` CUBE New York Catch of the Week




Jun 2 〜 Jun 8 2003




リーガル・ドラッグ・ブーム

今週のニューヨーク・マガジンのカバーストーリーになっていたのが、「セルフ・メディケーテッド・シティ/ ホワット・アー・ユー・オン?」という記事で、これはリーガル(合法)な処方箋薬を 自分のムードによって使い分けるニューヨーカーについて書かれたものだった。
この記事を読むまでもなく、昨今のアメリカではコカインやマリファナよりも 処方箋薬の方がドラッグとしては遥かにホットな存在となっており、ワイノナ・ライダーが万引きで逮捕された際も、 処方箋薬を所持していたことが問題になったし、人気TV「フレンズ」のチャンドラーことマシュー・ペリーも、 処方箋薬の中毒となり、リハビリ施設に入院する羽目になった等、セレブリティの間でも その使用が蔓延しているのが実情である。 今や うつ病治療薬、痛み止め、睡眠薬といった処方箋薬は、アメリカでは レクリエーション・ドラッグとしてもてはやされる存在であり、ドラッグ・ディーラーでさえ こうした処方箋薬をスペシャルKやエクスタシーといったパーティー・ドラッグと一緒に 販売する時代になっている。
この記事に登場する例では、「頭が混乱する程 やる事が山積していた時に、 ADD(注意欠陥障害)治療薬を飲んだら、全てを落ち着いて片付けることが出来た」として、 「もしこれがコカインだったら、事態の収集がつかなくなるだけだった」 とコメントされていたりする。
この他、レイプ・ドラッグ並みに強い睡眠薬でフラフラになって眠りに着くことを楽しむ20代の女性がいたかと思えば、 別の登場例は「自分の恐れていることに直面して対処するなんて80年代の思想」と語り、 「飛行機が怖ければ、睡眠薬で眠ってしまえば良いし、心配事があったら、薬で心配しない 精神状態を作り出せば良いだけ」と、処方箋薬によって人生が軽く、心地好くなる様子を説明していたりする。

