Mar. 29 〜 Apr. 4 2004




15 Minutes of Fame

アメリカでは、様々な事件や何らかのきっかけで、一般人が突如「時の人」になることを 「フィフティーン・ミニッツ・オブ・フェイム」、すなわち「15分間だけの名声」と 呼んでいるけれど、先週から今週に掛けてのアメリカは、 その様々な形態が集中的に登場していた時期であった。
こうして突然 有名になった人々というのは、 彼らを有名にしたものや事件が終わったり、飽きられた時点で消えて行く訳で、 それまでの時間は、本当に報道時間にして15分程度の場合もあれば、 クリントン・スキャンダルのモニカ・ルインスキーのように2年と15分くらいに長い場合もあったりする。

昨今のアメリカで「15ミニッツ・オブ・フェイム」というと、もっぱら 「サバイバー」や「バチェラー」等のリアリティTVの出演して 「にわかセレブリティ」になった人々のことを言う場合が多いけれど、 今やリアリティTVに出演しようという参加者の目標は、番組で勝ち残って賞金等を受け取るよりも、 この「15ミニッツ・オブ・フェイム」を使って、いかに稼ぐか?になっているという。
では「15ミニッツ・オブ・フェイム」が「にわかセレブリティ」に何をもたらすかといえば、 大勢の人々からの注目とメディアからの取材攻勢、飛行機はファースト・クラス、ホテルは4つ星、 リムジンでの送り迎えといったVIP待遇。そして、本を出版して、 そのプロモーションで さらにメディアに登場するのが最も一般的なパターンである。
時にCDを出したり、ライセンス・グッズを発売するという例もあるけれど、 「サバイバー」の第1回目の勝者、リチャード・ハッチなどは、セミナーでスピーチをしたり、 ラジオ番組でパーソナリティを務めるといった事も行っており、 彼の場合、サバイバーの賞金$1ミリオン(約1億500万円)は、税引き後6千万円程度になってしまったものの、 その3倍を著書の印税や、その他のプロジェクトで稼ぎ出したと言われている。

通常、リアリティTVの出演者が「にわかセレブリティ」になれるのは、 毎週番組に登場して、一般の人々の間にその存在が馴染まれていくからであるけれど、 1回のエピソードの僅か5分足らずの放映時間でこれを成し遂げ、にわかスターダムにのし上がったのが、 アメリカで大人気のリアリティTV「アメリカン・アイドル」で予選落ちした ウイリアム・ハン(写真右)である。
「アメリカン・アイドル」は、ケリー・クラークソンや、クレイ・エイキンといったスターを 生み出しているアイドル発掘番組であるけれど、その予選には歌唱力のカケラもなく、 番組の主旨を全く理解していないような人々が多数参加しており、 今回を含めた毎シーズンの初回4回のエピソードは、そんな とんでもなく歌が下手であったり、ちょっと勘違いしているような予選参加者達の オーディション場面を集めた爆笑エピソードとなっているのである。 そんな中で、1度見たら 誰もが忘れられないパフォーマンスを披露したのが ウイリアム・ハンで、通常ならば歌が下手な参加者は途中で審査員にストップを掛けられるけれど、 彼の場合、審査員が止めることも忘れて爆笑していたため、フル・コーラスを 歌い終えた珍しい落選者でもある。
彼が歌ったのはリッキー・マーティンのヒット曲「シー・バング/ She Bang」であったけれど、 その音程の悪さ、リズム感の無さ、にも関わらず振り付け入りで、羞恥心もなく、 楽しそうに歌う彼の姿は、アメリカ中を大爆笑させたのは言うまでも無いけれど、 審査員に酷評されても、彼は悪びれたり、怒ったりせずに(「アメリカン・アイドル」の落選者は、 時に彼らをけなした審査員に激怒する傾向がある)、「自分は一生懸命やっただけ」と 淡々と語っていたりする。
この姿に好感を持ったアメリカ人は多かったようで、その放映から24時間後には ウイリアム・ハン・ドット・コムというファン・サイトがインターネット上にオープンし、 彼はありとあらゆるトークショーやニュース・メディアに「シー・バング・ガイ」として登場。 さらにはバック・ダンサーを付けて、様々なイベントでゲスト・パフォーマンスをするようにもなり、 今やアメリカでは「シー・バング」と言えばリッキー・マーティンのオリジナルではなく、 彼のバージョンのことを意味するほどになってしまった。
先週末には、もう直ぐ発売される彼のデビューCDのプロモーションのためのコンサートを行い、 リッキー・マーティンを意識したプロモーション・ビデオも撮影し、 5月には彼のキャラクターのビデオ・ゲームの発売も決定しているという。 彼のファンサイトには、彼に結婚や交際を申し込む女性ファンからのメッセージが多数寄せられているというけれど、 彼自身はメディアに対しては非常にぎこちなく、「自分がどうしてこんなに注目されるのか分からない」と ピュアに語っていたりする。

