` CUBE New York Catch of the Week




May 26 〜 Jun 1 2003




ファッション学歴差別

先日、ケーブルTVでリース・ウェザースプーン主演の「リーガリー・ブロンド」をやっていたので、 何となく見入っていたけれど、そうするうちに私も映画の中でリース扮するキャラクター、エルと 正反対の似た経験をしたことを思い出してしまった。
「リーガリー・ブロンド」ではファッション・マーチャンダイジングを学んだエルが ハーバード・ロー・スクールで「お馬鹿さん扱い」をされるという状況であったけれど、 私はF.I.T(ファッション工科大学)で逆の思いをしたことがあったのである。 つまり私の場合は、日本の大学の法学部を卒業し、その後F.I.Tで学んでいた際に、 F.I.T の学生に「法律を勉強していたような人に、ファッションの何が分かるの?」と 馬鹿にされたのである。
私は89年の4月に留学を始めて、同年9月からF.I.Tでクラスを取り始めたけれど、 この頃は未だ英語で自分の意見がスラスラと言える状況には程遠かったため、 発言しなければならない時に適切な言葉が出ないこともあったので、 クラスメイトの中には私のことを「頭が悪い」と思っていた人も少なくないと思う。
そもそもアメリカ人は何処へ行っても大体英語が通じることもあって、言葉で苦労をした経験が無い人が殆どである。 だから留学経験や豊富な海外経験があって、他国の言語を学ぶ苦労を理解している人を除けば、 往々にして「言葉が喋れない人間は、頭脳のレベルも言語のレベルと変わらない」と見なす傾向が強いのである。 アメリカ人にこれを言うと、必ず否定するけれど、実際これは紛れも無い事実であると私は思っている。
さてある日、私がクラスが終わった後で 出された課題について先生に質問していたところ、 クラスメイトが寄ってきて、いきなり横から口を出して来た。 クラスメイトとは言っても、それが夜のクラスだったこともあり、口を出してきたのは 「ファッション」からはかけ離れた服装のオバサンのような人で、 実際 F.I.Tの夜のクラスには、彼女のように高卒で既に何年も働いている人々が、 学歴をつけて給与をアップさせようと 学んでいる場合が多かった。
彼女は私が先生の言うことを直ぐに理解しなかったので、「貴女、ちゃんと高校を出たの?」と とんでもなく失礼なことを訊いて来たのである。私が「高校だけでなく、大学だって出ているけれど…」と答えると、 顔をしかめて「大学で何を勉強してきたの?」とさらに突っ込んできた。そこで私が「法律」と答えると、 「そんなのファッションの世界じゃ何も役に立たないじゃない。 それじゃ何も勉強していないのと同じよ。」と侮辱してきたのである。
私は、そのまま引き下がると悔しくて眠れなくなると思ったので、 「自分は日本でファッションの仕事をして来たし、英語が喋れないからといって 個人の能力まで見下すなんて酷い」と、先生の前で彼女に言い返したのを覚えているけれど、 彼女も負けていなくて「法律を勉強していたような人に、ファッションの何が分かるの? 法律の仕事をしなさいよ。 そっちの方が給料が高いわよ」などとおせっかいなことを言い返されてしまった。
結局、こんな訳の分からないクラスメイトに絡まれたのは これ1度きりだったけれど、 後に同じクラスでファッションの歴史を学んだ際、クレージュやバレンシアガについて知っているのが 私1人だった時は、F.I.T のレベルの低さに呆れたと同時に、侮辱したクラスメイトに対しては 「してやったり!」の気分でもあった。

