July 14 〜 20 2003




Not So ロング・ヴァケーション

サイトでもお知らせしていた通り、CUBE New YorkがCubicle Jewels の商品製作を依頼している ダイヤモンド・ディストリクトは7月1日から14日まで夏季休業に入っていた。
休みが明けて久々にディストリクトに行ってみると、業者は皆、少し日に焼けた顔をしていたけれど、 貯まりに貯まったオーダーをこなすために、休み明け早々からオーバータイムで働いて、既に すっかり疲れきっていた。
業者の殆どは、2週間クローズしていても、実際にヴァケーションに出掛けていたのは1週間程度で、 残りの1週間はインハウス・ヴァケーション、すなわち家に居て、時々ビーチに行ったり、 家でくつろいだりという感じだったらしい。 彼らとて2週間も休みたくないらしいのだが、ビルディング自体がクローズしてしまうので、 休みを取らざるを得ないというのが実情なのである。
その結果、業者は休暇の前後にオーダーが集中するので、とんでもなく忙しい思いをして、 グッタリしながらヴァケーションに突入し、ヴァケーションが終わった途端に、また 地獄のような忙しさが始まることになり、かえって夏季休業がプレッシャーになっているとさえ感じられるほどである。
この事はダイヤモンド・ディストリクトに限ったことではなく、 ニューヨークの多くのビジネス・ピープルに言えることで、 休みを取ろうとすると、仕事にしわ寄せが来るというのは、私も含め、誰もが経験することである。
その反面、ダイヤモンド・ディストリクトでもウォール・ストリートでも 2週間休んでも全く仕事に影響の無い人々が居る。 それはセキュリティ・ガードたちで、ダイヤモンド・ディストリクトの セキュリティ達は、休み前はとても嬉しそうだったし、休み明けはすっかり英気を養ったという感じで、 非常にリラックスしていた。 顔見知りのセキュリティに「2週間何処に行っていたの?」と訊いたら、 「2週間じゃなくて3週間休んでいたんだ。半分メキシコに行って、その残りで 親に会いにジョージアに帰っていたんだ」とのこと。
考えてみればニューヨークでホワイト・カラーがこんな休み方が出来ていたのは、90年代初頭までの話である。 この頃は、一流レストランも7月から9月第1週目のレイバー・デイまでクローズしていたし、 企業のエグゼクティブもヨーロッパで2ヶ月を過ごすというのが一般的なサマー・ヴァケーションだった。
だからこの時代は、6月末になると「See You In September」というのが別れの挨拶で、 9月のレイバー・デイを過ぎると「How Was Your Summer」が再開の挨拶だった。
皮肉なことにホワイト・カラーがこんなラグジュアリアスなヴァケーションを楽しめなくなったのは、 好況に突入してからで、皆お金儲けに忙しくて「夏だからといって休んでいられない」ようになってしまったのである。
それと同時に夏のラグジュアリアスはニューヨーク郊外のハンプトンで週末を過ごすことに変わっていき、 週末しか使わないハンプトンのサマー・ハウスのレントに、2ヶ月ヨーロッパ旅行をしているのと 同じくらいの大金を投じるようにもなってしまった。
ニューヨーク・タイムスのジョブ・マーケット(求人)セクションのコラムによれば、昨今では 「ラグジュアリアスなヴァケーションに出かけるよりも、 ラグジュアリアスなヴァケーションに出掛けているような時間やエネルギーが無いほど 仕事で忙しい方がラグジュアリーなことだ」そうだけれど、 このことはレイオフされて、失業手当でヴァケーションを楽しんだものの、 その後一向に再就職出来ない人にとっては、痛烈に実感することのようである。
そもそも休みが楽しいのは、仕事で忙しいからであって、 まともに勤勉な人なら、仕事がなくなって休んでばかりいたら、仕事で忙しくなりたいと感じるのは、 経済的な理由も含めて当然のことと言える。
私は決してセキュリティ・ガードになりたいと思ったことはないけれど、 休んでも仕事に影響のない職業というのは、やはり非常に羨ましいと思う。 でも休むために仕事をしている訳ではないから、好きな仕事をしてなかなか休めなくても、 それほど文句はないというのが正直な本音である。



