Feb. Week 3, 2012
” The City Bakery Hot Chocolate Festival ”
” シティ・ベーカリー・ホット・チョコレート・フェスティヴァル ”



私が毎年のように2月にすることと言えば、バーニーズ・ウェアハウス・セールに行くこと。
ウェアハウス・セールは、今や西海岸でも行なわれるようになったこともあって、商品セレクションは年々落ちて行く一方であるけれど、 時々ビックリするような掘り出し物に巡り会えるセールで、特に最終日となると ブランド物が90%オフで購入できることもしばしば。 特にメンズは、最終日でも比較的品揃えが良いので、男友達にはウェアハウス・セールに行くように薦めるけれど、 セールにおいて一番大切なのは、何処に良い商品があるかを嗅ぎ分ける 嗅覚もさることながら、 何と言っても忍耐。なので、ラックの端から端まで掘り出しものを探す熱意や忍耐が無い人にとっては、 あまり収穫が望めないのがウェアハウス・セールなのだった。

そのウェアハウス・セールでのショッピングを終えた後、バーゲン・ハンティングで使い果たしたエネルギーを補給するために、 私が立ち寄るのがシティ・ベーカリー。同店は ウェアハウス・セールの会場を出て、真っ直ぐ3ブロックほど歩くだけのロケーションなので、 年に2回のセールの後には 必ずと言って良いほど立ち寄っているのだった。

シティ・ベーカリーはオーナーのモーリー・ルービンが1990年にオープンしたベーカリーで、 彼はそもそもは TV界のオスカーと言われるエミー賞を2回受賞した ABCテレビのスポーツ部門のプロデューサー。
その彼がベーキングに興味を持ち、6日間のペストリー・クラスを取ったのがきっかけで、 パリにスタージュとして修行に出かけ、その後3年を費やして独自のスタイルのベーキングを開発。そしてオープンしたのが シティ・ベーカリーで、当時は ユニオン・スクエアの直ぐ傍の 小さな店舗がロケーションになっていたのだった。
モーリー・ルービンは、タルトのデザイン1つをとっても 非常に洗練された、都会的なテイストでクリエイトするけれど、 そんな彼はシティ・ベーカリーのロゴやパッケージ、ウェブサイトのデザインなども手掛けるマルチ・タレントぶり。 なので同店では、彼のセンスやポリシーがありとあらゆる部分に感じられるビジネスが行なわれているのだった。




私はオープン当時、ニューヨークの雑誌社に勤めていて、その雑誌でシティ・ベーカリーを取り上げていたことから 同店を知るようになったけれど、ベーカリーとしての質の高さと美味しさが 20年以上経った今も 全く変わっていないのは本当に凄いと思う部分。
そう思うのは私だけではないようで、同店は常にニューヨーカーの常連で賑わっているのだった。
私が同店で 特に気に入っているのはプレッツェル・クロワッサン(写真一番下)とベーカーズ・マフィン(写真上右)で、 プレッツエェル・クロワッサンは周りがカリカリで、ゴマが掛ったクロワッサン。 これを食べてしまうと通常のクロワッサンでは物足りなくなってしまう美味しさ。
ベーカーズ・マフィンは、パイ・ドウの小さなボールをぎっしりマフィン型に詰め込んで焼き上げた絶品。 何度かこのコーナーに書いているように「パンが無いと生きられない」私にとっては、危険なほど美味しいのが これら2つのシティ・ベーカリーのシグニチャーなのだった。

