今週のNYでは国連総会が行われたけれど、国連周辺の交通閉鎖の影響で道が混み合うこの週は時間に追われるニューヨーカーにとっては悪夢の1週間。
先週金曜日にトランプ氏がCNN、ポリティコ、MSNOWをホワイトハウス出入り禁止にしたことに抗議して、大統領映像取材を共同で担うABC、NBC、CBS、CNNそしてFOXニュースが共同取材を停止したことから、
今週誕生したのがストリーミングによる「Trump TV」。すなわち突如トランプ政権が国家予算を使ってYouTuberになった訳で、チャンネル登録者はあっという間に318万人に達したものの、
同時視聴の最高が8千人、その後どんどん数を減らして数百人にの視聴に止まっており、登録者はフェイク・アカウントのボットだという説が有力。
木曜には出禁解除を求める裁判所の判決により3社の取材が復活したけれど、その間にトランプ氏が中国のシー・ジン・ピン主席夫妻をホワイトハウスに迎えた様子は
今週一番ニュースながら共同取材映像が無かったことで手抜き報道の印象。しかし意外にも視聴者はこれにポジティブなリアクションで、もっと早く
トランプ報道を手抜にすべきだったという声が多々聞かれたのだった。
注目の米中首脳会談はトランプ氏がシー・ジン・ピンー主席との個人的繋がりや友情を強調して媚びる様子がアメリカ国民の反発を招いており、
さらには自分の発案でAIをSI(スーパーインテリジェンス)と改名することを世界的スタンダードにしようとする様子が冷ややかな目で見られていた印象。
ちなみにアメリカではSIと言えば、1980年代からスポーツ・イラストレーテッド誌を指すイニシャルとして定着しており、
アメリカ湾(メキシコ湾)、アメリカ湖(オンタリオ湖)と並んで、トランプ氏の頭の中だけの改名として捉えられているのだった。
今週には、長年うつ病や産後の体重増加等に苦しみドラッグを常用していた女優ヘイデン・パネッティーアが、8月にオーバードースで死去した司法解剖結果が発表されたけれど、
死因となったのはフェンタニルとその代謝物、ザナックス(抗不安薬)、筋弛緩薬に加えて重い精神疾患に使われる薬のミックス。
現在こうした薬物を常用する人々の間ではフェンタニル、ザナックス、筋弛緩剤のミックスは ”Holy Trinity/ホーリー・トリニティ”と呼ばれ、オーバードースのリスクが高さでも知られているとのこと。
また今週にはスーパーモデル、シンディ・クロフォードの長男かつ元モデルで、同じく若くしてうつ病、薬物常用で苦しんだプレスリー・ガーバー(27歳)が、
滞在していたリハビリ施設でオーバードースの疑いで死去したニュースも報じられたけれど、彼は薬物中毒を克服するための薬物投与が失敗したと言われるケース。
2023年に死去した俳優のマシュー・ペリーの死因もイーロン・マスクが精神安定のために常用するケタミンのオーバードースで、
今や医師が処方する薬がオーバードースの原因になって久しい状況。
ちなみにアメリカでは18歳以上の成人の68%が毎日1種類以上の処方箋薬を摂取。国民1人当たりの年間処方数は平均で約17~19件。毎日4種類以上の処方薬を服用するアメリカ人は成人の26%で、65歳以上の89%が処方箋薬を日常的に摂取。その約半分が5種類以上を服用しているとのこと。
これが18歳~44歳になると男性の38.9%、女性の57.8%が処方箋薬を一時的、もしくは継続的に摂取しているのが実情。
最も処方が多いのは、心血管系治療薬(心臓・血圧関連)、次いで血糖値やホルモンバランスを管理する代謝・内分泌系治療薬や糖尿病治療薬。
3番目に多いのが疼痛、気分障害、神経疾患、うつ病や不安症の管理のために処方される中枢神経系・メンタルヘルス治療薬。
そして今週メインストリーム・メディアで大きく報じられたのが、アメリカで成人の8人に1人が処方されているGLP-1受容体作動薬によって突如失明するリスク。
これまでGLP-1ドラッグの副作用と言えば、オゼンピック・フェイス、オゼンピック・アームなど激ヤセによる老けた顔や骨ばった身体、嘔吐、下痢、生理不順、
骨粗しょう症やサルコペニア、頭髪脱毛等が挙げられていたけれど、EUではオゼンピックやウゴービ等の注意書きに「ごく稀な副作用」として失明をリストする指導が始まっているとのこと。
アメリカでは現在、失明患者がオゼンピックの製造元であるノボ ノルディスク社とマンジャロで知られるイーライ・リリー社を相手取って訴訟を起こしているけれど、失明の副作用は
SNS上では以前から取り沙汰されており、その症状は何の前触れも無しにある日突然片目だけが失明するというもの。この視覚障害は
NAION(非動脈炎性前部虚血性視神経症)という名称で、症状は永久的で現時点での治療法はナシ。
