Aug. 2 〜 Aug. 8 2004




アメリカで盛り上がらない2つのもの

現在のアメリカで、予想に反して関心が高まらないものと言えば、 テロ警戒のカラー・コードが再びオレンジになったこと、そして8月13日にオープニング・セレモニーを 迎えるアテネ・オリンピックである。

「カラー・コード:オレンジ」に関して言えば、テロ警戒カラー・コード・システムが導入された2002年3月以来、 「テロが起こる危険性が高い」ことを意味する「オレンジ」となったのは 今回で6回目であるけれど、 これまで「カラー・コード:オレンジ」の時期に、アメリカ国内、及び国外で、テロ行為が起こったことは 1度も無い訳で、アメリカに暮らす人間にとっては だんだんとこの警告が、 イソップ物語の「狼が来た!」と村人を驚かせては喜んでいた少年の状態になりつつあるのが実状である。

システム導入以来のアメリカは、通常の状態の警戒カラー・コードが「テロの危険がやや高まっている」ことを意味する 「イエロー」で、これが初めて「オレンジ」にアップしたのは、9/11テロ1周年の前日、2002年の9月10日のことだった。 この時は 空港はもちろん、テロ1周年のイベント会場や、ありとあらゆる高層ビルで厳重な警戒が行われ、 翌11日のテロ1周年記念日は、ニューヨーク市内の多くの企業が テロへの心配もさることながら、あまりに厳重な警戒と広範囲の交通規制を理由に、 臨時休業とせざるを得ない状況であった。

2回目にカラー・コードがオレンジになったのは2003年の2月で、この時は ホームランド・セキュリティ(国家安全保障機関)が薬物テロの可能性を示唆し、それから身を守るために 国民にダクト・テープやフラッシュ・ライト(懐中電灯)の購入、3日分の食料の備蓄を呼びかけたため、 ハードウェア・ストアやスーパー・マーケットが繁盛を見せ、景気刺激策としての効果は見せていた。 結局、多くのニューヨーカーは、その後降った大雪の際に、ダクト・テープで隙間風を防ぎ、 備蓄食料のお陰で、外に買い物に行かずに済んだため、ホームランド・セキュリティに 皮肉交じりの感謝をすることになったけれど、この時に予約待ちまでして ガス・マスクを購入した人々は、未だその使い道が無いままになっている。

3回目のコード:オレンジは、イラク戦争開戦の際で、開戦2日前の17日に警戒コードがアップしたけれど、 コード:オレンジに非常に緊張感があったのはここまでだった。 その後、2003年5月、12月にそれぞれコード:オレンジが警告され、その都度、 物々しい警備体制が敷かれて来たけれど、さすがに2年足らずの間で6回目の「オレンジ」となると、 人々の緊張が緩んでくるのは 自然の成り行きというものである。
ことに今回のコード:オレンジは、民主党党大会の翌週、通常ならば 民主党大統領候補への支持が 急激にアップするはずの時期に発せられているだけに、民主党やその支持者にとっては ブッシュ政権の政治的手段としか見受けられないタイミングで、 実際、支持率稼ぎのために テロへの警戒を煽るブッシュ政権の姿は、 全米で$100ミリオン(111億円)を稼ぎ出したマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー 「ファーレンハイト911」の中でも描かれていたりする。
アンケートによれば、今回の警告を信じると答えたアメリカ国民は46%、信じないと答えたのは44%で、 メディアにしてもFOX、NYポストといったブッシュ寄りのメディアが 一大事として報道している一方で、NYタイムスやワシントン・ポスト紙が、今回の警告を 疑わしく捕える報道し、それに対してホームランド・セキュリティが弁明をするなど、 かつては一方的に受け入れていた「テロ警戒への警告」に対するリアクションが変わりつつあるのは 実感出来るところである。


その一方で、オリンピックについては、開催2週間前の時点で、アメリカ国民の半分以上が今月13日の金曜からオリンピックが 始まる事を知らなかったり、開催地がアテネである事を知らない等、 現時点では過去数回のオリンピックの中で、最も関心が低い大会となっている。
アテネでの会場、及び施設準備の遅れは、世界中で報道されていた通りであるけれど、 IOC内部では7月上旬まで、アテネ開催を断念して、 時期を遅らせた シドニーでの開催案が出ていたほどで、アメリカでのオリンピック放映権を 独占で買い取ったNBCの撮影クルー達は、7月から現地の風景やカルチャーの映像を撮るために アテネ入りしてをしていたものの、滞在しているホテルは水も出ない状態だったことがレポートされている。
今回、アメリカでオリンピックがこれだけ盛り上がっていない理由の1つは、 スター選手の不在が挙げられており、このため企業スポンサーが付き難いことから、 オリンピック関連のCMや雑誌広告が過去の大会に比べて極めて少ないことが指摘されている。 アテネ・オリンピック参加選手で、唯一パブリシティを集め、スポンサーからミリオン単位の契約金を 受け取っているのは、水泳のマイケル・フェルプス(写真右)で、彼には72年のミュンヘン・オリンピックでマーク・スピッツ(アメリカ)が打ち立てた 1大会7つの金メダルの記録に並ぶ期待が掛けられている。
彼はAT&TワイヤレスやVISAカード、時計のオメガ等から、約2億円以上の広告出演料が支払われており、 スイムウェア・メーカー、スピードは、彼が今大会で7つの金メダルを獲得した場合、1億円のボーナスを支払うと 明言しているけれど、彼はアテネ参加選手の中では極めて特別な存在である。 スポンサー企業にとってオリンピック選手は、プロ・スポーツ選手よりも遥かに安く契約できるという 利点があるものの、彼らが注目を集めるのはオリンピック開催期間の2週間程度で、 メダルを取れば その後もある程度のパブリシティが得られるものの、 基本的には息の短い投資対象であり、しかも昨今では選手のドーピングによるイメージダウンを 恐れる企業が多く、以前よりもオリンピック選手への スポンサーシップは控えめになっているのが実状である。

でも開催中のTVCMについては、放映局のNBCは既にその96%のCMスポットを売り切っており、 オリンピックの開催を待たずして、$50ミリオン(約55億円)の利益を上げることが 確実視されているという。
前回のシドニー・オリンピックでは、時差の関係で24時間も遅れて試合を放映したり、 選手のプロフィール紹介のビデオが長過ぎるなど、退屈な番組構成で批判を浴びたNBCであるけれど、 今回は、傘下のケーブル・ネットワークを駆使して、開催期間中、合計1,210時間の 報道を行う体制を整えており、モーニング・ショーや夜のトークショーにも、 オリンピック選手をゲスト出演させ、視聴率獲得を狙っていることが伝えられている。

でもアテネ・オリンピックについて、アメリカのメディアやオリンピック関係者が 最も気にしていると同時に、その成り行きに関心を寄せているのは、 イラク戦争で、すっかり「人気」がなくなっているアメリカに対して、 世界各国(から集った観客)が どういうリアクションを見せるか?ということである。
民主党党大会で、ケリー候補が「世界から信頼されるアメリカを取り戻す」と そのスピーチで語っているだけに、もしオリンピックでアメリカ選手がブーイングを受けることがあれば、 そのことは選挙戦で ブッシュ政権に不利、ケリー陣営に有利に働くことになるかもしれない。







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