Apr. 12 〜 Apr. 18 2004




Power of Full Lips

美容整形を受けるアメリカ女性の間では、以前から特定のセレブリティの顔や、 顔のパーツにして欲しいというリクエストが多いというけれど、 現在、圧倒的に多いのが「アンジェリーナ・ジョリーのような唇になりたい」というリクエストだそうである。
確かにアンジェリーナ・ジョリーは今ハリウッドで最もセクシーと言われるセレブリティで、 アメリカでは彼女に対する誉め言葉で、常に真っ先に登場するのが「セクシーな唇」というものである。
私にとって、アメリカに来てから価値観が変わったことの1つが、唇のサイズについてで、 日本に居た頃は、大きな口、厚めの唇というのは女性にとってマイナス・イメージだと思っていたのである。 もちろん日本でも「唇が薄い人は、幸が薄い」などと言われていたりするけれど、 理想的なのは「バラの花びらのような唇」で、口が大きいと「男を食い殺す女」に見られるのだと信じていたりした。
ところがアメリカに来て見ると、ふっくらした大きめの唇は、セクシーさやゴージャスさの象徴で、 情熱や情の厚さを意味する上に、Good Kisserに見えるということで、 自分の中でも「唇はたっぷりしていた方が魅力的」という価値観に変わってから久しい状態だった。
それでも私が、唇というものが 女性にとって どれだけ大切なパーツであるかを思い知らされたのは、 つい最近のことで、そのきっかけになったのが、プラスティック・サージョンに薦められて行ったラディアンスの注入だった。

実は、私は高校時代に前歯を何本も折る大怪我をしており、その時に唇の内側を 弧を描くように縫っていたのである。このステッチのせいで、笑ったりすると、上唇の形が歪んで見えることがあり、 このことは日本に居た時から、メークアップ・アーティストに指摘されていたし、 アメリカに来てからも歯科医やメークアップ・アーティストに 度々指摘を受けていた。
それでも、唇は基本的には まともな形をしているし、普通の人なら長く付き合っても 気が付かない程度のことだったので、私自身も殆どそのことを忘れて暮らしているような状態だったのである。
ところが未だ実現しないケミカル・ピーリングについてプラスティック・サージョンと 話をしていた際、彼がピーリングの説明を中断して訊いて来たのが 「その唇どうしたの?」ということ。 私が事情を説明すると、「ケミカル・ピーリングよりも唇を直す方が先決」ということになって、 昨年9月にFDA(日本で言う厚生省)の認可を受けたばかりの ラディアンスを注入することになったのである。
ドクターによれば、上唇の内側の傷に引っ張られているせいで、私の上唇は本来のサイズよりも小さくなっているそうで、 笑った時や口を大きく横に開いた時に、唇が歪んで見えているとのことだった。
ラディアンスについてはCUBE New Yorkの記事でもご紹介しているけれど、 人間の骨や歯に含まれるのと同じカルシウムがその成分。その注入エリアがラディアンスに反応して 細胞のネットワークを構築するので、それによって肌や唇がふっくらとリフトされるのがその効果である。 お値段は非常に高いものの、長期的なリスクが無く、シリコンのように突然 落ちてきたりしないこと、加えてその効果が2年以上というのも魅力だった。
私は、心の中でちょっぴり唇の形がコンプレックスになっていたこともあったし、 何より「怪我の前の、本来の上唇のサイズを取り戻す」というコンセプトに妙に納得して、 ドクターの薦め通り、ラディアンスの注入を受けることにしたのである。

注射は2回に分けて行われて、先ず1回目は笑うと歪む部分のみに少量を注入することになった。 この時は、麻酔が十分に効いていたし、ごく少量の注入だったので、それほど痛みはなく、 唇が腫れることもなく、ちょっとだけ上唇の印象が変わった程度の変化だった。
そしてその3週間後、2度目の注入を受けることになったけれど、 この時は、1回目でそれほど痛みが無かったことで 私がたかをくくっていたことに加えて、 麻酔が完全に効き始める前に注射が始まってしまったこともあり、 地獄のような痛みを経験することになってしまった。
「上唇への注入」と言っても、1箇所から行う訳ではなく、数個所に注射針を突き刺す訳で、 その都度、針の刺さるシャープな痛みと、ラディアンスが注入される何とも表現し難い、 特殊な痛みを味わうことになり、今から思い出しても寒気がするほどの激痛体験だったのである。
この注射による腫れで上唇は下唇の2倍以上に膨れ上がっていて、 鏡を見るうちに、ふと思い出したのが、高校時代に怪我をした時も、やはりこんな 分厚く腫れた口びるをしていたことだった。 でも今回は事故ではなくて、自分で決断して、しかもお金まで払ってこんな分厚い唇をしていた訳で、 よく考えてみれば ちょっと滑稽に感じられたのは事実である。
ラディアンスやボトックスは、ランチタイムに注射を受けて、 午後から また仕事に戻れることで知られるトリートメントであるため、 注射を午前中に受けた私は、この日の午後もいつも通り仕事をしていたけれど、 麻酔のせいで、ろくに喋れないし、上唇が熱を持っている上にパンパンに張っていて、 コップから水を飲もうとすれば横からこぼれてくるし、口をつぼめることが出来ないのでストローも使えないという状態で、 とにかくこの日は1日散々な思いをすることになってしまった。