製薬業界にグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1ドラッグ・ファミリー)が登場したのは2005年のことで、
そこからオゼンピックやウゴービとして知られるセマグルチドに進化したのが2017年のこと。
その後GLP-1にGIPというもう1つのホルモン作用を加えて生まれたのが、マンジャロ(2022年発売)、ゼップバウンド(2023年発売)として知られるチルゼパチド。
GLP-1ドラッグが世の中に出回ってから、突然の失明件数が約2倍になったことはハーバード大学教授で、ベストセラー『老いなき世界』の著者でもある
デヴィッド・シンクレアも非公式なコメントで指摘していたけれど、現時点で3年以上の信頼出来るデータがあるセマグルチドでは、確かにごく僅かながら認められているのが失明のリスク。
チルゼパチドについては、果たしてどの程度のデータがあるかさえもはっきりしていないのだった。
米国成人の約40%が肥満と言われるアメリカではオゼンピック、ウゴービ、マンジャロ、ゼップバウンドが、最も処方される薬のトップ20にランクインしているけれど、
現在問題視されているのがGLP-1ドラッグで体重を大きく落とした患者が、それを維持するための摂取を続けようとしても、「既に肥満ではない」という理由で
薬代が保険でカバーされないケースが相次いでいること。 GLP-1ドラッグによって減量した身体は、決して健康体ではなく、
多くがエクササイズ無しで痩せるため、筋肉が落ちて以前より脂肪体質、すなわち太り易い身体になっているのは全く珍しくないとのこと。
そんな状態でGLP-1ドラッグの摂取を止めると、急速なリバウンドで以前より体重が増えるのは多数レポートされている通り。
今週にはトランプ政権が不正を理由に75万人からオバマケアこと、ACA(医療費負担適正化法)加入資格を取り消したことが報じられ、
それとは別に2026年にはアメリカ国民の480万人が政府援助の打ち切りにより健康保険を失ったところ。
保険無しでは、たとえ深刻な肥満、糖尿病患者でもGLP-1ドラッグの摂取は金銭的に不可能で、
最悪のシナリオは、GLP-1ドラッグで体重を大幅に落とし、痩せはしたものの以前より脂肪体質になった身体で健康保険を失い、GLP-1ドラッグの摂取がストップしてしまうこと。
ダイエット目的で太っていないのにGLP-1ドラッグを使用するケースでは、副作用を含めた臨床データが肥満&糖尿病患者からしか得られていないので、
思わぬリスクが隠れている可能性が否定できないのに加えて、正しく処方されていないGLP-1ドラッグで生じた医療問題は保険がカバーしないことが警告されているのだった。
GLP-1ドラッグをきちんとした指導に基づいて処方しているドクターは、前述の嘔吐や、骨粗しょう症等の副作用に加えて、
胆石、腸閉塞等についても警告しているけれど、現在専門家の間で失明よりも深刻に捉えられるようになってきているのがアンヘドニア(無快楽症)。
GLP-1ドラッグにより食欲が失せて、食べる楽しみが無くなるのは周知の事実。
食欲は人間にとって最もベーシックな欲望で、脳のプレジャー・ゾーンと密接に関わっているのは容易に想像がつくところ。
その快楽を求める気持ち、満たされる幸福感が無くなることで、あらゆるものに興味が湧かず、無感動になり、
人間関係も淡泊になり、人生に消極的、もしくは無関心になって行くのがアンヘドニアで、そこからうつ病の症状を訴える人々が欧米では増加中。
にも関わらずFDA(連邦食品医薬品局)は、GLP-1ドラッグの注意書きに記載されている「稀に自殺を誘発する可能性」についての記載削除に合意したばかり。
何でもお金で動くトランプ政権のFDAは症例数が増えているのを知りつつも、マンジャロとゼップバウンドの売り上げで一兆ドル企業の仲間入りしたイーライ・リリー社のロビー活動にあっさり丸め込まれたというのが
医師や製薬業界関係者の弁。
結局のところ処方箋薬を長期間摂取して何等かのメリットを得ようとする場合、
等価交換的な代償を様々な副作用や症状で支払うことになるのが現代医学のパラドックス。
製薬業界にとって副作用は新たな収入源と見なされるので、改善を加えるより副作用を抑えるための別の薬が開発されるのが常。
そうしたシステムの中で一度処方箋薬に頼り始めれば、薬との付き合いは一生もの。
それがアメリカにおける処方箋の数が年間71億に達する背景と言えるのだった。
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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