Aug 24 〜 31 2003




Hottest Bag Of The Summer, Jelly Kelly!!!

この夏、ヴィトンのムラカミ・ヴァージョンのモノグラムよりも、ホットなバッグに なってしまったのが、「ジェリー・ケリー」と呼ばれるエルメス・バッグのイミテーション。
このバッグが一般に広く知られるようになったのは、8月12日付、火曜日のニューヨーク・タイムズ紙が それまで静かに進行していた「ジェリー・ケリー」フィーバーを、そのファッション面で大きく報じてからであった。
このジェリー・ケリーはドレス・デザイナー、スティーブン・ストルマンが 数ヶ月前にミラノを訪れた際に見つけたもので、これをイタリアの工場にオーダーして 彼のブティックで販売し始めたことからニューヨークで広まり始めたもの。 「ジェリー・ケリー」というネーミングの「ジェリー」というのはジェリーのように透き通った カラフルなゴム素材(実物は半透明といった方が正しいもの)を用いているからであるけれど、 実際のバッグのスタイルは「ケリー」というより、明らかにバーキン。 肩から掛けられるほどにストラップが長い以外は、「ゴム製バーキン」と呼ぶに相応しいものになっている。
このバッグはスティーブン・ストルマンのブティックで145ドルで販売されていたほか、 同様のバッグがヘンリ・ベンデルでも販売されており、1日に60個を売り切るほどの 大人気を博していた。
ところが ちょっと有名なフェイクが出て来ると、必ず乗り出してくるのがご本家エルメス。 同社が偽物のモニター役として雇っているニューヨークの法律事務所、カークランド&エリスが、 デザイナー、スティーブン・ストルマンを相手取って コピーライト違反等の訴えを起こしたため、 これを販売する予定で その入荷を待っていたストアや、 初回入荷分完売後、再入荷のウェイティング・リストに顧客の名前が連なっていたヘンリ・ベンデルは、 訴訟を恐れて、その取り扱い中止を決定するに至っている。
この他、エルメスはこれを生産したイタリアの工場に対しても訴えを起こそうと動いていると言われるけれど、 スティーブン・ストルマンについての訴訟は、既に示談が成立した事が伝えられている。
結果的に、エルメスが介入してきたことで、ニューヨークではジェリー・ケリーを手に入れる望みは 無くなってしまったけれど、「売っていない」「もう、手に入らない」といわれると、どうしても欲しくなるのが 人情というもので、以来、オークション・サイト、Eベイはこのジェリー・ケリーを 捜し求める人々でアクセス数がアップしたことが伝えられている。
既にこんな騒ぎになる前からEベイに登場していたジェリー・ケリーであるけれど、 エルメスが訴訟を起こして以来、その価格は2倍に跳ね上がり、「歴史上最も高価なゴム製バッグ」とさえ 言われるほどである。 しかし、Eベイ、ヤフー・オークションといったウェブサイトに出品された商品とて、 エルメスからの警告や訴訟の対象になり得る訳で、実際にカークランド&エリスのスタッフは毎週10〜20時間を掛けて、 オークション・サイトで販売されるエルメスの偽物に目を光らせていることが伝えられている。

さて、私がこのジェリー・ケリーの存在に気が付いたのは、アッパー・イーストサイドを歩いている時に これを持っている人を何人も見かけるようになっていたためで、 NYタイムズの記事が出てからはその存在が益々目につくようになっていた。
そして先週、アッパー・イーストのスターバックスでラテを飲んでいたところ、隣に座った女性が 偶然ジェリー・ケリーのからし色ともベージュとも言えるようなカラーを持っていたので、 思わず「何処で手に入れたの?」と声を掛けてしまった。 その女性によれば、NYタイムズの記事以来、1日10人くらいの人に同じ質問をされるのだそうで、 彼女は初めは入手先を教えるのを渋っていたけれど、話しているうちに、 「もう売っていないかもしれないけれど、試してみる価値はあるかも...。」 と言いながら手帳を開き、アルファベットが4文字並んだメール・アドレスを紙に書いてくれた。
彼女もそのメールアドレスは友人に教えて貰ったとのことで、そこにメールを出して、 返って来たメールに従って、ウェスタン・ユニオンという金融会社を通じてお金を振り込んだところ、 商品が送られてきたのだという。 払った金額は、Eベイよりもずっと安い150ドル程だったそうで、彼女がジェリー・ケリーを 手にしたのは8月半ば頃だったという。
そこで、私も早速家に戻って渡されたアドレスにメールをしてみたけれど、 直ぐに宛先不明でメールが戻ってきてしまった。 でも私の場合はあくまで興味本位で、実際のところは それほど欲しい訳ではなかったので、 特にがっかりはしなかったけれど、この話をした友人は自分の事のように悔しがってくれた。

