May. 10 〜 May. 16 2004




男性ストリッパーに見たリアリティ

先週末に、私の友人のパースデーを祝うために女友達8人で出掛けたのが、 「ハンク・マニア」という男性ストリップ・クラブ。
このクラブはニューヨークでは、バチェラレット・パーティーのメッカとして 知られる場所のようで、これは結婚を直前に控えた女性を囲んで 「独身時代最後の、ハメを外すパーティー」として女友達が企画するもの。 でも今回の私たちのように、バースデーを祝うために訪れるグループも少なくないようで、 21歳以上の女性のみが入場できるクラブになっている。
男性ストリップ・クラブと言えば、かつてNYで最も有名だったのは「チッペンデール」というクラブだけど、 ここが数年前にクローズしてしまってからは、この「ハンク・マニア」が 男性ストリッパーのパフォーマンスを楽しめる数少ないスポットになっているようなのである。
実は私は、この「チッペンデール」にはかつて1度連れて行ってもらったことがあり、 そのパフォーマンスは、ピチピチの黒タイツを履いて、上半身は首にシャツの衿と蝶タイだけを 身に着けたダンサー達が、アクロバティックでユーモラスなダンスを見せるといった 「ストリップ」というよりは、むしろエンターテイメントという感じであったと記憶している。 実際のところ、ここニューヨークでは、女性のストリップでも男性のストリップでも 全裸は法律で禁止されいることもあり、特に女性向けの男性ストリップというのは ある程度の品性が保たれている場合が多かったのである。
でも、そう思って出掛けた「ハンク・マニア」は、私の想像とは全く似て非なるクラブだった。

先ず出かけてみると、そこはかなりひなびた場所で、高台のステージがある訳ではなく、 デパートで行われるフロア・ファッション・ショーの会場のように 観客席がU字型に設けられていて、後部席が前の列より1段高くなっているというもの。
パフォーマンスが始まるまで、観客の女性達はドリンクをオーダーして、記念撮影をしたり、 ストリッパーにあげるチップを両替して待っていることになるけれど、 このチップというのは1枚1ドルの「ハンク・ビル」というもので、1ドル札にそっくりな 言わばオモチャ紙幣である。 これは本物の紙幣、特に新札をチップとしてパンツのウエスト等に入れられると、角が当たって 痛いということもあるけれど、基本的には「ハンク・ビル」を店側が1度回収することによって、 ダンサーにチップを公平に分けるためのシステムのようである。加えて、ハンク・ビルをいくら両替したかによって 「どの客がどの程度お金を落としていく気があるか」が 事前に掴める訳であるから、 ストリッパー達は、沢山両替したグループに対して、余分にサービスをして、 効率良くチップを回収することも出来る訳である。

パフォーマンスの直前になると、司会者が出てきて注意事項の説明があったけれど、 「In case you wonder, we are not gay! (念のために言っておきますが、 我々はゲイではありません)」というアナウンスが入った時は、 実際、その場に居た女友達が「こういう場所の男の人って大体ゲイが多いでしょ」と 話していたばかりだっただけに、思わず苦笑いをしてしまった。

さて、そのパフォーマンスであるけれど、パフォーマンスというのは名ばかりで、 最初に3人のダンサーが出てきて、踊るパフォーマンスは見せたものの、 その後は、30ドルを支払って登録された女性(通常は、バースデーの女性や結婚する女性といった、 各グループのパーティーの主役) が前に4人ずつ呼び出されて、彼女らの胸元やウエストに 挟み込まれたチップのお札を、ダンサー達が舐め取って行くのが そのステージ・アクトである。 ストリッパー達は、最初は控えめに女の子を抱きかかえたり、彼女らの脚を自分の腰に脚を巻きつかせたりしているけれど、 やがてそれがどんどんエスカレートしていくことになる。

その間、客席の女性達はそれを笑ったり、はしゃいだりして見ているだけかと思いきや、 そうではなく、数人のダンサーが順番に回って来ては、ステージと同じようなアクトを始め、 こちらの方も時間が経つにつれて その度合いがエスカレートしていくことになる。

