってしまった。 既に口を利かなかったり、喧嘩をしたりで結婚生活が上手くいっていなかったという2人だったけれど、 この日の雪合戦の時は本当に久しぶりに2人が心から笑って、一緒にはしゃいだ瞬間だったとのことで、 この時、彼女は一時的にでも彼とまだやっていけるのでは?という希望を持ったと話していた。
以来、2年経っても 3年経っても、彼女と私はニューヨークに雪が降るたびにこの時の事を思い出している。
こうしてふと考えてみると、人生の中の忘れられない出来事というのは晴れた日より、 雪や大雨といった天気の際に起こっているように思うけれど、見方を変えれば 雪や大雨のせいで普通なら忘れてしまうような出来事を覚えているのかもしれない。
今回の雪は、私にとっては特に思い出に残るような出来事は何も起こらなかったけれど、 それはそれでまた幸せなのだと思っている。






Catch of the Week No.3 Feb.: 2月 第3週


Catch of the Week No.2 Feb.: 2月 第2週


Catch of the Week No.1 Feb.: 2月 第1週


Catch of the Week No.4 Jan.: 1月 第4週