Jan. Week 2, 2013
” Galette des Rois ”
” ガレット・デ・ロア ”



ガレット・デ・ロアは、フランスで新年に食べるケーキ。
ガレットとは円形のお菓子や食べ物を指す言葉で、ロアは 王様という意味。 なので ガレット・デ・ロアは、”King's Cake / 王様のケーキ”という意味になるけれど、 その名の通り、ペーパー・クラウン(紙の王冠)が乗せられて売られているケースも多いのだった。
ケーキの中には ” フェーブ ”と呼ばれる陶製の小さな人形が入っていて、自分に切り分けられたケーキの中に この人形が入っていた人が、クラウンを被って、その日1日、王様、もしくは女王様として扱われるだけでなく、 1年に渡って幸福に恵まれるといわれるのだった。
すなわち、フランス版の年始の縁起物と言えるのがガレット。 同ケーキを食べるのは、本来はクリスマスから12日後の1月6日。 3人のWise Men/ワイズ・メンが訪れて、キリストの誕生をお祝いしたEpiphany/エピファニー(公現祭)前夜に 味わうものとされているけれど、ガレットは1月前半を中心にフランスのパティスリー店頭に並ぶのが通常で、 特に1月6日に限定して食べる必要は無いようなのだった。

私は、年明けにガレットを食べる習慣は全く無いけれど、今年に限ってこれを購入することになったのは、 かつて一緒にフランス語を習っていた友達が、「ガレット・デ・ロアを食べたことが無い」と年末に言っていたため。
私よりずっとフランス語が上手く喋れた友達であるけれど、 フォアグラを食べたことが無いなど、食に関してはかなりフランス音痴。 そこで「今年の年明けは、 ガレット・デ・ロアを食べよう!」ということになって、 私がガレット購入を引き受けて、一緒にフランス語を習っていた友人2人を加えた、計4人で ガレット試食会をすることにしたのだった。

私がガレットを購入したのは、以前このコーナーでも紹介したことがあるソーホーのドミニク・アンセル・ベーカリー。
彼はクイニー・アマンをシグニチャーにしているだけに、パイ・ペストリーとアーモンド・クリームで出来ている ガレット・デ・ロアも美味しいに違いないと考えてのチョイスなのだった。

ドミニク・アンセル・ベーカリーには、この予定が決まった途端に予約を入れておいたけれど、同店では ガレットの販売は予約制で、1月4日〜20日までの受付。
ピックアップから2日以内に食べるのが理想的で、冷蔵庫に入れるのは不可。 乾燥した低温の室温での保存が適していて、パイのテクスチャーを保つために、プラスティック・ラップでカバーするのもダメ。 また前日のケーキを美味しく味わうためには、180度のオーブンで数分温めることが奨励されているのだった。




ところが、この予定に被るように計画してしまったのが私のニューイヤー・クレンジング。
ガレット・デ・ロアは、私が年明け早々からカットしているアルコールこそは含んでいないものの、 脂肪分と糖分の塊と言えるケーキ。したがって、皆と一緒にそれを食べてしまったら、 せっかくのデトックスは台無し。
私は一度やり始めたことは、やり通す主義なので、年明け早々 それを曲げるのは どうしても抵抗があって、ケーキをピックアップして友人宅に出掛けたものの、 私が味わっていたのは、自ら持参したデトックス・シェイク。
なので Favorite と言いながらも、私がドミニク・アンセル・ベーカリーのガレットで気に入ったのは、 パイ・ペストリーが何層にも渡って、たっぷり膨らんだエッジと、トラディショナルでオーソドックスな模様が描かれたケーキの表面。 シットリしたアーモンド・クリームのルックス、そして 「美味しい!」と言いながら食べてくれる友人のリアクションだけなのだった。

友人曰く、「中のアーモンド・クリームが甘すぎず、ネットリしすぎず、美味しい上に、 パイ・ペストリーにバターの風味が生きていてサクサク」なのだそうで、 この日、初めて食べたガレット・デ・ロアをすっかり気に入ってくれたのだった。
でも問題は、ドミニク・アンセルのガレット・デ・ロアは6〜8人分として販売されているもの。 これを、私を除く3人の友達が味わっただけなので、ガレット・デ・ロアの醍醐味である 肝心のフェーブが出てこないまま。
写真上、右はドミニク・アンセルのガレット・デ・ロアではないけれど、こうやってフェーブが 出てきてくれないと、せっかくのガレット試食会が不完全燃焼なのは言うまでもないこと。 結局その日は、中にどんな陶製の人形が入っているのかも分からず終いになってしまったけれど、 ニューイヤー・クレンジングの真っ最中だった私としては、そんなことで文句を言ってはいられないのだった。





ところで、このガレットが美味しかったので、友人にドミニク・アンセルについて訊かれたけれど、 彼のベーカリーについての記事を書いたのが1年以上前だったので、 その場でグーグルして思い出したのが、彼がニューヨークのミシュラン3つ星フレンチ、ダニエルのパティシエであったということ。
写真上、4点は彼のダニエル時代のデザートであるけれど、実は私は個人的にはダニエルというレストランは オールド・ファッションで、イノベイティブではないので、あまり評価していないレストラン。
ダニエル時代の彼のデザートも、見目麗しいとは思うけれど、「是非食べてみたい!」という食欲や好奇心をそそるかと言うと、 そうでも無いのが事実なのだった。

実際、私は彼のベーカリーでもショーケースに並んでいるケーキよりも、ペストリーを評価していて、 個人的には彼はベーシックなベイクド・アイテムの方が上手いパティシエのように思っているのだった。
なので その場に居た友人達には、彼のクイニー・アマンをトライするように薦めたけれど、 デトックス・シェイクをすすりながら、目の前で友人たちがコーヒーと一緒にガレット・デ・ロアを美味しそうに味わっているのを眺めつつ、 なおかつ、クイニー・アマンやカヌレの話をするというのは 結構な苦痛。 でも、どんなに薦められても 私がガレットに手をつけようとさえしなかったので、友人には意志が強いと感心されてしまったのだった。

ふと気付くと、ガレットは1月前半に食べるケーキ。そしてこの時期は、今年だけでなく毎年のように デトックスをしている可能性がある時期。
そう考えると、私は毎年ガレットが食べられないような気もするけれど、 人生には プライオリティ、すなわち優先順位は付き物。 例え縁起ものでも、季節限定でも、そしてどんなに美味しくても、 砂糖と脂肪の塊を デトックスより優先させる訳には行かないのだった。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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