2年ほど前に出掛けたパーティーで、 私がこの日初対面のラルフ・ローレンに勤めるアメリカ人の女の子と話をしていた際、 彼女に「どんな男性が好みなの?」と訊かれたので、 「自分でもどんな人が好みだか分からなくなってきているけれど、 こんな人じゃ困るっていうリストなら沢山ある」と答えたところ「例えばどんなこと?」と彼女が興味を示してきた。 そこで「煙草を吸う人、爬虫類のペットを飼う人、アルコールやドラッグやギャンブルの中毒」等と 次々とリストを挙げていくと、彼女は途中まで笑って聞いていたけれど、私が「プロザックを飲んでいる人」と言った途端に その表情が変わって「貴女、それは難しいわよ」と言われてしまった。
プロザックとはアメリカで大センセーションを巻き起こしたうつ病治療薬、別名「ハッピー・ドラッグ」とも呼ばれるもので、 ことにビジネスの世界では人に弱さを見せられないニューヨーカーは、うつ病にかかっていなくても、 プロザックを摂取してテンションを上げて 仕事やパーティーに出掛けるというのは一般的と言われていた。
それでも当時 私の周囲にはプロザックを飲んでいる人は居なかった(少なくとも私は知らなかった)こともあり、 彼女に「プロザックを飲んでいない人を探すのは難しい」と指摘されたのは かなりショックだったのを覚えている。 彼女によれば「もし地下鉄の運転手やペンキ塗りでも良いなら、プロザックを飲んでいる人を探す方が難しいけれど、 デートや結婚となるとストック・ブローカーや弁護士でしょ?プロザックを飲んでいない人なんて居ないわよ。」とのことだった。
私はこの時の彼女のコメントがあまりにショックだったので、後日、そのパーティーのホストだった女の子に、 私達の会話について話してボヤこうとしたところ、彼女にも「Everybody's taking Prozac now!」とまたしても 皆がプロザックを飲んでいることを諭されてしまった。 そのホストの女の子曰く、彼女のボーイフレンドがプロザックを飲んでいるかは 知らないけれど、「飲んでいても驚かないし、別に何とも思わない」のだそうで、 私はプロザックというものが あまりにも寛大にニューヨーク・ソサエティでレクリエーション・ドラッグとして受け入れられているのにビックリしてしまった。
私がプロザックを飲んでいる人とデートしたくないと思ったのは、 その人本来のパーソナリティーが分からないためで、例え明るく振る舞っていてもプロザックがそうさせているだけで、 本当は気が弱く、気難しい人だったら困ると考えたからである。
でもプロザックという薬が、「うつ病治療薬」という実際の用途よりも 「ヤッピー・ドラッグ」と呼ばれる、コカイン的ステイタスを獲得していたのは、 かつてプロザックを処方していたのが もっぱらサイコセラピストで、 1時間200〜500ドルもの料金をチャージするようなセラピストから処方されるプロザックは、 ある程度の経済力がある人でなければ手に入れることが出来なかったからである。
かつてはプロザックが独占していたこのハッピー・ドラッグ市場であるけれど、 プロザックのパテント(特許)が切れたため、2年程前からはパクシル、ザナックス、アンティヴァン等 類似した薬品が沢山登場してきており、今では「プロザックを飲んでいない人」というのは 違った意味で探せる時代になってしまった。
かつてはパクシルのことを「Poorman's Prozac」すなわち、「貧乏人用プロザック」等と呼んでいたけれど、 今ではこうしたプロザックの類似ドラッグは、それぞれ効果や副作用の度合いが異なることが認められており、 ニューヨーカーはそれらを熟知して、自分の気分や用途によって使い分ける時代にすら入っているとニューヨーク・マガジンの記事は説明する。
ハッピー・ドラッグの最も一般的な副作用は セクシャル・サイドエフェクト(性的副作用)、 すなわち性的不能で、このためハッピードラッグを摂取して、その上にセックスをしたいと考える男性は ヴァイアグラを摂取することになる。 これに代表されるように、処方箋薬を常用する人はその副作用に対処するため、 また別の薬を摂取する場合も多く、その結果かなりの数の薬を1日複数回に渡って摂取する傾向にあるけれど、 これを治療目的ではなく、自分の生活を楽にするために摂取しているだけに、多量の薬物を摂取するという 重さが感じられないのが こうしたレクリエーション・ドラッグ・ユーザー達である。
ことにニューヨークでは2001年の9月11日のテロ以降、うつ病治療薬や睡眠薬を摂取する人々が急増しているとのことで、 昨今の経済不振はそれに拍車を掛けているとも言える。
もっとも、これだけ処方箋薬が広まる背景には、それを処方するドクターが居るからでもあり、 こうしたドクターはサイコファーマコロジストと呼ばれ、ニューヨーク・マガジンの記事では 「現代のドラッグ・ディーラー」とさえ記述される存在である。実際、中には特に診断をすることもなく、 やって来た人が望むドラッグを処方してしまう例が少なくないようある。
こうしたいい加減な事がまかり通ってしまうのは、処方する側にも、薬を飲む側にも「処方は合法、 処方箋薬は安全」という意識があるからに他ならないけれど、うつ病治療薬が時に違法ドラッグより危険で、 最悪の場合、死に至ることが サイコファーマコロジストの間で認識されるようになったのはつい最近のことである。

かつて私が仕事で知り合ったアメリカ人女性が、ダイエットのためにうつ病治療薬を 飲み始めたことがあった。 彼女は、自分が太っている原因は「エモーショナル・イーティング」、 すなわち落ち込んだり、悲しいことがあると大食いしてしまうからだ と医師に相談したところ、 うつ病治療薬を処方されたとのことだった。 彼女の同僚によれば、暫くは性格が明るくなって、体重も減り始めたとのことだったけれど、 結果的にはその状態は長くは続かず、その後リハビリ入りしたというのが彼女の最後の消息であった。

かつては、ハイパーな人が居ると「Are You On Something?(何か薬でも飲んでいるの?)」と からかったりしたものだったけれど、今ではそんなことも言ってはいられないご時世になってしまった。
こうした様々な処方箋薬は、時に「生活向上ドラッグ」とも呼ばれ、 ニューヨーク・マガジンの記事にも薬を飲むことによって「人生が楽になった」例が いくつも紹介されていたけれど、どんな薬を飲んだところで、給与が上がる事はないし、 レイオフされる時にはレイオフされる訳で、 これらは単なる「生活向上錯覚ドラッグ」でしかないというのが私の考えである。