しかも私にとっての悪夢は、その腫れが翌日になっても、さほど引かなかったことで、 上唇は分厚い上に、横から見るとドナルド・ダックのくちばしのように突き出ていた。 この日は1日中出かけることになっていたので、何とか唇をメークでカモフラージュしなければと思い、 上唇の輪郭をコンシーラーで書いて、小さく見せる一方で、下唇をリップ・ペンシルで大きく描き、 人間の口らしいバランスを取ったけれど、 頭の中では「人から唇について訊かれたら何て答えよう…」と考え続けている状態だった。
ところがこの日出会った人々は、日頃から仕事で顔を合わせているにも関わらず、 私の唇について質問をしてくるどころか、全く気付いておらず、そのことは彼らの顔の表情からも 察せられることだった。またその後 一緒にディナーにいった友人達も、 私が自分でラディアンス注入のことを話すまでは、私の唇の変化には全然気が付いていなかったそうで、 如何に人間が他人の顔に関心を示していないかを、思い知らされることになってしまった。
でも、ラディアンス注入のことを知ってから 私の腫れ上がった唇を見た友人達の リアクションは思いのほかポジティブで、「その方が断然セクシー!」 などと言ってくれるので、だんだん「分厚い唇の自分も悪くないかもしれない!」と思えるようになってしまった。
また、その腫れが残っている間は、自分でもビックリするほど男性にモテて、 何人からも声を掛けられたり、名刺をもらったりしたし、 友人とブランチをしている際に、シャンペンをご馳走してくれる男性まで現れて、 友人が「私も唇に注射したい」などと言い出すほどだった。 男性達が判で付いたように言ってきたのが「You Have Very Sexy Lips」という誉め言葉で、 私はこの時、この国で唇というものが女性の魅力を語る際に如何に重要なパーツであるかを痛感させられることになってしまった。
別の見方をすれば、唇がちょっと厚くなっただけで、こんなにモテるというのが非常に不思議でもあったけれど、 この腫れた唇であまりにチヤホヤされたせいで、 腫れが引いて行くと同時に、だんだん自分の唇に物足りなさを感じるようになって来てしまった。
そこで、注射の経過を見せるためにプラスティック・サージョンのところに出向いた際、 「私の唇、もうちょっと分厚い方が良くありません?」などとドクターに打診してみたけれど、 彼は私の唇の出来に非常に満足していて、「これ以上注入すると、 君の本来の唇の形と違ってしまうことになるよ。」とクギを刺されることになってしまった。
考えてみれば、周囲に「良くなったみたい!」と言われるままに、 顔を作り変えていたら、終いには、というかお金が続けば マイケル・ジャクソンみたいに 全身作り物の不気味な人間になってしまう訳で、私は直ぐに考えを改めたけれど、 でもこの唇が腫れていた期間のモテ方が尋常ではなかったので、今は 唇をふっくらさせるプロダクトを、片っ端からリサーチしている最中である。

私の個人的な意見では、日本人というのは二重瞼に対するコンプレックスが非常に大きいために、 顔の中では圧倒的に目に関心を注ぐ傾向があり、唇というパーツを軽視しがちである。
でもアメリカのカルチャーでは、口元というのは非常に大切で、 唇だけでなく、歯並びや、歯の白さにまでにこだわるのはごく一般的なことである。 だからアメリカに来たいとか、アメリカ人にモテたいと思うのであれば、 目を二重にするよりも、歯を矯正する方を私はお薦めしたいと思っている。

さて冒頭で、アメリカ人女性がアンジェリーナ・ジョリーの唇に憧れていることを 述べたけれど、ビューティー誌のアンケートによれば、アメリカ人女性が理想とするボディ・パーツは、 二コル・キッドマンの脚、ジェニファー・ロペスのヒップ、ブリットニー・スピアーズの腹部、 ハリー・ベリーのバスト、ジェニファー・アニストンの腕なのだそうである。





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