私に言わせれば、今回のジェリー・ケリーの騒動がこれだけ大事になって、 ジェリー・ケリーが「Hottest Bag Of The Summer」と言われるようになったのは、 エルメスが訴訟を起こすなどして 騒ぎ始めたからである。
エルメス側は、166年の歴史を持つ由緒あるブランドとその商品のイメージが、 145ドルのゴム製の安物で傷つけられるとか、「デザインを勝手に使われて偽物が氾濫すると 本物が売れなくなる」等という理由で、年間に億円単位の予算をこうした偽物の 摘発と取り締まりに当てているけれど、こうやって裁判を起こしたり、 偽物の出回り具合をメディアに公表することによって、 他の一流ブランドよりも遥かに広告費を使っていない同ブランドが、絶好のパブリシティを獲得していることは紛れもない事実である。 これについてはエルメス側は、同社が「偽物に対して断固たる姿勢を取るところを メディアを通じて示す」ことを意図しているというけれど、見方を変えれば 「女性達がコピー品でも欲しがるバーキン」、「コピーが耐えないほどの人気バッグ」という イメージを定着させようとしているようにも見えるのである。
でもブランド品というのは、偽物が出回るから、本物を買いたがる人々が絶えない訳で、 ことにバーキンのような5000ドルクラスのバッグは、145ドルの偽物にしか手が届かない人には 一生掛かっても買えないバッグであるし、バーキンを色や素材、サイズ違いで5つも6つも持っているリッチな女性達は、 ジェリー・ケリーを買ったからと言って、本物を持たなくなるとか、本物を買わなくなるということは 決してないと断言できるものである。だからゴム素材のバックくらい売らせておけば良いのに…というのが 私の正直な気持ちであったりするのである。
特にアメリカではバーキンのオーダー受け付けを一時的に停止してから1年以上も経つ訳で、 「偽物を取り締まる暇があったら、本物を売る努力をするべきだ」と思っているエルメス・ファンは少なくないのである。

デザイナーの中には、コピーされることに神経質になるデザイナー、 コピーを全く気にしないデザイナーが存在するようだけれど、 時を遡れば、あのココ・シャネルは 街中に彼女の商品の安物コピーが氾濫していると 聞かされて「やらせておきなさい」と語ったことで知られる存在。 一方シャネルと同じ頃に、パリのファッション界のスター・デザイナーであったポール・ポアレは、 コピーを毛嫌いして、取り締まったことが伝えられている。
でも当時のシャネルのファッションは、現代人が見ても「シャネル」だと分かるのに対して、 ポール・ポアレについては よほどファッション史に詳しい人でもない限り、 その作品はおろか、デザイナーの名前さえ知り得ないことを考えれば、 コピーによって知名度を得たり、デザインが広く出回ることは、 ブランドにとってもそれほどマイナスではないように思えるのである。
現代のファッション界でトレンドセッターと言えるデザイナーは、トム・フォードやミューシャ・プラダであるけれど、 それぞれがグッチやプラダのファッション・ショーで見せるスタイルは、 安いアパレルがコピーをして、それを大勢の人々が着用するから「トレンド」と認識される訳であり、 グッチやプラダのオリジナルを、先進諸外国の主要都市で、合計500程度の人々が着ていたところで、 誰もトレンドだとは気が付かないのである。
そもそもコピーというのはオリジナルが存在するからあり得るもので、 オリジナルが「売れそう、流行りそう、皆が欲しがりそう」だから真似をする訳である。 だから「Imitation is the sincerest form of flattery / イミテーションこそ最大の賛辞」であると同時に、コピーされなくなった時は、 「そのブランドがホットでは無くなった」と見なされる事になる。

さて、数的にはジェリー・バーキンよりも、遥かに沢山のコピーが出回ったのが ヴィトンのムラカミ・ヴァージョンのモノグラムであったけれど、 初夏にチャイナタウンを訪れたヴィトンのデザイナー、マーク・ジェウコブスは、 キャナル・ストリート・エリアで販売されている自分のコピー・バッグの種類の多さと クリエイティビティに驚き、怒るどころか「スゴイ!」を連発してエキサイトしていたことが伝えられている。 中でも彼が感心していたのは、ムラカミ・バージョンでは出していないデザインを ムラカミ・バージョンに作り変えていたもので、彼は気に入ったフェイクを買って帰ったことさえ伝えられている。

注:写真上ニューヨーク・タイムズの記事に掲載されている右側のベージュのバッグ、及び写真左側のニューヨーク・ポスト誌に 掲載されたサラー・ジェシカ・パーカーが下げているブルーのバッグは、ジェリー・ケリーではなく、 エルメスのオリジナルのバッグです。これらは、ジェリー・ケリーと比較するためのオリジナル写真として 掲載されているものですので、ジェリー・ケリーではこれらのスタイルや、カラーは出ておりません。
またニューヨーク・タイムズの写真はその透明感を強調するために中央のバッグの写真の 画像処理をしておりますので、この写真からバッグの透明感をご判断されないようになさって下さい。

