Apr. 19 〜 Apr. 25 2004




Price Gose Up, Way Up!

2月の末に自分個人の税金の申告準備のためにアカウンタント(会計士)のところに行ったところ、 彼が私の申告ファイルを見て言ったのが「君は今のところ、 昨年と全く同額の給与を支払われている唯一のクライアントだ」ということ。
私は自分に対してCUBE New Yorkから支払う給与は年俸制にしていて、 毎年、年末になってからその年の自分の給与を決めることにしているけれど、 たまたま昨年末は物凄く忙しくて、自分の給与額のことなんて考えている時間が無かったし、 よく調べてみると、タクシー代やリサーチ代で、会社のバジェットをかなり使っていたので、 そのことを反省して、自分の給与を増やさないことに決めたのだった。 加えて、下手に給与を増やしてしまうと、税率がアップしてしまうので、 自分の収入はさほど増えないまま、税金でもって行かれてしまうことにもなりかねない訳で、 自分の給与を決めるというのはさほど簡単なことではなかったりするのである。
アカウンタントによれば、彼のクライアントは皆、2003年の給与が2002年を2桁%以上 上回っているそうで、唯一年収が減っていたのは、昨年中にレイオフされて、 仕事を変えたクライアントだったという。

アメリカは失業問題が益々深刻化していると言われているけれど、 アカウンタントの言葉通り、ある程度の仕事に就いている人々の収入は 昨年から再びアップしており、90年代後半の好況期で開き始めた貧富の差が、 ここへ来てさらに開いているというのが一般的な見方である。
だからアメリカの景気が回復したのか、していないのかは全く定かではないものの、 ブランド物や、高額不動産等のラグジュアリー・マーケットは、 再びブームを迎えており、それを反映して強気のプライスが付けられているために、 高いものが益々高くなっているというのが今シーズンである。
中でも、ブランド物のファッションの価格の上昇ぶりについては、ニューヨーク・タイムズ等の メディアも既に着眼して記事にしていたりするけれど、消費者としての私の印象では 昨年まで300ドルで買えていたものは400ドルになり、 400ドル程度で買えていたものは530ドルになり、550ドルで買えていたものは 680ドルくらいのお値段に跳ね上がっているのである。
私は日頃から お金の額を「マノーロが何足買えるか」で表現するクセがあるけれど、 昨年までは3000ドルを「マノーロ6足」と表現していたところを、 今シーズンに入ってからは、この値上げを反映して「マノーロ5足」に訂正することになってしまっている。

服やシューズもさることながら、バッグのお値段も今シーズンはグッとアップしていて、 昨シーズンまで750〜900ドル程度で販売されていたバッグは、今シーズンは1000〜1250ドルの 価格が付けられているようである。
また、ファッション誌がこぞってフィーチャーするような 各ブランドのシーズンの「目玉バッグ」になると、 大きさや素材によるものの、2000〜6000ドルの価格が付けられており、 先日一緒に買い物をしていた友人は、最新のヴィトンのバッグを手に持ちながらも、 「この値段に手が届かないお客様は コーチのバッグでもお買い求め下さい、 と言わんばかりじゃない?」などと、その当たり前のように高い値段に腹を立てていた。
ファッション業界のアナリストによれば、 景気が落ち込んで一時業績が悪化していたラグジュアリアス・ブランドであるけれど、 現在それが持ち直しを見せているのは、好況時代に不特定多数であった客層が、 景気低迷後は特定少数になって、その小さくなったマーケットがせっせとブランド物、しかも 非常に高額なアイテムを喜んで購入しているからであるという。 この傾向はブランド側にとっても客層とブランド・イメージがコントロール出来るだけに 歓迎されるところで、ラグジュリアス・ブランドが 上質でスタイリッシュなアイテムを高額で 売り出すこの傾向は 今年の秋冬シーズンも顕著なのである。