ウイリアム・ハンの「15ミニッツ・オブ・フェイム」は彼にとっては全く予期せぬ形で訪れたけれど、 自らそれをクリエイトしようとしたのが、今週発売になった著書「ジ・アザー・マン」で、 故JFKジュニア夫人、キャロリン・ビセット・ケネディとの不倫の詳細を、 自ら明らかにしたマイケル・バーギンである。
彼は以前キャロリンがパブリシストとして働いていたカルバン・クラインの アンダーウェア・モデルとして起用された際にキャロリンと交際を始め、 彼女がJFKジュニアと結婚してからも、不倫の関係を続けていたこと、 キャロリンが彼の子供を中絶したこと等をその本の中で暴露している。 マイケル・バーギンは、カルバンのモデルを務めた後、 TV番組「ベイ・ウォッチ」に出演していたこともあるけれど、数年前に番組が終了してからは、 人目に触れるような仕事はしておらず、今回の著書は 彼が持っている 唯一のメディアが飛び付いてくれそうな切り札を使って、 「15ミニッツ・オブ・フェイム」をクリエイトしようと試みたようにしか見えないものであった。
でもそんなことに 今は亡きJFKジュニア夫人であるキャロリンを利用しようとすれば、 当然のことながらバックラッシュが起こるのも仕方が無い訳で、 彼は様々なメディアのインタビューに登場する度に、「何故、今更こんな本を書く必要があったのか?」 といった質問を受け、「これは自分のキャロリンに対する思いにけじめをつけるために書いた本だ」、 「自分には一生働かなくて良いほどの財産があるから、お金目当てや、俳優としてのキャリアを切り開くためにしたことではない。」などと 言い訳をしていたけれど、この手の質問をされた時は明らかに憮然とした表情になったし、 キャロリンについて語る時は、いかにもリハーサルを重ねたという感じで 白々しい涙を見せる等、 「15ミニッツ」を必死で模索している感じは否めなかった。
逆に言うならば、それがあまりに見え見えであったために、 彼をバッシングする声が多かったとも言うことができると思う。

さらに今週、本当に15分程度の「15ミニッツ・オブ・フェイム」を獲得したのは、 フロリダに住む13歳の少年、テイラー・クロッティである。
彼が今週突如有名になったのは、CBSが放映する夜のトーク・ショー「レイト・ショー」が ジョージ・ブッシュ大統領がスピーチをしている隣で、何度も大あくびをして、 時計を見たり、首をひねったり、伸びをしたりして、 いかにも退屈そうにしている彼の姿(写真右)を放映したのがきっかけであった。 ブッシュ大統領と言えばスピーチが下手なことで有名であるから、彼のスピーチを聞いていれば、 誰でもあくびをしたり、時計を見たくなるものではあるけれど、 テイラー少年は それをよりによって大統領のすぐ隣でやってのけた訳で、 この様子は やはりアメリカ中を大爆笑させることになった。
さらにこの1件にニュース性を加えることになったのは、 CNNがこの映像を「レイト・ショー」がクリエイトしたデジタル合成画像だと 繰り返し報道し、その後、それが間違いであったとして CBSと「レイト・ショー」に対して謝罪をしたことで、 こうして「テイラー少年のあくび映像」は、全米のニュースで放映されることになった。
今年は大統領選の年でもあるので、ホワイト・ハウス側はこんな些細な事に対しても、 コメントをしており、それによれば「テイラー少年は、大統領に会うために 夜更かしをして並んでいたので、スピーチの段階になったら眠たくなってしまっただけ」 なのだそうで、ブッシュ大統領自身もテイラー少年に対して「君くらいの年齢であれば、 私のスピーチに退屈してしまうのも無理はない」という内容の短い手紙を送っている。
彼は、金曜には「レイト・ショー」にゲスト出演し、ニュース番組では 「アメリカで最も有名なあくび人」などとニックネームされるようになっていた。