私はその場に居た女性達を見回して観察していたけれど、女性達は大きく2つのグループに分類されていた。
1つ目は、人がストリッパーと戯れているのを見て喜んでいても、自分のところに回ってくると、 早めに追っ払う女性達。2つ目は、ストリッパーが自分のところにやって来るのを、胸元にお札を突っ込んで待っていて、 積極的にストリッパーと戯れる女性達。
私は前者を「見て喜び組」、後者を「して喜び組」と勝手に名付けていたけれど、 この2つの最大の違いは、前者は回って来たストリッパーを追い払うためにチップを渡しているのに対して、 後者はストリッパーのアクトやサービスに対してチップを払う点である。
この「見て喜び組」と「して喜び組」は、さらに それぞれ2つのグループに分化されていると言うことが出来る。
「して喜び組」については、「遊びと割り切って楽しむタイプ」と、「本当に男性を求めて やって来ているタイプ」に分かれるけれど、前者が安心して見ていられるのに対し、 後者には開いた口がふさがらないものがあったのは事実である。 後者の具体例を挙げると、パフォーマンス・ルームのコーナーに、死角になったエリアがあり、 そこに陣取っていた女の子のグループは、下着を着けていなかったそうで、 そのエリアは、アクトにウェイターまでが加わって、異様な盛り上がりを見せていた。

一方の「見て喜び組」については、「本当に見て楽しんでいるタイプ」と、「その場の雰囲気を壊さないように 周囲に合わせているだけ」という2つのタイプがあったけれど、 この2つの分類は「して喜び組」の2つの分類ほどはっきり分かれるものではなく、 「見て喜び組」は本当に見て楽しんでいる時と、周囲の雰囲気に合わせている時が、 2時間というあまりに長いパフォーマンスの間に、交互に訪れていたと思う。
言うまでもなく、楽しんでいたのは「して喜び組」の方であるけれど、 同時にチップを沢山払うことになっていたのも「して喜び組」の方だったと言える。 というのも、ストリッパー達も消極的だったり、明らかに喜んでいない女性に対しては、 チップが望めないだけに時間を掛けたがらない訳で、「して喜び組」のように 彼らに対して積極的かつ、協力的な女性達に対してはそれなりのサービス(?)をするので、 彼女らもそれに対してチップを2倍、3倍と払うことになるのである。

私がハンク・マニアのダンサーについて思ったのは、確かに身体はエクササイズで良く鍛えられているけれど、 特に「ハンク(英語のスラングでカッコ良い男性という意味)」と呼ぶほどにルックスが良い訳ではないし、 身長157cmで10cmヒールを履いている私が見ても、背が高いと言える男性は殆ど居なかった。 だから、もし普通のクラブ等で彼らのような男性に声を掛けられても、愛想笑いがせいぜいという感じであるけれど、 これは私が特に理想が高いとか、ルックス・コンシャスだという訳ではなく、 その場に居た私の女友達(して喜び組、見て喜び組を含めて)も同感であったし、 別のグループのアメリカ人の女の子も同じ意見であった。
でもそこが「ハンク・マニア」という、男性に対して女性がエキサイトし、 はしゃいでパーティーをするべき場所であるがために、 女性達は日頃は関心を示さないような男性に対して、キャーキャー反応して、 場を盛り上げるためのパフォーマンスをしてしまうというのは ある意味では滑稽であったし、 彼らに対してチップを支払っているというのも不思議な話だった。

それと同時に私が気がついたのは、当たり前と言えば、当たり前ではあるけれど、 働いている男性達が純粋にお金のために、ルーティーンとして仕事をこなしているだけであるということ。 私達が、誕生日の友人をステージに出してもらおうと、司会の男性に頼んだところ、愛想の良い司会ぶりとは裏腹に 「30ドル!」と言い放った冷淡な口調に私は驚いたし、 ストリッパーがパフォーマンスの途中でも床に落ちたお札を見つけると、せっせと拾っては パンツのポケットやブーツの中に入れている姿は、「本当にお金のためにやっているんだなぁ」という現実を 再認識させてくれる姿だった。
私としては、払っているチップが1ドル札であることや、「ハンク・マニア」の カバー・チャージが25ドルであるという安さを考慮すれば、 男性ストリッパー達が気持ちの入っていないパフォーマンスをしたところで一向に構わないけれど、 個人的に不快に思ったのは一部のストリッパーのマナーの悪さで、ストリッパーの1人は、こちらがチップを渡しているにも関わらず 友人が握り締めていたお金や、 私と友人の間に置いてあったお金を 無表情に、そして凄い速さで掴みとって行ってしまい、 「私生活でスリや引ったくりでもしているのでは?」と疑いたくなるものさえあったし、 私のピッカピカのシューズを 汚いブーツで思い切り踏みつけて、気がついているにも関わらず、 謝りもしないという態度にも驚いてしまった。

