` CUBE New York Catch of the Week




May 19 〜 May 25 2003




アニカ・ソレンスタムと女性観

今週、アメリカでちょっとした話題になっていたのが、女性プロゴルファーのアニカ・ソレンスタムが 58年ぶりにPGAトーナメントに参加し、男性ゴルファーに混じってプレーをするというものだった。
春先には、毎年マスターズが行なわれるカントリー・クラブ、オーガスタ・インターナショナルが 未だに女性メンバーに門戸を開かないことに対して、猛烈な抗議活動が行なわれていただけに、 アニカ・ソレンスタムがPGAでプレーをすることは、アメリカ女性の間で大きな関心事になるであろう と見る向きもあったけれど、結果的にはソレンスタムのPGA参加に関心を払ったのは男性の方で、 アメリカ女性の殆どはこの一件に関しては全くといって良いほど無関心であったし、 結果的に、予選ラウンドで敗退した彼女に対して失望も無ければ、賞賛も無いという無反応状態であった。
一部のメディアには今回のソレンスタムのPGA参加を1973年に「バトル・オブ・セックス(直訳すると性の対決)」 として全米の関心を集めた女子プロ・テニスプレーヤー、ビリー・ジーン・キングVS.男子プロ・テニスプレーヤー、 ボビー・リッジス戦と比較するところもあったが、この試合が行なわれたのは 未だ「ウーマンリブ」という言葉がアメリカで頻繁に用いられ、女性達がその社会的地位向上に 真剣に取り組み、戦っていた時代であっただけに、そのインパクトは 今回のソレンスタムどころではなかった。
私はこの試合については、アメリカに来てから初めて知らされることになったけれど、 70年代に 日本では「キング夫人」と呼ばれていたビリー・ジーン・キングが女子プロ・テニスの No.1プレーヤーであったことくらいは認識していた。 試合自体は73年当時30歳であったビリー・ジーン・キングが、 当時55歳の男子プロの元チャンピオン、ボビー・リッジスを破ったというもので、 今であればウィリアムス姉妹などが簡単にやってのけそうなものである。 しかし、この試合は当時のアメリカ社会では「男性に出来て、女性に出来ないことは無い」、 「女性は男性を負かすことも出来る」ことを立証したゲームとして、 当時のウーマンリブのムーブメントに拍車を掛けると同時に、男性社会でマイノリティとして働く女性達に 希望と活力を与えたものとして記憶されている歴史的イベントでもある。
これを境に、人権という見地からだけでなく、男女が社会の中で均等に扱われるべきであるという意識が 少しずつ根付き始め、女性のトラック運転手から、女性宇宙飛行士、大企業の女性CEO等、 各分野に「初の女性xxx」という先駆者達が登場し始めたのである。
キングVS.リッジス戦から今年で30年が経つけれど、当時に比べれば 女性はなりたいものになったり、やりたいことをやったり出来る時代になり、 女性に生まれたからという理由で諦めなければならないことは、ほぼ皆無になったと言えるけれど、 だからといって 女性が社会で男性と均等に扱われているか?ということになると、 まだまだ長い長い男性社会の歴史は切り崩せていないのが実際のところである。 女性が男性よりも給与が安めに設定されるのは相変わらずであるし、 同じポジションに着くために、女性の方が男性よりも遥かに努力と勤勉が要求されるのも 変わることの無い傾向となってしまっている。
それでも、今回のソレンスタムPGA参加のリアクションによって感じられたのは、 現代女性達は、もはや自分達が男性と同じ土壌で戦えることをスポーツ選手に示してもらう必要など 感じていないということで、むしろ今回のイベントは「男性の世界に女性が踏み込んできた」ということで、 男性にとっての関心事となっていた。 ギャラリーの殆どは男性であったし、メディアの報道の切り口も 女性運動家がソレンスタムのサポートに登場することも無かったので、 「男子トーナメントに参加した女子選手」という域を出ることはなく、 社会における女性のポジションなどを取り沙汰するような大事ではなかった。
私は個人的にはゴルフやボーリングは特に男女差が大きく出るスポーツではないと思っているし、 今回のソレンスタムの挑戦が予選落ちに終わったことが、女子ゴルファーが男子ゴルファーに 劣るということを立証したとも思わない。 もし、逆に男性プロゴルファーをたった1人だけLPGA(女子プロゴルフ・アソシエーション)の トーナメントに出場させて、ギャラリーとメディアでプレッシャーを掛けたら、 男子選手だって必ずしも予選ラウンドを突破できるとは限らないと思う。
本当に男女のゴルファーの力量を測ろうと思ったら、男女が同数のトーナメントを開催して、 男女2人ずつで構成される4人のパーティーでラウンドするのがフェアな試合設定ではないか?というのが私の考えである。
でもゴルフの世界だから、今回のように女子選手が男性のトーナメントに参加しただけで 大きく報道されたけれど、 これがボストン・マラソンやニューヨーク・マラソンだったら、女性のランナーも男性と同じコースを走り、 女性トップ・ランナーは何千人もの男性ランナーより ずっと早く走っている訳で、これは当たり前すぎて報道する価値も無いことである。
本当に男女平等の社会が実現することがあれば、それは女性が何をしても いちいち珍しがって報道されなくなる時代のことだと思う。