ハッピー・メイクオーバー

アメリカは今もリアリティTVの大ブームだけれど、 そんな中、先週スタートして話題を集めているのが、「Queer Eye For The Straight Guy / クィアー・アイ・フォー・ザ・ストレート・ガイ」という一味異なるメイクオーバー番組である。
これはアート&シネマ・チャンネルとして知られるブラヴォーというケーブル局が スタートさせた新リアリティ・シリーズで、1時間の番組の中で、 自らをFAB 5(ファブ・ファイブ、ちなみにファブとはファービュラスの短縮ヴァージョン)と呼ぶ ゲイ男性5人組のチームが、全く身の回りに気を使わなかったストレートの男性の ヘアスタイルやファッションはもちろんのこと、インテリア、フード、マナー等、 ライフスタイル全体をメイクオーバーするというものである。
ゲイの男性にはいろいろなタイプが居るけれど、概して彼らは ストレート男性より遥かにオシャレで、二ートにグルーミングをし、 インテリアやワイン、音楽にこだわりがあり、エンターテイニングにも長けた ライフスタイル・パーフェクショニスト(完璧主義者)が多いのは、アメリカで一般的に認識されていること。
それだけにゲイ男性は、ビューティー、ファッション、ファッション・メディア、 インテリアを始めとするデザイン業界のクリエイティブ・ポジションでは その卓越したセンスで圧倒的なマジョリティを占めており、 どんなにファッショナブルな女性でも、彼らからのアドバイスならば素直に聞く傾向にあるのは事実であったりもする。
しかし反面、ストレート男性の間では、 「ニートに装い過ぎて、ゲイに見られたくない」というゲイ・フォビア(恐怖症)は今も根強く、 いくら映画やTV番組等、ポップ・カルチャーのレベルでは、ゲイの存在が一般的に フィーチャーされ、ゲイが特別な人種であるという意識が希薄にはなったとは言え、 果たして、ゲイ男性の視点によるメイク・オーバーをストレート男性がどの程度進んで受け入れるものかは、 ちょっと興味をそそる部分であった。
さて、その記念すべき番組第1回目の放映分で、ファブ5のターゲットとなったのは「ブッチ」というニックネームで知られる アーティスト。写真左上を見れば分かる通り、9年間ヘア・カットをしていないという彼は、 見た目に全く気を使わず、それと同時に部屋の中も竜巻の後のように散らかりまくっている、 典型的な 「身の回りに関心を払わないアメリカのストレート男性」である。
ファブ5には、それぞれファッション、グルーミング、インテリア、フード、マナー&ソーシャルという担当があり、 それぞれが分担して彼のライフスタイルをメイクオーバーしていくけれど、 先ず始まるのが、現行のライフスタイルのチェックである。ファブ5は彼の部屋の汚さや髪型の酷さに 「アグリー!」を連発しながら、コテンパンにけなすけれど、 馬鹿にしているというよりは、ユーモアとして捕えられる範囲内で止まっているところには、 ゲイの心配りとセンシティビティが現れていたりする。
そして、ゴミと共に彼がそれまで着ていた服を捨てる作業が始まり、 ブッチをヘア・カットやタンニング・サロン、ワードローブのショッピングに連れて行っている間に、 インテリア・メイクオーバーや、フードの買い物が行なわれることになる。
ブッチはこの日の夜、ギャラリーのグループ展に初めて自分の作品を出展するパーティーがあるため、 インテリアと、ファッションを含む彼の外観のメイクオーバーの他に、 パーティーでいかにミングルするかを彼に教えるのもファブ5の仕事である。
そしてすっかり生まれ変わった彼(写真右)に対して、注意事項を山ほど言い残して5人はその場を去り、 あとはパーティーに出かける準備をするブッチと彼のパーティーでの振る舞いを、 モニターを通して見ながらチェックすることになる。
結果的にブッチは、ファブ5に言われた通りに、髪をスタイリングし、ファッションをバッチリ決めて、 ギャラリーで出すフードの準備をしてパーティーに出掛け、パーティーでは その変身ぶりで友人達をビックリさせることになる。 そして社交的な振る舞いで、多くの人達と会話をし、ファブ5をすっかり満足させることになる。