さて、シティ・ベーカリーといえば、その絶妙に美味しいベイクド・グッズと共にホット・チョコレートでも知られる存在。
様々なメディアが、ニューヨークのみならず、アメリカのベスト・ホットチョコレートに同店を選んでいるほど。 では同店のホットチョコレートの 何がそんなに特別かといえば、濃厚でリッチなチョコレートの味わいに加えて、ホット・チョコレートに浮かべて味わうハウス・メイドのマシュマロの美味しさ。
私は、卵白を使ったデザートが好きで、レモン・メレンゲ・パイが好物であることは 以前このコーナーに書いたことがあるけれど、 マシュマロも然り。でもスーパーなどで売られている工場生産のマシュマロは好きではなくて、実は マシュマロに対する考えを改めたのが シティ・ベーカリーのマシュマロを味わってからなのだった。
そもそも、アメリカではマシュマロというのはホーム・メイドで簡単に作れるものということで、レシピがネット上にもかなり出回っているけれど、 ハウス・メイド、ホーム・メイドのマシュマロは、工場生産のものが ただフニャフニャしているだけのテクスチャーなのに対して、 もっと心地好い弾力があると同時に、空気を沢山含んでいて、まったくの別物。 ただマシュマロだけを食べても美味しいけれど、これをホットチョコレートに浮かべると、マシュマロが徐々に解けて、 生クリームとは全く違う、軽いフワフワ感が味わえるのだった。





なので、寒い季節になるとシティ・ベーカリーには、その名物のホット・チョコレート&マシュマロを味わうために、 大勢のニューヨーカーが訪れるけれど、その同店が1992年以来、毎年2月に行なっているのが、ホット・チョコレート・フェスティヴァル。
これは2月の間、 毎日、フレーバーの異なるホットチョコレートを、レギュラーのホット・チョコレートに加えて オファーするイベントで、 ”バーボン・ホットチョコレート”、”キャラメル・ホットチョコレート”、”ジンジャー・ホットチョコレート”などは毎年出てくる定番。 この他に過去には、”タヒチアン・ヴァニラ・ホットチョコレート”や、”へーゼルナッツ・ホットチョコレート”なども登場していたのだった。
未だインターネットが無かった時代は、そのフレーバーのスケジュールは店に来るまで分からなかったけれど、 同店のウェブサイトが出来てからは、そのフレーバーがサイトでチェックできるようになったのだった。
ちなみに、上は今年で20周年を迎えたホット・チョコレート・フェスティヴァルのメニュー・スケジュール。 バナナ・ピール(バナナの皮)、アールグレーといったちょっと変わったフレーバーに加えて、今年はリープ・イヤー(うるう年)で 2月が29日まであるため、それにちなんだスペシャル・フレーバーも用意されているのだった。

私は一時、ホットチョコレートに凝って、メゾン・ドゥ・ショコラや ニューヨークで最も有名なチョコレート店、ジャック・トレス、 パリではアンジェリカと、ありとあらゆるホットチョコレートを味わった時期があったけれど、 アメリカで味わうホット・チョコレートは、強烈に甘いものが多いのが実情。
中でも3年ほど前に味わったジャック・トレスのホット・チョコレートについては、むせ返るくらい甘くて、 鼻血が出そうな濃厚さ。 飲み終わった後、口の中に酸っぱい後味が長く残った 記憶が鮮明なのだった。




それに比べると、シティ・ベーカリーのホットチョコレートは まともな甘さ。しかもマシュマロを入れると 甘さが緩和される一方で、 こくが出るような感じがするのだった。さらにマシュマロを入れると ホットチョコレートの温度が下がるので、猫舌の人には 特にお薦め。

アッパー・イーストサイドに住む私にとっては、シティ・ベーカリーは滅多に出かけない不便なロケーション。 かつては、それを不満に思っていたけれど、メタボリズムが年々下がっていることを実感する昨今では、 同店が不便な場所にあって本当に良かったと思うようになったのだった。 そうでなければ、”肥満と糖尿病への道をまっしぐら” という状態になるのは目に見えていること。
でも年に2回、ウェアハウス・セールで体力と精神力を使い果たした後であれば、ホット・チョコレートとプレッツェル・クロワッサンを 味わって、ベーカーズ・マフィンをお土産に持って帰っても、健康を害することは無いだろうというのが私の勝手な解釈。
特にセールでニナ・リッチのドレスを90%オフで買った時、マノーロ・ブラーニックのパンプスを160ドルで買った時など、 ショッピングのサクセス度が大きければ大きいほど、 気分がハイになっているせいか ホット・チョコレートやプレッツェルの味わいが さらに増幅してしまうのだった。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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