プエルトリカン・パレードの危険

6月8日、日曜日は毎年恒例のプエルトリカン・パレードの日であった。
このパレードは数あるニューヨークのパレードの中でも最大級のもので、パレードが通過する 5番街を中心にミッドタウンからアップタウンまで交通が閉鎖されるため、 マンハッタン内の移動が困難になるのは言うまでもないけれど、 交通以外の理由でも、この日はパレードの近辺、セントラル・パークには近寄らないというのが、 2000年以来、私のポリシーになっている。
2000年と言えば、プエルトリカン・パレードで50人もの女性が集団の男性に襲われ、 服を引きちぎられる等の性的暴行を受けた年である。
私はこの日のことは今もはっきり覚えているけれど、こんな事件が起こったことを知らされるまでもなく、 外を歩いていただけで「何かがおかしい」と感じる不思議な日であった。
この日、私は昔の仕事仲間5人とミッドタウンのレストランでブランチをすることになっており、 時間に遅れそうだったので、タクシーを拾おうとしていたけれど、 道を練り歩くヒスパニック系の男性グループや、車で通り過ぎる男性達が嫌らしい言葉を掛けてきて、 不愉快かつナーバスな思いをすることになった。 この日は、朝から非常に蒸し暑く、その蒸し暑さのために街中が一触即発的な空気に満ちているように感じられて、 昼間にも関わらず危険を感じたことは、当時何人もの友人に話したことである。
レストランに着いてみると、時間に遅れたにも関わらず、友人は誰も来ていなくて、 皆、パレードによる 例年にない 異常な交通渋滞に巻き込まれていた。 結局メンバーが4人揃ったのは待ち合わせの1時間後で、残りの2人は参加断念ということになってしまった。
夕方、ブランチを終えて自宅に戻ってからも、セントラル・パークの方からは 人がガヤガヤと騒ぐ声が聞こえており、大音響でラップ・ミュージックを掛けながら通り過ぎる車が何台もあったり、 大声で何かを叫びながら練り歩くグループ等も居て、 遅くまで落ち着かない日であったけれど、この日の夜のニュースで知ったのが セントラル・パークで起こっていた事件だった。
女性達を襲った男性グループは、殆どがお互いを知らず、その場で意気投合し、 ある種の興奮状態で、次から次へと女性のターゲットを見つけては、水を掛けたり、服を引きちぎったりして、 パーク内を走り回っていた。
私がこの事件から連想したのは、1つがジョディ・フォスター主演のレイプ裁判映画「Accused/アキューズド」、 もう1つは90年代前半に問題となった海軍でのセクハラ事件だった。 どちらも、至って普通の男性が集団で興奮状態となり、レイプやセクハラに及んだというもので、 1人だったら決してしないような行為を、集団で興奮状態にある際はモラルや分別がなくなって してしまうというのは、 単独の計画犯罪者よりも恐ろしいというのが私の意見である。
もちろん2000年の事件の際には、自分の着ているものを脱いで、服を引きちぎられた女性に掛けてあげるような 興奮状態に巻き込まれない、まともで親切な男性も居た訳であるけれど、 女性の立場からすると、こうした特殊な状況になってみないと、自分が付き合っている男性が果たして興奮してセクハラに加わるタイプか、 女性を助けようとするタイプかは分からないように思う。
私はそもそも人が大勢集まる場所が嫌いなので、ニュー・イヤーのカウントダウンやパレードには 決して出掛けないけれど、こうしたイベントに好んで出掛ける人は、集団心理がもたらす危険というものを 少しは考えて行動するべきだと思う。実際90年代半ばに行なわれたウッドストック・コンサートでは、 ステージ前で押し合いながら音楽に合わせて飛び跳ねていた女性が、 そのままの姿勢で複数の男性にレイプされるといった事件も起こっている。 この時は人があまりにギッシリ詰っていたので、女性は身動きが出来ず、大音響の音楽で 助けを求めても聞こえないという状態で、当事者以外は全くこのレイプに気がついていなかったという。

通常、この季節の週末に天気が悪いと行動半径が限られて損をした気分になるけれど、 2000年以来、プエルトリカン・パレードの日に関しては例外である。 今年は曇り空の上に、肌寒かったので、どんなにパレードが華やかに行なわれても、 度を越えて盛り上がることはないだろうと、ホッとしてしまった。


CUBE New York主催 第2回NY在住女性ネットワーク・パーティーのお知らせ

昨年末の第1回目からかなり時間が経ってしまいましたが、 第2回目のネットワーク・パーティーを来る6月20日に取り行なうことになりました。 是非ご都合をつけてご参加いただければと思います。
なお、今回は会場の都合で 参加ご希望の方にはR.S.V.Pをお願いしています。 詳細はココをクリックしてご覧下さい。





Catch of the Week No.1 Jun : 6月 第1週


Catch of the Week No.4 May : 5月 第4週


Catch of the Week No.3 May : 5月 第3週


Catch of the Week No.2 May : 5月 第2週