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Kiss Of The Week

今週の後半、アメリカで最もパブリシティを獲得していたのが、木曜日に行なわれた MTVビデオ・ミュージック・アワード(以下VMA)のオープニングで マドンナとブリットニー・スピアーズが見せた オープン・マウス・キスであった。
今年で20回目を数えるVMAは、過去にも94年にマイケル・ジャクソンと当時彼と結婚したばかりの リサ・マリー・プレスリーがステージ上でキスを披露したり、昨年には やはりマイケル・ジャクソンが 彼の誕生日祝いを「アーティスト・オブ・ミレニアム」という賞の受賞だと勘違いして、 トンチンカンなスピーチを行なった等、様々な話題やスキャンダルを提供するアワード・ショーとして知られる存在。
そんなVMAは何故か「極秘」とされるイベントが2〜3日程前になると 必ずNYポストのようなタブロイド・メディアを通じて その内容が伝わり、 話題を煽って視聴率を稼ぐという裏技が ここ数年行なわれてきており、 今年も、火曜日の時点ではブリットニーが1984年のVMAでマドンナが見せた「ライク・ア・ヴァージン」の パフォーマンスを真似てウェディング・ドレスで登場し、新郎としてタキシードで登場したマドンナと レズビアン・ウェディングを披露し、マドンナとギャップのCMで共演したラッパー、ミッシー・エリオットが 牧師役でパフォーマンスに加わるという噂が既に流れていた。
蓋を開けてみると、パフォーマンスはその通りで、 巨大なウエディング・ケーキのセットから、84年のマドンナの衣装にそっくりの ウェディング・ドレスを着用したブリットニーが「ライク・ア・ヴァージン」を歌いながら 登場したけれど、噂で語られていなかったのは、このパフォーマンスにクリスティーナ・アギュレラが加わるということ。
2人は、その後モーニング・ジャケットを着て登場したマドンナと一緒にパフォーマンスを見せたけれど、 その中で起こったのがマドンナとブリットニーのオープン・マウス・キス。(口を開けた状態でのキス)
その直後、マドンナはクリスティーナとも同様のキスを行ない、噂通りパフォーマンスに 加わったミッシー・エリオットと4人でステージを締めくくることとなった。
これ以降、VMA出演者の間でも、VMAについて報じるメディアでも、 話題はこのキスに集中していたけれど、そのリアクションは「衝撃的」と感じた人と、 「レズビアン・キスなんて今さら珍しいことじゃない」と反応する人に分かれたようだった。 実際セレブリティ同士のレズビアン・キスは3年前に、人気TV「フレンズ」の中で ジェニファー・アニストン&ワイノナ・ライダーが既に演じていたりするのである。
私にとっては、それよりも見ていて面白かったのは、ブリットニーの元ボーイフレンド、 ジャスティン・ティンバーレイクがキスの後に見せた表情で、彼の何とも言えない憮然とした無表情を 捕えたMTVのカメラは絶妙のタイミングだった。
そして私がもう1つ感じたのは、このパフォーマンスでクリスティーナがかなり損をしていたことで、 ステージへの登場にしても、マドンナとのキスにしても、 ブリットニーが先に登場して、先にキスをしているので、ブリットニーの方が、 遥かに観客やTVの視聴者へのインパクトが強くなっていた。 特にキスについては、ブリットニーとマドンナのキスをカメラがキッチリ捕えた一方で、 マドンナが振り向いてクリスティーナとキスをした時にはカメラの切り替えが間に合わず、 「オマケのキス」程度の遥かにインパクトの低いものになっていた。
このパフォーマンスはブリットニーの後に登場して 損をして来たクリスティーナのキャリアを象徴するようなものだったけれど、 翌日のNYポストでは、「今回の4人のパフォーマンスよりも、1984年のマドンナの1人のパフォーマンスの方が、 もっとエキサイティングだった」と評されていた。
私はこの84年のマドンナのパフォーマンスを日本で見ていたけれど、 その放映では、マドンナがウェディング・ドレスの下のガーター・ベルトや下着を見せながら、 ステージで転げ回りながら歌っている姿に、画像処理がされていたのをはっきり覚えていて、 当時の日本のTV局にとっても、かなりきわどい映像として捕えられていたようである。
今回のキスや4人のパフォーマンスがこの時のマドンナを越えたとは言えないかもしれないけれど、 メディアが暫らく話題にするだけのインパクトや、パフォーマンスとしての エンターテイメント性はあったと言うのが私の偽らざる感想である。





Catch of the Week No.4 Aug. : 8月 第4週


Catch of the Week No.3 Aug. : 8月 第3週


Catch of the Week No.2 Aug. : 8月 第2週


Catch of the Week No.1 Aug. : 8月 第1週