パーキング・レイジ

マンハッタンの中で車で移動をしようとした場合、最も不便なのはパーキング・スポットが見つからないことである。
マンハッタンはそもそも駐車場というものが少ない上に、 パーキング・メーターが設置された駐車可能なエリアは、 車が出る度に新しい車両が入って来るので 殆ど空きは見つからないし、 平日の昼間はストアに商品を運び入れるためのトラックが通りに沿って何台も停車しているので、 ただでさえ少ない駐車可能なエリアが益々少なくなってしまう。
通常、アメリカでは他のどの地域に行っても、 駐車場が広すぎて 車を置いた場所を覚えておく方が大変なものだけれど、 ここニューヨークでは、時に「パーキング・スポットほど貴重なものは無い」と思えるほど、 深刻に車をとめる場所が無かったりする。 ことに週末の夜、ダウンタウンで安全な場所に車を駐車しようとすれば、 パーキング・スポットを探してそのエリアをグルグル回らなければならず、これによって待ち合わせの時間に遅れたり、 レストランの予約に間に合わないことも頻繁に起こる訳で、 運悪く何時までもパーキング・スポットが見つからない場合、車内でのイライラがつのって行くのは 容易に想像できることである。
ニューヨークではこうしたパーキング・スポットを巡る ドライバー同士の争いの末、殺人にまで発展した事件も起こっており、 こうした状況を「パーキング・レイジ」と呼んでいる。
通常、アメリカでは運転中にドライバーが腹を立てることを「ロード・レイジ」と呼んでおり、 カリフォルニアでは、この「ロード・レイジ」が社会問題になっているほどである。 ロード・レイジの場合、「ハイウェイで危険な割り込みをされた」等の理由から ドライバーが腹を立て、復讐の嫌がらせをするためにその車を追い、ひいては事故に至るといった ケースが多いけれど、これに対してニューヨーク特有の「パーキング・レイジ」は、 もっぱら車を降りてきたドライバー同士が、怒鳴りあいの喧嘩をする場合が多く、 その争いの末、最悪の場合、ナイフで刺されたり、銃で撃たれたりという殺傷沙汰も起こるのである。
かく言う私もつい最近、友人のボーイフレンドの車でダウンタウンのレストランに向っていた際、やはり パーキング・スポットが見つからなくて大変な思いをすることになってしまった。 散々そのエリアを回って、やっとスポットを見つけ、彼が車を入れようとしたところ、 突如人影が出てきて「このスポットは自分の知り合いのためにとってある場所だからダメ」と言われた時には、 私を含む車内に居た3人で「冗談じゃない!」と猛然と憤慨してしまった。
私の友人のボーイフレンドは温厚な人なので、場所取りをしていた男性に怒鳴ったり等はしなかったけれど、 かなり気分を害したらしく、そこから50メートル程行ったところで車を停めて、 友人と私に向って「悪いけど、もう食事をする気分じゃなくなったから、 君たちをレストランで下ろしたら、家に帰らせて欲しい。」と言い出してしまった。 彼があまりに真剣で、しかも不愉快そうだったので、結局、彼女と私は2人で食事をして タクシーで帰ってくることになったけれど、彼女に言わせれば、彼は パーキング・スポットに巡り合える運が無いそうで、なかなかスポットが見つからなかったり、 やっと停めた場所で、車からオーディオのスピーカーを盗まれたり等、これまでにもいろいろ 酷い目にあっているとのことだった。
この日の思いが何となく後味が悪かったので、別の友人にこの話をしたところ、 彼女は、信号を待っている間に、交差点の向こう側の車が出て行ったので「ラッキー!」と思っていたところ、 後ろの車から男性が降りて、そのスポットまで走って行き、 自分達が車を入れようとした時は 既にその男性に場所を抑えられていた という経験談を話してくれた。
この時、車を運転していたのは彼女の友人で、真剣に「轢き殺してやる!」と言って 怒っていたそうで、車を持っている人ならば誰でも「パーキング・レイジ」を経験しているものなんだと 改めて実感してしまった。
今、こうしたパーキング・スポット難を受けて、マンハッタンでは 狭いスポットにも停められるミニ・クーパーの人気が急上昇しているとのことであるけれど、 「タクシーで動く方が、遥かに簡単で安上がりで、余計な怒りやストレスを抱えなくて済む」というのが 私の考えである。





Catch of the Week No.3 May : 5月 第3週


Catch of the Week No.2 May : 5月 第2週


Catch of the Week No.1 May : 5月 第1週


Catch of the Week No.4 Apr.: 4月 第4週