May. 17 〜 May. 23 2004




スコアーズ、セレブリティ&アメックス

先週のこのコーナーで、「男性ストリッパーは女性ストリッパーに比べて遥かに実入りが少ない」と 書いたけれど、まさにそれを実感させるかのように今週報道されたのが、 マンハッタンで最も有名かつ、エスタブリッシュされたストリップ・クラブ、「スコアーズ」を相手取って、 来店客が起こした訴訟問題である。
スコーアーズと言えば、90年代半ばにデミー・ムーアが映画「ストリップティーズ」で ストリッパーを演じる役作りのために通ったクラブであると同時に、 マドンナ、スティング、チャーリー・シーン、ベン・アフレックといったセレブリティや スポーツ選手が数多く訪れることでも知られるクラブ。 そんな同クラブを訴えたのは、昨年12月11日にここを友人2人と訪れた 世界第2位の保険会社のエグゼクティブ、ミッチェル・ブレーザーである。

彼の訴状によれば、彼がスコアーズを訪れた際、まずクレジット・カードを 預けるよう求められ、彼は自分のアメリカン・エクスプレス(以下、アメックス)のカードを店側に渡したという。 ちなみに先にクレジット・カードの提示を求めるのは、客側の料金踏み倒しを防ぐために店側が行う常套手段で、 これ自体は決して問題になる行為ではなかったりする。
問題となったのはその請求額で、「2000ドル程度(日本円にして約22万円)しか使っていない」という彼らに対する 店側の請求額は、8615ドル(約95万円)。ミッチェル・ブレーザーは「こんなに使ったはずが無い」とその場で支払いを拒んだというが、 「サインをしないなら、カードを返却しないと脅された」とのことで、 結局、彼はその場では請求書にサインをし、後からアメックスに不正チャージのクレームをしようと考えていた。
ところが後日、カード会社に電話をしたミッチェル・ブレーザーが知らされたのは、 スコアーズの請求額が 彼が不服としていた額の3倍以上である2万8021ドル(約308万円)に膨れ上がっていたことで、 彼が弁護士を立てて、スコアーズに対して不正請求の訴訟を起こしたというのがこの事件である。

ここまで聞くと、スコアーズが酔っ払った客のカードにジャンジャン請求をしたような印象を持つ人は多いと思うけれど、 当然のことながら、店側にも言い分がある訳で、それによれば、ミッチェル・ブレーザーはこの日、 スコアーズで最も高額な 1本3200ドルのクリュッグ(シャンペン)のマグナムを5本もオーダーしており、 これだけでもチャージ額は既に1万6000ドルに達していたという。 加えて、シャンペン以外のアルコール類とフードで1200ドル、ストリッパー嬢に渡すチップとして、 同店では「ダイヤモンド・ダラー」という特別なお札を発行しているけれど、 これを7000ドル分も換金していたという。 そしてこれらのチャージに「店側が後から勝手に加えた」とブレーザーが言い張る「4000ドル(約44万円)のチップ」が加わり、 チャージ額の合計が約2万8000ドルになったというのが店側の説明であった。

では、店側とブレーザー側のどちらの言い分に信憑性があるか?ということであるけれど、 実際に今年1月に行われたアメックスによる調査では、スコアーズ側の正当性が認められており、 これを不服としたミッチェル・ブレーザーが今回の訴訟に踏み切った訳であるけれど、 アメックスが調べるまでもなく、1度でもスコアーズに行った事のある人なら、 「こんな遊び方をすれば、この程度の金額になってしまう」ことは重々承知していたりする。

私にとって、今週 この事件が印象的だったのは、1つには先週のこのコーナーで書いた 男性ストリップ・クラブの「ハンク・マニア」と「スコアーズ」を比較してしまったからで、 「ハンク・マニア」ではシャンペンをオーダーしたところで1杯が15ドル。 それが店で最も高額なドリンクであるから、どんなに頑張っても1晩に2万8000ドルを客側が使うことも、 店側が稼ぐことも不可能な訳で、男性ストリップの店の半月分以上の売り上げを、女性ストリップが 1晩の1テーブルから稼ぎ出してしまうというのが 面白く感じられたからだった。

でも、それと同時に私にとって印象的だったのは、 この事件に関してスコアーズのスポークスマン、ロニー・ハノーヴァーが TV局のFOXに対して語っていたコメントで、それは 「もし、ロックスターやハイローラーのように夜遊びがしたかったら、 銀行に多額の残高があるか、さもなくばコリン・ファーレルのようにハンサムでなければならない」というものだった。 後半の「コリン・ファーレルのようにハンサムでなければならない」というのは、 もちろん「コリン・ファーレルのような、ハンサムなセレブリティでなければならない」という意味で、 どんなにハンサムな男性がスコアーズにやって来たとしても、セレブリティでない限りは、 銀行残高が要求されるのは言うまでもないことである。
私がこのコメントについて面白いと思ったのは、世の中の多くの人々にとって セレブリティと言えば、大金持ちで、「何処へ行ってもVIP遊びをしている」、もしくは 「するだけの財力がある」というイメージがあるけれど、このコメントでは 彼らが 本当に多額の金額を払って行くリッチな顧客達とは 差別化して語られていたことであった。
事実、多くのビジネスにとってセレブリティというのは パブリシティを運んでは来るものの、 金額的な実入りはもたらさない人々で、例えば、多くのナイト・クラブが セレブリティを優遇するのは、彼らが来店したことでパブリシティを獲得すれば、 本当にお金を払って夜遊びをするお客が沢山やって来ることを見込んでのことである。 セレブリティは、通常の半額でクリスタルのシャンペンを飲み、 テーブル・チャージ無しでVIPルームに陣取っていたりするけれど、 これが一般の来店客ならば、1時間200〜300ドルのテーブル・チャージと共に、 クリスタル1本当たり 約800ドルはチャージが出来る訳で、店側にとっては こちらの方があり難い客層であることは言うまでも無い事である。
でもこうした金額を払える客層が、それを支払って遊ぶ価値があるホットなクラブであるかを判断するのは、 セレブリティ、それもAリストと呼ばれるハリウッドのトップ・クラスが訪れているか?であるから、 店側がプロモーターやパブリシストを使って、セレブリティを来店させようと躍起になるのは 理にかなったマーケティングであったりもするのである。

