` CUBE New York Catch of the Week




May 12 〜 May 18 2003




シリアス・ショッパー

私は子供の頃からずっと両親に「好みがうるさい」と言われて育ってきたけれど、 確かに世間一般の人に比べて、自分は物質的な妥協をしない方だと思っている。
そもそも私は、人でも物でも、自分が愛情が抱ける存在に囲まれて人生を送りたいと思っているし、 それが幸せを運んで来ると信じているので、服でも靴でも、マグカップ1つでも愛情が注げるものでないと決して購入しないのである。 その場凌ぎで適当な物を購入すると、結局それが嫌いで買い直すことになったりするので、 お金の無駄を防ぐためにも、買い物にはかなり慎重になるのである。
この慎重かつシリアスな購買習性のために 私の人生が必要以上に苦労に満ちたものになっているのは紛れもない事実で、 第一、買い物には時間が掛かるし、欲しいものが見つかるまで店を何軒も 渡り歩くことになったりもするし、同じ機能のものでも 色やデザインにこだわるがために、 高い方を購入することになったりもする。
また、私は500ドルを超える買い物に関しては 何かテレパシーというか、 買おうとしているものとの不思議な縁や、これを持っていたら幸せになるような予感を感じないと、 実用だけでは購入しないのをポリシーとしているけれど、 経験上、本当に縁がある物というのは、そこにスポットライトが当たったように、 探すまでもなく目に飛び込んでくるもので、そういうものに出会った時は、 「これが運命なんだ」と思って、無理をしてでも買うようにしていたりする。
さらに個人的に、人でも物でも第一印象でピンと来たり、しっくりするものがあると、 上手く、長く付き合っていける傾向にあるので、 第一印象というのは買い物をする際も 非常に重んじている要素である。
私の知人の中には、私がどうしてこんなに買い物にこだわるのか、 自分の所有物にこだわるのか、理解に苦しむ人も居るようだけれど、 身につけるもの、部屋の中にあって毎日眺めて暮らすもの、毎日使うものによって、 人がどれだけ影響を受けているかは、決して過小評価すべきではないと思う。
「値段が安いし、探すのが面倒だから、気に入らないけれど、まぁいいや」 という気持ちでばかり買い物をしていたら、自分に愛情が持てない、適当な人間になってしまうと思うし、 「面倒だから…、気に入らないけれど…、まぁいいや」というような人生を送ることになってしまうというのが私の考えである。
時々、自分の着ているものや、部屋の中のものを「これ、気に入らないの」等とこぼしている人が居るけれど、 本当にそう感じている場合、気に入らない物を着たり、気に入らないものと一緒に暮らすのが 目に見えないストレスになっているのは自覚するべきだと思う。 例えば、会社の宣伝文句が入ったマグ・カップを「丁度もらったから、宣伝がみっともないけれど…」等と思いながら 使っている人が居たら、それをシンプルな真っ白なマグ・カップに替えただけで、 気分が良くなる上に、コーヒーや紅茶の味まで良くなってくるはずだし、 自分の気に入っている服を着ている時は、知らず知らずのうちに自分に自信が持てたり、 気持ちが高揚したりするものである。
自分の嫌いな人が幸運を運んでこないのと同様に、自分が嫌いだと思って使っている物や、着ている物、 部屋の中に置いている物が幸運を運んで来ることも無い訳で、 妥協して気に入らないものを買ったり、使ったりすることは、少しずつ 不幸の種を植えているようなものであったりもする。
その意味で、私は気に入ったものを買いたいという物欲は、ある意味で幸福欲だと思っているし、 気に入ったものに囲まれて生きている、気に入ったものを着ている、ということは 既にそれによって自分を幸せにしているだけでなく、自分の中から良い因子を引き出して、 更にそれが自分の周囲から良い因子を引き付けてくれるものと考えている。
たった一度の人生を過ごすなら、こうしたポジティブなエネルギーを感じながら生きて行きたいと思うのが自然な訳で、 私がショッピングにシリアスであるというのは、人生に対してもシリアスである証だと思って、自負することにしている。