この「高くても売れる」という市場動向のせいで、 今シーズンは、「容赦なく高いアイテム」というのもどんどん登場していたりする。
先日ドルチェ&ガッバーナのビーズが全体にあしらわれたドレスを見て、 「重たそうだけれど素敵!」などと思いながら、値札をチェックしたところ、「$220」までが 見えたので、てっきり「2200ドル」だと思い込み、「セールになって40%オフになったら…」と 頭の中で計算していたけれど、値札全体をよく見たら、 予想よりも「0」がもう1つ余分に現れて、2万2000ドル(日本円で240万円程度)であることに驚かされてしまった。 でもこのドレスは、夏のリゾートであればカクテルドレスに使えるけれど、 ブラック・タイのパーティーに着ていけるようなフォーマルなカクテルドレスではなく、 どうひいき目に見ても5000ドル程度にしか見えない代物だったのは確かである。
そうかと思えば、ブルーノ・フリゾーニがデザインする今シーズンのロジャー・ヴィヴィエールからは、 7400ドルのシルク・サテンのパンプス(写真左)が登場しており、 私はこれにも度肝を抜かれてしまった。 宝石入りのシューズというのは別にして、私がこれまでの生涯で見た最も高額なシューズは マノーロ・ブラーニックの総刺繍のロング・ブーツで6800ドル(約70万円)というものだった。 でも、その価格はこのパンプスに比べれば、遥かに適性と言えるもので、 もしマノーロのブーツが適性価格であるとするならば、 このパンプスは2500ドル程度であるべき というのが私の値踏みであるけれど、 こういう手の届かない価格の商品が堂々と登場しているのが今シーズンなのである。

もちろんブランド・ビジネスにとっては、ブランドのイメージに憧れて、財布やキーホールダーや、 フレグランスを購入してくれる一般大衆の存在は非常に大切な訳で、 そうした一般大衆からの売り上げが、業績の重要なパートを占めているのは言うまでも無い事である。
だから今シーズンもプレーンで安価な普及アイテムは、昨年と変わりない価格で販売されているけれど、 トレンディでファッショナブルなアイテムにおける今シーズンの価格設定は、 言ってみれば、同じ飛行機に乗っている乗客をビジネス・クラスと エコノミー・クラスに分けるカーテンのようなもので、 「高い金額を払えるお客様はこちらをどうぞ!」という暗黙のメッセージが 込められているようにも感じられてしまうのである。

こうした一流ブランドが、高めの価格設定をしてくると、 当然その余波はその下のコンテンポラリー・デザイナーのところにも押し寄せてくる訳で、 キャサリーン・マランドリーノ、ダイアン・フォン・ファーステンバーグ、 べッツィー・ジョンソン、アナ・スイといったブランドの 商品も昨年より30%前後アップしているのが実情である。
でも、この価格帯の消費者というのは「いくら出しても欲しいものは欲しい」という客層では無い上に、 これらのブランドのクリエーションだと、生活を省みないほどに購買欲をそそられるものは さほど無いこともあって、こうした価格上昇は「買えないものは、買えない」という リアクションをもたらしているようである。 だから、今シーズンのコンテンポラリー・デザイナーの商品は、売れる物と売れない物が かなりはっきりしているようで、その結果、売れないアイテムは シーズンの途中にも関わらず30%オフのお値段、すなわち昨年並みの価格に下げられてから 売れて行くという状況になっているのである。

でも考えてみると、値上がりしているのはファッションだけでなく、 3月からはクリーム・ドゥ・ラ・メールも、20%近く値を上げたし、 もっと身近なところでは、日頃購入している食料品も、 昨今のガソリンの値上がりで輸送費が上がっているため、価格が上昇しているといい、 さらに、今後のニューヨークではタクシーの値上げも控えている訳である。
私はアカウンタントから「物価の上昇分くらいは給与を上げるように」とのアドバイスを受けたけれど、 確かにこんな風に何でもかんでも値段が上がってくると、給料据え置きではやっていられないと感じるようになったのは事実である。
自分の給与をファッションの物価上昇分に見合うほど上げるには かなり働かなければならないけれど、 「欲しいものが高いから頑張って働く」方が、「給料が安いから、安い物で済ませる」よりも 健全な経済活動であるし、いかにもニューヨーク的な上昇志向であると私は考えているのである。



Catch of the Week No.3 Apr. : 4月 第3週


Catch of the Week No.2 Apr. : 4月 第2週


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Catch of the Week No.4 Mar. : 3月 第4週