後日、私はこの日 来られなかった友達に「ハンク・マニア」での一部始終を報告することになったけれど、 喋っている間に、友人が指摘したのが「やっぱり女性相手のセックス産業は難しい」ということだった。
確かに「ストリップ」1つを取っても、男性を喜ばせたり、満足させる方が遥かに簡単な訳で、 それは「女性の裸の胸」のパワーや視覚的インパクトを「男性の裸の胸」と比較しただけでも一目瞭然である。 また、ストリップをパフォーマンスとして受け入れる側の心理状態としても、 女性がGストリングス1枚で踊っていれば、男性は大方 同じように喜ぶ訳だけれど、 男性がトング姿で踊っていれば、セクシャル・オブジェクトとして見て喜ぶ女性も居る反面、 気持ち悪がって目を背けたり、ジョークと受け取って大笑いしたりする女性も多い訳である。

私は、個人的には女性にファンタジーを与えるセックス産業があるとすれば、 それは70年代のリチャード・ギアの主演映画「アメリカン・ジゴロ」のような男娼のビジネスであると考えている。 この作品がきっかけで、それまでアメリカでは一部の金持ちしか知らないブランドであった 「ジョルジョ・アルマーニ」は一躍知名度を高めたけれど、 そのアルマーニで埋め尽くされたワードローブ、エクササイズで鍛えたボディ、 数カ国後を話し、アンティークにも造詣が深く、ブラック・タイ・パーティーのエスコートが務まるような マナーの良さ、グルメ・レストランにも精通しており、もちろんセックスの腕も抜群というのが、 リチャード・ギア演じる「ジゴロ」であった。
また彼は男娼とは言え、セックスだけのクライアントは取らず、夫に相手にされない大金持ちの夫人の 「デコレーター」や、ヨーロッパの富豪の未亡人旅行者のための「ガイド」として、 女性のライフスタイルに溶け込んだ「お金で買える完璧な男性像=ファンタジー」を演じていた訳である。
実際にこうした「ジゴロ」もどきは、ビバリーヒルズやニューヨーク、マイアミに存在すると言われているし、 そこまで完璧でなくも、ダンス・インストラクターやヨガのインスストラクターで、 ちょっとルックスとマナーが良いと、女性クライアントは時給を払って相談相手になってもらったり、 レストランに一緒に出かける等、お金を払うデート相手として利用している例は少なくないのである。
よく「男性はセックスを求め、女性はロマンスを求める」というけれど、 私はこれはある意味で事実だと思う。 それだけに女性相手のセックス産業というのは成り立ち難いものだと思うし、 女性向けポルノ・チャンネルをスタートしようとしているプロデューサーが、 ポルノ映画にロマンスのタッチを加えて製作しているというのは理にかなったアプローチだと思う。

またハンク・マニアに話を戻すと、 私が男性ストリッパー達の行動で、最も興醒めしたのは、パフォーマンスの最中、 脱いだ服を、いちいちプラスティックのビール・ケースの中に入れている様子であった。 これは脱いだ服を 観客がお土産に持って行かないようにするためではあるけれど、 私にとっては、ストリップのパフォーマンスの間に、旅館の大浴場の脱衣所の光景が 挟まれているようにしか思えないものだった。
男性のストリップがこうしたセコイものになってしまうのは、 女性のストリップほどビジネスが確立されていないからであるのは明らかであるけれど、 チップの額にしても、女性のストリッパーなら5分程度のラップダンスで最低20ドルは受け取れるけれど、 ハンク・マニアのダンサー達が1ドル札を同じ金額になるまでかき集めるには30分は掛かる訳で、 彼らの実入りは女性ストリッパーに比べれば極めて低額である。
それを思うと、彼らが1ドル札を拾ってはブーツやポケットに入れる姿は、 セックス・アピールやファンタジーどころか、「生活」を感じさせるものさえあったし、 職種が何であれ「皆、生活のために働いている」というリアリティを見せつけられたのも事実である。



Catch of the Week No.2 May. : 5月 第2週


Catch of the Week No.1 May. : 5月 第1週


Catch of the Week No.4 Apr. : 4月 第4週


Catch of the Week No.3 Apr. : 4月 第3週