Feb. Week 1, 2013
” Streets of Fire Soundtrack ”
” ストリーツ・オブ・ファイヤー・サウンドトラック ”



少し前に、凄く熟練したランナーと話していた時に話題になったのが、 ランニングを続けていると、だんだんと身体がその動きに慣れてきて、 以前ほど多くのカロリーが燃やせなくなるということ。 加えて、楽しくマイペースでだけ走っていると、燃費走行ばかりをやっている車のように、 エンジン全快の状態にするのが難しくなるということ。
なので、たとえ長距離のランニングでも 全力に近いスピードまでアップをする ピリオドを設けた方が、遥かに効率が良いトレーニングが出来るということなのだった。

私がこれに非常に納得したのが、もう何年も前に、私の母がランニングで体重を落とした時のことを思い出して。
走り慣れてだんだん体重が落ちなくなってきたという母に、当時の私がアドバイスをしたのが、 電柱10本中、1本の間をダッシュするということ。 今から思えば、これは ”インターバル・トレーニング”と呼ばれるコンセプトで、テニスの選手のトレーニングに 頻繁に用いられる手法であるけれど、これを本当に実践した母は、同じ距離を走っているのに、 さらに体重を落として、合計20キロの減量に成功したのだった。

それを思い出して、私も同じ事を試みたけれど、定期的にダッシュする距離を挟むというのは、 非常に苦しいトレーニング。 これを続けたら、走ること自体が嫌いになってしまうと考えた私が、妥協案で取り入れたのが いつもの10キロのコースの最後の600メートルほどを、ダッシュとは言わないまでも ピッチを上げて走るということ。
これならば終わりが見えているだけに、たとえ苦しくてもあっという間に終わるので、今のところ続けることが出来ているけれど、 その際に必要なのが、アドレナリン・ラッシュを 煽ってくれる音楽。 音楽がエクササイズに大きな効果をもたらすのは、既に立証されていることだけれど、 ピッチを上げる段階で、音楽によって アドレナリン・ラッシュがもたらされると、 その苦しいはずの600メートルで、ナチュラル・ハイになれるほどの 大きな精神的高揚が得られるのだった。

このアドレナリン・ラッシュの音楽は、飽きてくると効果を失ってしまうので、定期的に変える必要があるけれど、 私が過去2週間ほど、すっかりハマッっているのが、80年代の映画、「ストリーツ・オブ・ファイヤー」の中の、 「Tonight Is What It Means To Be Young / トゥナイト・イズ・ホワット・イット・ミーンズ・トゥ・ビー・ヤング」。
「ストリーツ・オブ・ファイヤー」は若き日のダイアン・レイン扮するロック・シンガー、エレン・エイムが ギャング団に誘拐され、 それをマイケル・パレ扮する 昔のボーイ・フレンドが助けに来るという B級仕立ての映画。 エディ・マーフィー主演の「48時間」で知られるウォルター・ヒル監督の作品なのだった。




この映画のラストにフィーチャーされる「Tonight Is What It Means To Be Young 」は、 映画のラストのクライマックスであり、当時、日本でもカルト的にファンが多かったミュージック・ビデオ。
主演のダイアン・レインは、ロック・ファンで、当初この映画の出演をきっかけに、ロッカーになることを夢見たというけれど、 「ストリーツ・オブ・ファイヤー」の楽曲は、音域が広く、そもそも歌唱力に乏しかった彼女には歯が立たないものばかり。
なので、彼女が映画の中で行なっているのはリップ・シンキング(音に合わせて唇を動かすこと)で、 この楽曲を 実際にメインで歌っているのは、ホリー・シャーウッドというシンガー。 彼女は無名ながらも、様々なプロジェクトでゲスト・ヴォーカルとして活躍していた存在であるけれど、 彼女の声以外にも、複数のヴォーカルを重ねて 事実上、作り上げているのが ダイアン・レイン扮するロッカーの歌声。
「Tonight Is What It Means To Be Young 」に関しては、音域の広さに加えて、ロック・シンガーとしての歌唱が要求されるだけに、 今これを実際に歌えるシンガーが居るとしたら、 私の意見では、ケリー・クラークソン しか いないように思うのだった。




「ストリーツ・オブ・ファイヤー」には、悪役として 映画「プラトーン」に出演する2年前のウィレム・デフォーがキャストされていたり、 ダイアン・レインと、マイケル・パレのコスチュームをジョルジォ・アルマーニが担当していたり、 さらには、ギャング団の溜まり場のバーでパフォーマンスをするストリッパー役として、 映画「フラッシュ・ダンス」で、主演のジェニファー・ビールズのボディ・ダブルとして、 ダンスシーンを演じていた Marine Jahan/マリーン・ジャハンが出演していたりと、 B級映画の割には、極めて興味深い部分が多い作品。

しかしながら この映画の存在は、アメリカでは殆ど知られていなくて、私自身、アメリカに来てからは一度もTVやケーブルで観たことはないし、 話題にも出たことさえなかったのが同映画。
なので、「Tonight Is What It Means To Be Young」の曲のこともすっかり忘れていたけれど、 先日突然思い出して、アイチューンで検索したところ、見事に出てきたので感激してしまったのだった。 でもその感激も束の間、9ドル99セント出して、アルバムで購入しなければ 手に入らなかったのがこの曲。
それでもプレビューを聴いたら、懐かしくて たまらなくなって、 この1曲だけのためにアルバムごと購入することにしたのだった。
ちなみに、このアルバムがMP3でリリースされたのは2011年のこと。 そこで、ビデオもデジタル・ヴァージョンが出ているかと思って、YouTubeを検索したところ、 画質はHDではないものの、音はデジタル録音の ビデオが出ていて、20年以上ぶりに 思わず見入ってしまったのだった。




自分が学生時代に見入ったミュージック・ビデオであるだけに、いろいろな感情が込み上げてきて、 見終わった後は、暫くいろいろな思いにふけってしまったけれど、 ランニングの最中に、この曲を聴く際も アドレナリン・ラッシュと共に 頭をよぎるのが 学生の頃に抱いた様々な思いや、当時の状況。
それと同時に、今はさすがにリリック(歌詞)で何を言っているかが分かるようになっているので、 「こんなことを歌っていたのか!」と変に納得してしまう瞬間もあるのだった。

私にとって、この曲が特別なのは 学生の頃の思い出が沢山詰まっているのに加えて、20年近く存在さえ忘れていたブランクの後に 私の人生に戻ってきたという点。 友達でも、音楽でも、映画でも、人生の中で思い入れのある存在は、時に離れているブランクが あるお陰でその意味が深くなったり、有り難味が増したりするもの。
今のジェネレーションYの世代は、この先、友達でも、音楽でも、 簡単にダウンロードしたり、フェイスブック等のソーシャル・メディアを通じて、ブランク無しに繋がっていくことになるけれど、 私の意見では、それが必ずしも人生に意義深さをもたらすとは思わないのだった。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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