July 7 〜 13 2003




誇張はウソか?

先週のニューヨーク・タイムズに掲載されていた記事に、 「Bush May Have Exaggerated, but Did He Lie?(ブッシュは誇張したかもしれないが、彼はウソをついたか?)」というものがあった。
これはブッシュ大統領がイラク戦争や、大型減税についての国民の支持を取り付けるにあたって、 イラクが大量破壊兵器を所有していることや、減税によって国民全体が恩恵を受けるといったことを、 スピーチで誇張して語ったことに触れたもので、「物事を誇張して表現することは、果たしてウソと見なされるか?」を 検証した記事だった。
ことにアメリカがイラク戦争に踏み切った大量破壊兵器の存在については、 現在、その存在を否定する様々な証言が飛び出してきており、議論の真っ最中であるけれど、 この「誇張はウソに当たるか?」という問題を 世界政治や、国内経済といった非常に大きな問題ではなく、 自分の周囲の身近な出来事に置き換えてみると、 物事を誇張して表現することは、やはりウソであると言わなければならない。
例えば、メーカーが誇大広告をすれば、それは自粛するように勧告され、悪質な場合は 罰金や業務停止処分を受けることになる。
アメリカでは1番最近に誇大広告が問題視されたのはダイエット業界で、 「1週間で15キロ痩せる」という不可能な数字を謳って宣伝をすれば、それは誇大広告であり、 早い話がウソである。 でも多くのメーカーがプロダクトの説明書や広告の隅に、小さな文字で 「ダイエットの結果には個人差があります」と記載することによって「ウソ」扱いされるのを逃れているのである。
もっと身近なケースを考えてみると、例えばバーで女性を引っ掛けようとしている男性は、 自分の職業や収入、交友関係などを誇張して語り、女性の関心を引こうとするものである。
今の季節だったら「友達とハンプトンのサマー・ハウスをシェアしている」等と語ると、 女性達はその男性がサマー・ハウスのレントが払えるだけのリッチであるかと思ってしまうけれど、 実際は「友達がシェアしているハンプトンのサマー・ハウスを1週間だけシェアさせてもらった」だけだったり、 2ベッド・ルームのサマー・ハウスで10人以上が雑魚寝するというスラム街状態のシェアであったりする。
この他にも、株式で儲けた話、逆に損をした話でも、金額を必要以上に大きく語って、 「これだけ儲けた」とか「これだけ損をしても大丈夫なくらいは稼いでいる」というのは バブル期、バブル崩壊後に良く聞かれた誇張話だった。
人間は信じたい事を信じる傾向にあるから、自分の前に現れた男性が プリンス・チャーミング(いわゆる「白馬に乗った王子様」)だと思いたい女性であれば、 この誇張を信じるだろうし、男性側はそれが誇張であったのがバレる前に女性に連絡をして来なくなるものである。
だから疑うことを知らない女性だと、自分が本当にリッチな男性と付き合っていたのだと思い込むし、 その男性から連絡がなくなったのも、そういう男性には沢山ガールフレンドが居るものだと思って、 納得していたりする。
でも男性の「誇張=ウソ」が常に見抜けないほど 女性達がのんびりしていたり、経験不足であるということはない訳で、 そんな女性達を口説こうと思ったら、男性側には証拠が必要になってくる。 昨今では その証拠を提供するビジネスが登場していて、その中の1つとして知られるのは、 ATMマシーンのフェイク・レシート、すなわちウソの明細書をプリントアウトできるというサービスである。 このフェイク・レシートには、口座の現金残高として30万ドル(3600万円)以上の金額が記載されており、 男性はこのレシートを常に財布に入れて持ち歩くことになる。
そして知り合った女性に自分の電話番号を渡す際に、「紙が無いからコレで良いや」と無造作に そのレシートの裏に自分の電話番号を書いて渡すというもの。 すると、女性が後でこの明細書に気が付いて、30万ドルもの現金が銀行にある男性なら、 「株式と不動産を合わせれば、軽くミリオンは持っているだろう」などと逞しい想像力を働かせて、 男性に電話を掛けてくるというもので、実際にその効果は抜群なのであるという。
ふと考えてみると、イラクが大量破壊兵器を所有しているという証拠をでっち上げて、 その危険と恐怖を誇張することによって、戦争に踏み切ったブッシュ大統領と こうしたフェイク・レシートを使って、自らの財産を誇張することによって、 女性を口説こうとする男性というのは、大差が無いと思えてくるのは事実である。
でも明らかに異なるのは事の重大さで、「適当にごまかして、デートにこぎつければこっちのもの」 というのは、まだ「遊び」と解釈して 済ませられる部分があるけれど、 「適当にごまかして、戦争を始めてしまえばこっちのもの」 というのは明らかに社会を欺く行為だと思う。