でも、中にはパブリシティを獲得する訳には行かない業種もある訳で、 90年代前半に「ハリウッド・マダム」として知られ、コールガール・ビジネスを営んで 逮捕されたハイディ・フライなどは、出所後のインタビューで「セレブリティ・イズ・チープ」、 すなわち「有名人なんてお金にならない」とはっきり語っている。 彼女に言わせると、セレブリティはお金が無いのに、自分が有名であるから サービスをされて当然と考えているため、全く歓迎されない客層であったそうで、 同様のことは、インテリア・デコレーション、フラワー・アレンジ、ケータリングなど、 様々なビジネスで、セレブリティ顧客を抱えたことのある人々が語っていたりする。
通常こうしたビジネス・オーナーが大切な顧客としているのは、ミリオネア、ビリオネアのビジネス・エグゼクティブ達で、 例えばこの春、不正会計の裁判がミストライアル(裁判不正立)になったタイコ・インターナショナルのCEO、 デニス・コズロウスキーは 6500ドル(約72万円)のシャワー・カーテン、1万5000ドル(165万円)の傘立て等、 馬鹿げた価格の調度品で自宅をデコレートし、2億円を投じて夫人のためのバースデー・パーティーを 行った事等がレポートされていた。彼の場合、これを投資家のお金で行ったために問題になっていたけれど、 こうした「セレブリティ・イズ・チープ」と人々に言わせてしまうような お金の使い方をしているビジネス・エグゼクティブというのは、少なくないのが現実である。

実際こうしたリッチなビジネス・エグゼクティブは、セレブリティのこともお金で 買っていたりする訳で、例えば、90年代後半に女優のブルック・シールズを自宅のパーティーに来てもらうと思ったら、 3万ドル(約330万円)を支払えば呼ぶことが出来たというし、ブラッド・ピットと結婚する前の ジェニファー・アニストンならば、その料金は5万ドル(550万円)と言われていた。 さらに、それがホイットニー・ヒューストンになると、 $1ミリオン(約1億1千万円)を支払えば、パーティーで2〜3曲歌ってくれるとも言われていたけれど、 これはもちろん彼女がドラッグでリハビリ入りをする前のお値段であった。
こうしたケースでは、セレブリティはパーティーにやってきて、その場に ほんの10分程居て、主催者と一緒に写真を撮影したり、 ダンスをするだけで、これだけの金額が受け取れる訳で、映画やTVの出演ギャラだけでは 食べていけないセレブリティ達にとって、これらのオファーが貴重な収入源になっているとのことだった。

では、10分間、パーティーに出掛けるだけで500万稼げるセレブリティと、 10分間パーティーにセレブリティを呼ぶだけに500万払えるリッチ・ピープルのどちらが 羨ましいか?と言えば、私にとっては文句なしに後者である。
また、スコアーズのストリッパー達にしても、コリン・ファーレルから500ドルのチップを貰うよりも、 名前も知らない来店客から2000ドルのチップを貰う方がずっと嬉しいようなので、 「セレブリティ・ステイタス」というのは「お金には勝てない」とも言うことが出来るのかもしれない。

さて、話をミッチェル・ブレーザーに戻すと、彼は現時点ではアメックス側がスコアーズのチャージに 不正は無いと見なしているため、2万8000ドルのチャージを支払い、それを裁判で取り戻そうとしているところである。 でも彼だけでなく、男性がスコアーズのようなクラブに出掛ければ、調子に乗ってお金を使い過ぎることは十分に有り得る訳で、 クラブ側も使えるだけ使わせようとするのがビジネスな訳である。
もし彼が持っていたのがVISAやマスターなど、限度額以上のチャージが出来ないカードであれば、 店側も限度額に達した段階で、別のカードの提示を求めたであろうと思われるけれど、 限度額の心配無しに 使えてしまうのがアメックスの利点であり、怖さでもある。
この事件を報道するニューヨーク・ポストの記事は、アメックスの「Don't leave home without it! (出掛ける時は忘れずに!)」 というキャッチフレーズをひねって、「He Should have left home without it (持たずに出掛けるべきだった)」などと 書いているけれど、確かに自制心の無い男性にとって、アメックスを握り締めてスコアーズに出掛けるのは 破産覚悟の行為と言えるかもしれない。



Catch of the Week No.3 May. : 5月 第3週


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Catch of the Week No.4 Apr. : 4月 第4週