この番組は、ゲイのクリエーターの間では「気に入らない」という声も聞かれるけれど、 他の番組の女性を対象としたメイクオーバーが、単にヘアカットやメイクをし、 1枚のファッションを変えるのに対して、 この「クィアー・アイ…」はワードローブ全体をシューズに至るまで総入れ替えし、 彼が暮らすアパートもニートにスタイリッシュにデコレートし直してしまい、 人に接するマナーや、フードに至るまでのレクチャーをするというグローバルなライフスタイル・アプローチをしている点で、 他のメイクオーバー番組よりも、意味があるし、そのメイクオーバー効果が遥かに高く、 持続するものだと思って見ている。
また私が好感を持ったのはメイクオーバーされる側のストレート男性で、 既に2回放映された同番組では、どちらもストレート男性が非常に素直にファブ5の意見を聞き、 真剣に彼らから学ぼうという姿勢が見られた点だった。
これが女性のメイクオーバーとなると、どんなにセンスの無い女性でも必ず好みや 自分のスタイルを主張したり、提案されたものを試す事もなく嫌がったりするけれど、 こうした女性達に比べて、ブッチやもう1人のストレート男性は、 自分のメイクオーバーに至って協力的で、謙虚であった。

実は、私は自分でも人にメイクオーバーをしてあげるのが好きで、 これまでにメイクを中心に数え切れないほどの人のメイク・オーバーをしてきたけれど、 メイクオーバーをされたい側の人というのは以下の5つのタイプがあると思う。
  1. センスが無い訳ではないのに、全く自分に構わなかった人。

  2. センスはあるけれど、間違った手の掛け方をしている、もしくは手を掛け方が分からない人。

  3. センスはそこそこあるけれど、手を掛け過ぎている人。

  4. センスが無くて、間違った手の掛け方をしている人。

  5. センスが無くて、手を掛けなかったけれど、自分を変えたいと思っている人。

この中でメイクオーバーが最も効果的に浸透し易いのは2番目のタイプで、このタイプが 一度自分をより良く見せるためのフォーミュラを掴むと、 自分自身でどんどんクリエイティブな展開を見せるようになるのである。
では逆にどのタイプが最もメイクオーバーがその場限りになるか?と言えば、 特にタイプは無いけれど、努力を怠り、物事を面倒くさいと感じる人はメイクオーバーが 瞬間芸に終わる可能性が非常に高いし、メイクオーバーされて「自分も真剣にメークをすれば こんな風になれるんだ」ということだけを確認して、「何かイベントがある時だけ、こうしよう」と メイクオーバーを日常ではなくスペシャル・オケージョンとして捕える人も、成果が現れない例である。
でも毎日メークをしていない人が、特別の時だけしっかりメークをしようとしても、 そんなに上手く行くはずはない訳で、私の持論では、 料理と化粧は毎日やっていた方が、早くて、上手くなるのである。
また「クィアー・アイ…」ではインテリアに大々的に手を入れていたけれど、 外観だけでなく、住む場所というのは人間心理に大きな影響を与えるから、自分を変えようとした場合、 部屋の中をリデコレートするのは、とても大切なことだと思う。
「クィアー・アイ…」がこれだけライフスタイルをトータルにメイクオーバーできるのは、 1時間番組を制作するバジェットをつぎ込めるためで、ざっと計算して6000〜8000ドル程度が 毎回登場するストレート男性のワードローブやインテリア、グルーミングに費やされている感じである。
でも「クィアー・アイ…」の番組の1番の醍醐味は、その変身ぶりだけでなく、 メイクオーバーされた男性が新しい自分にエキサイトすると同時に、自信を持って振る舞うようになり、 それを見たファブ5達がまるで自分の事のように喜ぶ姿で、ろくなニュースが無いご時世だけに、 こうしたハッピー・エンディングを見ていると、非常に心が和むと言わなければならない。





Catch of the Week No.2 July : 7月 第2週


Catch of the Week No.2 July : 7月 第1週


Catch of the Week No.5 June : 6月 第5週


Catch of the Week No.4 June : 6月 第4週