リアル・ライフ・アンフェイスフル

12日の土曜日にケーブル・チャンネルで、昨年公開されたダイアン・レイン&リチャード・ギア主演の 不倫映画「アンフェイスフル」が放映されていた。私はこの映画を見ていなかったこともあって、 ビデオに録画し、夜中に見始めてしまい、結局、この後味のすっきりしない映画を 午前4時半まで掛かって見終えることになってしまった。
そして翌朝、13日のニューヨーク・ポストに掲載されていたのが、 写真左の「アンフェイスフル」からの1シーンを大々的にフィーチャーした、 アメリカにおける妻の不倫の実態についての記事だった。
この記事で紹介されていたデータは、妻の不倫についての実態を纏めた著書 「Passhion For More:Wives Reveal The Affirs That Make Or Break Thier Marriages」 から抜粋したものだったけれど、それによれば、 この本の調査対象となった既婚女性のうちの約60%が最低1回は不倫経験があり、 不倫経験者のうちの60%は、一夜の火遊びや短期的な付き合いではなく、 ある程度の期間の交際を望んでいる、もしくは望んでいたという。
また65%が夫よりも 愛人とのセックスの方がベターだと語り、 70%は 愛人が夫とは全く異なるタイプの男性であると答えているという。 愛人と関係を持っても、結婚生活を続けている女性は45%で、離婚して愛人と結婚した女性は25%。 すなわち不倫した女性のうちの4人に1人は夫と離婚をして、愛人と再婚したというデータが出ている。
さらにこの記事がショッキングであると伝えているのは、不倫をしている女性の90%が全く罪悪感を持っておらず、 かえってその秘密の関係を楽しみ、不倫から幸福感や満足感を得ているという部分であった。
そしてこの数字を裏付けるように紹介されていたデータが、 自分の結婚が幸せだと思って不倫をする夫が56%であるのに対し、不倫をする妻は34%しか 自分の結婚が幸せであると考えていないという点で、妻にとっての不倫は 不幸せな結婚生活からの逃避であったり、結婚生活から得られないものを得ることが出来る 幸福なひと時であることを窺い知ることが出来る。
専門家によれば夫の不倫は、男性としてのプライドを満足させるためだったり、 肉体的な欲望のはけ口であったり、単に格好の相手が存在しているからである場合が殆どであるのに対して、 妻の不倫は、単なる肉体的な関係ではなく、相手に対して精神的つながりや理解を求めており、 恋愛感情が深く絡んでいるだけに、深刻な事態を招く場合が多いという。
さらにこの記事の中で紹介されていて、私が個人的になるほどと思ったのは、 不倫相手とどうやって出会ったか?というデータ。 トップはもちろん職場で女性の46%、男性の62%が職場で不倫相手を見つけているという。 第2位は相手が友人であったというケース、第3位は以前付き合っていた相手、 第4位は隣人や近所に住む知り合い、そして第5位がインターネットのマッチ・メイキング・サイトという 結果が出ている。
私は、ある不倫経験者から「不倫というものは、しようと思ってするのではなくて、 ふとしたきっかけから始まってしまうもの」と聞いたことがあるので、 この不倫相手のデータの1位〜4位までが、少なくとも一定期間以上、身近に存在している人物であるという点に 妙に納得してしまった。
逆に言えば、映画「アンフェイスフル」の中で、ダイアン・レインが若い愛人に出会うきっかけというのは 映画ならではの、リアリティのかけらも無いものだった。 この映画の中では、風の強い日にソーホーの街角で、それぞれ両手に荷物を抱えていた2人がぶつかってしまい、 ダイアン・レイン扮する主人公は転んで膝を擦り剥いてしまう。 それが丁度男性のアパートのビルの前だったので、男性が彼女を自分のアパートに連れて行き、 彼女がバス・ルームで膝の手当てをしている間に、彼が紅茶を煎れてあげるというものだった。
もちろんその時は何も起こらず、2人はそのまま別れるけれど、その後、彼女がお礼の電話をしたことから、 再び彼に会うことになり、その後は映画を見なくても察する通りである。
私は14年以上ニューヨークに住んでいるけれど、大の大人が正面衝突をして、転ぶほどの強風など 体験したことがない。しかも高層ビルの無いソーホーで、ビル風並みの強風が吹くというのは、 さらに信じ難いし、男性が出会ったばかりの見知らぬ女性をアパートに招き入れるのも、 女性が見知らぬ男性のアパートに1人で上がって行くのも、 ここニューヨークではそう頻繁に起こるとは思えないのである。
たとえ100歩譲って、こうした万に1つの偶然が3回重なったとしても、 女性がダイアン・レインのようなルックスで、男性がオリバー・マルティネスのルックスで、 互いに惹かれ合う可能性は、宝くじに当たる確率より低いと言える。
でも、NYポストの記事によれば、不倫をしている女性は、映画の中のダイアン・レインのように、 不倫のために、必死で自分の時間をやりくりするようになるとのことで、 もし、それが本当なのであれば、ウソをついたり、時間に追われて走りまくったりして、 それは大変な努力を強いられることになる。
1度結婚をしてしまうと、別の人を好きになった時に、こんな悲惨な思いをするのかと思うと、 「やっぱりシングル・ライフは気楽で良い」と感じるのが、シングルである私の素朴な感想である。





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