Mar. Week 1, 2013
” Momofuku Milk Bar Chocolat Malt Layer Cake ”
” モモフク・ミルクバー・チョコレート・モルト・レイヤー・ケーキ ”



味の好き嫌いは別として、今ニューヨークで最もイノヴェイティブなペストリー・シェフと言えるのが、 モモフク・ミルクバーのChristina Tosi / クリスティーナ・トシ(写真一番下左)。
モモフクは、2004年にシェフ、デヴィッド・チャンがオープンしたヌードル・バーで、 モモフク・ミルクバーは、そのデザート部門をスピンオフしたストア。 そこで、ペストリー・シェフを務めてきたクリスティーナ・トシは、 その奇想天外なアイデアで、全米のレストラン・デザートに多大な影響を与え、 ここ数年のデザート界で、最もインスピレーショナルな存在として知られているのだった。

正直なところ、彼女のクリエートするデザートは、洗練さとはかけ離れていて、むしろアメリカ人がノスタルジーを 感じるような、ホームメイド的な垢抜けないスタイルに、ヒップでエッジーな要素を加えたもの。 それが新しいジェネレーションにウケていると同時に、 トラディショナルなフレンチ・スタイルのデザートを 時代遅れ的な存在に感じさせてしまうのだった。

クリスティーナ・トシのクリエーションは、クッキーにチョコレート・チップやナッツと共にポテト・チップの破片を入れたり、 オートミール・クッキーを砕いて パイシェルを焼いたり、ミルク・パウダーをコーンスターチ、砂糖、小麦粉と ミックスしてオーブンで焼いた、サクサクの ”Clumb / クラム”をケーキのレイヤーに使うなど、 他のペストリーシェフが今まで行なってこなかったトリックや、テクニックが用いられたもの。 そんな彼女の奇抜なアイデアは、今やアイスクリーム業界、クッキー業界などが、 ジェネレーションY、ミレ二アル世代にアピールする製品をクリエイトするために 真似をするようになって 久しい状況なのだった。




ここでご紹介するのは、そのクリスティーナ・トシのシグニチャー・ケーキの1つであるチョコレート・モルト・レイヤー・ケーキ。
このレシピは、彼女が出版したモモフク・ミルク・バーのクック・ブックに掲載されているので、 インターネット上に出回っているけれど、 このレシピを読んでから 「これを作ってみよう」 と思える人は、 かなり根気と自信に満ちたベーカー。
同ケーキは、チョコレート・ケーキ、ファッジ・ソース、モルテッド・ミルク・クラム、マシュマロのレイヤーであるけれど、 まずミルク・クラムから作り始めて、2日掛かりのプロジェクトともいわれるもの。

「そんなに大変な思いをして作るなら、買ってくれば・・・」と思うかもしれないけれど、 モモフク・ミルクバーは、2010年からケーキのピース売りを止めているので、 このチョコレート・モルト・レイヤー・ケーキに限らず、クリスティーナ・トシがクリエイトしたケーキを食べたいと思ったら、 インターネットから予約をして、最低38ドル+税金を支払って、1ホールを買わなければならないのだった。
ちなみにモモフク・ミルクバーがケーキのピース売りを止めた理由は、あまりにケーキの製作に時間と手間が掛るためだけれど、 モモフク・ミルクバーのクック・ブックの内容を見れば、それも納得と言える 複雑なマルチ・プロセスになっているのだった。

そのミルクバーでは、クリスティーナ・トシのデザートに欠かせない ”クラム”の作り方などをレクチャーするクッキング・クラスも主催しているけれど、 様々なフレーバーの”クラム”の作り方を学んで、ブルベリー・クリーム・クッキーのお土産付きで、参加費は75ドル。 他にもベーシックなデザートの作り方のクラスが何種類か行なわれており、 定員12人のクラスは、毎回 ソールドアウトになる人気となっているのだった。



ところで今回、チョコレート・モルト・レイヤー・ケーキをこのコーナーで取り上げたのは、このケーキを先日久々に友人のバースデー・パーティーで 味わったため。
ウェブサイトでは 6インチのケーキで8〜12人分とされていたけれど、ケーキを切り分ける時に、 私が 「モモフク・ミルクバーのケーキは、美味しいと思うところで止めて置かないと、後から気持が悪くなる」 と余計な事を口走ってしまったせいもあって、14人でシェアしても 少し余った状態。 でもその場に居たメンバーは皆、「私の忠告を聞いておいて正解」と言ってくれたので、ちょっとホッとしたのだった。

実際のところ、私の忠告は 自分自身の経験に基づくもので、かつて未だモモフクがケーキをピース売りしていた時代に、 私は このケーキを空腹の状態で午後2時に食べて、ディナータイムになっても全くお腹が空かなかっただけでなく、 味わった直後から、砂糖によるオーバー・カロリーがもたらす 身体の重さと 脳のキレの悪さを味わって、 この時に「もう、ここのケーキは絶対に1人で1ピースを食べない」と心に誓ったのだった。
以来、同店のケーキは4口程度しか食べないことにしているけれど、そこで止めて置くと、 素朴ながらも、ちょっと変わっていて、美味しく感じられるのが同店のケーキ。 しかも他店のデザートより 遥かに少量で満足感が得られるので、結果的にカロリーの摂取量は少ないように思えるのだった。

クリスティーナ・トシは、2012年度のレストラン業界のオスカー、ジェームス・ビアード・アウォードで、 ライジング・スター・シェフに選ばれているけれど、彼女のレシピは、他のペストリー・シェフより塩を多目に用いていると言われるもの。
おそらく そんな、「甘さを控える」のではなく、「甘いだけじゃない、しっかりした味わい」が 若い世代にウケているのかも知れないけれど、 彼女のケーキは、バースデーだけでなく、ウェディングでもオーダーされるようになっていてきているとのこと。
写真上右の4レイヤーのケーキは、モモフク・ミルクバーの人気メニューのうち、 下からのチョコレート・モルト・レイヤー・ケーキ、アップルパイ・ケーキ、チョコレート・チップ・ケーキ、ストロベリー・レモン・ケーキの順でレイヤーにされたもの。 もちろん 1種類のケーキのレイヤーも可能であるけれど、 この4レイヤーで140人分。でも お値段は575ドル+タックスで、ウェディング・ケーキとしては かなり良心的と言えるのだった。





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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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