でもふと思い返してみると、F.I.T だけでなく、日本でファッションの仕事をしていた際も、 私の4年制大学法学部卒業後、1年10ヶ月間 丸の内OLとして勤務という経歴は かなり変わっているものだったのは事実である。
ファッション・マーケティング会社に勤め始めた直後に「グレーディング」という言葉を使ったら、 「どうしてそんな言葉知っているの?」と訊かれたことがあったけれど、 これは服飾関係の学校を出た人には決して訊ねない質問である。
それでも、ファッションのマーケティング会社に勤めて気がついたのは、意外にもOL経験が非常に役に立ったということだった。 というのも、会社ではOLをターゲットにした市場調査や商品開発が行なわれていたにも関わらず、 OL経験者は私1人だったのである。 だから、私が「普通のOLだったら、そんなお金の使い方はしないでしょう」等と言えば、 誰も反論出来なかったのである。
また、当時はワープロがそれほど普及していなかった時代だったので、 OL時代にワープロを使えるようになっていたのはマーケティング会社でも大きな武器であったし、 ファッション企業というと、よほどの大会社ではない限り、丸の内の企業のように 電話の応対、名刺の受け取り方等、様々なマナーについての社員教育をきちんとしていないので、 私が電話を取ったり、来客の対応をする度に、周囲から感心されることになった。
私は個人的には学歴ほど人の能力を判断する際に当てに出来ないものは無いと思っているけれど、 これは自分が学歴とは別のことをしようとして差別扱いされたからというよりも、 学校というものにそれほど重きを置いていないためである。 もちろん学校を卒業できるだけの学力や忍耐や社会性というのは必要だと思っているけれど、 教えられたことを学んで、試験を受けることよりも、 学んだことを生かして仕事をしていく方がずっと勉強になるし、 自信や経験、技術や処世術が身に付く訳で、実際の仕事の世界に比べれば、学校という場は 保護された温室のような場所に過ぎないと思っている。だから、ここでいくら勉強したところで 果たして外界に順応できるかどうかは、やはり外に出てみなければ分からないと思うのである。
私の知り合いにも、学校が大好きで、会う度に「仕事を辞めて学校に戻りたい」とか、 「今度レイオフされたら、暫く学校に行く」と言っている人が居るけれど、 次から次へと学校に行くよりも、仕事をして、例え畑違いだと思っても様々な経験を積む方が、 将来いろいろな形で人生の役に立つのではないか?というのが私の考えである。