引越しの悪夢

HPでもお知らせさせていただいたように、金曜日はCUBE New Yorkがオフィスを引越していたけれど、 私にとって引越しほどプレッシャーを感じるものはなかったりする。 だから、今週は とにかく引越しのことで頭が一杯だった上に、 新聞や雑誌の配達の住所変更、郵便物の転送手続き等、取引先への通達等、やらなければならないことが沢山あって、睡眠時間がかなり短くなってしまった。
私はNYに来てから14年間に4回引越しをしていて、オフィスとして引越しをするのはこれが2度目であるけれど、 何回やっても引越しというのは非常に嫌なものである。
引越し後の荷開きを少しでも楽にすることを考えながらパッキングをするのも大変であるし、 荷物が多いだけに、それを運び出したり、運び入れたりするのにも 大変な思いをすることになる。 また、どんなに注意してパッキングをしても、荷開きをする時点では、必要なものは探しても出てこないし、 先に出てきたものでも、それが要る時になれば見つからないというのが常である。
荷開きをして、収納を開始すると、予想していたよりも物が入らない等の誤算も生じてくるし、 それ以外にも実際に荷物を運び込んでみないと分からない問題が沢山あるのも事実である。 でもそうした問題を放置しておく訳には行かないから、机などの家具の配置を考え直したり、 棚の設置を考えたりして、「引っ越した甲斐があった」と言える状態になるには、更に時間が掛かることになる。
私は幸い、「引っ越すんじゃなかった」という思いをしたことは無いけれど、 私のかつての友人には、昼間にアパートを見に行って、家賃も安く、気に入ったので引っ越したところ、 階下がナイトクラブで、「夜になると煩くて眠れない」という悪夢を経験している人も居る。 どうしてナイト・クラブがあるのに気がつかないのか不思議に思うかもしれないけれど、 NYのナイト・クラブは看板が出ていなくて、昼間は撤退後の店舗のように見えるところが非常に多いのである。
また引っ越した直後に、隣にドーナツ・ショップが出来てしまい、1日中、油と砂糖が混じったような 匂いを嗅がされる上に、部屋の中や服等もドーナツ臭くなってしまったという話もあれば、 荷開きをして食器棚にお皿やカップを収納した途端に、 棚が落ちて食器の殆どが割れてしまい、ランドロード(家主)に文句を言ったところ、 「このアパートには皿を使うような人間はもう何年も住んだことが無い(すなわち毎日外食かテイク・アウトをしているという意味)」 とあっさり交わされた友人も居る。
引越しにまつわるトラブルは必ずしも引越し後に起こるとは限らない。 引越し中の荷物の破損や紛失はもちろんのこと、アメリカで多いのが悪徳な引越し業者に 法外な料金を押し付けられるというものである。 こうした引越し業者はトラックに荷物を運ぶ作業を始めてから、契約書を取り出してくるとのことで、 見積もりよりもずっと高額なフィーを提示し、その上保険に入ることを強要して、 保険料もしっかり取っていくというのがやり口である。 客側が業者の言うことを聞かなければならないのは、荷物を運んでもらわなければ困る上に、 荷物が「人質」として業者に握られているためである。
私も2回目に引越しをした際に依頼した引越し業者がこの手に近い感じであったけれど、 当時の私の荷物は、大きい家具が少なかったこと、そして引越しを手伝ってくれる友人が遅れていて、 契約書を提示された時に私1人であったため、業者の人間も押し付けを緩めざるを得ない状態だった。 女性1人だと、こうした業者にナメラレルと思う方も多いかもしれないけれど、 もし私にルームメイトや夫が居て、2人でその場に居たとしたら、先方はもっと強い態度で脅してきたと思う。 でも私1人で「見積もり通りにしかお金を用意していなかったんです」と、何を説明されてもケロッとしていたので、 保険に入らずに済ませてくれたし、「こんな金額じゃ荷物を運び出すところまでで、運び入れるところまでは 払われてない」等と冗談めかしに文句を言いながらも、とりあえず荷物を運んでくれた。 でも決して楽な交渉ではなかったし、この時に知らない引越し業者を雇う怖さを知らされた感じだった。
引っ越したら、引越したで、今度は電話やケーブルモデムの接続のために業者を呼ぶことになるけれど、 今回の引越しで冷や汗ものだったのが、ケーブル・モデムの接続。 業者がやってきて、チェックをしたところ「ワイヤーの1本が死んでいるから、 モデムは使えても、かなりスピードが遅くなる」と言われ、目の前が真っ暗になってしまった。 「そんなことレンタル・オフィスからは知らされてない」と言うと「入居前にそんなこと教えてくれるはずは無いよ」と ケーブル会社のお兄さんは もっともな返事をしてくれて、「じゃあ、どうしたら良いの?」と訊くと 「引っ越すしかないなぁ…」と散々苦労して引っ越して来た翌日に 1番聞きたくないことを言われてしまった。
でも結局は死んでいるケーブルを補うための機器を取り付けてもらい、 これまで通りのハイスピード・インターネット・アクセスは無事に確保されることになった。 ケーブル会社のお兄さんは2人がかりで4時間格闘することになり、 終わった時に「今までで最大の大仕事だった」と言われてしまったけれど、 もしこれが原因で、また引っ越すことになっていたら、私はきっと今ごろノイローゼになっていたと思う。






Catch of the Week No.2 May : 5月 第2週


Catch of the Week No.1 May : 5月 第1週


Catch of the Week No.4 Apr.: 4月 第4週


Catch of the Week No.3 Apr.: 4月 第3週