でも、ここ2週間の「15ミニッツ・オブ・フェイム」の中で、最も物議を醸してたのは、 エンロンと並ぶアメリカ最大のコーポレート・スキャンダル、タイコ・インターナショナルの CEO、デニス・コズロウスキーの裁判をミストライアル、すなわち裁判不成立に導いた 陪審員、ルース・ベネット・ジョーダンである。
この裁判は、600億円以上の投資家達の資金を 15000ドル(約158万円)の傘立てや、 6000ドル(約63万円)のシャワー・カーテン、1億円のバースデー・パーティー等に使って 贅沢三昧をしていた被告人、デニス・コズロウスキーに対するもので、 誰がどう見ても有罪でしかない罪を、検察側が12億円以上の費用を投じた6ヶ月間の裁判で立証し、 あとは陪審員が評決を下すだけという状態であったにも関わらず、 たった1人の79歳の女性が原因で、不成立になったというもの。
この女性は、経済的には比較的裕福で、50代になってから弁護士の資格を取ったと言われているけれど、 陪審員席から、被告席に向って指でOKサインを出したというジェスチャーが問題になり、 それと同時に彼女1人が コズロウスキー被告の有罪に反対していたために審議が滞っていることが 盛んにメディアで報道され始めたのが先週の事であった。 その後、ウォールストリート・ジャーナルのオンライン版、ニューヨーク・ポスト紙が 未だ裁判中にも関わらず、この陪審員の本名を公開するという異例中の異例の報道を行い、 この辺りからミストライアルの可能性が極めて濃厚になってきたと言われていたけれど、 最終的に判事がミストライアルを決断するに至ったのは、この女性のもとに 強迫めいた手紙が寄せられ、正当な裁きを下すのに支障をきたすと判断されたためであったという。
もちろんミストライアルというのは、裁判のやり直しをする訳で、無罪判決ではないけれど、 世の中の一般的な見方で「ミストライアル」と言えば、「被告側の勝利」と見なされる訳で、 日曜のニューヨーク・ポスト紙には、裁判が不成立になって、レストランで優雅に食事を楽しむ コズロウスキー氏とその家族のスナップが掲載されていた。
このルース・ベネット・ジョーダンという謎の女性が、どうして会社への出資金を 湯水のように使って贅沢をしていた被告人に これだけ肩入れをしたのかは不明であるけれど、 彼女を良く知る友人は、ジョーダン女史が「かなりのパラノイア」であること、 自分に法律の知識があるので、人を制して自分の意見を押し付けるタイプである事を語っている。
裁判不成立が決定後、裁判所から出てきたジョーダン女史は当然のことながら、報道陣に取り囲まれることになったけれど、 インターネット上では、彼女に対する非難の嵐が巻き起こっており、 その反面、ニューヨーク・ニューズデイ紙では「Don't Blame Her(彼女を責めるべきではない)」といった 擁護のヘッドラインも見られている。
ジョーダン女史は、被告人側とは一切 面識や関係もなく、今回の裁判の評決に非協力的であったとしても、 決してそれは罪でも、違法行為でも無いけれど、 多くの人々が指摘しているのが、ジョーダン女史がそのような態度を取ったのは、 「15ミニッツ・オブ・フェイム」が欲しかったからだということ。
もしそれが本当であったら、半年の月日と12億円の税金を使った裁判が 彼女の15分間のために1からやり直しになるのは、 あまりに情けないと言えるし、陪審員制度の問題点を露呈することにもなったと思う。

さて、この高齢のジョーダン女史は別として、通常「15ミニッツ・オブ・フェイム」を獲得したのが女性である場合、 必ず浮上してくるのが プレイボーイ誌でヌードになるというオファーである。
実際、今1番人気の高いリアリティTV「アプレンティス」に出演した女性達にも、 「25万ドル(約2630万円)でヌードにならないか?」というオファーがプレイボーイ誌から寄せられているという。 ちなみに、この25万ドルという金額は「アプレンティス」で勝ち残って、 ドナルド・トランプの経営する会社の社長に就任して受け取る年収とほぼ同額であるという。 すなわち女性達は、数日のフォト・セッションさえこなせば、1年間働くことなくして同じ金額が得ることが出来る訳である。
今のところは、このオファーを受ける女性は出ていないとのことだけれど、 既に他のリアリティTVに出演した女性がヌードになった例はいくつも見られているのは事実である。
ではヌードになれないほど太っている女性はどうなるかといえば、 ダイエット食品のスポークス・ウーマンに起用されるケースがあるけれど、 そうやって必死に痩せた後には、身体に自信が出てきたこともあって、 やはりヌードになったりするものである。
残念ながら男性には、この「ヌード」という最後の切り札が無いだけに、 「15ミニッツ・オブ・フェイム」の「にわかセレブリティ」ステイタスを 上手く活用しないと、あっという間に落ちぶれて、 酒気帯び運転で逮捕されたニュースくらいでしか メディアに名前が登場しなくなってしまうのである。






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