タックス・ケイオス

財政難に苦しむニューヨークが今週日曜日、6月1日から踏み切ることになったのが、 セールス・タックスの値上げ。
とは言っても、この日から値上げされるのは ニューヨーク州の税金で、これによって8.25%であったセールス・タックスが 8.5%になるというもの。 そしてその3日後、6月4日の水曜日には、今度はニューヨーク市のセールス・タックスが値上げされるので、 ニューヨーク市の最終的な売上税は8.625%となる。
この売上税のアップは、実際の小売価格にどの程度跳ね返るかと言えば、 例えば999ドルのテレビを購入する場合、売上税が8.25%だと支払い額は1081.42ドルであるけれど、 8.625%の場合、その価格は1085.16ドルとなり、差額は3.74ドル。 日本円に直せば、約12万円のものを購入した場合で、約450円程度 以前より多く支払うことになる訳である。
こう考えると「大騒ぎするほどの値上げでもない」と思う人も多いかも知れない。 実際、49.99ドルのコーヒーメーカーを購入した場合で、売り上げ税のアップによる差額は19セントであるから、 確かに騒ぎ立てて、急いで買い物に走るほどの値上げではなかったりする。
にも関わらず、土曜日のニューヨークは売上税アップ直前のショッピングに走る人々で、 ストアは混み合っており、その混雑は もっぱらシューズやアパレルのセクションに集中することになった。
これは 今まで売上税が免除されていた110ドル以下のシューズやアパレルも 6月1日からは課税対象になるためで、例えばこれまで106ドルのセブンのジーンズは、 売上税が掛からなかったので そのままの106ドルで購入出来たけれど、今後は 課税対象となるため、115.17ドルに跳ね上がってしまうのである。 すなわち課税されていた品物については、売上税が8.25%から8.625%にアップすることは、 たった0.375%の値上げに過ぎないけれど、これまで課税されなかった110ドル以下のシューズやアパレルについては、 8.625%の値上げということになるので、この差はなかなか大きいものと言わなければならない。
私も個人的に今回の売上税のアップで最もこたえたのはこの部分で、 ジーンズやスニーカー、ジューシー・クチュールのスウェットやTシャツ等、 これまでタックス・フリーで購入していたものに、いきなり8.625%が課税されるというのは やはり厳しいと思ってしまった。
深く考えてみれば、下着や靴下、ビーチサンダル、エクササイズ・ウェア等、 これまで課税対象外で購入されていたものは決して少なくない訳で、 もし一世帯が月に200ドルを子供服やTシャツ、靴下、スニーカー等に費やしていた場合、 年間に207ドルを余分にこれらのアイテムに対して支払うことになるのである。
また、これまで課税対象であったものについても、ちりも積もれば山となる訳で、 ニューヨーク・ポスト紙によれば、カップルが1日3食を全て外食でまかなった場合、 チップも含めると、1日40セント、年間で146ドルを余分に支払うことになるのである。
この上バス&地下鉄の運賃が値上げになり、これまで63ドルで購入出来た 1ヶ月アンリミテッド使用のメトロ・カードは70ドルになってしまったから、 これをカップルで購入した場合、年間に168ドルを余分に支払うことになる。 更に水道代は値上げされることになっているし、タクシー運賃も値上げが見込まれ、 今後はレントの値上がりも必至と言われる反面、収入は上がらず、多くの人々は いつレイオフされても不思議ではない状況で働いている訳である。
だから今回の売上税のアップは、例え僅か0.375%の値上げでも、 決して侮れるものでは無いというのは、多くのニューヨーカーにとって言えることである。
その一方で、どんな経済状態でもお金に困らない ジェットセットやミリオネアが購入するような デザイナー・クローズについては、サックス・フィフス・アベニューが5月1日という 異例の速さで40%オフに踏み切る というファッション業界の掟破り的 ディスカウントをして話題となっている。
通常、一流デザイナーものの春夏のラインが出揃うのは4月半ばであるけれど、 いくら高額商品が売れない時期であるとは言え、入荷して2週間ほどの商品を いきなり40%オフにしてしまうというのは、常識では考えられないことである。 もちろん、「何時からセールを始めるか?」については、小売店側に決断する権利があり、 デザイナー達はこれに口出しをすることは出来ないけれど、ファッション業界には暗黙の了解というものが存在しており、 それによれば セールの開始は例年5月末のメモリアル・デイ休暇以降ということになっていたのである。
このセールは、「プライベート・セール」と呼ばれる一部の顧客のみを対象としたものであったけれど、 サックス・フィフス・アベニューが異例の速さでディスカウントに走ったために、 バーニーズ、ニーマン・マーカスといった一流店も、これに習って同様のプライベート・セールを 例年より2週間早くとり行うことになってしまった。
これによって恩恵を受けたのは、プライべート・セールに招待される 裕福な人々で、こうした人々は 今シーズンの2000ドルのドレスを シーズン末まで待たずして1200ドルで購入することが出来る訳であり、 庶民が様々な値上げでじわじわと家計が苦しくなる状況とは 全く対照的である。
もちろん、1200ドルで購入したドレスにも税金は掛かる訳で、 売上税が8.25%だった頃には税込みで1299.50ドルだったお値段が、8.625%のタックスだと 1303.50ドルとなり、4.50ドル余分に支払うことになってしまうけれど、 シーズン真っ只中のディスカウントで800ドルをセーブできれば、4.50ドルのタックスに 文句を言う権利は無いと思う。





Catch of the Week No.4 May : 5月 第4週


Catch of the Week No.3 May : 5月 第3週


Catch of the Week No.2 May : 5月 第2週


Catch of the Week No.1 May : 5月 第1週